彼方の近衛   作:瑠和

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この話はもともと前回をここまで書くことを予定していたのを分割した話なので短いです。

この度、楠木ともりさんが降板するとのことで、きっと夢半ばで悔しい気持ちだと思います。私も感情移入のし過ぎで一晩中涙が止まらなかったし今も何か心にぽっかり穴が開いたようです。しかし、ともりさんがせつ菜っていうキャラを大切に思ってこその判断だと思います。次の声優さんが誰であろうと新しいせつ菜として受け入れようと思います。
せつ菜は推しのランクとしては高くないですが、好きでした。アニガサキもせつ菜がいたからああいう作りになって私の魂に響いた作品になったのだと思っています。
だから……今まで本当にありがとうございました!!!!せつ菜の歌声は大好きです!!これからも頑張ってください!!!
前置きが長くなりました。本編をどうぞ。


第二十話 ソウル♪見えない真実

ちょっとしたトラブルを乗り越え、彼方と共にアスカは猫探しに出かけていた。

 

「あの………ごめんなさい。私が余計なことしたせいで、彼方さんに迷惑をかけてしまいました」

 

「ん~?まぁ、瑠和君のかっこいいところが見れたからいいよ~」

 

「…………あの、なんでそんなに瑠和さんが好きなんですか?」

 

「え?」

 

「私がしたことを瑠和さんの姿一つで許すなんて、どうして、そんなに…」

 

「………そうだねぇ。いっぱいあるけど簡単に言うと瑠和君がそばにいてくれて、そのことにトキメキを感じたから、かな?」

 

「…それがもし、裏切られたら?」

 

「え?」

 

急にアスカから感じる空気が変わったことに彼方は気づく。さっきまではこちらの心配や、負い目を感じた様子だったのに急にアスカからは重い空気を感じたのだ。

 

この子の一体何がそんなに瑠和に執着させるのだろう。彼方は疑問に思いながらも少し考える。

 

「裏切るって言っても色々あるだろうしねぇ。今度は彼方ちゃんがそばに行ってあげる」

 

「え?」

 

予想外の言葉が返ってきたのか、アスカは目を丸くする。

 

「瑠和君不器用だから。何かするのにはきっと理由があると思う。だから、瑠和君の本心をちゃんと聞きだすまでは諦めないよ」

 

「だけど!はっきりと拒絶されたら!」

 

「それだって一回じゃわからないよ。小さい背中で全員分の荷物を背負おうと頑張ってるんだもん。弱みを見せちゃいけないって強がって、大切な人でも拒絶しちゃうのが瑠和君だもん。だから、本心が言えるようになるまで彼方ちゃんはそっとそばにいてあげるだけ。それで瑠和君が荷物を一緒に持ってほしいなら持つし、本当に嫌いになって拒絶したなら………瑠和君の判断を尊重するよ」

 

「………」

 

果林の返答と同じだった。この同好会の人物は、特に瑠和とかかわりの深い人物は瑠和のことを信用している。アスカはそのことを理解した。

 

「そうですか……」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「発表します!優勝は、13匹捕まえた侑さーん!」

 

「やったぁ!」

 

優勝したのは13匹と最も多く捕まえた侑だった。

 

「でも、最後の一匹、シークレットってのだけ捕まえられなかったよ」

 

「私も」

 

「私もね……」

 

侑含め、同好会のメンバーは14匹目のシークレット猫を見つけることができなかったらしい。そんな中、彼方が少し笑みを浮かべながらみんなの前に立つ。

 

「ふふん、実はシークレットの猫ちゃん、彼方ちゃんが見つけたんだぜぃ!」

 

そう言って彼方はスマホの画面を見せた。彼方が捕まえられたのはこの一匹だけだったが、彼方はそれで満足していた。

 

なぜなら彼方のスマホに移っている捕獲された猫は、不愛想な顔をした、薄いピンクと白色との猫。その姿はまるで、どこかのマネージャーのようだった。

 

 

 

―桜坂家―

 

 

 

一位になった侑の願いは、自分の作った曲の歌詞をつけて欲しいとのことだった。瑠和も協力し、彼方と共に作詞をしていた。そんな中彼方が差し入れつくりのために部屋を開けたタイミングでノックの音がした。

 

「はい?」

 

「せつ菜です。入ってもいいですか?」

 

「ああ」

 

誰かと思えばせつ菜だった。

 

「災難に合われたそうですね。お加減いかがですか?」

 

「大したことねぇよ。んで、何の用だ?」

 

「…………瑠和さんに、改めてお礼がしたくて」

 

「は?」

 

せつ菜は妙にしおらしい態度で話を始めた。

 

「なんだよ急に」

 

「………壊れかけていた同好会を直してくれたのは瑠和さんです。何より、私の歌が好きって言ってくれたことがうれしかった………歌詞を書いていて、ふと、思い出したんです」

 

せつ菜はとりあえず現段階で決まっている歌詞が書いてある紙を差し出した。そこには「ずっと、ずっとね、言いたかった。いつだってありがとう(大切な my friend)」と書いてある。歌詞を考えている間にお礼でも言いたくなったのだろうかと瑠和は思う。

 

「そうか。気にすんな。なんもかんもお前のためってわけじゃない。本当は俺のためだったんだから」

 

「それでも、あの言葉は本音でしょう?」

 

「まぁな」

 

せつ菜は少し照れ臭そうに立ち上がって窓の方に歩いて行った。

 

「…………ここだけの話、私、少しだけ瑠和さんのこと好きだったんですよ?だけど、彼方さんのことがあったから諦めたんです」

 

赤くなっている顔を隠すようにせつ菜は窓の外を眺めながら内に秘めていた想いを打ち明けた。あの日、瑠和が映画に誘ったこと。それが急とはいえうれしかったことは事実で、せつ菜に対して好意を抱いて誘ったわけでないことを伝えられ、ショックだったのも事実だ。

 

「………そうだったのか…なんか…悪いな………その…気づいてやれなくて」

 

せつ菜は少し笑う。

 

「良いんです。過ぎたことですから……………だけど、一つだけ、お願いを聞いてもらえますか?」

 

「………?ああ、俺に叶えられるなら」

 

せつ菜は少し悲しそうな笑顔で振り返えり、瑠和に語り掛けた。

 

「アナタが歌が好きだって言ってくれた「私」はここにいます。そのことを忘れないで、また「優木せつ菜」の歌を聞いてくれますか?」

 

「…………もちろん」

 

しばらく驚いたような表情だったが、瑠和は笑顔で答えた。言ってる意味がよくわからないが別に難しい注文ではない。彼女なりの気持ちに踏ん切りをつけさせる方法なのだろうかと瑠和は考えながらせつ菜の想いに応えたのだ。

 

せつ菜は瑠和がそう答えてくれたことにうれしそうな顔でせつ菜は部屋を出て行った。

 

「……せつ菜?」

 

それから時間は進み、みんなの協力があって侑の曲は完成した。外には休憩用のテントが張られ、バーベキューが始まる。瑠和はテントの中で眺めるのが限界だったが、みんなと楽しく過ごす。

 

「瑠和さん、どうぞ」

 

焼きあがったバーベキューを栞子が瑠和に運んできた。しかし瑠和は一点を見つめたまま動かない。

 

「…」

 

「瑠和さん?」

 

「…………ん?ああ、ありがとな」

 

「………どうかしました?」

 

瑠和は少し考えてさっきのことを栞子に話した。

 

「お前から見てどうだ?せつ菜に何か変わったこととか………色とか」

 

「いえ、別段変わったことは。ですが………そうですね。ほんの少しだけ、色が変わったような気もしなくないです」

 

その理由はさっきのことで何か気持ちに変化があったからだろうかと瑠和は考える。

 

「………まぁ、あいつらしくいれるならそれでいいか」

 

せつ菜について考えるのはそれまでにしておいた。普段ならもっと深堀するところだがいまは、「それがいい」気がした。

 

「瑠和くーん。お肉焼けたぜぃ」

 

「彼方さん。ありがとうございます」

 

「うん♪はい、あーん」

 

瑠和にとって彼方を選んだことは、それそのものに後悔はない。それが例え誰かの祈りを踏みにじった末の結果だとしても。「だからこそ」一緒にいなければならない、こうかいしてはいけないのだ。

 

バーベキューが終わってからはかすみが用意した花火で遊ぶことになる。

 

「ほら、瑠和先輩も!」

 

「ああ」

 

時間はかかったが、瑠和はようやく少し動けるようになり、共に花火を楽しもうと動き出す。

 

「………火、もらうぞ」

 

「え、ちょ…」

 

「あ、じゃあ彼方ちゃんも」

 

アスカがやっていた花火に瑠和は自身の花火を入れて火をもらう。それを見た彼方も逆サイドから同じように火をもらった。

 

「…花火なんて、いつ以来だろうな」

 

瑠和独り言を聞いていたアスカは少しだけ考えて口を開いた。

 

「…………私は小学校の頃以来です……小学校のころ、家族と」

 

「…」

 

「あの頃は………父もまだ……優しい人で」

 

瑠和はそっとアスカの頭に手をポンっと置く。その行動にアスカは嫌悪感を示す。

 

「…なんですか?慰めてるつもりですか?」

 

「あ、ああ、すまん。つい………」

 

「ん~?瑠和君お父さんみたいだねぇ」

 

その様子を見ていた彼方が笑いながら言った。

 

「こんなのが父親なんて勘弁してください」

 

「ふつうそこは彼氏とかじゃないんですか?」

 

「瑠和君の彼女は彼方ちゃんだからそれは譲れないなぁ」

 

以前よりか少しだけ穏やかな空気が三人の間に流れた。

 

「そういえば、アナタたちいつまでそんな他人行儀なしゃべり方してるんですか?特に瑠和さん」

 

「え?」

 

「いつまでも「彼方さん」だの「瑠和君」だの、恋人ならもっと親しい呼び方したらどうなんですか?」

 

「え……………」

 

いままで意識したこともないようなことを言われ、瑠和は瑠和は口を開けて驚く。

 

「言われてみればるなりんっていつもカナちゃんに他人行儀だよねぇ」

 

「せっかく付き合ってるんだからもっと恋人らしい呼び方してみたらいかがですか?たとえば、ダーリンとハニーとか!」

 

しずくが演技のためのこの上ない参考資料を見つけたというような輝いた瞳で二人を見る。

 

「んな恥ずかしいことできるか」

 

「じゃあせめて敬称を外してみたらどうでしょう?それから敬語もなしにしてみるとか」

 

「えぇ~?」

 

皆から期待の眼差しを向けられる。瑠和と彼方はとりあえず、少し顔を赤くしながら見つめ合う。

 

「え、えと……花火…キレイで………だね、彼方…」

 

「うん……そうだね。瑠和…」

 

最初は向き合っていた二人だが、次第に目が反らされ、最終的には花火の方に向いてしまっていた。

 

「うぅ…彼方ちゃんなんかムズムズする~。瑠和君にそう呼ばれるのも恥ずかしいし……顔から火がでそう~」

 

彼方的には妹すら敬称を呼ぶ性格なのでたとえ恋人でも呼び捨てというのは違和感があるようだ。

 

「………いや、俺は覚悟をきめたよ。彼方」

 

「え!?」

 

「俺も彼方の恋人としてもっとそばにいるために、こういうところから、変わっていくべきなんだ」

 

「は、恥ずかしい~!」

 

彼方は顔を赤くしててれているが瑠和はやめる気はない。そんな二人の様子をアスカは少し離れて眺める。

 

「…………どうして」

 

小さくつぶやき、その場から離れる。

 

そんな中、璃奈はたまたまお手洗いに行っていた。そこから戻ろうと廊下を歩いていると何か落ちていることに気づく。

 

「?」

 

拾ってみると誰かの学生証だった。裏面でわからなかったがひっくり返してみるとそれはアスカの学生証であることが写真からわかった。

 

「アスカちゃんの…………え?」

 

学生証をよく見ると璃奈はあることに気づいてしまった。そのことに驚いていると誰かが学生証を璃奈の手から強奪した。

 

すぐに顔を上げるとそこにはアスカがいた。学生証を紛失していることに気づいて慌てて探しに来たのだ。

 

「見たんですか?」

 

「えと………その……」

 

璃奈が戸惑っているとアスカは一気に詰め寄ってきた。

 

「見たんですね!!?」

 

「う、うん………」

 

「………っ!いいですか!このこと誰かに話したら!ただじゃ置きません!!」

 

「だ、大丈夫。言わない…。でも一つだけ教えてほしい。どうしてそうなったの?」

 

「え?ああ………私にもわかりませんっての………………」

 

「…」

 

瑠和とアスカの間のわだかまりは多少改善されたが、同好会に新しい何かが怒ろうとしているのも事実だった。

 

 

 

続く

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