彼方の近衛   作:瑠和

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あまりゴールが見えない話になっているかもしれませんが、次に作るちょっと長いお話の前哨戦みたいな感じです。まぁ予習みたいなもんです。

最後の数行はただの煩悩です。


瑠和と彼方と未来

「よろしくお願いします!!」

 

威勢のいい挨拶が聞こえてきたのは東雲の一角にあるスーパーの従業員室。声を出したのは従業員の制服を着た瑠和だった。

 

「それにしてもまた瑠和君がバイトとはねぇ~」

 

「ええ。またお願いします」

 

瑠和はある日からバイトを始めた。以前から彼方が働いているバイト先にいたことはある。それで稼いだ金を近江家に入れようとしていたが、それはさすがに断られた。ので、それは彼方とのデート代に消えた。それからしばらくはバイトはしなかったのだがまたバイトを始めたのだった。

 

「なにかほしいものでもあるのかな~?」

 

「ん…?」

 

それを言われた瞬間、瑠和の脳裏に明日和の笑顔がよぎった。

 

「ほしいもの……確かに、そうかもな」

 

「……?」

 

「強いていうなら、俺がほしいのは………」

 

瑠和は少し考えて彼方のへその下の辺りを指でつつく。

 

「?」

 

「未来、かな」

 

「…?」

 

 

 

―同好会―

 

 

 

「るなりんの様子が変?」

 

「そんなんいつものことじゃないですか?」

 

瑠和の様子が気になった彼方は思い切って同好会に相談してみた。しかし、そんなのは割といつも通りではとさっそく返された。

 

「まぁいつも通りだけどね………でも、瑠和君はいつも誰かのために…」

 

「一人で背負わないように、頼ることを知っていただいたと思ったのですが……」

 

栞子は少し悲しそうにつぶやいた。彼女は中学時代に瑠和が何でもかんでも背負い込んでしまう性格であることは知っていた。

 

「彼方の前だからってかっこつけてるだけなんじゃないの?ほっとけば勝手にベイビーちゃんあたりに相談するんじゃない?」

 

「………」

 

確かに瑠和はこの一年を経て変わった。仲間に頼ること、信じることを学んだはずだ。放っておけば相談してくるかもしれないが、助けになれないのは彼方もつらいことだった。そんな彼方の表情を見かねた果林は小さくため息をつく。

 

「そんなに気になるんなら、あなた自身が確認したら?」

 

「でも、彼方ちゃんにも言わないんじゃ……相談したくないことかもしれないし……」

 

「あのねぇ、この中で一番瑠和と近い関係なのは彼方なんだから、あなたが一番の適任、でしょ?何かあったら私たちが、支えるから。私たちを、信じなさい」

 

「果林ちゃん…………わかった。ありがとう!私が瑠和君にみんなを信じるように言ってるんだから、彼方ちゃんがみんなを信じないとね」

 

果林の言葉に彼方は少し自信ありげな顔になった。それと同時に瑠和が少し遅れて部室にやってきた。

 

「すいません。お待たせしました。クラスの手伝いしてて……」

 

「ううん待ってないよ~さぁ、瑠和君も来たし、練習練習~!」

 

「そうですね!さぁ皆さん!行きましょう!」

 

彼方が先導して練習場に向かう。果林はやれやれといった表情で瑠和と彼方のすぐ後ろについていく。二人が並んでいる姿を見て自然と笑みをこぼす。

 

「相変わらず、手のかかる子たちねぇ」

 

 

 

―休日―

 

 

 

ある休日のバイトの日。この時まで彼方は結局いいタイミングを見つけ出せず、瑠和に何かあったのかを聞きそびれていた。

 

「瑠和君、お昼休憩行こう」

 

「ええ。さすがに腹減りました」

 

彼方と瑠和は完全に同じ時間に働いている。休憩時間も無論一緒だ。この日、瑠和は珍しく財布を持ってフロアに戻ろうとしていた。

 

「さてと昼飯昼飯……」

 

「あれ?瑠和君お弁当は?」

 

「ああ、今朝寝坊しかけて忘れちゃって。こんなもんしか持ってこなくて………なんか買ってくるよ」

 

そういって笑う瑠和の手にはレトルトカレーがもたれていた。どうやら焦っていたのと寝ぼけていたので間違えて持ってきたようだった。彼方はそれを見て少し考える。

 

「………あ、それなら、彼方ちゃんにいい考えがあるぜぃ。ちょっといつもの場所で待っててね」

 

「はぁ……」

 

そういって彼方は行ってしまった。瑠和は言われた通りいつも二人で食事をする裏口で待っていた。しばらくすると彼方が二人分の紙皿を持って戻ってきた。

 

「はい、どうぞ」

 

「これは……」

 

さらにはカレーといくつかのおかずが盛り付けられてい。

 

「カレーとおかず。調理場ちょっと借りてね。彼方ちゃんの手にかかれば、一人分のレトルトカレーを二人前にすることなんてお茶の子さいさい。ついでに彼方ちゃんのお弁当のおかずも半分こ」

 

どうやら彼方が培った料理の知恵を使ってレトルトカレー一つで二人前の料理を作ったようだった。そして自分用に持ってきたお弁当のおかずを分けてくれたようだ。

 

「………ありがとう彼方」

 

「いいえ~」

 

さっそく一口食べてみる。その味は絶品だった。

 

「めっちゃうまい」

 

「照れちゃうぜー」

 

「しかし、こんだけ料理できるんなら………」

 

そこで瑠和の言葉が止まる。

 

「………?」

 

「いや、何でも……」

 

瑠和が話をそらそうとした瞬間を彼方は見逃さなかった。瑠和が食べようとしたスプーンの手を掴んで止める。

 

「まって、瑠和君………最近、瑠和君の様子が変なの、気になってて………もし何かあったなら、聞かせて?彼方ちゃんたちを……………信じて頼ってほしい!」

 

「…………彼方」

 

瑠和の話を聞きだすために、この場はもっとも有効な場だった。そのために腕によりをかけて料理まで作ったのだ。

 

「…………」

 

だが、瑠和の悩みは誰かに話せるものでもない。未来を知っているのは瑠和だけだ。きっと彼方に話したところで何も変わらない。もしかしたら瑠和の考えを否定されるかもしれない。そう思うと、何も言えなかった。

 

「ダメ……かな」

 

「いや………うん。今は話せないけど、時が来たら、話せる………絶対に」

 

「……本当?」

 

「うん。心配させてごめん」

 

「…………わかった、その時になったら、教えてね」

 

彼方は少しだけ悲しそうな顔をしたがすぐに笑顔で瑠和の行動を良しとしてくれた。申し訳ないが、あの妙な事件に彼方を巻き込みたくはない。

 

「「ごちそうさま」」

 

所持を終えた二人は一息つく。

 

「………彼方。まだ時間あるよな」

 

「え?うん。まだあるねぇ」

 

「じゃあ、ちょっとだけいいか?」

 

「え…………えぇ~。こんな時に?」

 

「ああ」

 

瑠和の言葉の意味を理解した彼方はちょっと微妙そうな顔をしたが、結局付き合うことにした。二人はめったに人の入らない倉庫に向かった。

 

傍にいることの証明がこれくらいしかできなかった。いや、この日だけは未来への贖罪もあったのかもしれなかった。

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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