さてこちらのストーリーも最終章開幕です。とはいえ、ここからは割とアニメ通りに話は進みますが、ちょっとした変化があります。
栞子、誕生日おめでとう。はじめはそこまで推してなかったけどアニメで栞子会見た時からずっと推しだよ。八重歯可愛いね。
知りたいって思った。あの人のことを。そうすればきっと、わたしもなにか変われるような気がして。本当の想いは知っていた。だけど、大好きだからもっと知りたかった。
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「ふぁぁ………」
「大丈夫ですか?彼方さん」
この日、彼方と瑠和はいつも通り一緒にお昼ご飯を食べ、残った時間は彼方のスヤピの時間になるはずだった。二人はいつものお昼寝スポットに移動する。
「いやぁ、最近は彼方ちゃん瑠和君の優しい呼び声でないと起きれないぜぃ」
「はは、大げさな」
「本当だよぉ?彼方ちゃんを瑠和君なしじゃ生きれなくしたのは瑠和君自身だもーん。責任とってよね~」
「願ったりかなったりですが……ん?」
夫婦漫才のような会話をしながらお昼寝スポットにたどり着くと、そこには先客がいた。
「………すやぁ……」
しかも寝ている。
「珍しいねぇこんなところに先客なんて」
「そうですね……一年生か。具合が悪いとかじゃなさそうだし放っておいて……」
瑠和がリボンの色を見て学年を確認していると、眠っていた少女が目を覚ます。
「………?」
「あ、起きた」
「…っ!」
刹那、瑠和の顔面に少女の膝がめり込んだ。瑠和は鼻血を吹き出しながら後方へ吹っ飛ぶ。少女は顔を真っ赤にして胸のあたりを抑えた。
「わ、私が寝てる間に何をしたんですかァ!!」
「ち、違うよ!あなたが具合が悪くて倒れてるわけじゃないかどうか見てただけで……」
瑠和を抱き抱えながら彼方が弁解する。まだ何か言ってくるような雰囲気だったが、少女は彼方の顔を見ると少しずつ険しかった表情が緩くなっていく。
「………………ひょっとして、近江彼方……さん?」
「え?う、うん……」
「わぁぁぁぁぁぁ!!!本物だぁぁぁぁ!!」
少女は彼方に抱き着いた。妙にオーバーなリアクションに彼方は驚く。
「ってことはそっちの変質者ってひょっとして天王寺瑠和?」
しばらく彼方に抱き着いていたが、少し考えて自分が蹴り飛ばした相手のことに気づく。そして、瑠和の顔を見て思いっきり嫌な顔をした。
「好き勝手言ってくださんな………その通りだよ。あーいてェ」
「………彼方……さん、こんな男放っておいて私と一緒にお昼寝しませんか!?」
少女は彼方のファンなのだろうと彼方は思った。他の学校や一般のファンの間では認知率は低いが虹ヶ咲学園の中では瑠和が彼方の恋人であることは有名だ。二人を祝福するものもいるが、不満を買われることもある。
彼女はその不満を持つ者の一部なのだろうと彼方は考えた。
「うーん、お誘い嬉しいけど彼方ちゃん瑠和君のそばで寝たいなぁ」
「……はぁ、ダメか。まぁ彼方さんがこの男愛してるのは知ってますし………またの機会にします」
少女はふてくされて去って行ってしまった。
「なんだ今の……」
「さぁ………破天荒な子だったねぇ」
「なんか誰かに似てなくないような気がするんだけどなぁ……」
とはいえもう会うこともないだろうと瑠和も彼方もその少女を気にすることはなかった。
―放課後―
「初めまして」
再会のときは思ったより早かった。それは、嵐珠、栞子、ミアを改めて同好会の仲間として迎え入れる会の最中に起きた。昼に瑠和たちが出会った少女が同好会を訪ねてきたのだ。
「え?」
「虹ヶ咲学園一年の………学年以外はヒミツ!虹乃アスカです!!スクールアイドルにならせてください!」
茶髪でウェーブのある髪を肩より少し長く伸ばし、編み込みをリボンで結んだハーフアップ、左目は長い前髪で隠れているが綺麗な紅い眼、まぁまぁ凹凸のある身体つきの少女はスクールアイドル同好会への入部を希望してきた。
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」
瑠和と彼方は席を立ちあがって驚く。
「瑠和さん彼方さんお知合いですか!?」
「知り合いって程でもないけど…」
「なんで急に…」
「なんですか?私がスクールアイドルになったら悪いわけ?」
「いやそうじゃねぇけど」
「まぁなにがあったかは知らないけど、同好会は拒む理由はないよ。じゃあミアちゃん、栞子ちゃん、嵐珠ちゃん、そしてアスカちゃん!ようこそ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会へ!!」
侑は急に現れたアスカを快く受け入れた。それはもちろん同好会全体も同じ気持ちだ。急遽入部してきたアスカを含めとりあえず計画していた歓迎会を始めた。
「なんだか話題を持っていかれてしまいましたね」
「まぁいいんじゃない?」
「ええ、嵐珠もにぎやかなのは好きよ」
部員に次々と迫るアスカを見ながら新入り三人組は話していた。
「いやぁ、電撃加入を認めていただきありがとうございます。あの!歩夢さん!上原歩夢さんですよね!」
アスカは歩夢に迫り寄る。
「う、うん」
「うわー!すごいすごーい!本物だァ!かわいいです!!かわいいっていうか、愛らしい!お団子ヘアー触っていいですか!?」
「え?ええ?」
興奮しながら迫られ、歩夢が嬉しそうに困っている。
「可愛いと言えばかすみんも負けてませんよ!」
そんな騒がしい様子を見ながら瑠和はふと、せつ菜が難しい顔をしていることに気づく。
「どうしたせつ菜」
「いえ………私の記憶が正しければ、「虹乃アスカ」って名前は聞いたことがないような気がしまして」
せつ菜はこの学校のすべての生徒の顔と学年学科を覚えている。しかし、そのせつ菜が見たことないというのだ。
「………確かに、さっきから同好会のメンバーに対する反応はまるで他校の生徒だ」
同好会のファンの中には、直接関わらず遠くから見つめるタイプのファンもいる。しかし、彼女の性格を考えるにそれはあり得なさそうだ。なぜファンなら今までこれまで近づこうとしなかったのか?それが疑問だ。
「ですが、彼女の来ている制服は間違いなく虹ヶ咲学園のモノです……いったい何者なんでしょう…」
「ん?私の正体が気になる感じですか?」
いつのまにやらせつ菜の背後にアスカがいた。制服のシャツに果林のサインをもらい、エマのクッキーを齧っている。
「わぁぁぁぁぁ!アスカさん!」
「ずいぶん楽しんでんな」
「ええ。愛さんにあだ名を頂きましたし、しずくさんと即興劇もやってきました!アスカちゃんボードも璃奈さんに書いてもらいました。アナタにはなんの用もありませんが」
「へーへー」
なぜか瑠和に対して妙に冷たいがかなり同好会を満喫している様だ。
「彼方さんとは一緒にお昼寝したいですねぇ」
瑠和の膝枕で横になる彼方に聞く。
「彼方ちゃんはいつでも大歓迎だぜぃ」
彼方と一緒に眠る約束を取り付け、アスカは一旦話を戻す。
「生徒会長様は全校生徒の顔と名前覚えてるのですよね。私を見たことないって思ったんでしょう?でも、中川菜々が優木せつ菜になるのがありなら、誰かが虹乃アスカになるのもいいんじゃない?」
その言葉にせつ菜は少し驚いた。自分以外に正体を隠し、偽名でスクールアイドルをやる人間が現れるとは思ってもみなかったのだ。
「え……」
「ふふん!表面は見せられないですけどちゃんと学生証だってあるんですから!」
そう言ってアスカは学生証の裏面を見せた。どうやら正体を明かしたくはないようだ。
「まぁ……ちゃんとこの学校の学生っていうんなら……いい………か?」
「そうですね。すいません疑うようなことを」
「いえ、こうなるだろうと思ってました。ですが、怪しいものではないのでご安心を」
アスカはにっこりと笑ってせつ菜に握手を求めた。
「はい、よろしくお願いします!あ、そういえば部員として正式に認めるためには入部届が必要になりますが……」
「そこは虹乃アスカでよろしくお願いします。あなたも一度はそれで登録していたのでしょう?優木せつ菜さん?」
すこし挑発気味にアスカは言った。
「あはは、ではそれで」
「ご心配なさらずともちゃんと用意がありますよ」
そう言ってアスカは入部届を懐から取り出した。それを見て思い出したように栞子が席を立った。
「ああ、そういえば忘れていました。私としたことが、入部届の提出を」
同じく入部届を取り出し、栞子はせつ菜の前に来た。
「では部長、入部届を提出したいのですが」
「ああ、いえ、私は部長じゃないですよ?」
「あ、失礼しました。では……」
すぐ隣にいた瑠和に入部届を差し出すが、瑠和は無言で首を横に振る。栞子は首を傾げつつ別のところへ行く。今度は侑の前だ。
「侑さん、こちらをよろしくお願いします」
「ああ、部長は私じゃなくて……」
「ん、んん!!」
そこで少し離れた席に座っていたかすみがわざとらしく咳ばらいをする。
「この同好会の部長は、この中で一番人気があって、実力があって、飛び切りかわいい子ですよ!!」
「え?ランジュ?」
「なわけないだろ!」
嵐珠が天然ボケをかまし、それにミアが突っ込んだ。
「あの、実力と人気なら皆さんお持ちですが………」
大げさにポーズを取りながら自身が部長であることを示唆しようとしたとき、いつのまにやら背後に回っていたアスカがかすみを包み込むように抱きしめる。
「部長は中須かすみさん。いいえ、かすみんさんですよねぇ」
耳元で囁くように言いながらアスカは入部届をかすみの目の前に差し出す。かすみは同い年とは思えない色気と何かいけない空気に圧倒され、アスカにもたれかかる。
「ひぁぁぁぁ……」
「あら、腰が抜けちゃいましたか?」
くすくすと笑いながらかすみを椅子に座らせる。
「ま、まぁ?部長をかすみんだとわかってる上にちゃんとかすみん呼びしてくれるのは好感度が高くてよろしいですけど?」
「うれしいです♪」
かすみが同好会の部長であることはあまり知られていない。一応自己紹介の動画で伝えてあるから知ってるファンは少なくないのだが一年生であることや生徒会長が同好会にいることからそちらが部長というイメージが強いのだ。
それでも愛のあだ名や璃奈のボード、主に内部でしか知られていないことを良く知っているなと瑠和はなんとなく思った。
その後、かすみは周りにいじられつつ急に合宿を提案した。まぁ合宿というよりただのお泊り会なのだが。
―放課後―
「いやぁなんだかすごい子が入ってきたねぇ」
「そうですねぇ。妙に俺に冷たいのが気になりますが」
放課後、瑠和と彼方は夕飯の材料を買うために東雲のスーパーまで来ていた。こうやって二人で買い物をするのももう日常茶飯事だ。
「そうだねぇ………ん?」
スーパーに入ろうとしたとき、彼方が足を止める。
「どうしました?」
「あれ……」
指さした先にはたった今話題にしていたアスカが座り込んでいるのが見えた。
アスカは妙に暗い顔で手のひらに乗せた何かを見つめて大きなため息をついている。
「どうしましょう…」
「何やってんだ」
「な、天王寺瑠和!……と彼方さん」
予想外の人物の登場にアスカは飛びのく。
「元気なさそうだよ?どうしたの?」
「いえ、これは………その……」
慌てて手に持っていたものを後ろに隠そうとしたが、勢い余って隠そうとしたものが手から滑り落ちる。
「あ!!」
チャリンチャリンと音を立てて落ちて行ったのは小銭だ。アスカは慌てて落ちた小銭を拾い集める。
「小銭?なんでこんなもん……」
「あ、アナタには関係な……」
その時、アスカのお腹が大きな音を鳴らした。アスカは顔を真っ赤にして押さえるが。お腹はさらに大きな音を鳴らす。放課後の寒空の下こんなところで座り込んでいる、手には数百円程度の小銭、空腹。これからから導き出される答え。
「………お前まさか」
「………」
アスカは悔しそうな顔をしつつも自分の状況を話した。
―近江家―
「家出ぇぇぇぇぇ!!!??」
アスカはとりあえず近江家に連れてこられていた。アスカは親と喧嘩し、家出をしてきたという。もう家出して何日も経っており、なんとかいままでは手持ちのお金をやりくりしてきたというがもうそれも限界だったらしい。
家出したと言うアスカの経緯を聞き、驚いたのは遥だ。
「なんで喧嘩しちゃったの?」
璃奈が尋ねてみる。
「…父が、私のことをいいえ、家族をないがしろにしてるんです。母はちゃんと家族を愛してくれてるって言って甘やかすし。文化祭にも来てくれるって言ったのに急に仕事で…それで……喧嘩してつい飛び出してきてしまいまして」
どこかできいたような話だ。瑠和は自然と目を逸らしてしまう。
「ふーん?じゃあ人生の先輩が助けになってくれるかもねぇ。ねぇ瑠和君」
瑠和の態度を見ていた彼方はにんまりと笑って言った。同じような経験のある上にいままで多くの人間の荷物を一緒に背負ってきた瑠和は背相談役にはある意味適任だ。
「彼方さん!?」
「どういう意味ですか?」
アスカは瑠和に対して妙に嫌悪感を示す。理由はわからないがそんな彼女にしてやれることはないと瑠和は思っていた。
「………何でもない。でも事情は分かったよ。だけどきっと家族も心配してる。家に帰った方がいい。日常に戻れるなら」
短い言葉だ。だけどそこに乗せられた想いは大きいものだと瑠和の表情を見ればすぐにわかることだった。数年間家族をないがしろにしてきた。それがどういう結果をもたらすのかも、瑠和は理解している。
「………きっと早い方がいい」
瑠和の表情を見て、それがどれほどの想いでそれを言ったのかはがあるのかはすぐにわかったのだろう。アスカは少し考えるが、すぐに首を横に振った。
「…………ダメです!帰れません!私は!スクールアイドルでやることがあるんです!それが終わるまで帰れません!!」
「…」
(普通、娘が家出したんならもっと、学校で何か知らないものなのか?いや、そのための偽名か?だがなぜスクールアイドルなんだ………?)
様々な思考が頭をよぎる。だが、目の前の少女の今口に出した思いは本物であるような気がした。色の見えない瑠和にとってすべては予想の範囲を出ない。
「……まぁ、時には逃げることも必要かもな」
「え?」
瑠和もしばらく家族と離れたからこそ家族の大切さも知ったといってもいい。だからある意味アスカの行動も完全に否定できるわけるものでもない。
「俺がお前にしてやれんのは、せいぜい寝床を与えてやることくらいだ」
「瑠和君?」
「俺は今彼方さんと同棲しててな。親は今出張中。つまり家が丸々一部屋空いてるんだ」
「そんな………いくら何でもそれは…」
「もし、遠慮や良心なんてもので家出を諦めるならお前の意思もその程度だったってことだ。その程度で辞めるんならさっさと家に帰れ」
「…っ!」
「いくら他人とは言えもう同じ部活の仲間だ。ろくに金も寝床もないお前を寒空の下ほっぽりだすなんてことも俺はしないしできない。だから選べ」
瑠和の目は本気だ。
「………わかりました、やってやります。私の意思が本気だってこと!まずはアナタに証明してみせます!!」
アスカは大きく啖呵を切った。
「わかった」
―天王寺家―
「って!あなたまで一緒とは聞いてないんですけど!!」
天王寺家に来たはいいが、それには瑠和と彼方が同伴した。
「そりゃお前一応俺の親の家だしな。虹ヶ咲学園の生徒って意外素性の知らない、何なら見ず知らずの人間に家を好き勝手使わせるわけにはいかんだろ。貴重品とかもあるしな」
「彼方ちゃんは瑠和君と一緒ならどこでもいいよ~」
そして、同棲が始まってから入院等をしてあまり一緒にいられなかったという理由で彼方もついて来たのだ。
「………まぁ、寝床もないのは事実ですし…わかりました」
見ず知らずの少女、そして瑠和と彼方の奇妙な同棲生活が始まった。それは運命のいたずらか、必然か、それはまだこの時の二人にはわからなかった。
続く
でも彼方さんがいるんだ。