彼方の近衛   作:瑠和

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お久しぶりです。仕事が忙しくなかなか進まないですが何とか週一ペースを保てて良かった。

この間5thライブに行かないけどグッズは届きました。ブロマイドは歩夢、栞子、ミア、ミアでした。果林さんがいないのは珍しいですがやっぱり出やすい傾向のある面子だった。最近彼方の近衛の中のミア編のストーリーを考えてるせいかな?

てるてるかなたちゃんの寝心地はなかなか良いです。

他にも色々買いましたが気に入りました。


第十一話 メトロノーム♪不動の栞子

「この度、体育祭実行委員となりました。三船栞子です。よろしくお願いします」

 

「…」

 

その出会いは、運動ができるわけでもないのに流れでやらされた体育祭の実行委員での出会いだった。感情の写らない瞳は、どこか妹と似ていて、それでいて彼女からわずかに見える色は放っておけない空気があった。

 

妹と同い年なこともあってか、彼女と一緒にいるとなんだか妹と一緒にいるような気がした。

 

親の手を振り払ったと同時に、俺は妹の手も振り払った。まだ幼くて、俺以外に頼れるものがなかった小さな存在の。

 

そんな罪の意識を和らげるための隠れ蓑にしていたのも事実だったが俺は確かに栞子が好きだった。

 

類は友を呼ぶなんて言うがその通りなのかもしれないなんて思った。一緒に仕事をしていく中で、彼女の対人スキルを見て何となく同じ感性を持っていることに気づいた。

 

「俺………実は、人の顔を見ると、その表情から色が見えるんだ………君も、そうじゃないのかな?」

 

二人きりになったタイミングで思いきって聞いてみた。

 

「………やはりそうでしたか。はい、私も同じです。昔から、そうでした」

 

お互いの感性を知ってからは、阿吽の呼吸で仕事をこなし、体育祭を大成功に導いた。それがきっかけで付き合うことになったが、俺はどこか満足していない空気があった。

 

それは、栞子の顔だ。彼女は瑠和の前で一度も、泣いたことも笑ったこともなかった。デートに出かけても微笑んだりはするものの、それ以上はない。

 

「栞子は笑わないよな」

 

「………それはあなたもでしょう?」

 

彼女を知りたい。あわよくば助けたいと思って発した言葉は予想外の形で返された。

 

それ以上彼女の表情に触れることはしなかったしできなかった。けど、妹に幸せでいてほしいって思いがあったように多分栞子にも笑っていてほしかったんだと思う。

 

いろんな人にであった。いろんな人を支えてきた今だから、もう一度であった今だからこそ、思う。

 

栞子の満面の笑みが見たい。だって、彼女にはそれが似合うはずだから。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

スクールアイドルフェスティバル1日目が終わった日。すなわち鐘嵐珠との和解を終えた日。瑠和は荷物を纏めて嵐珠の家を出た。もう一緒にいる必要も、スクールアイドルになるためのトレーニングをする必要もない。そもそもスクールアイドルを目指すというのも嵐珠と一緒にいるための口実でしかなかった。

 

嵐珠は十分に見込みはあると言ってくれたが、瑠和自身にそんな気はない。自分が輝くことより誰かを輝かせることを目指す瑠和にとってどちらでもいいことだ。

 

そういえば誰かをサポートすることに適性があるから自分はそれをしている。そんなことを話していた人間がいた気がする。そう思いながら嵐珠のマンションから出ると、出口には彼方と璃奈がいた。

 

迎えを頼んだ覚えはない。

 

「…彼方さん?どうしたんですか?」

 

「迎えに来たよ~。さぁ、今度は彼方ちゃん家に来ようねぇ」

 

「………」

 

最近、彼方に見えていた妙に怖く見える色の正体を瑠和は悟った。それはいわゆる独占欲の色であった。愛情、嫉妬、それらが混ざった色だ。妹に対しあれだけ溺愛するタイプだ。彼氏に対してもそういう風になっても何もおかしくない。

 

しかし、瑠和を迎えに来たならなぜ璃奈も一緒なのか疑問だった。

 

「で、璃奈はなんで?」

 

「お母さんとお父さんが、またしばらく帰ってこれないって。だから、その間だけ彼方さん家に泊まらせてもらおうと思って」

 

先日のお泊り会で妹同士、遥と璃奈は話があったらしくそれから結構仲良くなったらしい。だから泊まりに行くことに抵抗も何もないということだ。瑠和は完全に逃げ道が失われたなと笑う。瑠和自身、嵐珠のために嵐珠の家に泊まるのなら抵抗はなかったが恋人として泊まりに行くのは少し照れくささがあったのだ。

 

「じゃあ、お世話になります」

 

「瑠和~、これ忘れってたわよ」

 

そこに瑠和が嵐珠の部屋に忘れて行ったタオルを持ってきた。

 

「あら?彼方に璃奈じゃない。どうしたのこんなところで」

 

彼方は少し瑠和と嵐珠を見てから思いっきり瑠和の腕に抱きつく。

 

「瑠和君はこれから~彼方ちゃんの家に来るんだよ~」

 

彼方の言葉に、嵐珠は「やっぱり」というような顔をした。瑠和は嵐珠に対して好意は持ってないと言うような態度は示したものの、他に誰か好きな人がいるだとかは口にしていない。

 

「そう……ってことは彼方が瑠和のガールフレンドだったのね」

 

「そうだよ~?第一回スクールアイドルフェスティバルのときに~瑠和君から告白されたんだよ~」

 

嬉しそうに彼方は聞かれてもいない惚気まで話す。

 

「……ねぇ、彼方は瑠和の、どんなところが好きになったの?」

 

「え?ん~そうだなぁ」

 

それは瑠和も少し気になるところでもあった。彼方は少し考えてから口を開いた。

 

「色々あるけど、そばにいてくれたから…かなぁ。最初は彼方ちゃんがそばにいないとダメかなぁって思ったんだけど………彼方ちゃんがくじけそうな時に、そばにいてくれて…………その時瑠和君が抱きしめてくれた温もりが、忘れられなくて………彼方ちゃんお姉ちゃんだったから、そういう風にされたことなかったから」

 

「………そう、じゃあ瑠和は彼方の近衛兵なのね」

 

「うまいこと言ったつもりかよ」

 

「アハハ!まぁ、大体わかったわ。うん、嵐珠決めたわ」

 

刹那、瑠和は嵐珠から色が見えていた色が変わったことに気づく。さっきまでの静かななにか、闘志を感じる色だ。

 

「彼方から瑠和を奪って見せる」

 

「………ん!?」

 

「はっ!?」

 

「!?」

 

その場にいた誰もが困惑する。璃奈もボードが「!?」になっている。説得し、同好会のメンバーとなり、それで終わったかと思った矢先でのトンデモ発言に瑠和は思考が止まる。

 

「な、何言ってんだお前!?」

 

「そうだよ!瑠和君は彼方ちゃんのだよ!?」

 

彼方も驚き瑠和を思いっきり抱きしめる。

 

「だったら振り向かせればいいだけの話じゃない」

 

「そもそも、お前の俺への想いは勘違いだってお前だって認めたんじゃないのか!?」

 

「ええ、最初はそう思ってた。でも彼方の話を聞いて嵐珠も確信したわ。アタシも、瑠和に恋してるって。最初は確かに瑠和の目が欲しかっただけかもしれない。だけど、うん。やっぱり嵐珠は瑠和が好きよ」

 

(まさか………孤独の色に隠れてその本心に気づけなかったってのか!?間抜けにも程があんぞ!?)

 

「スクールアイドルフェスティバル。最終日まで嵐珠も手を抜かないし、その後も気を抜かない様にしなさい?でないと、瑠和は私のモノになっちゃうわよ」

 

「いいよ。彼方ちゃんも負けないよ~。ぜっっっっったい」

 

「それでいいわ。私たち、仲間だけどライバル、だものね。ああ、それからフェスが終わるまでは同好会には入らないわ。最終日に嵐珠とミアが用意した曲で勝って見せるから」

 

「彼方ちゃんたちもいいの用意してるからねぇ。だから負けないよ~?」

 

彼方はいつも通りな雰囲気だったが二人の間にゴングが鳴り響いた気がした。戦況は彼方が優勢に見えるがそれを覆すであろうカリスマ性と実力を持っているのが鐘嵐珠だ。嵐珠は瑠和にタオルを渡して帰っていった。嵐珠の姿が見えなくなると彼方はすぐにスマホを取り出して侑に繋いだ。

 

『もしもし?彼方さん?』

 

「侑ちゃん!?今最終日用の曲作ってるよね!?」

 

『え!?は、はい!』

 

「絶対いい曲にしてね!?絶対!!」

 

『はい…』

 

「頼んだからね!」

 

侑との通話をきると彼方は瑠和の手を取って歩き始める。

 

「さ、瑠和君、一緒に行こうか」

 

「………」

 

「…どうしたの?」

 

瑠和は少し驚いたような顔で彼方を見つめていた。

 

「い、いえ………なんだか、ここまで必死になってる彼方さんの姿ってみたことなかったら新鮮っていうか……可愛いっていうか」

 

「かっ……」

 

彼方は顔を赤くしてその場で固まった。固まってしまった彼方の頭を軽くなでて歩き出す。

 

「行きましょう。またおいしいごはん食べさせてください。璃奈も行こう」

 

「うん………」

 

その後を璃奈がトテトテとついていく。

 

 

 

―近江家―

 

 

 

「やっぱ寝るときは一緒なんですね」

 

「そりゃあそうだよ~。瑠和君はもう彼方ちゃん専用抱き枕なのだ~」

 

同居初日、夕食のあとはすぐに風呂に入って寝床につくこととなったが瑠和は彼方のベッドにいた。もうこうするのは二度目なので変な緊張はしないが、慣れるものでもない。

 

「瑠和君がもう離れないようにもしっかり抱き締めておかないとねぇ」

 

彼方の言葉に瑠和はここ最近の、出会った時からの自分の行動を振り返る。いつだって自分は、彼方を一人にした。いつだって自分勝手な正義とわがままで。彼方を愛している。その気持ちに嘘偽りはない。だが自分の性に勝てた試しはない。

 

いくら必ず帰って来る約束をしていたとはいえ、三週間だ。三週間一人にした。

 

彼方は今年で三年生で、これからのことは決めてはいないが少なくとも一緒にいられる時間は限られている。その時間を、三週間も無駄にした。

 

急にあふれてきた贖罪の念が瑠和を苦しめた。今このように彼方の胸に抱かれていることすらおこがましく思う。

 

そう思っているのに、まだ自分は人助けをしようと考えている。次は栞子をと思ってる。

 

「…ごめんなさい。俺は………彼方さんを悲しませてる」

 

「ん?」

 

「ずっとあなたを一人にしていた」

 

瑠和は彼方の服の裾を掴み、強く握りしめた。謝罪を、贖罪をしたいのに、どうすればいいのかわからない。この間のキスだって彼方からやってきたことだ。

 

こんなにも愛してくれているのに、瑠和は彼方を愛せない。

 

「どうしてかなぁ………彼方さんを愛してるのに、アナタを愛する方法がわからない」

 

この半年余り、人助けを自分のアイデンティティと考えていた瑠和にとっては難題だった。自分の男としての情けなさに涙が浮かぶ。

 

「……この目のせいかなぁ……………」

 

こんなに弱気な瑠和を見たのは璃奈のことがあった時以来だった。彼方は少し驚きながらも瑠和を抱きしめる。

 

「そうだねぇ。瑠和君はすぐふらふらしちゃうからねぇ」

 

「………ごめんなさい…」

 

「でも、それが瑠和君のいいところだし。それに彼方ちゃんは瑠和君にそばにいてもらえるだけでいいんだよ」

 

「え………?」

 

不意を突かれた瑠和の反応を彼方は逃さない。そっと抱きしめている手を瑠和の後頭部に回して瑠和の頭を自分の胸にうずめさせる。やさしさに包まれるという表現が比喩ではない構図である。

 

「朝おはようって言って、一緒にお昼食べて、一緒にすやぴして、一緒に部活して………それでいいんだよ。特別なことなんて瑠和君に求めてないよ。ただ…」

 

(あなた一人の荷物を、せめて一緒に持つことくらいはできます。そばにいることくらいはできます…)

 

あの瞬間だった。彼方が瑠和に惚れたのは。それだけで十分なのだ彼方にとって。

 

「そばにいてくれるだけでいいんだよ」

 

「………彼方さん…」

 

「だから、人助けも一緒だよ」

 

「…はいっ………ごめんなさい……ありがとうございます…っ!」

 

その夜、瑠和は少しだけ彼方の胸の中で泣いた。だが、何をすべきはわかった。瑠和は覚悟を決める。

 

 

 

―翌日―

 

 

翌日、瑠和は朝早くに虹ヶ咲に登校して久しぶりに同好会の部室に来ていた。今日は藤黄学院でスクールアイドルフェスティバルが開催される。そして、同じく同好会のメンバーが集まっていた。

 

「それで?お話って?」

 

「………これは完全に俺の我が儘で、みんなには何のメリットもない話だ。でも………俺……クラスに友達ほとんどいないし……一人で解決するのにも……そこまで自信があるわけじゃない。こんなことを頼めるの、みんなだけなんだ……だから…力を貸してほしい!!」

 

「彼方ちゃんからもお願い!」

 

瑠和と彼方は同好会メンバーに頭を下げた。

 

栞子との一件は必ずしも同好会のメンバーを使わなければ解決できない問題ではない。だが、早期解決には絶対にいてもらった方がいい。早く解決して、二人の平穏な時間を取り戻したいのだ。

 

「ま、話を聞かない限りじゃ何とも言えないけど……ここには断るような子たちはいないと思うわ」

 

「オイオイ、そんな弱腰で彼方ちゃんと一緒にいれんのかよ」

 

「!?」

 

突如背後から声がした。瑠和と彼方が振り返るとそこには良久が立っていた。

 

「お前…現直か!?なんだそのキャラ………それに髪…」

 

瑠和はまだ良久の存在を知らない。二重人格なんて特殊な状態想定できるわけもないので普通に困惑する。おまけに現直はもともと白髪の青年だったがその白髪にところどころ黒い髪が混じっていた。良久が表に出たことによる精神の変化が原因だと思われる。

 

「あ~大切な話って言ってたから私が一応呼んだんだけど…紹介するね。この人は東雲良久君。現直君のもう一つの人格なんだ」

 

「……………は……?」

 

瑠和は目を点にして呆然としている。当然の反応だろう。

 

「うん、そういう反応になるよね。知ってる」

 

歩夢は軽く経緯を説明する。

 

「そんなことが………」

 

「はい、まぁ少しややこしいかも知れませんが良久ともどもよろしくお願いします」

 

いつのまにやら現直が表に出てきている。本当にややこしい。

 

「ところで?人の顔色がうかがえるお兄様にしてはずいぶん弱腰なこって。そんなんじゃ愛しの彼方ちゃんが奪われちまうぞ?」

 

また入れ替わった。

 

「いいんだ。一人で気張るのはもう終わりだ」

 

「へえ………」

 

「ともかく何があったか聞かせて?」

 

瑠和は事情を説明し、栞子を笑わせたい旨を伝えた。栞子が笑わない理由はわからないにせよきっと事情があるのだと瑠和は感じていた。

 

「まぁ、何となく事情は分かりましたけど………なんで今更その栞子さんのことを?」

 

「俺はあの時栞子の事情に顔突っ込めるだけの余裕はなかったし………何より今は

 

瑠和は全員の顔を見て笑う。

 

「みんながいる」

 

どこか一回り成長したような瑠和の表情を見て、果林は小さく笑ってみんなに尋ねる。

 

「良いんじゃない?瑠和には色々世話になってるし」

 

「そうですね!今度は私たちが瑠和さんを助ける番です!」

 

「………ありがとうございます」

 

さっそく三船栞子懐柔作戦が開始された。作戦としては各自持ち寄ったアイデアを栞子に試して本音が引き出せないかというような感じだ。

 

「仲良くなるには一体化が一番!ということで、彼方ちゃん、行きまーす!」

 

彼方は枕を持って栞子に駆け寄る。

 

「栞子ちゃーん」

 

「彼方さん、どうかしましたか?」

 

「一緒にすやぴしない?」

 

「すやぴ………?すいませんすやぴとは何ですか?」

 

「お昼寝のことだよぉ~栞子ちゃん疲れてそうだし」

 

「いえ、睡眠時間は十分に取ってあるので問題ありません。スクールアイドルフェスティバルの仕事もありますので結構です」

 

彼方はそのままの姿勢で瑠和たちの方へぶっ飛んできた。

 

「カナちゃーん!どうしたん!?栞子ちゃんになんかされた!?」

 

「彼方ちゃんのすやぴをあんなまっとうな理由かつはっきりと断れたショックで………なかなか強者だぜ……」

 

彼方は愛の腕の中でガクリと倒れる。

 

「カナちゃーん!」

 

「何やってるんですか……」

 

一番手の彼方はあっさりと倒された。

 

「やはりいつの時代も女の子は白馬の王子様をまっていると思うんです!なので、少々古いかも知れませんがヤンキーに絡まれたところを助けるという場面を作ってみましょう!」

 

二番手、しずくの作戦が開始される。

 

「よぉ、君可愛いねぇ」

 

「今からアタシらと遊ばなぁ~い?」

 

軽い変装をした不良役の良久と愛が栞子に絡みに行く。

 

「いえ、申し訳ありませんが仕事があるので」

 

「そんなこと言わずにさぁ!」

 

「楽しいことしようぜぇ!」

 

栞子の腕を半ば無理やり掴みかかる。

 

「そこまでです!その手を放しなさい!」

 

どこからともなく声がした。声のした方を栞子が見るとそこには高台に立つ変装したしずくが立っていた。

 

「アナタは!?」

 

「通りすがりの正義の味方です!とう!」

 

しずくは高台から飛び降りる。しかし飛ぼうとした瞬間、足を滑らせしずくは空中でバランスを崩した。そしてその足は着地点を間違え、良久の顔面に命中した。

 

「あ」

 

良久は受け身も取れずに後頭部を地面に打ち付け倒れ、しずくは良久の顔を足場としてバランスを取り戻し、華麗に着地した。

 

「リックン!?大丈夫!?」

 

愛が小声で良久の安否を確認したが完全に気絶している。

 

「………さ、さぁここは私に任せてあなたはいってください!」

 

窮地を救ってくれた恩人であれば話をしやすいかと考えられた作戦だったが、良久を放っておく訳にもいかずとりあえず栞子をこの場から離れさせることにした。

 

「あの…あちらの方大丈夫ですか…?」

 

「悪党に向ける慈悲などありません!とにかく!はやく行きなさい!」

 

「はぁ…」

 

栞子がいなくなると、いの一番に歩夢が良久に駆け寄った。

 

「良久く~ん!!」

 

「ごめんなさい!わたしが足を滑らせて…」

 

同じような作戦を再びやればヤラセであることに気づかれるのでしずくの作戦は頓挫した。

 

「じゃあ次はかすみんがいきますよぉ!!!」

 

それから何度か同好会の作戦が繰り返し栞子に仕掛けられたがクールでどこか無感情な感じの栞子には響く者はなく、作戦は失敗続きだった。これと言って成果もあげられずにスクールアイドルフェスティバル3日目も終えてしまう。

 

それでも何かつかめないかと同好会のメンバーは下校中の栞子の後を付けていた。

 

しばらく後をつけていると栞子は急に立ち止まる。

 

「…………あの、なんなんですか?なにやら皆さんに監視されている気がするのですが」

 

栞子は少し下がって同好会メンバーが隠れていた建物の影に向かって話しかけた。

 

「あらら、さすがにバレちゃったか~」

 

彼方が観念して出てくると他のメンツも出てくる。

 

「……何か私に御用でしたら直接言ってくだされば………」

 

「みんなにいろいろ頼んだのは俺だよ」

 

瑠和が同好会を押しのけて前へ出てくる。

 

「ああ、なるほど………相変わらずですね。本当に」

 

「ああ、相変わらずのおせっかいだ」

 

「行き過ぎたおせっかいは反感を買います。あなたに人助けの適性がないとは言いません。ですが、私に対してそれは無用です」

 

「また言ったな」

 

「……何をです?」

 

「その適性って言葉だよ。口癖のように、何かの呪縛のように口に出すそれが、お前の…」

 

刹那、栞子は掌を前に出して制止を促した。

 

「私は今のままでいいんです。あなたのおせっかいは好意として受け取っておきますが、これ以上はやめてください」

 

「栞子…」

 

栞子はそれだけ伝えると去って行ってしまう。瑠和は追おうとしたが果林がその手を止める。

 

「もうやめておきなさい。あなたの手伝いはしたいけど本人が嫌がるなら話は別。やるやらないは本人の自由よ」

 

「………」

 

 

 

続く

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