彼方の近衛   作:瑠和

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せっかくくっつけたんだから結末もね


歩夢と現直とナタ

「現直く~ん!」

 

これは、まだ明日和が同好会にいたころの話。ある日の休日、歩夢が走っていく先には現直がいた。現直の提案で今日二人はデートをすることになっていた。

 

「おはようございます。歩夢さん」

 

「うん、現直君はラブライブ、大丈夫なの?」

 

まもなくラブライブが行われるという急がしい時期だが現直は歩夢をデートに誘っていた。そのことを歩夢が心配すると現直は笑う。

 

「ええ。たまに休まないと、皆さん心配させてしまいますから。歩夢さんもいいんですか?」

 

「何が?」

 

「侑さんとはデートに行かなくて………」

 

「行ってほしいの?」

 

ちょっとした心配をつぶやくと、歩夢はいたずらっぽく笑いながら現直に尋ねた。その瞬間、現直の表情が一変し、歩夢の肩を掴んで抱き寄せ顔を一気に目の前に寄せた。

 

「………いいや、せめて今日くらいは俺を………いや俺たちだけを見ててもらおうか」

 

人格が現直から良久へ入れ替わったのだ。

 

「良久君もおはよう。元気そうでよかった」

 

「おう。今日も最高に美しいな。歩夢」

 

「うん、ありがとう。じゃあ、そろそろ行こうか」

 

良久の登場に物怖じせず、歩夢はさっさと歩いて行ってしまう。良久は肩をすぼめた。

 

「………もうちょっと乙女な反応を期待してたんだけどな」

 

『まだまだ君は……子供ですね』

 

真横を流れる川の水面に写った現直が言った。

 

「あ?どういうことだ?」

 

良久と現直が二人(一人)でもめている間、先を行く歩夢の顔は真っ赤だった。前へ前へ進んでいくのはただの照れ隠しだ。

 

前に進む勇気はあるが鈍い良久と、謙虚だがしっかり多くを見通す現直。案外バランスの取れているのかもしれない。

 

「まぁいいや。歩夢さん。待ってください!」

 

現直に人格が切り替わり、歩夢の後を追いかけた。

 

二人はとりあえずダイバーシティへ行く。ダイバ-シティの中でうろつきながら服屋でいい服を見つけたので二人はお揃いコーデにして次の場所へ移動しようとする。しかしその時、目の前に同じようにお揃いコーデで身を固めた瑠和と彼方、そして場違い間の否めない明日和がいた。

 

「瑠和さん、彼方さん。それに………あなたがアスカさんですね?」

 

「………上はr………後川現直さん………でしたっけ?」

 

「おや、ご存じでしたか?」

 

まだ自己紹介もしてないのに名前を当てられた現直は少し驚く。だがその前になにか言いかけたことはあまり気にしなかった。

 

「ええ。歩夢さんの彼氏さん。同好会の皆さんからお話だけは」

 

「そうでしたか。僕も聞いてますよ。とてもミステリアスな期待のニューカマーだとか。ぜひともステージを見せていただきたいですね」

 

「相変わらずいけ好かない人ですね。行きましょう。彼方さん瑠和さん」

 

おそらく二人のデート中にたまたまアスカが鉢合わせた感じなのだろうが、アスカは二人を連れて去ってしまった。

 

「………嫌われちゃいましたかね」

 

「うーん、アスカちゃん気難しいから……それより!私が目の前にいるのにほかの子に好かれる理由があるの?」

 

「いや、単に友人関係というか横のつながりはマネージャーには大事なものなので決してそういうのでは………」

 

「変にごまかすところが怪しいなぁ」

 

そういって歩夢は頬を膨らませる。その瞬間にポムッという音が聞こえてきそうなほどに。現直はその顔に癒しを感じながらも機嫌を取ろうと考える。

 

「まぁまぁ、次行きましょう。どこかのバカップルにラブラブっぷりで負けるわけにはいきませんから」

 

「うん……」

 

それからしばらく様々な場所を二人で周り、デートを満喫した。だが、どこに行っても現直は満足することはなかった。

 

なぜかというと、今日現直は歩夢の部屋へ初めてお邪魔することになっている。おまけに今夜は歩夢だけという話らしい。

 

現直がそのことを心待ちにしながら潮風公園に向かっていると、横を通る道路に誰かがふらふらと入っていってしまうのが見えた。しかも後方からトラックがいい勢いで飛ばしてくる。

 

「歩夢持ってろ!」

 

「良久君!?」

 

刹那、現直から良久に人格が入れ替わり、カバンを歩夢に投げてクラクションが鳴り響く車道に飛び出した。

 

「おぉぉぉぉ!」

 

間一髪、交通事故が起こる前に入ってきた人物を救出した。

 

「あっぶね………」

 

「良久く~ん!」

 

少し奥側にある横断歩道を渡った歩夢がかけてきた。

 

「大丈夫!?」

 

「ああ、何とかな………それにしても…」

 

良久は助けた人物をみた。助けたのは小柄で白髪の首から大きなカメラをかけた少年。しかし、すこしやつれている様子で良久が助けた直後に意識を失ったらしいのだが、妙に臭い。

 

「くせぇなこいつ。中学生か?」

 

「どうしたんだろうこんなところで……」

 

歩夢がそばにしゃがみこんだ時、少年は一瞬鼻をピクリと動かし、目を大きく見開いた。そして歩夢の方を見た。

 

「あ………?」

 

よく見るとみているのは歩夢ではなく歩夢が抱えているバッグの様だ。バッグからは先ほど公園で食べる間食にと買ったコッペパンが入っている。少年の視線は完全にパンに行っている。

 

「………………食べる?」

 

歩夢がパンを差し出すと、少年はさっきまでの弱々しさもどこへやら一気に飛び付いてきた。そしてつかんだパンを包装のラップごと食らいつく。

 

「ちょ、ちょっと!それまだラップついてるよ!」

 

「なんだこのガキ……」

 

歩夢に包装を外してもらい、少年はパンに獣のように食らいつく。

 

「おいしい?」

 

「…………」

 

ものの数秒で食い終わった少年は再び歩夢を見る。そして歩夢のカバンに視線を移す。そこには現直の分のパンも入っている。

 

「…はい」

 

少年の言いたいことを理解した歩夢はためらいもなく笑顔でパンを差し出した。少年は礼の一つも言わずに再びパンに食らいつく。

 

「歩夢、助けた俺が言うのもなんだけど、こんなやつ放ってさっさとデートの続きを…」

 

「だけど……」

 

パンを食い終えた少年は立ち上がり、歩夢の方を向く。

 

「………」

 

黙ったまま歩夢を見た後少年はそのまま立ち去ろうとした。礼の一つもない少年に良久は立ち上がり、肩を掴む。

 

「待てやガキ。礼儀ってもんを知らねぇのか?」

 

「………なんだお前は」

 

「そこの女の恋人だよ。ついでに言うとお前の命の恩人」

 

「そうか」

 

そういって少年は再び立ち去ろうとする。それに良久が激高しかけるが、歩夢が止めた。

 

「だからなぁ!」

 

「落ち着いて良久君!ねぇ君、大丈夫?こんなところでどうしたの?」

 

歩夢が少年の目線に下がって尋ねる。少年は歩夢の眼を見て少し考えて小さくつぶやく。

 

「人を探している」

 

「だれを?」

 

「ウエハラアユムと…………アリナ」

 

「え?」

 

まさかの人物だった。歩夢も良久も唖然とした。なにせその探してる人物は目の前にいるのに、立ち去ろうとしてるのだから。歩夢と良久は二人で集まって話し合う。

 

「………どういうことなんだろう?現直君も私も、目の前にいるのに……」

 

「知らねぇよ…………けどよぉ……はぁ」

 

良久はため息をついた。ただの迷子だのであれば放っておくのだが、自分たちが関わってくるとなれば話は別だ。

 

「ねぇ君、どうしてそのアユムって人とアリナって人を探しているのかな?」

 

現直に人格を入れ替え、親しみやすい態度で少年に接する。少年は急に態度が変わった現直を訝しみながらも歩夢と現直を探している理由を考える。

 

「………わからない」

 

「え?」

 

「………なぜ探しているのかは、わからない。だが、探さなければならないことは覚えている」

 

「…どういうこと?」

 

「俺はここ数か月ずっとこの街を徘徊していた………いつからここにいたのか…なぜ二人を探しているのかはわからない」

 

「…」

 

探している人物は目の前にいる自分たちであるのに気づかない。おまけに探している理由がわからないとなると。二人はかなりの面倒ごとに首を突っ込んだ気がした。

 

「お名前は?」

 

「………ニタ」

 

「………じゃあ、とりあえず」

 

 

 

―上原家―

 

 

 

「なんで俺がこいつの面倒なんか……」

 

良久はニタと名乗った少年を風呂に入れていた。結構鼻に突く匂いだったのでとりあえず風呂に入れようと歩夢が提案した。歩夢が洗うわけにもいかないので良久が洗うことになった。

 

「頼んだ記憶はない…………」

 

良久がため息をつきながらニタを洗っている間、歩夢はニタの服を洗濯していた。

 

「ふぅ…………」

 

洗濯機を回している間、ふとニタの唯一の荷物であるカメラに目が行く。

 

「…………」

 

少しプライバシーのことが気になったが、何かヒントがつかめるかもしれないと思い、歩夢はカメラの中にある画像を見てみる。

 

写っていたのはお台場の景色。特に手掛かりになるようなものはないと思ったその時、一枚の写真に気を取られる。

 

「………あれ?」

 

写っているのは見覚えのある景色だ。だが、何かが違う。普段見ている景色とは、どこかが決定的に違うのだ。写真を凝視する。しばらく見てようやくその違いに気づく。

 

「なんで………観覧車がなくなってるの?」

 

カメラに残っていたのはお台場の夢の大橋からヴィーナスフォートを写したものだ。そこからのアングルなら確実に観覧車とその下の施設が映るはずだ。それなのに、観覧車がないのだ。

 

「これって……」

 

「ダメだよ。歩夢」

 

カメラの画面に、誰かの手が差し出されて歩夢の視界が遮られた。

 

「誰………って侑ちゃん?」

 

顔を上げるとそこにいたのは高咲侑だった。しかし、歩夢はすぐに気づく。目の前にいるのは侑によく似ているが全くの別人であることに。

 

「あなた………だれ?」

 

「さすが歩夢だね。すぐに気づくなんて。でも安心して。別に悪意があって高咲侑に似せてるわじゃないから。私はナタ。ニタ君を迎えに来たんだ」

 

ナタは笑う。

 

「ニタ君を?でも……」

 

目の前に現れた侑にそっくりなナタと名乗る少女。歩夢は警戒したいはずなのに歩夢はなぜか警戒できない。侑と同じく、昔から知っているような感覚が歩夢の中にあった。

 

「……わかるよ。急に幼馴染そっくりな女の子に親切心で助けた子を渡せって言われてもわからないよね」

 

「………うん」

 

「詳しいことは言えないんだけど、私は過去も未来も全部知ってるとある旅行者だよ。歩夢にも、ニタ君にも気概は加えることはないから安心してほしいな」

 

笑顔で話すが、ぶっちゃけ歩夢は全く信頼していない。当然だが。

 

「そういわれても…」

 

「…仕方ない。じゃあ未来を知ってるっていうことの証明をするよ。あんまりこういうこと言うと瑠和君みたいに苦しむ子が増えるからあんまり言いたくないんだけど…………あの子はさ……………」

 

そこで、ナタは言葉を止めた。

 

「…?」

 

少し考え、ナタは歩夢の持つカメラのボタンを操作してとある画像を歩夢に見せた。

 

「これって………私の写真?」

 

カメラの画面に写っていたのは歩夢の写真だ。しかし、今の歩夢と比べると妙に大人っぽいし髪も長くなっている。歩夢はずっと今の髪型をキープしているのでそこまで長くした記憶はない。

 

「…………まさかこれって」

 

「うん。あの子の本名は………上原明日夢。歩夢と現直君の間に生まれた子供だよ」

 

「……………え?でも、あの子ニタって……」

 

「それはたぶん彼のもう一つの人格。私も「あの子」がこの時代に来た時に明日夢君まで巻き込まれてるなんて思ってなくて………数か月この世界で彷徨ったつらい記憶を切り離そうとしてニタっていう新しい人格が生まれたんじゃないかな。時間移動が原因かもしれないし、遺伝なのかも。正直なんでニタ君が生まれたのかはわからない。でも、あの体は、間違いなく明日夢君なんだ」

 

少し考え、今までのことに合点がいく。これまでの記憶がないこと、理由はわからないが「アユム」と「アリナ」を探していたこと。

 

この時代に来た明日夢が、時代は違えど母と父を探していたのだ。その目的だけを引き継いだ新たな人格がニタなのだ。

 

あくまですべて仮定でしかないがそういうことならば今の状況もわからなくはない。

 

「…………じゃあ、あの子はやっぱり」

 

「未来のお台場ではさ、あの観覧車、取り壊されちゃうんだよね。だから、そこの写真にも写ってない」

 

「………そういうことだったんだ」

 

「……………これは正直、歩夢にとって呪いになる。この先、歩夢が進む未来を決定させるようなことだから。だから本当は話したくなかった。ごめんね。それもこれも全部、私が原因なんだ。だから責任もってあの子は未来の歩夢に返すよ。ごめんね?」

 

「……………ううん。未来が知れて、ちょっとだけよかった。だって、現直君と結婚できるって言うことが知れたんだから。こんな私のそばにずっといてくれるってわかったから」

 

「そっか………」

 

丁度そこに現直とニタが風呂から上がってきた。

 

「おや、侑さん。来てたんですか」

 

「うん。ニタ君、迎えに来たよ」

 

「なに?」

 

ニタが首をかしげるが、ナタがすぐさまニタに接近して耳打ちした。ニタはナタの言葉に驚いたような表情をしてこくりと頷く。

 

「…………そうか、わかった」

 

「この子、実は私のいとこみたいな子で、スクールアイドルの歩夢が大好きでさ。ちょっと迷子になっちゃってたんだ」

 

「そうだったんですか。では保護してよかったです」

 

「じゃあ、行くね。行こうニタ君」

 

「ああ」

 

ナタとニタは去ろうとする。しかしそれを歩夢が引き留める。

 

「あ、待って!ニタ君!」

 

「なんだ?」

 

「…………ニタ君って名前の漢字、なんて書くの?」

 

「……………仁に、おおざとに有明の有で陏。二文字で仁陏だ」

 

そういって仁陏は去っていった。上原家を出たナタは人に見られない場所に移動する。

 

「それでどこだ、アユムとアリナは」

 

ナタは仁陏にアユムとアリナに会わせるという約束をして連れ出していた。ナタは小さく笑うと、石を取り出した。

 

「すぐにわかるよ」

 

ナタの持った石が輝きを放つ。そのまぶしさに目を細めている間にいつの間にか仁陏はとあるマンションの一室の間に立っていた。

 

「………?」

 

仁陏が困惑していると目の前の扉が開く。そこから長いピンク色の髪をした女性が出てきた。

 

「お帰り。明日夢」

 

 

 

―上原家―

 

 

 

「さて、デートが中断されちゃいましたがどうします?このままお家デートにしますか?」

 

「ねぇ、現直君。行きたいところがあるんだけどいいかな?」

 

「はい?」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

歩夢が行きたがった場所はお台場の大観覧車だった。

 

「どうして急に?」

 

「うん、少しね」

 

歩夢は少し寂しそうに観覧車から見える景色を見る。いつかこの景色も見れなくなると思うと少し寂しさもあるのだ。

 

「………歩夢」

 

「?」

 

急に現直が歩夢の呼び方が変えたと思うと同時に現直が歩夢を引き寄せた。

 

「今日のあれは何だよ。俺のことだけ見てろって言っただろ?」

 

なんとなく予想はしていたが人格が良久に入れ替わっている。どうやら仁陏に付きっ切りな感じになったことに嫉妬したようだ。

 

「………大丈夫。私はあなたしか見えてないよ」

 

「だったらそれを証明してみろ」

 

「……うん」

 

歩夢は良久にキスをした。少し長いキスが終わると、歩夢は妖しく笑って上着を少しだけ脱ぎ、肩を見せた。

 

「今日は………現直君と良久君の好きにしていいから」

 

「………そう簡単に寝かせると思うなよ」

 

少し妖艶な空気なまま互いの愛を確認することを約束し、観覧車は一周した。

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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