彼方の近衛   作:瑠和

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彼方の近衛、その続編構想は決まりました。これはその始まりの始まりです。
Aqoursがファイナルライブをするそうで。劇場版が終わるまでにせっかくなのでAqoursの小説も出せたら出します。


るなよん!のべらいず2!
瑠和としずくとおでかけ


「瑠和先輩」

 

「ん」

 

ある日、下校しようとしていた瑠和にしずくが話しかけてきた。

 

「どうかした?しずくちゃん」

 

「あの、もしこのあとお暇でしたら、付き合っていただけませんか?」

 

「あ~」

 

瑠和は彼方と同じバイトをしているので基本的に暇はないのだが、今日は彼方が家族で夕食を食べに行くということで、バイトは休みである。

 

彼方がいなければ瑠和もバイトをする理由もないので瑠和も休みにしたのだ。

 

「大丈夫だけど」

 

「よかったぁ。じゃあ、行きましょう」

 

しずくからこのようなお願いをされるのは珍しいことだなと思いながら、瑠和は一緒にお台場の街へ出かけていった。

 

 

 

ーダイバーシティー

 

 

 

しずくに連れてこられたのは最近オープンしたカフェだった。

 

「へぇ、こんな店できたんだ」

 

「はい。一度来てみたかったんですが、いま期間限定メニューがあって」

 

しずくが指差した先にはポスターが貼ってある。ポスターの文字を読んでみると、「期間限定!カップル様限定みかんパフェ!!」と書かれている。

 

「………………カップル?」

 

「はい♪」

 

瑠和がそれに気づいた瞬間、しずくは瑠和の腕に思いっきり抱き着いた。

 

「……………え?」

 

「彼氏役、よろしくお願いしますね?瑠和先輩♪」

 

しずくは小声で呟く

 

「…………」

 

店の目の前まで来てすでに列に並んでいる状態で、スクールアイドルとして顔が売れているしずくを振りほどくわけにもいかず、瑠和はしぶしぶその彼氏役を引き受けた。

 

店の中に入り、席に通されるとしずくはさっそくパフェを頼んだ。

 

「…………まったく、なんで急にこんなことを」

 

「だって、みかんパフェ食べたかったんです。それに………」

 

「?」

 

「彼方先輩ばっかり瑠和先輩を一人占めしてるんですもん。ずるいです」

 

そういってしずくは頬を膨らます。

 

「……………しずくちゃん、君の気持ちは嬉しいけど」

 

「わかってます」

 

瑠和が何か悟った表情で話し始めようとしたとき、しずくが遮った。

 

「瑠和先輩の気持ちが彼方さんから揺らぐことはない…………でも、たまの休みに後輩と出かけるのくらい、よくないですか?」

 

「まぁ……わかってくれてるならいいけど…」

 

「じゃあ、今だけはしずくって呼んでくださいね?先輩?」

 

「え」

 

一瞬戸惑いの声をあげるが、今は彼氏役をやっている状況だ。下手なことは言えない。

 

「別にしずくちゃんでもいいだろ?彼女だからって呼び捨てにする理由は…」

 

瑠和は小声で伝える。

 

「でも、先輩は、一年生はちゃん付けで、三年生はさんづけで…二年生とミアさんは呼び捨てですよね?」

 

「え……ああ…まぁ」

 

「正直、呼び捨てて呼ばれてる皆さんが羨ましいんです!」

 

よくわからないところで嫉妬され、瑠和はやや困惑する。

 

「いや、別に親しいから呼び捨てにしてる訳じゃ…」

 

「でも、彼方さんは彼方ですよね?ミアさんは年下なのになんで呼び捨てなんですか?」

 

そう言われると、少し困ってしまう。ミアに関しては完全に璃奈と同じ扱いで、つまりは妹と同一視してるだけなのだ。

 

瑠和は無意識にそれをしていたので、いまどうしてと言われてもすぐに答えられなかった。

 

「ん~。なんとなく……かなぁ?」

 

「じゃあ、私のことも「しずく」って呼んでください!一年生組で呼び捨てとかじゃないの私だけなんですよ!」

 

「え?あ…」

 

言われてみればたしかにそうだ。璃奈は妹だから呼び捨て、栞子は元カノだから呼び捨て、かすみは第一回スクールアイドルフェスティバルの裏で手伝ってもらったから感謝の印として「かすみん」呼びだ。

 

しずくだけ、「しずくちゃん」呼びのままなのだ。

 

「つっても…呼び捨てにする理由も特にないっていうか…」

 

「特別な理由が必要ですか?」

 

「急に普通に呼んでも、周りの目とか…彼方の目があるし…」

 

「じゃあ、二人きりの時だけ…なんてどうですか?」

 

「………わかったよ。しずく」

 

瑠和がそう呼ぶとしずくの顔は、ばぁっと明るくなった。そこにちょうどパフェが到着する。

 

「おまたせしました~。みかんパフェです!こちら、カップル証明として二人で「あ~ん」のしあいっこを写真に納めさせていだいてるんですけど、よろしいですか?」

 

「はいっ!もちろん!」

 

食いぎみにしずくが答えた。

 

(彼方、ごめん)

 

瑠和は彼方に心の中で謝罪をしながらしずくに「あ~ん」をし、しずくからもやられた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

みかんパフェを堪能した二人は帰路に着いていた。

 

「美味しかったか?しずくち……しずく」

 

「はいっ!とっても!それに…」

 

しずくは鞄から瑠和に「あ~ん」をしてもらっている写真を取り出した。

 

「素敵な思い出もできました 」

 

「…よかったね」

 

「それにしても、瑠和先輩が名前で呼んでくれる日が来るなんて、彼方さんと先輩が付き合ってからは想像がつきませんでした……こんなことがあるなんて、今日は雨でも降ってくるかも…」

 

刹那、台風でも来たんじゃないかと思うほどの大量の雨がお台場の街に降り注いだ。

 

(…………本当に)

 

(…………降ってきた)

 

その状況に二人はしばらくフリーズしたが、すぐにハッとする。

 

「しずく!こっち!急げ!」

 

「は、はいっ!」

 

二人は近場の駅に逃げ込み、雨宿りをする。

 

「確かに曇ってはいたが、いきなりこんなに降ってくるとは…」

 

「はい…すいません。私が不吉なことを口にしたばかりに…」

 

「いや、たまたまでしょ…」

 

「どうしましょうこの雨…」

 

瑠和はチラリとしずくに視線を移す。自分自身もだが短時間にもかかわらず全身くまなくびしょ濡れだ。

 

「……しずく、家来るか?」

 

「え?」

 

「そんなずぶ濡れのまま鎌倉まで帰ったら確実に風邪ひくし……ジャージくらいなら貸せるからさ」

 

「…いいんですか?」

 

「一応スクールアイドル同好会のマネージャーだからさ」

 

「い、いきます!行かせてください!」

 

しずくはずいっと身体を乗り出し、了承した。

 

「あ……わかった。じゃあとりあえず近くのコンビニで傘買ってくるな」

 

急な雨のせいか、コンビニに傘が1本しか残っておらず二人は1本の傘で天王寺家まで向かう。

 

雨の強さもあり、天王寺家につくまで再度くまなく濡れた二人だったがなんとかマンションまで到着する。瑠和は傘を折り畳み、しずくに差し出した。

 

「やれやれ、しずく、これ帰るとき使いな」

 

「…」

 

「しずく?」

 

「きゅう」

 

しずくはそのまま真後ろに倒れかけるが瑠和が間一髪のところで支える。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「す、すいません。ただでさえ今日、瑠和先輩とデートさせて頂いて…名前で呼んでいただいて、相合い傘におうちにお誘いされるなんて幸せ過ぎて…」

 

「…」

 

瑠和は小さく安堵のため息をつくと同時に、この少女がどれだけ自分に好意を寄せているのか実感した。

 

「さ、とりあえず部屋までいこう。風邪ひくよ」

 

二人はエレベーターに乗り、天王寺一家の暮らす部屋までいこうとした。

 

そのときだった。

 

突如として凄まじい音と衝撃がエレベーター内に走る。

 

「!?」

 

「キャア!」

 

二人は予期せぬ衝撃によってバランスを崩し、それと同時に明かりが消え、先程まで感じていた上に上がっている感覚が消えた。

 

「……しずく!大丈夫か!?」

 

しばらくなにが起きたかわからず、呆然としていた瑠和だが、すぐにスマホを着けてしずくの方を見た

 

「だ、大丈夫です。すこし腰を打ってしまいましたが…」

 

「よかった…」

 

ひと安心した瑠和はエレベーターの階数を表示している画面をみる。

 

「完全に消えてる…」

 

試しに緊急用のボタンなども押してみるが反応がない。

 

「この辺り一帯で停電が起きてるみたいです…。おそらく、雷が原因かと…」

 

しずくがスマホで調べたことを瑠和に伝えた。

 

「…こんな時に…。復帰するの待つしかないかぁ」

 

瑠和はため息をついてその場に座り込んだ。

 

「……ごめんな?こんなことになるなら直接帰った方がよかったかも」

 

「いえ!予想できたことではありませんし………むしろ私が誘わなければ…くしゅ!」

 

しずくは言葉の途中でくしゃみをした。

 

「あ………冷えるよな」

 

季節は冬真っ只中。このまま冷たい箱の中にいれば体調を崩すのも時間の問題だ。

 

「どうするか……毛布なんて持ってないし…」

 

瑠和はなにかないかと鞄のなかを漁る。

 

「………」

 

自分のために動いてくれている瑠和の背中を見ながら、しずくはすこし考える。

 

「…っ!」

 

しずくはそっと、瑠和の背中に抱きついた。

 

「………しずく?」

 

「毛布なんてないですから………だから抱き締めて……暖めてください」

 

「………ぁ…そ………………れは…」

 

だが、カバンにいいものが入っているわけでもない。瑠和は渋々承知し、上着とシャツを脱いで二人はそっと抱き合う。

 

「…………」

 

「………」

 

瑠和が動く音もなくなり、エレベーターの中には二人の吐息の音だけが響く。ただ座っているよりはずっと温かい感触で、瑠和も少しずつしずくを抱く力が強くなる。

 

「………………わたし、先輩が無理して彼方先輩と一緒にいる気がするんです」

 

急にしずくは話を切り出した。

 

「…そんな……こと」

 

「彼方さんと同棲紛いのことをしたり、慣れないバイトをしたり……先輩、最近絶対疲れてますよね?」

 

「……好きでやってるんだ。彼方と一緒だよ」

 

「でも、心配です…」

 

「…………しずく。どうして俺が好きなんだ?」

 

「え?」

 

「俺としずく、そんなに関りあったわけじゃないし、しずくがオーディション落ちたとき、俺は力になろうとしたけど……かすみんみたいにできなかった。どうして俺なんか」

 

「………………」

 

しずくは瑠和を抱く力を一層強くして抱きしめる。

 

「初めてだったんです。見破られたの」

 

「…?」

 

「私は、今までずっと演技してきました。いい子のフリ、みんなが望む桜坂しずくを………きっと両親にだって気づかれたことはありません…………だけど、あなたには見破られてしまった。誰にも見せるつもりもなかった本当の私……」

 

「…………しずく」

 

しずくはそっと瑠和の唇に指をあてた。

 

「だから………もっと私を見てほしいんです。先輩。本当の………いいえ?あなたにしか、恋人にしか見せない」

 

しずくは背伸びをして瑠和に顔を近づける。瑠和はそれが何を意味しているか分かっていた。

 

「しず…」

 

その瞬間、エレベーターの電気がつき、動き始めた。

 

「…………」

 

「…………」

 

灯りが着いたことで二人は目の前まで迫ったお互いの顔を見つめる。

 

「暗いと、妙にテンション上がっちゃうよな?大丈夫。すぐ忘れ…」

 

瑠和は顔を赤くして離れようとした。

 

しかし、しずくは何か決意を固めた目をして一気に顔を近づけた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ただいま」

 

「あ、お兄ちゃんおかえり。さっき停電があったけど大丈夫?」

 

瑠和が帰宅すると、先に帰宅していた璃奈が瑠和を迎えた。きっと兄はびしょ濡れで帰ってくることを予想していたのだろう。その手にはタオルが握られていた。

 

「璃奈さん、こんばんは」

 

「しずくちゃん。どうしたの?」

 

「…………今日は一緒に出掛けてて。タオルはしずくに渡してくれ。俺風呂の準備してくるから」

 

「う、うん」

 

瑠和は足早に風呂場へ向かった。なにか、普段と違う感じの兄に違和感を感じながらもしずくにタオルを渡す。

 

「しずくちゃん、お兄ちゃんとなにかあった?」

 

しずくは髪を拭きながら答えた。その瞳は、どこか重いような、満足そうな目をしている。

 

「…………何も?」

 

 

続く。

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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