ちなみに、私小説って基本バトルものばっかで、普通の恋愛小説って割とこの作品が初めてだったりします。
なので今回は今まで書いてきた小説の味が出てる部分があります。悪しからず。
電車から見える景色は徐々に変化していく。どの町にもそれぞれの特色のようなものがある。同じように見えてどこか違う。実際に見て聞かなければわからないけど、そういうのはきっとあるのだ。それは、自分のそばにいる人間もそうなのだろうか。
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果林はアスカを見て感じていたことを念のため瑠和と彼方に伝えておいた。
「本当は誰のことを知りたいのか………か。瑠和君はどう思う?」
「………ずっとあいつの態度を見てきて少し違和感を感じていました。だけど、敵意というか、悪意みたいなものは感じなくて、何かに満足していない…………あいつの助けになれるなら何かしてやりたいですけど。今は彼方さんのそばにいることが優先です」
「そんなこと言ってまたいなくならない?」
「大丈夫ですよ。もう俺がいなくてもこの同好会は誰かが倒れれば誰かが支える。そうやってぐるぐると思いが渦を巻いていっている……あとは後輩に託します」
彼方はそれを聞いて少し安心する。瑠和を自身の膝に倒し、いいこいいこと頭を撫でた。瑠和がずっと求めていた温かさだ。そんな光景をアスカは前の座席のシートの隙間から左眼で眺めていた。
「愛情……友情……温もり……信頼……劣情…」
「アスカさん?」
そこに栞子がやってくる。アスカは慌てて振り返り、いつも通りの笑顔を見せた。
「栞子さん、どうしたんですか?」
「いえ、変な姿勢をされていたので、ひょっとして具合でも悪いのかと……」
「うふふ、まさかァ。とっても楽しいですよ。家のことも忘れられるくらい」
その言葉を聞いて栞子は少し申し訳なさそうな表情をする。
「………ご家族と喧嘩をなされたって聞きました…。その、大丈夫ですか?」
「……………大丈夫ではないですね。ですが、何とかしてみせます。そのために、私は……」
「…」
(この方から嘘の色はみえません……しかし何なのでしょう。妙な違和感………嘘は言ってないけど真実も言っていないような)
「でェ、栞子さんって昔瑠和さんとお付き合いしていたんですよね?それってなんでなんですか?」
急にアスカは態度を豹変させ、栞子にぐっと顔を近づけてきた。栞子は少しビビりながらも瑠和との経緯を思い出す。
「そうですね………告白してきたのは瑠和さんですが、私は……………瑠和さんを慰めたかった」
「慰めたかった?」
「後々にわかったことですが、瑠和さんは本当は家族のことを愛していた。だけど思春期特有のプライドとか何とかでそれを表に出せなかった。ずっと、ずっと本心を抑えて生きてきた。私の中に妹の面影を見つけた瑠和さんが告白してきたんです」
「………それで?」
「瑠和さんを救いたいって思いました。そのころ既に彼はボロボロでしたから。だから、せめて彼の支えになれるように彼のそばにいた。卒業するとき、少しでも家族に勇気を持てるように休ませてから厳しく送り出したんです。そうすることに私が適正を持ってるって思ったから」
「家族のことって?」
栞子の話の中に不可解な部分があった。アスカはそれについて尋ねる。
「え?ああ、瑠和さんはご両親が忙しくてあまりかまってもらえなかったことで一時期ご両親に反抗していた時期があったんです。ですが瑠和さんは置き去りにした璃奈さんに負い目を感じていたんです」
「…………それってつまり、瑠和さんは両親にないがしろにされた経験があるってことですか?」
「え?はい、今はスクールアイドルを通じて和解したと伺ってますが………?」
刹那、妙な色が栞子の視界を覆う。その発生源は間違いなく目の前にいるアスカからだ。視界を覆うのは怒りの色。だがただの怒りの色ではない。色を見ているだけのこちらが恐れそうなほど強く、濃いものだった。
「……っ!」
怖気づいた栞子がアスカの手に着目した。アスカの手は力強く握られている。今の会話の中になぜ怒りを露わにする必要があるのか。栞子にはわからなかった。
「………どうしてっ!」
「アスカさん……?」
「…え?ああ、どうかしました?」
アスカは笑顔で栞子を見た。
「………いえ…」
電車はそのまま鎌倉へ向かい、そこからしずくの案内で桜坂家にたどり着いた。外観から見て既に豪華な家は中に入ると外観以上に豪華な装いで瑠和たちを迎える。
「すごいですね」
「うん、さすがしずくちゃんの家って感じ」
とりあえず到着し、荷物を降ろしたアスカがしずくの近くへ行く。
「ふぅ、すいませんお手洗いお借りしますね」
「はい、どうぞ」
アスカはトイレへ向かった。
少ししてアスカが戻ってくると夕食の準備が始まった。夕食は桜坂家が用意してくれたものだ。手巻きずしにてんぷらなど豪勢なメニューに皆で舌鼓を打った。
食事を終えると次のかすみの企画であるゲーム大会が始まり、結果はかすみの大敗という形で幕を閉じたが皆で大いに盛り上がれた。
それも終わるとあとは寝るための準備に移行する。
各学年ごとに風呂を済ませ、瑠和は最後に湯船に入った。
「ふぃ~さすがに疲れたぜ。しかしまぁ、風呂まででけぇな」
湯船に浸かり、今日の疲れを癒やしながら瑠和は風呂の中を観察する。桜坂家のすごさがお湯を通じて骨身に染み渡らせていたせいか、風呂場の扉が開かれたことに気づくのに、瑠和は数瞬遅れた。
「!?」
この家には今瑠和以外に男性はいない。誰かが間違えて入ってきたのかと思い慌てて肩まで湯船に浸かる。
「だ、誰ですか!?今俺が…」
「うん、知ってるよ」
風呂場の入り口に現れたのは、彼方だった。
「彼方さん!?」
「しーっ。みんなに気づかれちゃうよ」
「ちょ、俺が入ってますって!」
瑠和は顔を真っ赤にしながら慌てて視線を反らして彼方を見ないようにする。
「大丈夫だよ。ほら」
彼方は優しく瑠和の顔を自身の方に向かせる。瑠和が薄目でそちらを見ると、彼方は何やら下着のようなものをつけている様子だった。
「それは………」
「水着だよ。前にも見たじゃん」
「……なんで…」
「ほら、前にみんなでプール入ったときは瑠和君果林ちゃんばっかり見てて彼方ちゃん見てくれないんだもん。だからぁ………今度は、ちゃんと見て欲しいな」
彼方は瑠和の前に立ち、照れ臭そうに身体を見せる。
「どう……かな?」
水着というのは不思議なもので、デザインは可愛らしいのだが、いざ着て見れば妖艶さと可憐さを生み出す。着るものによってそれは変わっていくが彼方は正しく今可愛らしさと美しさを両立させていた。
「………彼方さんの」
瑠和はタオルを腰に巻いて湯船から上がる。そして、彼方の身体に触れた。
(足………お腹………肩……首元…)
太もも辺りから触れた手をなぞらせるように上へ上へと動かしていく。そして、首元に到達すると瑠和は跪き、彼方のお腹に顔をうずめるように抱きしめる。
「こんなに綺麗で、ずっと見つめていたいくらいの美しさなのに………俺は何してたんでしょうかね」
「今から存分に味合えばいいんだよ~。あ、お背中流しましょうか?」
「………頼みます」
瑠和はシャワーの前に座り、彼方にすべて任せる。彼方はあかすりに石鹸を染み渡らせて瑠和の背中をこすり始める。
「………かゆいところはございませんか~」
「大丈夫です。気持ちいいです」
頼りがいがあって、信頼のある人間だが瑠和もただの高校生だ。洗い始めた背中は不思議と小さく見えた。いや、背負っていたものが大きすぎて自然と大きい背中と勘違いしてしまったのかもしれない。一通り洗い終えた彼方は瑠和を後ろから抱きしめた。
「彼方さん!?」
「お疲れ様……よく頑張ったねぇ」
「……」
その言葉の意味は聞かずともなんとなくわかった気がした。
身体を洗い終えると彼方は瑠和を抱えるようにして二人で湯船に浸かる。
「アスカ………大丈夫でしょうか」
「みんなのこと、信じるんでしょ?」
「まぁ、性分には合いませんが」
「おせっかいさんだもんねぇ」
二人のゆっくりした会話は続いていく。その声を脱衣所より先の入り口できいている人物がいた。アスカだ。
そこにせつ菜が通りがかる。
「ん?アスカさん」
「せつ菜さん」
「そんなところで何を?」
「バカップルの会話が聞こえてきたので、少し立ち聞きしてました」
「え!?ひょっとして瑠和さんのお風呂に彼方さんも入ってます!?」
「みたいです。水着着てみたいですけどね。注意しなくていいんですか?生徒会長」
最初は瑠和の風呂に一緒に彼方が入ってると聞いて顔を真っ赤にしていたせつ菜だが、少し考えてから笑う。
「今回は特別に認めましょう。瑠和さんには私もお世話になりましたし、何より、あの二人が幸せに過ごせるってことがどれほど大変な道の末だったかを私は知っています」
せつ菜はそう言って風呂場の前から去ろうとする。しかし、去り際に思い出したようにアスカの方を向く。
「それに、今の私は生徒会長の中川菜々ではなくスクールアイドルの優木せつ菜ですから。注意は少しはばかられます。ですから、アナタも虹乃アスカとして、別の自分の悩みに縛られずに今を楽しんでみたらいかがでしょう?」
「……」
―就寝時間―
就寝時間になると大広間で全員で眠ることになる。瑠和は廊下で眠ろうとしたが両サイドに彼方と璃奈が入るということで彼方が引き留め、しぶしぶ了承した。
まぁ、両サイドというか瑠和と彼方は完全に一緒の布団なのだが。同好会ももう、この光景に慣れたものだ。
全員が就寝し、寝息を立てる中アスカは瑠和と彼方の寝顔を眺めながらさっきせつ菜にいわれた言葉を思い出した。
「………今を楽しむために………私がすべきこと」
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―翌日―
翌日開催されたのは璃奈開発のアプリゲームニジガクGOを使った遊びだった。鎌倉の街の中に出現するデジタル猫をゲットするのが目的だ。
「猫の数は全部で14匹。基本的には13匹だけど、一匹シークレットでなかなか出現しないのがいる」
「優勝したら景品とかあるの?」
「え?いやぁそこまでは考えてませんでしたけど……」
「じゃあ、優勝した人のお願いを、みんなで叶えてあげるっていうのはどうかな?」
彼方の提案に皆が賛成する。そんな様子を微笑みながら眺めていた彼方はそっと瑠和と組み、妖しい上目遣いで瑠和を見る。
「彼方ちゃんは~誰に何をお願いしようかなぁ?」
「優勝なんてしなくても、彼方さんの願いなら何でも叶えますよ?」
「それがみんなの前で言えないことでも?」
彼方は瑠和の耳元でささやいた。
「!?」
瑠和は驚き少し顔を離す。そして、赤くした顔で
「………それは……その………ちゃんとしたタイミングで…だから、その…」
「冗談だよ~」
彼方は笑うがどこまで本気だったかはわからない。そんなこんなで探索が始まる。
瑠和と彼方は当然一緒に出発しようとしたがそんな二人の前にアスカが現れた。
「アスカ?」
「まぁそうなるだろうとは思ってました。でも、ちょっとだけ借りますよ」
そう言ってが笑った直後、アスカは懐中電灯のようなものの先端を二人に向けた。せつ菜ただの懐中電灯と思われたものから通常ではありえないほどの光が二人の顔面に照射される。
「!!?」
二人は一瞬、目を潰された。怯んだ隙にアスカは瑠和を抱えてその場から一気に立ち去っていく。
「瑠和さんは借りていきますよ!!」
「ええ!?」
一瞬の出来事だった。彼方が目をこすりながら必死に視力を回復させようとしてるあいだにアスカは既に豆粒のように見えるほど遠くへ走って行ってしまった。
さすがは愛と同等以上の実力を持つアスカという感じだった。瑠和もすぐには視力が回復せず無用な怪我をしない様に抵抗はしなかった。
しばらくアスカは走り、適当に一目につかなそうな場所で瑠和をおろす。まだ目の前が少しちかちかする瑠和は目を抑えながら立ち上がる。
「大丈夫ですか?護身用の懐中電灯を改造したものだったんですが」
「俺はいい。彼方さんに後で謝れ」
「…………はぁ、イライラするほど一途ですね」
「ん?なんか言ったか?」
「いえ………さて、アナタをわざわざ彼方さんと離してこんなところに連れてきたのはなぜでしょう?」
「さぁな。また新しい嫌がら……」
刹那、アスカは瑠和の唇を奪った。
「……え?」
「こういうことです」
瑠和が理解できずに戸惑っているとアスカは瑠和を壁に追いやり、自身の身体を押し付ける。
「ねぇ瑠和さん。わたし、ようやく気が付いたんです。あなたが好きだって」
突拍子もないことを言い出すアスカに瑠和も混乱する。
「はぁぁ!?何言って」
「本気です……ねぇ、私をアナタのそばに置いてくださらない?あなたが望むなら………私はなんだってしますよ?」
アスカは服のジッパーを少しずつ下ろしていく。走って火照っている身体はより煽情的に瑠和の視界に迫る。
「無理だ!わかってるだろ!?俺には彼方さんが…」
「私はアナタのそばにいられればそれでいいんです。だから恋人でなくて構いません…………愛人でも、使い捨てでも、都合のいい女でも………ねェ?私のお願い聞いてくださらない?」
アスカの顔が吐息のかかる位置まで近づく。瑠和は自身の胸の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じていた。アスカは妖しく微笑んで耳元でささやく。
「瑠和さんも、いつまでも添い寝止まりじゃ欲求不満でしょう?」
確かにそれはある。瑠和も健全な男子なので真横に無防備な女性がいることに対して何も感じていないわけではない。アスカが足も絡ませてくる。さっきよりも心臓の鼓動が早くなっていく。それは欲情という感情も無論あるが、それ以上に瑠和の中にアスカに対してもう一つ感じているものがあった。
それは、恐怖だった。
あれほど毛嫌いしていた瑠和に対して今度は急に自分は好きにしてもいいから側においてくれなんて行ってくる。それに対して恐怖を感じない方がおかしい。いくら照れ隠しと言ったって無理がある。初対面の時からアスカの目的が分からず瑠和は恐怖していた。
「だ…ダメだ!」
瑠和はアスカを引き離す。
「もし俺に好意を抱いてくれてるならそれはありがたいことだが!それはだめだ!お前自身によくないしなにより……………やっぱり俺は彼方さんの側にいたいから…」
「………」
真剣に伝えた。大人しくなったことで願いを聴いてくれたかと瑠和は思った。
「どうして…っ!!」
瑠和の顔の真横で「ボッ」という破裂音のような音が聞こえた。それはアスカの拳が瑠和の顔の横を通り抜けた音だった。瑠和の後ろにあった壁がアスカの拳でひび割れたことに気づき、瑠和は慌てて移動する。
「あぶねっ!」
「どうしてェ!!!!」
瑠和を追う様に次々とアスカは蹴りを繰り出す。空気を割くほどの速度で放たれた拳と蹴りを食らえばただでは済まないことは目に見えている。瑠和は紙一重で何とかアスカの猛攻を回避する。
「アナタが女に弱いってことならせめて!許せなくとも納得は出来たのに!!!なんで!!あなたはそんなにも!!」
アスカは意味不明な文言を叫びながら瑠和を追い込んでいく。
「落ち着け!」
「どうしてェ!!!!」
刹那、アスカの瞳にはいっぱいの涙が溜まっているのが見えた。アスカの涙を見た瑠和は一瞬動きが止まってしまう。その隙をアスカは見逃さなかった。
瑠和のみぞおちに強力な蹴りが決まる。
「っっっっ!!!」
瑠和の腹部からミシミシと嫌な音が鳴り、瑠和は一気に後方に吹き飛ばされた。
「ぐえぇ……げほっ!!ごほっ!」
「……………」
腹を抑えながら悶絶する瑠和をアスカは息を切らしながら眺める。一撃きまったことでアスカは少しだけ冷静になる。この後どうするか少し考えていると瑠和の携帯が鳴っていることに気づく。
瑠和はむせながらも携帯をとる。電話の相手はしずくだった。
「もしもし……」
『もしもし瑠和さん!?大変なんです!彼方さんが!!』
「彼方さんが!?」
瑠和は痛む腹部を抑えすぐさま立ち上がった。しかし、痛みが思ったより強く、瑠和は壁にもたれかかる。今であればすぐにでも殴り倒せる状況だ。アスカは少しずつ歩を進める。
「…………俺の何がアスカの気に触れたかは知らない………もし俺が何かしてしまったなら贖罪はする。だけど、今は」
「………瑠和?それにアスカちゃん?」
そこにたまたま果林が通りかかった。人などあまり通らないような裏路地だったが、猫を探しているうちにいつの間にやら迷い込んでいたのだ。
アスカは少し焦る。今ここでアスカの行いを果林に報告されればアスカの居場所がなくなる。いや、今ここでバレずともいずれはバレる可能性があった。しかし、ここで瑠和を言うことを聞かせられるくらいに潰しておけばバレる可能性も少なかった方だ。
「どうしたのこんなところで」
「いえ………その……」
「はは、アスカにまた振り回されただけです。俺は彼方さんのところに戻りますんで、アスカのことよろしくお願いします」
瑠和は果林の肩を叩き、その場を足早に去っていった。
「………で、何かあったの?」
「…お見通しですか」
「どっちかっていうとあの子の嘘がへたくそなだけよ」
「………………私は……知りたかった。知りたかったんです。………ん?いや違うか……信じたくなかった」
アスカは軽く頭を抱えて壁に寄りかかりながらずるずると座り込んでしまう。
「…何を?」
「…天王寺瑠和って人が、あんなに優しいなんて、認めたくなかった」
言葉の意味はよく分からない。しかし、アスカもただ瑠和を嫌っていたのではない。彼女なりの理由があったようだ。
「昨日も言ったでしょ?あの子、不器用なのよ。人のために一生懸命で、自分のことは二の次。あなたと瑠和の間に何かあったのかは知らない。だけど、瑠和は安易に人は傷つけたりない。その行動の先にはきっと何か理由がある」
「………理由…か」
「もしあの子が道を踏み外すような真似をしても、私はそれを信じてもう少し観察する。だからあなたも、少しだけあの子を信じてみない?」
―別の裏路地―
ここは瑠和がいた場所から少し離れたところにある別の裏路地。ここで彼方は少し面倒な相手に絡まれていた。
「だからさぁ、俺らと遊んでくれって」
「あの、少し急いでて……」
「すぐ済むから!」
ここらをなわばりにしている不良グループだ。体格からして大学生くらいだろうか。アスカを追っていた彼方は一人だったので狙われたのだ。
そこをたまたましずくとかすみが見つけたのだが、相手はまぁまぁ体格のいい男たちだ。物陰に隠れながら瑠和が来るのを待っていた。
「どうしようしず子!このままじゃ彼方さんが!」
「こうなったら………私が」
「それはまずいって!」
「大丈夫。この身に瑠和さんを宿して………」
しずくたちがそうこうしているとき、ようやく瑠和が到着し、不良たちの手を掴んだ。
「すいません。俺の連れなんで、ここいらで勘弁してもらえませんか?」
「瑠和君!」
「お、ひょっとして彼氏?」
「ちょっとだけ彼女貸してくんね?俺ら暇でさぁ」
「すいません、今だけはお引き取り願えませんか?」
瑠和はとにかく穏便にことが済むようになるべく丁寧に追い返そうとする。しかし、不良グループは引き下がる気配を見せない。しばらくそんな問答を続けているとグループの中の一人がとうとうしびれを切らす。
「うぜぇなぁ!」
瑠和の手を振り払い、そのまま拳を放った。瑠和はそれを両手で受けるが、同時に腹部に激痛が走る。さっきの痛みがまだ残っているのだ。
「ぐぁっ……」
一瞬ひるんだ隙を狙われ、そのまま蹴り倒された。
「瑠和君!!」
「おいおい、情けねぇぞ彼氏君!」
倒れた瑠和は腹部を抑えたまま動けずにいる。そんな瑠和を庇う様に彼方が不良グループの前に立ちはだかった。
「もう!やめてください!」
「だからさぁ、君が俺らと一緒にくればいいだけだって」
男が再び彼方の腕をつかもうとした刹那、誰かの膝が男の顔面にめり込んだ。
「え」
男の顔面に膝蹴りを食らわせた人物がそのまま着地し。別の男の顎を瞬時に殴って意識を飛ばし、最後に残った男の目の前で改造した懐中電灯を目の前で光らせて目を潰した。
「うぉぁ!!」
「ほらっ!ぼさっとしない!行きますよ!!」
瑠和たちのピンチを救ったのは、アスカだった。アスカはすぐさま瑠和を背負い、彼方の手を取ってその場を離脱した。
―桜坂家―
割と動くのが難しいほどの重傷を負った瑠和は桜坂家で休むことになった。とりあえずしずく母による応急処置と近所の町医者に診てもらったが大きなケガではなかったらしい。
「俺は大丈夫ですから、彼方さんは行っててください」
「でも………」
「大丈夫ですから。アスカ、一緒に行ってくれるか?お前が一緒なら心強い」
「………わかりました。彼方さん。先に行っててください」
彼方は部屋から出ていく。アスカと瑠和は二人きりになった。
「…………助けてくれて、ありがとうな」
「………なんで、何も言わなかったんですか?私のこと、果林さんに言うこともできましたよね」
「……別に………でも、泣いてるヤツを放っておけはしないし、敵にすることも出来ねぇよ」
「……………」
「今は話してくれなくてもいい。でもな、何かあったかくらい話してくれ。でねぇと協力することも、謝ることも出来ねぇからよ」
アスカは黙ったまま扉を開け、部屋を出ようとした。
「少しだけ………今一度だけ、アナタを信じて見守ります。なにがあったかは、この先あなたを本当に信用出来たら、話します。…………その、おもいっきり蹴って、ごめんなさい」
「……ああ」
アスカが退室し、瑠和は一人きりになった。少しだけ心が落ち着くと思った時、瑠和のスマホが鳴った。
「?」
開いてみると璃奈の作ったアプリが反応した様だ。
「近くに猫がいるってことか?」
カメラを起動してみると、そこにはペルシャ猫のようにもふもふで、眠たげな眼をした猫がいた。どことなく彼方に似ている気がするその猫をみて瑠和は自然と笑ってしまう。
「………ははっ」
瑠和は笑いながらその猫を捕獲する。
「一緒にいてくれるってか?」
その猫を捕まえてから瑠和は少し眠くなり、そのまま眠ってしまった。
続く
ニジガク関係でお金が出て行きすぎてる。供給ヤバない?