彼方の近衛   作:瑠和

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りなりーの誕生日スペシャルです。いつかAnother
daysでも璃奈編を描きたいですね。


瑠和と璃奈と瑠璃色の夜

私には兄がいる。

 

名前は天王寺瑠和。

 

一度は離れてしまったけど、また会うことができた。

 

大切で、大好きなお兄ちゃん。

 

また一緒に暮らせるようになって、嬉しかった。朝から晩まで一緒にいられるようになって、本当に幸せだった。

 

そんな私たちの生活に変化が出始めたのは、夏休みが終わってから。

 

お兄ちゃんに彼女ができて、海外からの転校生が来て、お兄ちゃんはまた一時家を出て、戻ってきてからは…。

 

「お邪魔しまーす」

 

「いらっしゃい。彼方さん、今日はお泊まり?」

 

「うん♪彼方ちゃんスペシャルディナー作るから、ちょ~っと待っててね~」

 

これだ。

 

彼方さんは嫌いじゃない。寧ろ好き。優しくて、たよりになるし、お兄ちゃんを幸せにしてくれた。

 

…………だけど……。

 

「彼方」

 

「こーら、まだご飯の準備中だぞ~?お楽しみは、今夜………ね?」

 

「はいはい」

 

まぁ、恋人であり、年齢も年齢で、別にいいのだが…。なんというかこう、二人がいちゃついているところを目の前で見せられると……胸の中がモヤッとする。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

この気持ちはきっと、やきもちだ。璃奈はそれを理解していた。

 

「……お兄ちゃん」

 

無論、瑠和も苦しみ、悩んだ末に彼方と一緒になったわけで、瑠和に幸せになってほしくない訳じゃない。だけど、せっかくまた一緒に暮らせるようになったのだ。もう少し自分のことを見てもらいたかったというのが璃奈の本音だ。

 

「………」

 

だが、璃奈にはちょっとした楽しみがあった。

 

それは、明日だ。

 

今日は11月12日。明日は璃奈の誕生日だ。もはや彼方にぞっこんな瑠和であるが、せめて明日くらい、独占することが許されるのではないかと、璃奈は考えていた。

 

ともかく今夜は瑠和と彼方はお楽しみだが、あの兄のことだ。きっと朝から祝ってくれるだろう。璃奈は無意識にそんな期待を寄せていた。

 

 

ー翌朝ー

 

 

「ふぁ…お、おはよう璃奈」

 

「あ、お兄ちゃんおはよう」

 

瑠和が起きると居間には璃奈がいた。妙に眠そうな瑠和に璃奈は訝しんだ瞳を向ける。

 

「朝ごはんはなにがいい?」

 

「え…」

 

璃奈は驚いた。瑠和のおはようの次の台詞が「お誕生日おめでとう」じゃなかったことにだ。

 

「………あ、朝は、トーストとか……がいい」

 

少しどもりながらも答えると瑠和は小さく頷いて朝食の準備を始めた。

 

「…」

 

(ひょっとしてお兄ちゃん……忘れてる?)

 

瑠和は璃奈と一緒に暮らしていた時期、璃奈の誕生日は一度として祝わなかったことはない。小学生ながらも自分でプレゼントを用意し、必ず盛大に祝ってくれた。

 

そんな兄が、彼女との夜枷に夢中になり、自分の誕生日を忘れてしまった?

 

「お、お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「なにか………忘れてない?」

 

「…なにかって…?」

 

「………ううん、なんでもない」

 

言いかけた言葉を璃奈は押さえた。

 

「ふぁ……お、璃奈ちゃんおはよ~」

 

そして、同じく眠たそうな彼方が起きてきた。

 

「………彼方さん、おはよう」

 

璃奈は少しだけドスの聞かせた声であいさつした。だが、表情はいつもと変わらないことに彼方は疑問符を浮かべていた。

 

朝食を済ませ、登校する時間になったが璃奈はどことなく不機嫌な態度だった。

 

「なぁ、璃奈」

 

「……どうしたの?」

 

「俺、なんか、しちゃったか?」

 

朝食の時から璃奈の様子がおかしいことを感じ取っていた瑠和は、思いきって聞いてみた。

 

「なんでもないよ」

 

「いや、でも」

 

「大丈夫だから」

 

瑠和は瑠和で幸せを見つけた。それを邪魔する権利も意味もない。だから、無理に祝ってもらおうとは思ってなかった。璃奈はもうその考えにシフトしていたのだ。

 

「璃奈…っ!」

 

「なんでもないったら!」

 

瑠和が伸ばした手を璃奈ははたいた。

 

「っ!」

 

「あ……」

 

「…璃奈……ごめん」

 

「私こそ…ごめんなさい。でも、私は大丈夫だから」

 

璃奈はそう言い残して先に走っていってしまった。残された瑠和ははたかれた手を見て肩を落とす。

 

「璃奈…」

 

「瑠和君さぁ、いまの本気で言ってるかい?」

 

様子を見ていただけだった彼方が訪ねる。

 

「だって!あんな璃奈初めて見たから………俺がなんかしちゃったなら…」

 

彼方は頭を抱える。

 

「瑠和君って本当に…鈍いぜ」

 

「え?」

 

 

ー昼休み 中庭ー

 

 

「りなりー!」

 

昼休みに璃奈が中庭でお弁当を食べていると、愛がやってきた。

 

「お誕生日おめでt」

 

愛の声で振り向いた璃奈の瞳には涙がいっぱいに貯まっていた。

 

「どうわぁぁぁぁぁぁ!!?りなりーどったん大丈夫!?」

 

「愛さん……」

 

愛の姿を見た璃奈はそのままポロポロと涙をこぼしてしまう。

 

「だ、大丈夫!?りなりー!?どっか痛い!?」

 

あわてふためく愛とは対照的に、璃奈はただ涙を流すことしかできなかった。

 

少しして落ち着くと、璃奈は愛に事情を話した。

 

「そっかぁ!そうだったんだ。いやぁ、愛さんもさすがにびっくりしちゃったよ。でもよかったりなりーがいじめられたとかじゃなくて」

 

「心配させてごめんなさい。愛さん」

 

「んーん。しっかし前も思ったけど、りなりーほんとにるなりんのこと大好きなんだねぇ。」

 

「…」

 

璃奈はスマホを取り出し、ロックを解除する。璃奈のスマホのホーム画面には瑠和の写真が設定されている。

 

「もし、妹じゃなかったら……なんて、何回も何回も考えた。お兄ちゃんが私に優しいのは、私が妹だからっていうのもあるだろうけど、きっと本質」

 

「…」

 

「それがわかってから、お兄ちゃんのこと見てると……時々、身体がむずむずする…」

 

その発言を聞き、愛は顔を赤くしながら口を開けていた。

 

(うっ……わ~~お………マジ…?)

 

発言も無論そうだが、それ以上に、その言葉を口にする璃奈の横顔は、完全に、女の顔をしてた

 

(ただの兄妹かと思ってたけど、もっと深い仲になりかねないねぇ…)

 

「りなりー……もしカナちゃんとるなりん付き合ってなかったら……るなりんと……恋人になりたいとか思った?」

 

「………わからない。でも、たぶんそういうことじゃないと思う」

 

引き伸ばしたゴムが元に戻るように、愛はほっと胸を撫で下ろした。どうやら心の気持ちに気づいている様子ではなかった。

 

「そっか、なら大丈夫だよりなりー」

 

「え?」

 

もし璃奈の気持ちが、「自分を見てくれない」ことではなく「彼方が邪魔」という気持ちであった場合、修羅場であったがどうやらまだそこまでは行ってないようだ。

 

「るなりんは、なにがあっても、りなりーのお兄ちゃんだよ」

 

「……それはそうだろうけど…」

 

「大丈夫だって!きっとすぐに思い出すよ。大事な大事なりなりーの誕生日を忘れるわけないじゃん!」

 

「……だと、いいけど」

 

結局璃奈は放課後になるまで、浮かない顔で過ごした。

 

そして時間が過ぎ、放課後になり、璃奈はくらい気持ちを振り払わないとと思いながら同好会の扉を開けた。

 

「璃奈ちゃん誕生日おめでと~!!」

 

扉が開くと同時にクラッカーが鳴り響き、璃奈の頭にリボンがかかる。

 

「…え?」

 

「璃奈」

 

璃奈が驚いていると、メンバーの中から瑠和が前に出てきた。

 

「ごめんな、まさかお前が、そんなに誕生日楽しみにしてたなんて…思ってなかった」

 

「どういう…」

 

「今朝璃奈ちゃんが機嫌悪かったの、それ以外の理由だと思ってたんだって。瑠和君ってば、サプライズパーティーすることに気を取られちゃってて」

瑠和が朝、璃奈を心配したのはサプライズパーティーをやることを前提に考えすぎて、璃奈が誕生日を楽しみにしている前提が抜け落ちていたというなんとも間抜けな話だったらしい。

 

「え?」

 

「……」

 

瑠和はおもいっきり璃奈を抱き締めた。

 

「俺がお前の誕生日を忘れるわけないだろ!…でも、勘違いさせてごめん…」

 

「はいこれ」

 

彼方がプレゼントを渡す。璃奈が受け取り、開けてみるとそこには、小さなぬいぐるみが一つ。

 

「…?」

 

取り出してみるとそれは、瑠和のぬいぐるみだった。

 

「これは…」

 

「……遥ちゃんに、璃奈がなにか欲しがってなかったかって聞いてさ」

 

その言葉に、璃奈ははっとする。

 

 

 

ー数ヵ月前ー

 

 

 

それは、QU4RTZ結成時にお泊まり会をみんなでやったときだ。彼方の家に泊まりに行った夜、遥と璃奈は妹同士のトークをしたときの話。

 

「ねぇ璃奈さん、お兄さん…性別が違う兄妹がいるってどんな感じ?」

 

「どうっていわれても……お兄ちゃんはいつも私に会わせてくれたから、優しかった…。だから、彼方さんとあんまり変わらない気がする。私、あんまり女の子らしい趣味とかもなかったし」

 

「そっか…ちなみに、その……瑠和さんのこと…異性として好きになったり…」

 

「……考えたことはあるよ。でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんだから」

 

「…どういうこと?」

 

「仮に私がお兄ちゃんに告白したら、きっとお兄ちゃんは私を受け入れてくれる。でもそれは、本当の愛じゃなくて、お兄ちゃんが優しくて、私がその妹だから」

 

「…」

 

遥はなんとなく璃奈の言わんとすることがわかった。瑠和は璃奈を溺愛し大切にしている。その璃奈が瑠和を求めればきっと瑠和はそれを受け入れるだろう、

 

だが、それは璃奈を傷つけたくないというやさしさがそうするのであって愛はない。

 

璃奈はそう言いたかったのだ。

 

(そっか………でもそれって瑠和さんのこと異性として好きってことだよね)

 

遥は喉まで出かけたその言葉を飲み込んだ。それを意識させればきっと璃奈が苦しむのをなんとなく察したからだ。

 

「そういえば、これ、二人で作ったの?」

 

璃奈は彼方が部室に持ってきたてるてる彼方ちゃんの写真を出した。

 

「え?うん!次のフェスティバルで雨がふらないように!」

 

「………お姉ちゃんの姿したぬいぐるみ作れるなんてすごい。ちょっと、うらやましい」

 

「…瑠和さんのがあったら欲しかったりする?」

 

「…………うん」

 

 

 

ー現在ー

 

 

 

あの話のことだと璃奈は思い当たり、少し顔を赤くする。

 

「プレゼント、なにがいいかわからなくてさ………昨日彼方さんに教わりながら徹夜で作ったんだ」

 

「えっ………」

 

璃奈は再びはっとする。

 

昨日彼方が言っていた「お楽しみ」…それは璃奈のためのプレゼントを作る時間だったのだ。勝手に夜枷のことだと思い込みをしていた。

 

そして、その事へのひがみもあって、今朝瑠和に強く当たってしまったことを申し訳ないと思った。

 

「そう……だったんだ」

 

申し訳ないと思うと同時に、兄がここまで自分を想ってくれていたことに驚き、嬉しく感じたとき、自然と笑みが零れた。

 

「…あれ、璃奈ちゃんいま笑った!?」

 

「なに!?」

 

「え?」

 

「お、お兄ちゃん、彼方さん、みんな……あんまりみないで……恥ずかしい…」

 

それから、璃奈の誕生会は盛大に開かれ、遅くまで続いた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ー夜ー

 

その日の夜、瑠和が眠りにつこうとしたとき、部屋がノックされた。

 

「お兄ちゃん、いい?」

 

「璃奈、どうした?」

 

扉が開くと璃奈はなにやらもじもじしながら部屋に入ってきた。

 

「今日は、ありがとう。お兄ちゃんのぬいぐるみ、大事にするね」

 

「ああ、なんか兄妹のぬいぐるみってのもなんか恥ずかしいけどな」

 

「………それで…ね?まだ、誕生日だから……もう一つだけ、わがまま言っていい?」

 

「…なんだ?」

 

「一緒に、寝たい……」

 

その言葉に一瞬驚きつつもすぐに瑠和はにっこりと笑う。

 

「ああ、いいよ」

 

瑠和が布団に入ると、璃奈もそのとなりに入ってきた。

 

「ありがとう」

 

「うんにゃ」

 

ずいぶん子供っぽい願いだとは思ったが、考えてみれば十年近く会ってなかったのだ。昔はよく一緒に寝たこともあった。

 

誕生日くらい、昔に戻るのも悪くない。そう思いながら二人は微睡みに落ちていった。

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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