彼方の近衛   作:瑠和

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第五話です。風邪がつらい


第五話 揺れる関係

その日は雨だった。とある学校の卒業式に俺は参加していた。普段家族がらみのイベントには参加しないがその日はたまたま都合があっただけの話だった。しかし、その日そこで目にしたのは一人ぼっちの妹の姿だった。その時に感じた後悔の念は忘れることはないだろう。

 

兄として、璃奈を守ってやれなかったこと。璃奈を一人ぼっちにさせてしまったこと。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ん………ふぁぁ…」

 

薄暗い部屋で瑠和は目覚める。

 

中川菜々及び優木せつ菜を同好会に引き戻して虹ヶ咲スクールアイドル同好会は完全復活を果たした。役目をひとつ終えた瑠和は帰るなりソファで泥のように眠った。これまで感情の浮き沈みが激しく、あっちへこっちへ移動し、神経を摩擦していたせいか、とてつもなく疲れていたのだ。

 

目を覚ました瑠和は時間を確認しようとテーブルに置いておいたスマホを取ろうと横を見ると、そこには璃奈の顔があった。

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

「どぁぁ!びっくりしたぁぁぁ!?」

 

あまりの驚きに瑠和はソファごと後ろに倒れてしまう。

 

「あ…」

 

「いたた…どうしたんだ璃奈…」

 

「ごめんなさい。起こしたら悪いと思って、起きるの待ってた」

 

どうやら帰ったときに瑠和に用事のあった璃奈は眠っていた瑠和を見て起こすのは悪いと思ったのか、起きるのを待っていたようだった。

 

「そうだったのか…で、どうした?」

 

「スクールアイドル同好会、復活したの?」

 

耳が早いなと瑠和は思った。だが、これは瑠和が帰ってから一番に璃奈に伝えたいと思っていたことだ。話を切り出す手間が省けたと瑠和は考えた。

 

「ああ、そうなんだ。この間はメンバー間にいろいろあったみたいだけど、新しく部員も入って再スタートしたらしい」

 

それを伝えると璃奈は瞳を輝かせる。璃奈は一拍置いて己の決意を瑠和に言った。

 

「私、スクールアイドルやってみたい」

 

「そうか………そうか!璃奈がやる気になってくれてよかった!俺にやれることがあったら何でも言ってくれ」

 

瑠和は笑って答えたが、璃奈はあまり元気のないように見えた。しかし瑠和は璃奈がスクールアイドルに興味を持ってくれたことのうれしさでそれに気づけなかった。

 

次の日、瑠和が食堂で昼食を取っているとそこに果林が現れた。

 

「果林さん」

 

「あら、上機嫌ね」

 

「そりゃあそうですよ。みんな元通りだし、高咲も頑張ってるし、俺も…」

 

そこまで言って瑠和は言葉を止めた。急に言葉が止まった瑠和を見て果林は眉をひそめる。

 

「俺は…………」

 

「どうかした?なにか悩み事かしら。お姉さんが相談に乗ってあげてもいいわよ?」

 

瑠和の態度に果林が相談に乗ると言った。

 

「………親切ですね」

 

「ただの気まぐれよ」

 

普段あまり他人と関わることをしない果林が相談に乗るのは確かに気まぐれというのがもっともだろう。

 

「ご厚意はありがたいですが、遠慮します」

 

しかし瑠和は断った。まさか断られると思ってなかった果林は少し驚きつつも軽く笑う。

 

「あら、嫌われちゃったかしら?」

 

「いえ…少し、果林さんが苦手なだけです」

 

「え?」

 

「果林さんからは本心が見えないんです……言動がすべて取り繕っているようで…果林さんと話しているのに、別に誰かと話しているような。本当の姿を見せない様にしている」

 

すこし追い詰められぎみだった瑠和は隠そうともせず果林に対して思っていたことを話した。

 

「人って大体そうじゃないのかしら?本当の自分なんて早々見せないものよ」

 

「それはわかります。だけど、果林さんは全部なんです。普通の人なら、もっとわかりやすい」

 

「人の上っ面を見破るのが得意なのね」

 

「好きで手にいれたわけでも、うまく使えてるわけでもないです。人の嫌なところばかり見えてしまう。そんな自分まで嫌になるほどです」

 

「難儀な性格ね…でも、そうね。私のほとんどは取り繕ってるのかもしれない」

 

「…」

 

果林の言動を偽りだと見破られたのは初めてだった。そのせいか果林は柄にもなく自分のことを話した。いつも頼られる側の人間だったせいか誰かに自分の胸の内を吐露するのは初めてだった。いや、いっそ一度楽になりたかったという面もあったのかもしれない。

 

「読者モデルなんかやっていると、回りには変な理想持たれることがほとんどでね……本当の私はそうじゃないのに。だけど失望されたくなくて、嫌われたくなくて、いつのまにかみんなが望む朝香果林を演じるようになっていった。だからそう見えるのかもしれないわね」

 

「……」

 

「いまのはどう見えた?」

 

「少なくとも、嘘じゃないのはわかります。真の本音かはわかりませんが」

 

「そう…私もこんなこと話すの初めてだから、自分でも本音かどうかわからないけど、君がそういうのならそうなのかもしれないわね」

 

「そんなものなんでしょうか…」

 

「まぁ、半分以上勘ではあるけどこんなこと言われたの初めてだったから…ところで、私だけ事情を話してあなたはだんまりってアンフェアじゃない?」

 

果林はにっこり笑って言った。最初からこれも目的の内だった。自分が隠してた部分を見破られ、そう簡単に終わる果林ではなかった

 

「ぬ…それは…」

 

仕方ないと瑠和はため息をついて事情を話した。瑠和はこれからも同好会で璃奈を支えていこうと思っていたが、よくよく考えるとそれは璃奈とずっと一緒にいるということだと気づく。それでは手伝っていることがバレてしまうのだ。瑠和は感謝されたいわけじゃなかった。璃奈をあんな風にしてしまったことへの贖罪、しかもそれは瑠和の個人的な考えであり、璃奈から見れば瑠和が手伝ってくれているだけことになる。

 

手伝ってくれていることに感謝されればそれは贖罪から遠退いてしまい、本末転倒になりかねない。瑠和はその事を果林に伝えた。助けてほしい訳じゃない、単純に流れで話したのだ。

 

「ふーん………ならあなた、私を手伝いなさい」

 

「え?」

 

「私、エマに頼まれてこれからも同好会を手伝うことになってるんだけど……読者モデルもやっててそんなに暇じゃないのよ。でも、あなたが私の…そうね、生活とかをサポートしてくれれば私は一人でいるよりずっと楽に同好会をサポートできるわ。それなら、実質妹さんをサポートしてるって言えるんじゃない?」

 

「…そうか確かに…だけど……」

 

「それに同好会や妹さんに何かあればあなたに連絡する。そして解決方法をあなたが考えて私が伝える……これならどう?」

 

少し違うような気もするが、瑠和はその提案を受け入れた。実際、後者の案は同好会に頼んでそのような活動をできないかと頼んでみようと思っていたところだった。

 

そしてその日の放課後、瑠和は果林の部屋に案内される。

 

「じゃあ早速よろしくね」

 

「…まぁ、家事は得意だし任せてもらってもいいとは言いましたが」

 

最初に頼まれたのは部屋の掃除。果林自身の忙しさとだらしなさが相まって部屋はそこそこ汚かった。

 

「本当にいいんですか?」

 

「なにが?」

 

「異性に掃除なんか任せて…」

 

瑠和はそこが少し気になったので聞いてみる。後々なにかしら問題が起きても困ると思ったのだ。

 

「普段妹さんと暮らしてて、家事はあなたがやってるんでしょう?だったらなれてるんじゃない?」

 

「いや、俺はいいですけど果林さんが…」

 

「私もそんなに気にしないわ。エマがたまに片付けてくれるけど、あんまり頼りすぎるのも申し訳ないのよ。だから私としても誰であれ手伝いがほしかった。要はウィンウィンの関係ってこと。それとも……あなたは私の下着や布団でナニかするような変態なのかしら?」

 

「しませんよ。気にしないって言うなら………良いですけど」

 

「じゃあ私は同好会の手伝いにいってくるから。あとはよろしくね」

 

「わかりました」

 

若干納得いかないところもあるが、悩んで動けなくなるよりマシではあると瑠和は思った。どんな形であれ璃奈の助けになるのなら喜んで仕事は引き受けるつもりだった。

 

他に頼まれているのはスケジュール管理、夕食作り、道案内、テスト勉強の手伝い等々。

 

(年下にテスト勉強のサポート頼むのってどうなんだ?)

 

と思いつつも専門科目以外の科目であればある程度はサポート可能であったため瑠和は引き受けることにした。とりあえず今できることを必死でやろうと思ったのだ。

 

それから、何時間か経った。

 

「ただいま」

 

日も沈む頃、果林が帰ってきた。

 

「おかえりなさいませ」

 

夕食を作って待っていた瑠和が出迎える。上着を受け取りハンガーに掛けて居間まで持っていった。果林が居間の扉を開くとそこには隅々まできれいに掃除され、整理整頓された部屋だった。

 

「まさかここまでするとは思ってなかったわ…」

 

「クローゼット開けたら雪崩が起きるとは思いませんでしたがそこも片付けておきました」

 

それを言われ果林は少し顔を赤くする。

 

「し、しょうがないじゃない!エマにあまり恥ずかしいところ見られたくなくて…」

 

どうやら掃除を手伝ってもらう時に少しでもよく見せたかったのか知らないがクローゼットに積めたらしい。

 

「別に口外しませんよ。一応任されたのでできる限りやっておきました。食事も栄養バランスとか考えて作りましたので」

 

普段運動をあまりしない妹のために栄養バランスを考えた料理は得意であった。

 

「そう。ありがとう」

 

「あと、体型維持のためでしょうけど食べなさすぎるのもよくないです。明日の朝飯と昼飯つくって冷蔵庫に入れておいたので食べてください」

 

瑠和はゴミ箱にたまったゼリーの空き袋や冷蔵庫の中身を見て瑠和は普段体型維持等のために色々気を使っているのに気づいた。しかし、ゼリーよりもしっかりバランスを取った食事の方が身体に良いと思った瑠和は果林のための食事を作ったのだ。

 

「…あなたライフデザイン学科の方が向いてるんじゃない?」

 

「それに特化できるほど才能はないと思います」

 

一通りやったことの説明を終えたあと、瑠和は帰ろうとした。これから自分の家での家事と炊事が待っている。

 

「じゃあ俺はこれで」

 

荷物をまとめて帰ろうとしたとき、果林が口を開く。

 

「…妹さん………璃奈ちゃんがあなたがいないことに驚いてたわよ」

 

「え?」

 

瑠和は足を止めた。

 

「あなたに強く進められたからてっきりいるものだと思ったんでしょうね。感謝云々じゃなく璃奈ちゃんはあなたとやりたいんじゃない?スクールアイドル活動」

 

「…」

 

物事を客観的に見るのは大切である。瑠和と璃奈の関係は、基本的に瑠和の一方的な行動が目立つ。璃奈の気持ちを含め、客観的な意見聞かされ瑠和は少し驚いた。

 

「私としてはこれからもあなたに色々手伝ってもらえればうれしいけど、璃奈ちゃんはどうなんでしょうね」

 

「俺なんかが、一緒にいて嬉しいわけないと思います」

 

少し考え、瑠和はそれだけ伝えて帰っていった。一人になった果林は小さくため息をつく。

 

「自己肯定感のない人は、苦労するのよねぇ…はむっ………あら、おいしい」

 

 

 

―数時間前 同好会部室にて―

 

 

 

同好会が始まろうというとき、璃奈と愛は部室に現れた。二人とも入部希望で来たのだ。一通りメンバーを見まわした後、璃奈はせつ菜に尋ねた。

 

「あの、お兄ちゃん………天王寺瑠和っていう人はいませんか?」

 

「え!?えっと…」

 

放課後になる少し前、せつ菜宛にメッセージが届いた。それは同好会に妹の璃奈が行くが自分がこれまで手伝ってきたことは教えないでほしい、そして自分はもう同好会には顔を出さないという旨の瑠和からのメッセージだった。

 

せつ菜はそれを全員に伝え、とりあえず口裏を合わせるように頼んだ。

 

「ええ、いませんが」

 

「………そうですか」

 

それから各グループに分かれての練習という形になったが、璃奈と愛が練習に来ない間に瑠和について話している部員も少なくなかった。

 

「どうしたんだろう、瑠和君」

 

「あんなに同好会を復活させたいって必死だったのに…」

 

歌唱力グループのせつ菜、侑、歩夢即ち二年生組もそうだった。

 

「まぁ瑠和さん自身、元々璃奈さんを同好会に入れたいという思いで見学に来ていただけですから…目的が達成された以上関わる理由がないのはわかりますが……」

 

体操グループの三年生も二人が去った後に同様の内容を話していた。

 

「なんで手伝ってたことを知られたくないんだろうね」

 

「……」

 

「彼方ちゃん的にも、瑠和君がいてくれたらうれしかったんだけどねぇ~アドバイスとか、行動力とか、気遣いとかマネージャーとかに向いてると思ったんだけど…」

 

「……………そこまで気にする必要あるかしら」

 

唯一事情を知っている果林が呟く。

 

「果林ちゃん?」

 

「せつ菜のときもそうだったけど、結局は本人次第でしょう?彼自身がアイドルになりたいわけじゃないんだし、下手に気にするよりも今回ばかりは本人の気持ちを尊重すべきじゃない?」

 

「…それは………そうかもしれないけど」

 

そしてこちらは一年生組

 

「しず子はどう思う?」

 

「瑠和さんのこと?うーん…同好会が復活したし璃奈さんも同好会を始めたしもう来ないっていうのはわかるけど…」

 

「それでも自分がいたことを秘密にしたいっていうのは変だよねぇ。りな子だっていてほしかったって感じはあったし……」

 

その日、同好会内部では瑠和の話題で持ちきりだった。そんなことも知らずに瑠和は一人果林の家を片づけていた。そして、その数時間後に瑠和は家に帰宅する。

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい」

 

家に入ると璃奈が出迎えた。

 

「遅かったね」

 

「ああ、ちょっとやることができてな…璃奈は同好会、どうだった?」

 

「…楽しかった」

 

「そうか、ならよかった。これからも俺は帰りが遅くなることは何回かあると思うが、大丈夫か?」

 

「……うん」

 

璃奈の表情が一瞬曇る。璃奈は表情に変化がないので正しくは表情というより心が曇ったというべきか。普段瑠和はその心を読み取ることは得意だったが、意識が璃奈に向いていないこの時、それがうまくできずに気づいていなかった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

翌日、愛は別の部活の助っ人をしていた。その部活が終わり、着替えを済ませると更衣室の前に菜々(せつ菜)がいるのが見えた。

 

「おーい!せっつー!」

 

「愛さん!?」

 

名前を呼ばれた菜々は驚いて周りを確認しながら一気に愛に近づいて小声で話しかける。

 

「愛さん!やめてください!」

 

「あ、今は中川菜々だっけ。ごめんごめん」

 

優木せつ菜はスクールアイドルをやるための偽りの名前であることを思い出し、愛は笑いながら謝った。

 

「私のこの行動も問題あることは理解してますが、できれば気を付けていただきたく…」

 

「今度からは気を付けるよ。部活終わり?なら一緒に帰ろーよ」

 

二人はそのまま一緒に下校をした。しばらく歩いていると愛は菜々の様子がおかしいことに気づく。

 

「どうかしたの?顔暗いよ?」

 

「…え?あ、顔に出ていましたか…」

 

「悩み事?だったら相談に乗るよ?」

 

「…実は」

 

菜々は瑠和のことを一通り話した。同好会の復興に尽くしてくれたこと、自分を激昂してくれたこと、復興後に来ないことを連絡されたこと。

 

「私も彼のことを気にかけているのですが……どうも打ち明けにくく…理由も事情も分かりませんし、どう声をかけていいかと………以前は私が引き留められる側でしたが、引き留める側になると改めて考えさせられます」

 

今回問題なのは瑠和はせつ菜と違って絶対に必要な存在ではないことだ。確かにサポーター、マネージャーとしての能力は高く見えるがそれまでだ。せめて事情だけでも聴きたいとせ菜々は思い、それと同時になぜ瑠和が自分をあそこまで必死に引き留めたかをよくわからさせられた。

 

「そんなことがあったんだ………そっか…るなりんが…」

 

「ご存じなんですか?瑠和さんのこと」

 

「うん、まぁね…。じゃあ、ちょっと愛さんが話してみるよ」

 

愛は自身が聞くことを提案した。璃奈との友人であり、瑠和を知っている自分の仕事だと考えたのだ。翌日、愛は普通科の教室に向かい、瑠和を呼んだ。

 

「あ、いたいた!おーい!るなりん!」

 

「…宮下……どうかしたか」

 

「一緒にお昼でもどうかなって」

 

「………そうだな」

 

断る理由もなく、最近の璃奈の様子や同好会での様子を聞けるチャンスだと考えたのだ。西棟屋上で二人はお弁当を開く。

 

「いただきまーす!」

 

「いただきます…」

 

「あーん………おいしー!」

 

愛はいつも通りなテンションで食事をするが、瑠和のテンションは落ち着いていた。

 

「で、なんか用か?」

 

「へ?」

 

「学科まで違うお前が態々昼飯に誘ったんだ。なんか話があるんだろ?」

 

「あはは!バレた?」

 

「そりゃな」

 

自然な流れで話を切り出そうとしたが、状況から簡単に狙いは見抜かれた愛は観念したように普通に話を始める。

 

「…せっつーたちに聞いたよ。るなりん、同好会の再興に必死だったのに復活して、りなりーが入る直前にやめちゃったって」

 

「………お前には関係ないだろ」

 

「あるよ!だって愛さん今同好会のメンバーだし!」

 

驚きの告白をされる。璃奈が同好会に入ったことは聞いていたが愛までもが同好会に入ったということまでは聞いていなかった。

 

「そうか、お前も同好会に…」

 

「この間のせっつーの歌聞いて、本当にドキドキして…未知なる道に進んでみたくなったんだだから私もりなりーといっしょに同好会に入ったんだ」

 

瑠和は果林に伝えたことと同じことを伝えた。感謝されたいわけじゃないこと、璃奈の見えないところで支えてやりたいこと。

 

「るなりん…」

 

「なんで来ないんだって、昨日上原と高咲にも言われたよ……一応同じ話はした。納得はしてないだろうけど一応それで話は終わった。身勝手な理由だってわかってる…だけど、俺はきっとそばにいない方がいい………」

 

「どうして?」

 

「きっと璃奈は俺に怒ってる…。本人はそう思ってなくても、深層心理ではそう思っているはずだ…。だから俺は」

 

「そうやって逃げるの?」

 

「なに?」

 

愛は話された内容で大体のことを察した。詳細はわからないが過去に瑠和は璃奈に対して何かしら、負い目を追うようなことをした。璃奈はそれに気づいていない様子だが瑠和自身はそのことに関して責任を感じている。

 

「愛さんはりなりーとるなりんに何があったかは知らないし、言ってることはわかるけど、愛さん的にはるなりんが逃げてるようにしか見えないよ。大事なのはその罪ってものに向き合うことだと思うな」

 

「十分向き合ってるさ!だから俺は同好会を…」

 

「少し厳しめなこと言うと、まだちゃんとは向き合えてないと思う。それに気づけない限り、るなりんにりなりーを支える資格は無いと思うよ?」

 

「最初からそんなもの…」

 

「あるよ。誰かが誰かを支えることに、助けることに理由は必要ないよ。でもるなりんの場合は違う…」

 

「………もういい」

 

瑠和は食べかけの弁当を片付けてその場を去った。去っていく瑠和の背中を見ながら愛は呟く。

 

「感謝されたいわけじゃない……だけどそれって責められたくないってことじゃないの?」

 

 

 

続く

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