2月13日、この日、虹ヶ咲スクールアイドル同好会部室では練習を終えた同好会メンバーの歓談で盛り上がっていた。今日、瑠和は明日久しぶりに帰ってくる両親をもてなすため、彼方は急遽入ったバイトのシフトで不在である、そんな中、急にかすみが怪しく笑って立ち上がったところから今回の話は始まる。
「そういえば皆さん、明日の準備はできてますかぁ?」
「明日?なにかあったっけ」
「なにってバレンタインですよぅ。友チョコをみんなで持ち寄って、チョコレートパーティーでも開きませんかぁ!?」
「いいですね!それ!これだけ個性のあるメンバーですし、たくさんの味が楽しめそうです!」
最初に賛成したのはせつ菜だった。その瞬間、メンバー間の空気凍る。かすみも半分くらいノリで言っただけだったので少し忘れていたのだ。せつ菜の存在、正しくはせつ菜の料理の才能を。
「………」
さて、どうするかと思っていると果林が助け舟を出した。
「ねぇ、そのパーティ、やるのはいいんだけど、侑も入れると13人でわけあうのよね。つまり一人頭13個。小さくても少しカロリーが気にならない?」
「あ………た、確かにそうですねぇ。でも、せっかくのバレンタインなのに何もやらないっていうのも…………」
せつ菜のこともあり、乗りにくいのもあるのだがやはりバレンタインという大イベントを逃したくないというかすみの気持ちもあった。
「……いるじゃないか、一人」
そこでミアが提案する。
「え?」
「どれだけ食べても困らなくて、みんなのどんなチョコでもおいしいって言ってくれるだろう「お人よし」がさ」
―SOROR―
「うぉ」
一方、こちらはもてなしの買い出し中の瑠和。そしてそのスーパーで瑠和の買った商品のレジを打っていた彼方。瑠和は急に妙な発音の声を発した。
「…どしたの瑠和君」
「いや、なんか悪寒が………」
「?」
―翌日―
「というわけで!第一回虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会バレンタインスペシャル企画!瑠和君をおいしいといわせるのは誰だ!最美味チョコレート決戦!!」
「なんも知らねぇんだけど」
翌日、部室に来るなり愛と嵐珠に鹵獲された瑠和は無理やり座らされ、理解が追い付かない間にマイクを持った司会の侑が現れた。
「それでは一番手!歩夢!」
「はい!私は今回、三つのチョコレートを作ってみました!その名もトライアングルチョコレート!」
そういって歩夢は箱を見せた。箱には三つくぼみがあり、そこには星形とハート形のチョコが入ってる。しかし、入ってるのは二つだけだ。しかもひとつチョコが入っていたであろう箇所が潰れている。
「これは………?」
「これは、瑠和君と侑ちゃんと現直君に作ったんだけど……今朝、登校前に一番に渡しに行ったら……顔がいいから毎年いっぱいもらうらしくて……それ聞いたら…ちょっと手に力が入っちゃったの」
「…」
少し歩夢から黒いオーラが感じられた。
(あいつも大変だな……)
「それでね、一つは侑ちゃん用なんだ。はい、あーん」
「あ、ありがと」
「瑠和君も食べてみて!」
「ああ……」
瑠和も恐る恐る口に含むが嚙んだ瞬間に優しい味わいと甘いソースが口いっぱいに広がる。さっきの歩夢からは想像できないイメージの味だ。
「お、こいつは……」
「いつも同好会を支えてもらってる三人に、まごころこめて作りました!」
悪くない、そう思っていると歩夢と瑠和の間にかすみが割り込んできた。
「次はかすみんですよぉ!」
主催者兼発案者であったためか気合の入っているみたいだ。
「かすみんといえばやっぱりこれでしょう!!」
そういってかすみは茶色いコッペパンを取り出した。間には生チョコらしきものが挟まれている。かすみらしいといえばかすみらしい。
「はいどうぞ!」
「ん………うん、相変わらずかすみんのパンはうまいよ。それに、普段よりパンの生地が柔らかくて、気合入れてきたのがわかる。チョコもこれたぶん手作りだろ?」
「………ま、まぁ当然ですけどね!」
生チョコが手作りであることまで見抜いたのは予想外の反応だったのかかすみは一瞬頬を赤らめて停止したがすぐいつも通りの感じに戻った。
「次は嵐珠よ!嵐珠の愛情たっぷりチョコレートで瑠和を私のモノにして見せるわ!」
「まだあきらめてなかったんですか……」
「当り前じゃないかすみ!嵐珠が同好会にいる限り嵐珠は諦めたりなんてしないわ!」
そういって嵐珠はいびつな形のチョコを取り出した。
「………」
瑠和は微妙な顔をしながらチョコレートを口へ運ぶ。一回噛んでみるとごりッという口当たりの悪そうな音がした。
「…………ど、どうかしら」
さっきの威勢はどこへやら、急に嵐珠はしおらしくなって味の感想を求めた。出してみるまでは自信はあったのだろうが、音を聞いたときにすこし自信がなくなったのだ。
「………そこまでうまくはねぇな」
「…」
「だけど、初めて作った料理に比べたらずっとマシだ。成長したな」
「……!」
その一言で嵐珠の表情は一気に明るくなった。
「谢谢瑠和」
「やれやれちょろいね嵐珠も」
その様子を見ていたミアは相変わらずな態度で笑う。
「ミアちはチョコ持ってこなかったの?」
「は、は?僕はそもそもそんなイベントなんか…」
「でもミア、さっきカバンにラッピングしてある箱が入ってるの見えたわよ?」
「っ!」
嵐珠に指摘され、ミアは顔を赤くしてさっとカバンを背中に隠す。
「ち、違うこれは!その……………そう!渡されたもので…」
「隙あり!」
背後からこっそり近づいていた璃奈がミアのカバンから箱を奪取した。
「璃奈!?何をするんだ!」
「きっとちょっと照れてるだけだと思う。お兄ちゃんは笑ったりしないし喜んでくれる。」
「………」
ミアが隠そうとした理由を璃奈は一発で見抜いていた。そしてそのうえでわたせるように背中も押してくれた。
「その………僕は、ハンバーガーが好きだから………バーガーをチョコ、バンズをビスケットで再現したハンバーガーチョコだ。………瑠和には世話になったから………凝ったもの渡したくて……、でも、その…」
「理由はいい。ありがとう」
(もうあるなんて言えないが……)
どこかのお菓子メーカーが作ってそうな見た目のチョコだが、そんなのは関係ない。
「工夫してくれたんだな。伝わるよ。頑張ってくれた気持ちも、不器用なりに頑張った結果も」
そういって瑠和はミアの服の袖についていたチョコのシミを指さす。ミアはまた少し顔を赤くしてそのシミを隠した。
「さぁ!どんどんいきますよぉ!!」
そこから決戦は一気に加速していく。
「ホットチョコレート作ってみたよ~」
「あったかいです。優しさが伝わってきます」
「愛しの先輩へ初めてチョコレートを作るお嬢様という設定で頑張りました!」
「不器用なだけでは……」
「カロリーと甘さは控えめにしてみたわ」
「飽きてきたし助かります」
「璃奈ちゃんボード型」
「食いにくいな……二つの意味で」
「愛情込めて作りました!!スカーレットストームチョコです!」
「…………バイオレットでは」
様々なチョコレートをたべて少し瑠和がうんざりしてきたころ、彼方が部室へやってきた。
「おやぁ、盛り上がってるねぇ」
「彼方さん。瑠和君少し借りてます。いまチョコレート決戦中です!」
「おやおや、瑠和君モテモテだねぇ」
「処分係にされてるだけだ……」
「彼方さんは瑠和君に作ってこなかったんですか?」
「ん~作って来たよ~」
そういって彼方はチョコが入った袋を取り出す。袋には小さなハート形のチョコがたくさん入っている。
「案外普通ですね」
「料理上手な彼方さんならもっと凝ったものを作ってくるかと思ったんですが…」
彼方が案外普通だったことに皆が少し驚いた。
「まぁこんなことになるんじゃないかなぁって思ってたからねぇ。個性たっぷりなチョコはいくらでも食べれるだろうし、彼方ちゃんは別方向から行こうかなって」
「?」
彼方は袋からチョコを一つ取り出し、口にくわえる。そして瑠和の前へ行って口にくわえたチョコを瑠和の口に押し付けた。
「!」
瑠和も反射的にチョコを咥えたときから、瑠和と彼方の口の中でそのチョコは舌の熱で溶かされる。同好会部室内に淫靡な音が響き渡る。その光景は、高校生には刺激の強いものと思えるほどに。
チョコが完全に溶けてなくなったころには瑠和は完全に蕩けて椅子にもたれかかる。彼方は舌で唇についたチョコをなめとって同好会メンバーを見た。
妖艶なその姿に、同好会メンバーは個性とかその辺で賞美しようとした時点で甘かったことを思い知らされる。彼方は、その上を行ったのだ。
ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?
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これまで通りでいい
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減らしてほしい