彼方の近衛   作:瑠和

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本来ストーリーに組み込もうとした設定の一部を改変し、再編した物語です。完全に自分のペースでおまけに数時間で書き上げたので読みにくいしわかりにくいかもしれませんがスクスタへの感謝の気持ちです。
まぁ一種のアナザーストーリー的な感じで読んでください。


ありがとうスクスタ
IF:虹の空


それは、いつも通りの朝だった。土曜日で部活だけの日、瑠和と彼方は一緒に登校していた。雑談をしたり、惚気たり、普段通りの、なにも変わらないはずの朝だった。

 

「そういえば今日の実習で………」

 

お互いの顔を見ながら話をしている途中、瑠和が誰かにぶつかった。

 

「おっと、すいませ………あ、エマさん。おはようございます」

 

すぐに謝ったが、相手がエマであることに気づくと瑠和はいつも通り挨拶をする。しかし、エマは瑠和の方をみたまま黙っている

 

「エマちゃん。おはよ~」

 

彼方も挨拶するが返事はない。二人はどうしたのだろうと顔を見合わせる。よく見ると普段のエマとはかなり違うことが分かった。服装は乱れているし、三つ編みを結んでいない。髪もぼさぼさだ。

 

「…………ねぇ」

 

少しして、ようやくエマが口を開いた。

 

「どうして彼方ちゃんと一緒にいるの?」

 

「え?」

 

「部屋の鍵はかけておいたはずなのに………どうやって…それどころか、瑠和君との記録も消えて…」

 

エマは何やらぶつぶつつぶやいてる。普段の様子に比べて何かが違うエマの様子に瑠和も彼方も心配する。

 

「えっと………エマさん?どういう意味で…」

 

「どうしてぇ!!!!」

 

瑠和がエマを心配して近づくと、エマは突然瑠和の首につかみかかり、壁に押し付けた。エマは結構体格がいい上に山育ちの屈強さがある。油断していると女子とはいえ力負けすることもあるのだ。

 

「エマちゃん!?何してるの!?」

 

「あが…」

 

「あなたが私を裏切るなら………いっそ、あなたを…」

 

エマが首を絞める力は本物だった。何かの冗談でもどっきりでもないことはすぐに分かった。彼方も必死にエマの手を引きはがそうとするがびくともしない。

 

かなり苦しい思いをしながらエマの顔を見ると、エマの瞳には涙が浮かんでいた。何がエマをこんなにも突き動かすのか、遠のく意識の中で瑠和はそんなこと考えていた。

 

「う…………わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

瑠和がかなり危ない状態に陥ってると気づいた彼方は意を決してエマに渾身の体当たりをかました。瑠和にばかり意識をやっていたエマはその体当たりに負け、瑠和から手を離した。

 

「げほっがはっ!」

 

「瑠和君、こっち!!」

 

彼方は瑠和の手を取って校舎に走っていった。ともかく人の多い場所に行けばエマもうかつに手は出せないだろうと思ったのだ。

 

校舎に入り、しばらく走っていると廊下の先に愛がいるのが見えた。

 

「愛!」

 

「愛ちゃん!」

 

「ん?おお、どったんるなりん、カナちゃん。そんな慌てて……」

 

「実は、さっきエマちゃんに襲われて」

 

「ええ?エマっちが!?それマジ!?なんで!?」

 

あの温厚なエマが突然襲い掛かってきたそんな話同好会のメンバーが信じるはずもない。しかし、二人の慌てようと瑠和の首に残った後を見てさすがに冗談ではないことはわかったらしい。

 

「わからない………急に首を絞めてきて」

 

「ええ?大丈夫?うわ~結構しっかりあと残ってんね………愛さんとるなりんが付き合うって話になったときも祝福してくれたのに…」

 

「…………え?」

 

瑠和を心配しながら、愛はとんでもないことを口走った。彼方はその場で止まる。瑠奈も驚いたのか動きが止まった。

 

「え?愛ちゃん今なんて…?」

 

「?」

 

愛が彼方の質問に首をかしげていると後ろから誰かが来た。

 

「あら、珍しい集まりね」

 

果林だ。愛はユニットメンバーでもある果林に助けを求めるように駆け寄る。

 

「あ、カリン!大変だよ!エマっちがるなりんのこと襲ったって……」

 

「え?何の冗談よそれ?あのエマがそんなことするわけないじゃない」

 

「愛さんもそう思うけど……でもるなりんの首にしっかり跡が……」

 

「ええ?だって私と瑠和が付き合うって話の時も後押ししてくれたエマよ?そりゃちょっとした三角関係にもなりかけたけど…」

 

再び、とんでもないことを果林が言った。そのことに全員が表情を険しくする。

 

「………え?カリン、何言ってるの?るなりんが付き合ってるのは愛さんだよ?」

 

「…………あなたこそ何言ってるの?それにエマが襲ってきただの、いくらユニットメンバーとはいっても言っていい冗談と悪い冗談があると思うんだけど………」

 

一瞬で一触即発しそうな空気なる。彼方は瑠和の前に立ち、小声で瑠和に話しかける。

 

「瑠和君今は逃げて」

 

「でも…」

 

「このままここにいたら瑠和君が確実に詰められるよ!彼方ちゃんは瑠和君のこと信じてるけど………彼方ちゃんが話まとめておくから!今はいないのが一番だよ!」

 

「……ごめん!」

 

瑠和は慌てて廊下の奥に駆け出した。

 

「あ、るなりん!?」

 

「待ちなさい!」

 

「すとーっぷ!ちょっと待って二人とも!」

 

彼方が必死に止めてくれる声が聞こえた。彼方に申し訳ないと思いつつ瑠和は必死に走った。とりあえず信用できる相手のところでかくまってもらうしかない。

 

(くっそ!なんだ!?何が起こってんだ!?なんでみんなこんなことに………!)

 

しかし、この状況では皆同じ事言いそうで怖かった。そんな瑠和を止める声が聞こえた。

 

「廊下を走ってはいけませんよ!」

 

瑠和を止めたのは栞子だった。

 

「栞子………」

 

栞子は瑠和の元カノだ。仮に何らかの原因でみんなが瑠和の彼女であると思い込んでいるのだとしても栞子は一度別れた身だ。そうでない可能性がわずかにあった。

 

「どうかしたのですか?なにか慌てている様子でしたが…」

 

「いや…実は…………いや、その前に、栞子、お前は俺の…なんだ?」

 

「…?何を言っているのですか?」

 

瑠和の質問に栞子は何を言っているのかわからないという表情をした。それに瑠和は少し安心した。この言葉に対し、栞子であれば「彼女ですが?」と即答しそうだと思ったのだ。

 

瑠和が事情を説明しようとすると、栞子の表情が急に変わった。

 

「………時間はかかってしまいましたが、ようやく出会えた運命の人………じゃないですか」

 

栞子は蕩けた声で瑠和の手を取り、その手を自らの頬に摺り寄せた。

 

「…っ!」

 

瑠和は栞子の手を振りほどき、すぐに逃げ出そうとした。しかし、瑠和の背後から誰かが抱き着きてきた。

 

「ようやく見つけたわ!瑠和!」

 

今度は嵐珠だ。

 

「もう、朝起きたら部屋にいないんだもの!でもよかった、ちゃんと近くにいてくれて」

 

その言葉の意味するところはもう分かっていた。瑠和は慌てて嵐珠の手を振りほどきその場から離れようとした。しかし、振りほどいた先に誰かがいる。

 

「Hey、何してるのさ」

 

「ミア…」

 

「そうだ、新しい曲が完成したんだ。僕のボーイフレンド特権で同好会のみんなより先に聞かせてあげるよ」

 

ミアまでもだ。しかもこの場での発言としては最悪の燃料を投下してくれた。ミアの発言に嵐珠が反応する。

 

「ちょっとミア、ボーイフレンドってどういう意味?」

 

再び一触即発しそうな空気なる。瑠和がどうしようかと思っていると瑠和の腕が引っ張られる。

 

「瑠和先輩、こちらです」

 

瑠和を引っ張ったのはしずくだ。もう何も信じられない瑠和だが、この場にいるよりかマシだと考え、しずくの後についていった。しずくは人目に付きにくい場所を移動して人気がないところに来た。

 

「大丈夫でしたか?」

 

「ああ……あいつら放っておくのは少し気が引けるが………」

 

「なぜか今日は皆さん少しおかしくなってて…………さっきせつ菜先輩とかすみさんとか、侑先輩とも話していたんですけど、瑠和さんとデートしたとかなんとかって…」

 

「ああ………しずくちゃんは大丈夫か?」

 

「はい。私はたぶん…」

 

「よかった………ようやく彼方さん以外のまともな人に…」

 

刹那、瑠和の肌に冷たい感触が当たったかと思うとガチャンという音が聞こえた。瑠和が恐る恐る手首を見てみると、手錠がつけられていた。片方は瑠和の手に、もう片方はしずくの手に付けられている。

 

「…………しずくちゃん?」

 

「何が起きたかは知りませんが………こうなればこの世界の瑠和さんも手に入れるだけです。さぁ、一緒に行きましょう?」

 

しずくの表情は常人のそれでないことはすぐにわかった。今朝見たエマの表情に良く似ていて、それでいてエマ以上に狂気を孕んだ笑みに瑠和は恐怖を感じていた。

 

「は、放し…」

 

瑠和が抵抗しようとしたとき、瑠和の手に鋭い痛みが走った。見るとしずくの手には千枚通しが握られており、それが瑠和の手の甲に軽く刺さっていた。

 

「………っ!」

 

「変に抵抗すると、手錠の鎖の穴と瑠和さんの手をこれで固定しますよ?」

 

しずくの瞳には光がなかった。冗談でも何でもないことはその目が物語っている。まずい、逃げられない。

 

瑠和が覚悟を決めかけた時、空間が割れた。そしてその割れた空間から誰かが飛び出してきた。

 

「お父さん!」

 

飛び出してきたのは明日和だ。明日和は着地と同時にしずくに蹴りを放った。しずくがそれをよけると同時に瑠和もしずくが動いた方向へ引っ張られる。そしてしずくはなんの躊躇もなく千枚通しを明日和に向けて突く。

 

明日和は千枚通しを腕にかすらせながらも後退して構える。

 

「この世界の………瑠和さんの子供ですか。申し訳ありませんが邪魔しないでいただけますか?」

 

「そういうわけにもいかないんですよ。しずくさん瑠和さんは………いえ、お父さんは返してもらいます」

 

「では、力尽くでどうぞ」

 

しずくは瑠和の前に立ち、千枚通しを構える。しずくの言葉から一拍おいて明日和は一気にしずくに接近した。

 

しずくは千枚通しを突くが明日和は紙一重で躱し、蹴りを放つと見せかけ、隠し持っていた改造懐中電灯を光らせてしずくの目をつぶす。

 

「あぐっ!」

 

「はぁ!」

 

明日和の蹴りがしずくの腕に命中する。しずくは千枚通しを手放してしまい、さらにバランスを崩して倒れる。瑠和もそれに引っ張られて倒れた。

 

しずくが倒れると制服のポケットから手錠のカギが落ちる。明日和はすぐさまそれを拾い、瑠和の手錠を外して瑠和を立ち上がらせた。

 

「急いで!」

 

まだ目がつぶされたままのしずくを放って、明日和は瑠和を連れて自身が飛び出してきた空間の穴に連れ込んだ。

 

穴の先は以前瑠和も来たことがある空間だった。どこの平行世界ともつながっていて、どこでもない。階段の踊り場のような空間。そして、見覚えのある人物ももう一人いた。

 

「災難だったね。瑠和君」

 

「ナタ………」

 

高咲侑によく似た容姿の少女、ナタと名乗る少女だ。

 

「いったい何が起こってる!?もう朝から頭が混乱しっぱなしだ!なんで俺が同好会のみんな付き合ってることになってる!?」

 

瑠和はたまりにたまったフラストレーションをナタにぶつけた。

 

「落ち着いて、今日、あなたと付き合ってるって話をしたのは誰?」

 

「そんなん、同好会全員だよ………エマさんとしずくちゃんなんか………なんか、もう……」

 

「本当に全員?」

 

「え?」

 

瑠和は思い出してみる。最初はエマ。次は愛と果林。そして栞子、嵐珠、ミア、そしてしずく、また、しずくの話の中でかすみとせつ菜、侑もそんなことを言っていたと言っていた。

 

「そういえば、歩夢と璃奈はいなかったな」

 

「………歩夢は現直君とだからね。話に出てこないのは普通なんだ」

 

「でも、それを言ったら璃奈だって……家族なんだし」

 

「………違うよ。それが盲点なんだ」

 

ナタの言ってることがよくわからなかった瑠和は首をかしげる。

 

「どういう意味だ?」

 

「前に、私の世界やほかの世界では瑠和君がいない世界もあるって話をしたのを覚えてる?」

 

「ああ、してたな」

 

以前、平行世界の中には瑠和が存在せず、璃奈しかいないという世界もあるとナタは説明したことがある。

 

「それってさ、少しおかしかったんだ。兄弟のどちらかが存在しない平行世界があるとしたら、普通、いなくなるのは後から生まれる弟や妹がいないものだって思わない?」

 

確かに、普通そういう風になるとは思える。

 

「…………何が言いたい?」

 

ナタは割れた石を取り出した。ナタという少女がこの狭間の空間に来ることとなった原因の石だ。様々な願いをかなえることができるその石を割ってしまったことでナタはここの空間に来たのだ。

 

「この石は5つの破片となってあらゆる平行世界にとんだ。その破片を最初に拾ったのは、あなたの世界の璃奈ちゃんだった」

 

「………璃奈が?俺じゃなくてか?」

 

瑠和はおかしいと思った。その石を最初に拾ったのは瑠和のはずだったからだ。瑠和が拾い、二人をつなぐお守りとして璃奈渡したのは瑠和本人だからだ。

 

「実はね、この石はいろいろな願いを叶えられるけど、何でもってわけじゃない。叶えられるのは「出会い」に関わることだけ」

 

「…」

 

瑠和はこれまでの話を思い出す。

 

瑠和は知らないがナタが元居た世界にいた、高海千歌という少女が最初、自らがあこがれるスクールアイドルμ'sに「会いたい」という願った。それにより、本来あり得ない世界、μ'sと千歌が所属するAqoursが同時に存在する世界になった。

 

瑠和の娘、明日和は父がどういう人物か知りたくて石に願い、過去の瑠和に「会い」に来た。

 

まるで、パズルのピースがはまっていくように瑠和は何かに気づきつつあった。

 

「………それが、なんなんだよ」

 

「璃奈ちゃんは、自らを愛してくれる人を求めた。同好会に居場所ができたって卒業してしまえばずっと一緒とはいかない。ずっとそばで愛してくれる人を求めた。それは」

 

ナタは瑠和を指さした。

 

「兄弟」

 

「…………ちょっと待て……じゃあ、なんだ?俺は璃奈が石に願って作られた…璃奈の兄って言いたいのか?」

 

瑠和は冷や汗を流しながら答えにたどり着いた。

 

「まぁ、そういうこと。璃奈ちゃんを愛してくれる兄弟との出会いを求めたことであなたが生まれた。つまりあなたは、この世界の異物……ううん、特異点っていえばいいのかな?」

 

「そ、それ今の状況となんの関係が!そもそも、俺は璃奈を一人にしたんだ!全然愛しちゃいないじゃないか!」

 

「それはこの石の質の悪さみたいなところでね。たとえ出会いを変えたとしても、本人やほかの人間の本質が変えられるわけじゃない。Aqoursやμ'sが変わらなかったように、天王寺璃奈は天王寺璃奈………つまり無表情で愛情に飢える存在じゃないといけなかった。あなたがずっとそばにいたら天王寺璃奈はそうはならない。表情豊かで愛情に飢えない存在になってしまう。だから、あなたは「一時的に家族を愛さない時間を持つ」存在として生まれた」

 

「…………」

 

「そしてあなたは璃奈ちゃんが同好会メンバーともずっと一緒にいられるために、将来的に同好会の誰かと結婚するようになっている」

 

ナタの言葉に瑠和はうつむいて冷や汗を流すしかできなかった。つまり、家族をないがしろにした過去も、彼方を愛した気持ちも、すべて作り物だということだ。

 

「…………つまり、俺は………璃奈にとって都合のいいようにデザインされた……作り物の命ってことか?」

 

「うん、そういうこと。そして、あなたの存在が、今ほかの平行世界を脅かしている」

 

「どういうことだ?」

 

「あなたが生まれ、ほかの同好会メンバーと付き合う平行世界が増えたことで、平行世界の数が急激に増えた。それによっておそらく………ビッグバンの逆転現象、ビッグクランチが起きてる。各世界の「瑠和君と付き合っている世界のメンバー」が「彼方さんと瑠和君が付き合ってる世界」にまとまったのは、ビッグクランチが起きたから」

 

「………このまま放っておくとどうなるんだ?」

 

「…………世界が終わる。瑠和君の平行世界だけじゃなく、すべての世界が融合して、最終的に全部消える」

 

「…嘘だろ」

 

「本当。璃奈ちゃんを説得しようと思ったけど、ダメ。璃奈ちゃん自身、瑠和君を作り出したことが記憶からなくなってる」

 

「じゃあ、どうすれば………」

 

「…」

 

打開策を聞いてみたが、ナタは黙ったままうつむくだけだった。瑠和がひょっとして何もないんじゃないかと思っていると、これまで黙っていた明日和が口を開いた。

 

「私たちが、消えること」

 

「………は?」

 

「ビッグクランチはお父さんが存在することで起きた現象。お父さんが自らを否定し、消滅を受け入れれば、お父さんがいた世界は消える………お父さんと、私も消えちゃうけど」

 

瑠和はようやく、なぜこの場に明日和がいるのかを理解した。ナタは最初に明日和をこの空間に呼び、これまでの経緯を説明したのだ。

 

「………」

 

瑠和はあたりを見回す。あたりに浮かぶテレビの画面のような映像は各世界の入り口だ。みんな楽しそうにしている。

 

瑠和は明日和を見た。明日和は何も言わない。きっと、瑠和の選択を尊重するという意見の表れだろう。

 

「…………なぁ、ほかの世界の璃奈は、楽しそうか?」

 

「…うん、元気にやってるよ」

 

「そうか……じゃあ、俺がいなくても大丈夫だな」

 

それは、瑠和が自らの世界をあきらめる選択だった。瑠和は明日和を見る。

 

「ごめんな、明日和」

 

「…………いいよ。みんなの世界の方が大事だって思ったんでしょ?それに、ほかに方法がないならしょうがないって」

 

瑠和は石を握って願う。(すべて元通りに)と。少しすると、瑠和と明日和の体が光り始めた。消滅の兆しらしい。

 

「……………元気でやれよ、みんな」

 

意識が遠のいていく気がした。彼方を愛した日々が走馬灯のようによみがえる。

 

(………ああ………………せめて別れの言葉くらい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「瑠和君!!!!!!!!!!!!」

 

狭間の空間に誰かが飛び込んできた。そして消滅しかけていた瑠和を思いっきり抱きしめた。

 

「か、彼方!?」

 

「お母さん!?」

 

彼方だ。彼方の手には璃奈が持っているはずの瑠和と璃奈が二人で分けた石の片割れが握られていた。

 

「璃奈ちゃんから全部聞いた!ダメだよ!消えないで!瑠和君!!!!」

 

ビッグクランチの影響で、璃奈も全て思い出したのだ。そして、何が起きているのかを理解し、彼方にすべて託したようだ。

 

「いいじゃん!造り物でも!!デザインされた関係でも!!彼方ちゃんが瑠和君を愛しているのは変わらないんだから!!!!」

 

「……」

 

彼方の言葉に、瑠和は涙ぐむ。

 

「そんなん!!俺だって同じだ!!!俺だって消えたくない!!!だって!お前を愛してるから!!」

 

「……」

 

その時、瑠和と彼方は背中を押され、狭間の空間から追い出された。二人は海浜公園の浜辺に倒れこむ。

 

「!?」

 

「ナタ!?」

 

二人を押したのはナタだった。瑠和は狭間の空間を追い出されたと同時に消滅が停止する。その代わり、ナタが消え始めた。

 

「…………最高だよ。さすが彼方さんだね…………こんなところまで来られちゃったら…身代わりになりたくなっちゃうじゃん」

 

「そんな……なんでお前が!」

 

「本来消えるべきなのは私たちの世界のはずなんだ。だって、歴史の改変をしてる。そんな世界に比べたら、あなたたちの世界の方が、まだ可能性に満ち溢れてる」

 

「お前はどうなる!?こんな……」

 

「………気にしないで。これからも仲良くね。ああ、そうだ。これ、私が書いた日記。たまにでいいからさ、これ読んで私たちの世界のこと、思い出してほしいな。ライブの演出とかも書いてあるから、参考にして?」

 

「ナタ!!!!」

 

瑠和は手を伸ばす。しかし、それは間に合わず狭間の空間の入り口はふさがれた。瑠和は勢いのまま浜辺に倒れた。

 

「…………」

 

「瑠和君!!!」

 

そこにずっと瑠和を探してさまよっていたエマが現れた。

 

「見つけたよ………今度こそちゃんと理由…………を…」

 

瑠和に向かって歩いている途中でエマはその気迫を失い、その場にがくりと膝を折った。

 

「エマさん!?」

 

「エマちゃん!!」

 

二人が駆け寄る。すぐにエマは目を覚ますが、その瞳はいつものエマの瞳だった。

 

「あれ?………なんで私、こんなところに…」

 

ビッグクランチが解消され、この世界のエマが戻ってきたのだ。それが意味することは、ナタの世界が消滅したというとだ。

 

「…………くっ!あぁぁ……」

 

絞り出すような声で、瑠和はその場にうずくまり、涙を流した。急に泣き始めた瑠和を見てエマは慌てて駆け寄る。

 

「瑠和君?どうしたの?大丈夫!?」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「パパ~!ママ~!来て~!」

 

ここはお台場海浜公園の浜辺、一人の幼い少女が浜辺を駆けている。

 

「見て!虹!」

 

少女は虹を指さす。その少女の両親は虹を見て少し思いにふける。

 

「さて、このきれいな虹を守ったのは、誰でしょう……………」

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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