彼方の近衛   作:瑠和

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今日で連休も終わりですがせめての暇つぶしになればなと。

今回からちょっとした長編に入ります(そんなに長くないです)

これが終わった後まだまだ書くストーリーがあるのが大変。いつ終わるんだこれ。


第十四話 夜想曲♪失われし光

幸せの訪れは突然に。だけど、幸せが崩れる瞬間も突然にやって来る。けたたましく鳴り響くクラクションの音はその崩壊を表している様で。地面に広がる血だまりは日常を全く別の色に塗り替えていくようだった。

 

「瑠和………君…?」

 

視界が歪んでいく。

 

 

 

―数時間前―

 

 

 

「ん~!よしっ!」

 

瑠和がおたふくかぜになってから一週間。瑠和は完全に復活した。体の具合を確認するために適当に身体を動かすが異常はない。異常がないことを確認した瑠和はビシッと指を天に指し、叫ぶ。

 

「復活!」

 

「おめでとう。璃奈ちゃんボード「キラキラ~」」

 

「ありがとうな璃奈。彼方さんもなんだかんだ泊まり込みで面倒見てもらっちゃってすいません」

 

「ううん、大好きな瑠和君のためならどんとこいだよ~」

 

彼方もなんだかんだで泊まり込みで瑠和の看病をしていた。瑠和は大したことはないと言うが彼方は聞かなかった。しかし彼方がいたことで家事も料理も無難に済み、助かったのも事実だった。

 

「さて………復活したことだし…孤高の作曲家様にでも会いに行きますか」

 

ミアといろいろあったことは彼方にも話していた。これから学校に行き、放課後にミアのところへ行って悩みを聞いてあげようというのが瑠和の今のところの目標だ。

 

「そうだねぇ」

 

「………彼方さん」

 

「ん?」

 

「多分これが最後のおせっかいになると思います」

 

「どうして?」

 

「いや、なんかそんな気がするってだけなんですが………これが終わったらたくさんデートしましょう。たくさん一緒にいましょう」

 

「…………うん♪」

 

風が少しずつ寒くなって来る季節。何も言わずとも別れの季節が近づいていくのは誰しもが感じることだ。あまり考えないようにしているが、もしかしたら彼方との別れが来るかもしれない。それを考えてか知らないが瑠和はこれが最後のおせっかいだと言った。

 

「俺もいい加減疲れましたしね」

 

夏休み明け、鐘嵐珠の運んできた嵐のような未来に関わる案件を終え、栞子との過去の因縁にもケリをつけた。そして、ミア・テイラーという今を悩む一人の少女を救うことですべてが終わるような気がした。

 

「じゃあ行きますか」

 

 

 

―放課後―

 

 

 

「よう。この間は悪かったな」

 

放課後、瑠和と彼方はミアに会いに行った。二人が今まさに帰ろうとしていたタイミングで声をかけた。ミアは明らかに嫌そうな顔をしながら軽く流そうとする。

 

「………別に。じゃあ、僕は帰るから」

 

「そういわずに、お話聞かせてよ~」

 

「一人で抱え込むってんだこの大馬鹿野郎!でも頼りになるバカも俺たちくらいしかいねぇんじゃねぇのか!?」

 

「なんだいそのキャラ?」

 

普段はやらないようなキャラで攻めてみるもミアの心は動く様子は見せない。何となく、ミア自身が本当にやりたいことに目を背けているのはわかっていた。だからこそ、少し強引にでもそのミアの本心を聞き出せればよかったのだがそれがなかなかうまくいかない。

 

彼女はもう自分に求められたことにしか力を出していないからだ。それに慣れてしまっているのだ。

 

しかし瑠和と彼方はめげずにミアの後をついていきながら声をかけ続ける。

 

しばらくしてからミアは立ち止まって大きなため息をついた。

 

「はぁぁぁぁ………しつこいね君たちも。僕は今の僕のままでいいんだ。人の生き方にケチつけないでもらえるかな?」

 

「今の生き方でいいってんなら、なんであの日俺のところに来たんだ?」

 

別に瑠和の看病など無理にする必要はないはずだった。それなのに来たというのは彼女にも思うところがあったからというのはわかっていた。

 

「…………それは」

 

「ほんの少しでも、変わりたいって思ったんじゃないのか?」

 

「…………」

 

「あの日は悪かったよ。俺も余裕なくて、気遣う言葉遣いができなかった。だけど、もしもお前がまだ変わりたいって思ってるんなら……勇気を出す時なんじゃないのか?」

 

「………だけど…僕は」

 

「保障なんてないけど、少しくらいはミアちゃんの力になれると思うよ。ちょっとだけ彼方ちゃんたちのこと、信じてもらえない?」

 

彼方がミアの肩を叩いた。

 

あと一押しか。

 

 

 

そう思った刹那、世界の色が変わった。

 

 

 

ミアの顔色が変わったのではない。今その周辺にいる人間の顔色が急に変わった。おまけに同じ方向を向いている上に同じ色だ。そこから導き出される答え。

 

瑠和は考えるよりも先に動いていた。思った通り背後でものすごい爆音がする。何の音だとかそんなこと考えるよりも先に目の前にいる二人を突き飛ばす。瑠和に押された二人はバランスを崩して倒れた。倒れたのは瑠和の方から見ればちょうど曲がり角、つまり音がする方向からすれば死角、影になる場所だ。

 

確証はないがこれで最悪の結末を避けられる。最愛の人を護れた。そう思って瑠和は少しだけ笑う。

 

次の瞬間、瑠和の視界は激しく動き、しばらく空中に飛んだかと思うと地面に叩きつけられる感触を感じた。

 

 

 

―現在―

 

 

 

「…………え?」

 

急に爆音がなったかと思った瞬間、瑠和につき飛ばされたことは覚えている。倒れたと同時に目にしたのは一瞬で瑠和が姿を消した光景。

 

「瑠和………君…?」

 

隣で彼方の動揺した声が聞こえた。彼方の向いてる方を見るとそこには全面がつぶれたトラックと地面に転がったまま動かない瑠和。

 

「なんだよこれ………」

 

立ちあがって辺りを見るとトラックの後方には大破した車が転がっている。トラックか大破した乗用車、どちらかが暴走し、乗用車とぶつかったトラックが止まれず突っ込んできたというところだろうか。

 

「瑠和君………っ!瑠和君!!!!!」

 

しばらく目の前で起きたことに理解出来てなかった彼方はしばらくしてようやく状況を理解し瑠和のところへ駆ける。

 

「だ、大丈夫?大丈……」

 

倒れている瑠和にそっと手を差し伸べる。瑠和が彼方に動かされ、力なくごろりと寝返りを打つように転がった。

 

その瞬間、身体で隠されていた血液が染みだしてくる。その血と自らの掌についた血を見て彼方はどんどん青ざめていく。

 

「え………なにこれ」

 

その様子を遠目で見ていたミアは事の重大さにようやく気付き、息が荒くなる。

 

「きゅ………救急車………呼ばないと………」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

夕方の病院に駆け足の音が響く。連絡を受けた同好会メンバーが駆け付けたのだ。手術室の前には彼方、ミア、璃奈が座っている。

 

「りなりー!」

 

「……愛さん」

 

「るなりんは!?大丈夫なの!?」

 

「………わからない……お医者さんは………出血が多いし……頭も……かなり強く打ってるって」

 

「………っ!!」

 

愛は瑠和や栞子のような特殊な感性は持たないが、かつての自分とどこか似ている璃奈の表情を読むことは得意としていた。璃奈が変わらぬ表情で見せた顔色、見ているこちら側がつらくなってくるような表情をとても見ていられなくなって愛は璃奈を思いっきり抱きしめる。

 

(りなりーがこんな顔するなんて相当じゃん……っ!)

 

「…………大まかな事情は聴いたけど、何があったの?」

 

果林が訪ねた。その言葉にミアはびくりと反応する。

 

「…………」

 

「あのね」

 

「………僕のせいだ…………………」

 

「ミアちゃん?」

 

「ボクがいつまでも割り切らなかったから………彼に気を使わせた……もっとボクが早く素直になっていれば…………」

 

同好会全員から攻められる覚悟を持って話した。いつ怒号が飛んできてもおかしくない状況にミアは肩を震わせている。

 

「………」

 

果林がミアの前に来て肩に触れた。

 

「!」

 

「別に誰もあなたのことを責めたりなんてしないわ。事情を話してくれてありがとう」

 

「………なんでそんなに優しいんだよ」

 

「ここでミアさんをせめてもしょうがないですし」

 

「何より瑠和先輩が一番嫌がりそうなことですよねぇ。かすみん怒られちゃいますよ」

 

ミアは手術室を見た。

 

(…………また………守られた?)

 

それから数時間。同好会は手術の行方を見守る。夜中になって手術室のランプが消えると中から赤い髪の女医が現れた。その女医に彼方が一番に尋ねに行った。

 

「あの!瑠和君は!?」

 

「………ご家族の方?」

 

「え………えと」

 

もしかしたら家族にしか話せない内容もあるかもしれない。だが、彼方は知りたかった。だからそこで家族と名乗ろうかどうか悩む。

 

「私………妹…」

 

そこに助け舟を出すように璃奈が名乗り出た。

 

「そちら方々はご友人?」

 

同好会のメンバーは頷く。

 

「………そう。愛されてるのね、彼。まぁ、結論から言って命に別状はないわ」

 

その言葉に張りつめていた糸が緩むように、場の空気が和むのが分かった。ミアも思わず笑みをこぼすくらいには。

 

「命には。だけどね」

 

「…………え?」

 

 

 

―待合室―

 

 

 

待合室で彼方は顔を抑えて落ち込んでいた。それを慰めるようにエマが寄り添っていた。

 

女医の話によると見た目の割に瑠和の怪我はそこまで大きくなかったらしい。ただ頭を強く打ったことと目に大きな車の破片が入ったことで目に大きな影響が出る可能性があるとのことだった。

 

一応手術で破片は取り除き、治療も行ったとのことだが、視力を失う可能性もあるとのことだった。結果は瑠和が包帯を外すまでわからない。

 

「なんで………こんなことに…」

 

「…………」

 

あともう少しだった。ミアとのことが終わればすべて元通りになっていつも通りの日常が戻ってくるはずだった。それが目の前で打ち砕かれた。

 

 

 

―翌日―

 

 

 

ミア・テイラーはその日、学校を休んだ。元々成績の良い上に本来大学生の彼女にとって学校の成績なんてほぼどうでもいい。というか瑠和に対する罪悪感のような感情から、行ったところで授業なんて身に入るわけがなかった。

 

病院に来て、瑠和のいる病室まで足を運ぶ。

 

「…………」

 

ドアノブに手を伸ばすが、開けるのに少し躊躇が生まれる。

 

決意を固めるのに少し時間をかけていると、ドアが勝手に開く。

 

「ミアちゃん」

 

「璃奈………」

 

ミアの顔を見るなり璃奈は少し視線を逸らした。

 

「………瑠和…に会いに来たんだけど…………いいかな」

 

「…」

 

璃奈は少し間を開けてから小さく頷き、自身は出ていった。璃奈の様子を不思議がりながらも兄があんな目にあったなら当然かと思いながら病室に入っていく。

 

「………誰かいるのか?」

 

病室のベッドには、顔の半分近くを包帯で巻かれた瑠和がいた。視力の有無はまだ確認していないのかとミアは安堵したような心配が増えたような気分になった。

 

「………僕だよ。ミア・テイラーだ」

 

「おお、ミアか。あれ?学校は?」

 

「今日は休んだんだ」

 

「そっか、お前まで怪我したんじゃないかって一瞬不安になっちまった」

 

そう言って瑠和は軽く笑う。瑠和の態度を見てミアは少しだけ安心した。もしかしたら責められるかもしれない。そんな気持ちがどこかにあったのだろう。だが瑠和はいつも通りでミアと二人きりのこの状況でも責め立てたりなんてしない。

 

心配はただの杞憂だと思い、ベッドの隣の椅子に腰かける。

 

「なんだよ、結構元気そうじゃないか」

 

「ん?ああ、執刀してくれたお医者さんの腕が良かったしあんまり派手な怪我でもなかったらしいからな」

 

「そう。まぁ、そこまで元気ならさっさと退院してきなよ。きみが来てないからって嵐珠まだ僕の新曲歌ってないんだから。退院祝いにステージを僕がセッティングしても…」

 

「ああ…………悪い。俺、視力失っちまってさ」

 

ミアの中で血の気の引く音がした気がした。

 

「…………………え」

 

ミアは動揺した。心臓の音が急に早くなっていくのを感じる。さっきの璃奈の表情がフラッシュバックされた。あの表情の意味を理解した瞬間に冷汗が止まらない。

 

「……………なん………え?……君の………」

 

「気にすんな。ミアが悪いわけじゃない。むしろ良かったんだよ」

 

「………………は?What are you saying?」

 

「もう人の顔色伺う生活はおしまいになるんだ。こんなにいいことが他にあるか?」

 

「……………」

 

(そんな軽い問題なわけないだろ………?視力を失うってどれだけ大変なことか……わかって言ってるのか?)

 

心の中で思ったそんな疑問も直接声に出せるわけもない。だって、そんなことをいっても瑠和の視力が戻るわけでもない。

 

「……………」

 

「だから、そんな気にすんなって。これも貴重な経験さ。同好会のみんなの曲はちゃんと聞けるし、何の問題もないって」

 

「………………なにか………………なにか僕に出来ることは」

 

必死に振り絞って出した言葉はそんな言葉しか出てこなかった。ミアは己が情けなく感じた。人から視力を奪っておいて素直に謝ることすらできない自分に憤りすら感じていた。

 

「だからそんなに重く考えるなって。大丈夫だよ何もしなくても」

 

そんなこと言われても重く考えられないわけがない。

 

「……………責任を取るよ」

 

「だからそんなこと…」

 

「ボクの気が済まないんだ!僕はこれから君の目になる!!君が見るはずだった景色をすべて僕が曲として作って見せる!!」

 

「ミア………」

 

「…………ごめん。うるさくした。今日はもう帰るよ」

 

「ミア!」

 

病室を出てミアは速足で病院内を歩いていく。

 

「僕に出来ないはずはない。だって僕はミア・テイラーなんだ…………あのテイラー家の娘なんだから………」

 

「ミアちゃ……」

 

再びすれ違う璃奈にミアは目もくれずに歩いて行った。

 

「…………」

 

 

 

―数時間後―

 

 

 

学校が終わる時間となり、同好会メンバーが押しかけてきた。そして、同じ事実を話すと皆反応はそれぞれだったが大体はミアと似たような反応になった。

 

「……そんな」

 

「視力を失ったって………」

 

「だから、ミアにも言ったけど気にすんなって。俺はこのままでいいんだよ」

 

「……………そっか。お疲れ様瑠和君」

 

皆が動揺を見せている中、彼方はそっと瑠和の頭を撫でた。

 

「これからは彼方ちゃんにどしどし頼ってくれていいからねぇ?なんでも言ってくれていいんだぜぃ?」

 

「彼方さん…………ありがとうございます」

 

自分の考えに賛成してくれた彼方に瑠和は感謝する。今の瑠和が欲しいのは同情でも哀れみでもなく理解者だった。しかし、賛同の言葉の裏に彼方ははかなりの動揺を見せていた。それを栞子は見抜いていたし、栞子以外もなんとなくわかっていた。

 

本当だったら誰よりも動揺を見せていたかっただろう。それでも彼方は瑠和の彼女として、前向きに受け取る努力をしたのだ。

 

「申し訳ありません。そろそろ面会終了の時間です」

 

「あ……はい」

 

「じゃあお兄ちゃん、また明日ね」

 

「ああ。璃奈も気をつけてな」

 

同好会メンバーは病院を出る。病院を出るまでの間、璃奈は一言もしゃべろうとしなかった。皆、ミアと同様兄があんな目にあったのだから当然だろうと思い、下手に声をかけようとはしなかった。

 

「璃奈ちゃん今日は彼方ちゃん家に泊まる?」

 

「………ありがとう。そうする」

 

「じゃありなりー、元気出してね」

 

「ありがとう愛さん」

 

そう言って彼方と璃奈はその場からいなくなる。去っていく璃奈を、嵐珠は訝しみながら見ていた。

 

 

 

―翌日―

 

 

 

翌日の昼休み、果林が昼食にしようとしていた時、スマホにメッセージが来ていた。

 

「……」

 

果林は昼食を持って西棟屋上までやってきた。辺りを軽く見ているとメッセージを送った本人が現れる。

 

「どうしたのよ。二人きりで話したいなんて」

 

「いやぁ、実はちょっと相談があってさぁ」

 

果林にメッセージを送ってこの場所まで呼びつけたのは愛だった。二人はとりあえず昼食を始める。しばらくは無言で食事を勧めていたが、果林が口を開く。

 

「………で、相談ってなんなのよ」

 

「…………りなりーがさ、昨日、ちょっと様子が変だったんだよね」

 

「そりゃ瑠和があんなことになれば普通じゃいられないでしょ」

 

「愛さんも最初それが理由かなって思ったんだけど、今日休み時間のときとか様子見てたんだけどどうにも悲しんでるとかじゃなくて、なんか思い悩んでるっていうか…………少なくとも普通じゃなくてさ。愛さんどうしたらいいんだろうって」

 

愛の言っていることは何となく理解できなくないし、協力してやりたい気持ちもある。しかし、あまりに抽象的過ぎるという問題がある。

 

「それで私に相談?別にいいんだけど、少なくとも事情が分からなきゃなんにも言えないわよ。」

 

「だから事情を聞くための作戦を一緒に考えてくれないかなぁってさぁ…」

 

「やっぱり愛も気にしてたのね」

 

そこに、たまたま通りかかった嵐珠が現れた。

 

「嵐珠」

 

「アタシも璃奈の様子が変だとは思っていたのよ。それで、事情を聞こうと思ってたところ。嵐珠も協力させてくれない?」

 

「……ずいぶん簡単そうに言うけど、何か知ってるの?」

 

「いいえ何も。でも…………なんだか瑠和の様子に違和感があったのよ」

 

「るなりんに?」

 

「ええ。瑠和が妙に明るく感じたのよ。普通失明したってわかったらもっと色々気にすると思わない?」

 

「でも、瑠和の性格からしたら私たちに気を使って明るく振舞うっていうのは当たり前に感じるけれど」

 

「ずっと彼の嘘に踊らせてきた嵐珠がいうんだもの、間違いないって考えてくれていいわ」

 

瑠和がずっと嘘をついてきたのを三週間も見てきたのだ。その嵐珠があの明るい態度は本物だという。

 

「…じゃあともかく璃奈ちゃんに聞きに行きましょうか。とりあえず私だけで行くからあなたたちは何もしないでね」

 

「え?なんで?」

 

「もし璃奈ちゃんに複雑な事情があったら、璃奈ちゃんの拠り所になれるのは愛くらいでしょ?」

 

「………それも、そう……だね」

 

「嵐珠もせっかく仲良くなれたのに璃奈ちゃんに嫌われるのはごめんでしょ?」

 

痛いところを突かれるがそれは事実だ。

 

「う………謝謝果林………」

 

とりあえず今日は話を聞くためにどう果林と璃奈を分断しようと考えていた時、璃奈から今日も瑠和の見舞いに行くから休むという連絡が届く。ちょうどいい連絡だった。とりあえず果林だけで病院に向かい、隙を見て話を聞こうと考えたのだ。

 

 

 

―放課後―

 

 

 

放課後になり、果林は部活を休んで病院に向かった。瑠和の病室にたどり着くと何やら中から楽しそうな声が聞こえた。

 

「…?」

 

ドアを開けた先には楽しそうに話す彼方と瑠和がいた。

 

「はい、あーん………おいしい?」

 

「はい。とっても」

 

彼方の手には手作りとみられるプリンが持たれている。それを食べさせてあげているようだ。果林は小さくため息をついて部屋に入った。

 

「相変わらず見せつけてくれるわね」

 

「果林ちゃん」

 

「果林さん。どうしたんですか?」

 

「アナタの見舞いよ?文句ある?」

 

「いえ、わざわざ来てくださってありがとうございます」

 

果林は本命の璃奈を探して部屋の中を見回したがどこにも姿が見えない。

 

「……………璃奈ちゃんは?」

 

「ああ、さっき出て行っちゃいましたけどなんか用事でも?」

 

「ええ、少しね。私少し探してくるわ」

 

果林はとりあえず璃奈を探しに病室を出る。しかし、果林は少しだけ瑠和と彼方の間の空気に違和感を感じていた。だが、そんなことよりまずは璃奈のことだ。果林は病院内を探し始める。

 

 

 

―十分後―

 

 

 

まぁ、想定通りというか、期待通りというか、病院内で果林は迷子になっていた。もはや瑠和の病室への戻り方もわからない。

 

「困ったわねぇ………」

 

しばらくあてもなくふらふらと彷徨っていると非常階段にたどり着く。そのまま非常階段を辿って上に行こうかと思っていると下へ続く階段の踊り場に見知ったピンク色の頭が見えた。

 

「璃奈ちゃん?」

 

「!……果林さん」

 

「どうしたのこんなところで」

 

「…………………」

 

果林の問いに璃奈は黙ってしまった。果林は愛の言っていた璃奈が思い悩んでいるというのは間違いでないのだと感じた。果林は璃奈の隣に来て一緒に座る。

 

「なにか悩み事?もしよかったらお姉さんが相談に乗りましょうか」

 

「………………果林さんは…………口って堅い?」

 

やはり何か悩みがあったらしい。璃奈に悩みを聞くこと自体、嵐珠と愛との作戦であるので絶対に誰にも言わないとも言えない。しかし、ここで悩みを聞けないことの方が問題だ。

 

「………ええ」

 

とりあえず果林は誰にも話さないことを約束する。仮に破ったとしても恨まれるの自分だけだと思いながら。

 

「……………実は…」

 

しばらく考えてから璃奈は悩みを打ち明けた。そして果林は衝撃の事実を璃奈から聞かされることになる。

 

 

 

続く




今回は設定のお話でも。
二期に入ってから決めていたのは瑠和をストーリーにかませるために嵐珠が惚れた設定と彼方と瑠和が同棲する設定だけでした。なんだかんだいい流れに持ってこれたかなと思います。ちなみに嵐珠が惚れているって設定はこの先使わなきゃなので嵐珠加入後も続くようにしました。(どうなるかはお楽しみに)

設定といえば第五話「揺れる関係」での果林が言った「ふーん………ならあなた、私を手伝いなさい」ってセリフ、果林さんが自分の頭の中で言ったセリフですw。

本当に前触れなく頭の中の果林さんが言って、それまでこの先どうしようか悩んでいたんですが、果林の手伝いということならいい感じに関われるのではと思いそこから一気に話が進みました。ありがとう、果林さん。
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