彼方の近衛   作:瑠和

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お待たせしました……。まだ第二章のストーリーはわかってないですが、OVAはやっていきます。といってもOVAに差し込めるストーリーはなかったので最終章の序章のような流れになります。久しぶりにコメントいただければ嬉しいです。



奏章
第一節 夢幻泡影


近年、親の自覚を持てない親という話をよく聞く。精神的に子供のままなのに、子供を持ち親の自覚を持てずにいるという話だ。

 

だが、逆に子供なのに、親の自覚を持つことになった場合、どうなるのだろうか。

 

「お父さん…………お父さん…………私をみてよ…お父さん!」

 

「うぁぁ!」

 

深夜、瑠和は飛び起きた。

 

「る、瑠和くん!?」

 

「………彼方」

 

今日、瑠和は近江家で泊まっていた。飛び起きた瑠和を心配そうに彼方が見ていた。彼方の姿を確認し、いま見ていたものが夢であることを確認した。

 

「大丈夫~?すごい汗だよ~?」

 

「ああ………大丈夫。ちょっと変な夢みただけだから」

 

「………でも、最近よくうなされてるって璃奈ちゃんから聞いたよ?………彼方ちゃん、とっても心配だよ…」

 

「………大丈夫」

 

瑠和は微笑んで彼方をやさしく抱き締めた。

 

「俺は、ずっと側にいるから」

 

そう囁く瑠和の表情は、彼方に語りかけたときの笑みはない。責任と、重圧がのし掛かったような、重い眼をしていた。

 

 

 

―空港―

 

 

 

歩夢が帰ってくる日になった。同好会は空港に集合し、歩夢の帰りを待っていた。

 

「瑠和君、はいあーん」

 

「あーん」

 

待合場で瑠和と彼方は相変わらずのバカップルっぷりを披露していた。彼方が家族への土産として買ったお菓子の一部を瑠和に上げていた。

 

「ま、二人は変わらずって感じで歩夢も安心するんじゃない?」

 

「かもね」

 

もはや見慣れた光景にミアとかすみは突っ込もうともしない。せつ菜が巨大なクラッカーを持ってきていたりしているがそれすらつっこもうとしない。

 

「……」

 

そんな中、栞子は先日行われたライブ映像を見返していた。自身の堅苦しさのあるMCを気にしていた。

 

「この間のライブ見てるの?」

 

「はい。ここのMCの反応が気になっていまして」

 

「ライブのMCとしては、ちょーっと固かったかもね」

 

「……私には、スクールアイドルとしての適性がないのかもしれません…」

 

「アホ」

 

刹那、瑠和の軽いチョップが栞子の頭に命中した。

 

「ア、アホ!?」

 

だが、栞子はチョップよりもそれと同時に言われた言葉に反応した。

 

「瑠和さん、アホとはどういうことですか?」

 

「…」

 

しかし瑠和はそれ以上はなにも言わず彼方の肩に頭を預けた。

 

瑠和なりになにか意図があって言った言葉なのだろうかと思い、栞子も瑠和に言葉の意味を訪ねることはしなかった。

 

「歩夢、一番最初に出られたって!」

 

侑の元に連絡が届き、同好会一同は出口の手前に集まる。せつ菜と嵐珠は巨大クラッカーを構えた。そして、ゲートに人影が見えた瞬間クラッカーを発射する。

 

「おかえりなさーい!」

 

しかし、クラッカーの餌食になったのは歩夢ではなかった。背格好は歩夢に似ていたが、別人だ。そしてそのすぐあとに歩夢と現直が驚きながら出てきた。

 

「…え?」

 

「あわわ…別人」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

すぐに嵐珠とせつ菜が頭を下げる。クラッカーを食らった少女は頭についたリボンを落としながら笑う。

 

「No program」

 

問題はないと笑う少女に侑は見覚えがあった。

 

「あれ、ひょっとして歩夢にメールをくれた…」

 

「アイラちゃんだよ」

 

「はじめまして。スクールアイドルやりたくて、日本にやってきました。アイラ・ハスティーです」

 

少女はアイラと名乗り、日本に来た理由を話した。同好会一同は一泊おいて同じ叫びを上げた。

 

「えぇー!?」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

日本に来た少女の名前はアイラ・ハスティー。歩夢にメッセージを送ってきた少女が今度は留学してきたのだ。同好会はアイラに日本を楽しんでもらうために各日付ごとに役割を決め、案内することとなった。

 

「んお?」

 

自宅でくつろぐ瑠和と彼方。瑠和は自身のスマホに何やら通知が来たのでスマホを開くとそこにはメイド服を着た5人が映し出された。

 

「どうかしたの~?」

 

「いや、今日も妹が最高にかわいいだけだ」

 

そういって瑠和はスマホの画面を見せる。

 

「お~。かわいいねぇ~」

 

「やっぱ妹は最高だな」

 

「そうだねぇ。彼方ちゃんも遥ちゃんに着てもらいたいよ~」

 

「………」

 

瑠和は彼方を見つめる。

 

「彼方も似合うだろうな」

 

「え~。それを言ったら瑠和君だって執事服着てほしいな~」

 

「俺には似合わないよ」

 

「似合うよ~瑠和君だっていい男なんだから」

 

「似合わないって」

 

「え~じゃ彼方ちゃん執事さんのカフェでも行っちゃおうかな~」

 

刹那、瑠和の手が彼方の肩を掴む。

 

「ダメ」

 

「じゃあ着よっか」

 

「彼方もな」

 

「惚気るのはその辺にしてそろそろ作らない?」

 

部屋の入り口にはいつの間にやら遥がエプロンを着て瑠和と彼方のやり取りを冷めた目で見ていた。

 

「おお、そろそろか」

 

「はーい。じゃ、やろっか」

 

これから瑠和たちはアイラをもてなすための料理の練習をする。そのために近江家に集まっていたのだ。

 

「それじゃ、彼方ちゃんはメイン作っていくから、瑠和君と遥ちゃんはお手伝い、よろしくねぇ」

 

「うん、任せて」

 

「おう」

 

とは言っても彼方にとってはおさらいのようなものだった。彼方はその辺のスーパーで買ってきた材料で屋形船の高級コースで出てきそうな料理を次々と作り出していく。

 

その中で当日彼方の料理を手伝う予定の瑠和も動きを見て学び、彼方もやり方を教える。

 

「相変わらずってかなんか手際よくなってないか?」

 

「そう?」

 

「もともと料理はうまかったけど、最近さらにうまくなってるよね」

 

妹の遥も彼方の料理の上達具合に驚いていたようだ。

 

「まぁ、一応一番の得意分野だからねぇ」

 

「え~?でも、私は瑠和さんが恋人になってからが一番伸びしろあった気がするなぁ」

 

「なんだ?ひょっとして美味しい料理でも料理でも振る舞ってくれるつもりだったか?」

 

「ん~?将来の旦那様に、おいしいご飯食べてもらいたいのは当たり前じゃない?」

 

その言葉に、瑠和は一瞬手を止める。

 

「…………瑠和君?」

 

「あ、ああ。すまん。いや、うれしいこと言ってくれるなって思ってさ」

 

「…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

瑠和はその日も彼方の家に泊まるつもりだった。二人はスーパーに行って夕食の材料を買い、ついでに璃奈も一緒に泊まることになったので途中で一緒に合流する最中だった。

 

「や~びっくりしたねぇ」

 

「そうですね」

 

「アイラちゃんにもスクールアイドルの良さ、しっかり伝えてあげないとねぇ」

 

「………」

 

その言葉を聞くと、瑠和は足を止める。彼方が(アイラちゃんにも)といったことに引っ掛かりを感じていた。「にも」というのは、それはきっと、アスカにも伝えてあげたことだからだ。

 

「瑠和君?」

 

(明日和………)

 

刹那、瑠和は激しい頭痛に襲われた。

 

「ぐ……」

 

「る、瑠和君?どうかしたの?」

 

ずっと苛まれ続けてきた明日和への罪悪感、責任感、彼方と結婚できるという幸せよりも大きくなった不安。それらが一斉に瑠和に押しかかったのだ。軽い頭痛かと思ったが、次第に痛みが強くなっていく。

 

「が………うぅぅ……っ!」

 

「ど、どうしたの瑠和君!」

 

瑠和は頭を押さえたままふらつき、近くの柱に体重を預ける。

 

「があぁぁぁぁぁ!うあぁぁぁぁぁ!……………ぁ…すか……」

 

意識が消えていく感覚が分かった。倒れかかったとき、瑠和を支えようと駆け寄ってくる彼方のさらにその先に明日和の姿が見えた気がした。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「う………」

 

妙に明るい部屋で眼を覚ます。

 

なぜか眼を覚ますことが久しぶりな気がして、変な気分だった。

 

「お兄ちゃん!」

 

声がした。声がした方を見ると、そこには妹の璃奈がいた。

 

「ああ……璃奈」

 

「大丈夫?お水のむ?」

 

「大丈夫……」

 

「起き上がれる?」

 

「ああ……」

 

「ゆっくりね」

 

まだぼうっとして、どうして自分がいま、「こんなところ」で寝ているのかよくわからない。ただ、璃奈がいるということは、少なくともおかしい状況でないのは確かだと瑠和は思った。

 

「瑠和君!大丈夫!?」

 

「急に倒れたって聞いたわ!」

 

「どこか痛みませんか?」

 

「………」

 

数人の女の子が瑠和を心配している。その状況に瑠和はポカンとしていた。

 

「ねぇ、やっぱり病院に行った方がいいんじゃないかしら」

 

「そうかも………私、ちょっとお母さんに電話…」

 

「り、璃奈!!」

 

「どうしたの?」

 

「この人たち……誰だ?それに、ここはどこなんだ!?」

 

「え…………」

 

瑠和を心配していたのはスクールアイドル同好会の面々。知らない人間などいない状況だった。そしてここは彼方の部屋。何度も泊まり、何なら彼方と身体を重ねた部屋だ。

 

「………冗談?」

 

「はは、まさか、そんな記憶喪失なんて……アニメじゃないんだし……」

 

ミアと栞子が顔を見合わせて話していると、それを見た瑠和が驚く。

 

「………お前、栞子!?」

 

「………へ?」

 

「栞子だよな……なんでこんなところに…」

 

栞子は瑠和の元カノであり、その話はかなり前に終わっている。今更栞子の存在に驚いているところを見ると、

 

「本気………?」

 

瑠和は小さくうなずく。瑠和の記憶がある範囲を聞いてみると、どうやら高校に入学し、二年生の進学前、三学期の終わりくらいの記憶しかない様だった。

 

「ていうことはりなりーとクラスが一緒だったあゆぴょん、ゆうゆ、せっつーというか菜々っちのことは覚えていて、元カノのしおってぃーのことは覚えている……と」

 

「そうですね。ちなみに私が優木せつ菜という名前でスクールアイドルをやっているということは…」

 

「いや、知らないな……」

 

「やっぱり完全にスクールアイドルと出会った時のことは忘れてるってことか………ともかく、まだ病院大丈夫らしいから行ってきなよ」

 

「ああ………」

 

瑠和は璃奈と一緒に病院に向かう。部屋を出ようとしたとき、瑠和は軽く全員の方を見た。

 

「その……ごめん」

 

 

 

―病院―

 

 

 

瑠和を見てくれたのは、いつか瑠和が事故を起こしたときに観てくれた医者だった。もしかしたら事故の後遺症の可能性もあったからだ。

 

一通り検査を終えてから、瑠和は医者に呼ばれる。

 

「とりあえず色々検査はしてみたけど、結果として、どこにも異常はないわ」

 

「そ、そんな……だってほぼまる一年の記憶が飛んでるんですよ!?そんなことって…」

 

「解離性健忘症」

 

「………え?」

 

「人間の脳はよくできていてね。ストレスやトラウマのような、精神的につらいことが起きたとき、それから脳を守るためにつらいことに関する記憶ごと消すことがあるのよ。正確には消すんじゃなくて簡単には思い出せない領域に隠すっていう方が正しいのかしらね。倒れたときの状況からしても、それが一番考えられるわ。」

 

「解離性健忘症………」

 

説明されたことはわからなくない。だが、飲み込めきれなかったのか呆然と立ち尽くすばかりだった。

 

「………治るんですか?」

 

呆然としている瑠和の代わりに璃奈が訪ねた。

 

「治る……かどうかはわからない。これが本当に解離性健忘症かどうかもまだわからないし、そうだったとしても絶対に記憶がもとに戻るっていう保証もないわ」

 

「そんな………」

 

 

 

―近江家―

 

 

 

「彼方、大丈夫?」

 

「うん………いや、ちょっと………ダメ……かな」

 

彼方は完全に傷心していた。愛する人が記憶を失い、すべて忘れてしまった。自分との大切な思い出。甘酸っぱい青春。それをすべて失ってしまったのだ。

 

彼方の傷の大きさは、計り知れない。

 

無論傷ついたのは彼方だけではないが彼方が最も傷が大きいといっても過言ではない。そんな中、璃奈から連絡があった。

 

「解離性健忘症………ストレスや、トラウマが原因………なんか最近変わったことあった?」

 

「うーん、愛さんはいつも通りに見えたと思うけどなぁ」

 

「嵐珠も……瑠和は結構表情に出やすいからわかると思うんだけど……」

 

瑠和に変わったところがないか話していると、ふと彼方はここ最近の瑠和を思い出す。

 

「………そういえば最近……瑠和君………うなされてた……」

 

「え?」

 

「そうだ………そうだ!うなされてた!でも、瑠和君大丈夫って言うから……傍にいてくれるって………彼方ちゃん、またいつか相談してくれるって勝手に思い込んで………っ!」

 

彼方は大粒の涙をぽろぽろとこぼしながら自分の行動を後悔した。

 

「彼方さんのせいじゃないですよ!」

 

「そうよ!きっと他の原因だって……」

 

「でも………だって!」

 

かなり不安定な状態になっていた彼方を落ち着かせるため、エマとかすみが近江家に残り、他のメンバーは帰ることになった。

 

 

 

―帰路―

 

 

 

近江家を離れた各メンバーはそれぞれの帰路に着いた。そんな中、しずくは少し浮かれない表情をしていた。そんな表情を悟られないようにさっさと帰ろうとしたとき、後ろから声をかけられた。

 

「しずく」

 

「………嵐珠さん」

 

「少し、いいかしら」

 

嵐珠はしずくを連れてファミレスに来ていた。

 

「何か食べる?奢るわよ」

 

「いえ………私は結構です……」

 

「そう、じゃあ嵐珠はお肉でも食べようかしら」

 

そういってメニューを見る嵐珠に少ししずくはイラつきを感じていた。瑠和が記憶をなくすというただでさえ動揺するようなことが起こったのに目の前にいるこの先輩は、鼻歌交じりにメニューを眺めている。

 

「……………あの、なんなんですか?」

 

「…………しずくが妙に暗いように見えたから………って理由じゃダメかしら」

 

「気のせいだと思いますけど……」

 

嘘だ。

 

瑠和にストレスやトラウマがないかと言われ、僅かに思い当たる節があったのだ。いつか、瑠和と二人で出かけ、無理やり彼氏の役をさせたこと。それから、キスをしたこと。

 

それが瑠和が記憶を失うきっかけになったのではないのかとしずくは不安に思っていた。

 

「そう。まぁ、しずくがそういうならいいわ」

 

「……それでお話が終わりなら、私はここで」

 

しずくは席を立とうとしたが、その言動を見た嵐珠はメニューを力強く閉じ、音でしずくを止めた。そして真剣な眼差しでしずくを見た。

 

「…………しずく、少し嵐珠の話を聞いてくれない?」

 

「………」

 

しずくは鐘嵐珠という先輩のことを、ほんのわずかに苦手意識を持っていた。それはきっと、嫉妬による感情だ。

 

心のどこかで、しずくは瑠和に対して恋慕の情を抱いていた。でも、確証もなく、気づいたら彼方の物になってしまっていた。

 

だから諦めた。

 

振り切って次に進もうとしていた時に、彼女は、鐘嵐珠は現れた。

 

自分が諦めていた領域に、やすやすと踏み込んだことへの嫉妬。それが苦手意識の正体だ。

 

でも、ここで真剣に向き合うことで。彼女を知れるかもしれない。そう思ったしずくは席に着く。

 

「相談ですか?私でお役に立てるなら……」

 

「……そうやって仮面をかぶるのね」

 

一瞬で見破られた。しずくが被った社交的な自分の仮面を。

 

ジワリ、と冷や汗が出てくるのを全身で感じた。

 

「………別に、そんなつもりは」

 

「まぁいいわ…………実はね、嵐珠、今回の件………不謹慎だけどチャンスだと思ってるの」

 

「………え?」

 

「なんのチャンスか………言った方がいい?」

 

「………っ!」

 

そんなの口に出さなくたってわかる。瑠和を手に入れるチャンスということだ。

 

「何考えているんですか!そんなの!!」

 

「わかってるわ。嵐珠の言ってることが間違いだって。否定されるべきことだって…………でも今日初めて私と彼方は同じスタート地点に立ったことも事実よ」

 

「…………だからって…」

 

「それはあなたも同じなのよしずく。それなのに………少なくとも、自分の気持に見向きもしないで仮面被るより、マシだと嵐珠は思ってる」

 

「………」

 

その言葉を言われた瞬間、しずくは一気に二律背反の状況に立たされる。

 

不謹慎だと否定するのは簡単だ。だが、これは瑠和を手に入れる一世一代のチャンスであることもまた事実だ。

 

「仮に瑠和の記憶が戻ったとして、それまでにアピールしたことが無駄になるわけじゃない。少なくとも、揺らすことはきっとできる」

 

「…………私は……」

 

「嵐珠だけじゃないかもしれないわね。でも、同好会の中ではあなたが筆頭だった。だから声をかけさせてもらったの」

 

なんの筆頭か、それは瑠和に思いを寄せている人物のという意味だろう。

 

しずくは完全に黙り込んでしまった。希望の光と絶望の闇をいっぺんに浴びているような気分だった。

 

完全に黙り込んでしまってからどれくらい時間が経ったのだろう。いつもにやら嵐珠が注文したステーキが運ばれてきた。

 

(感覚でわかる。嵐珠さんにはカリスマ性がある。こういう時に出る妙な自信はきっと、そのカリスマ性から来ているものだと)

 

しずくは自分に問いかける。

 

(私はどうだ)

 

(いつだって自分に自身が持てなくて、仮面をかぶることで、自分を守って、目の前のチャンスだって……)

 

嵐珠は黙り込んでしまったしずくを尻目に、ステーキにナイフを通し、そのまま口に運ぼうとした。

 

その時、その手をしずくが掴んで止めた。

 

「…………什么??」

 

「…………………嵐珠さんの言ってることが…正しいかどうかなんて……知りません……だけど……私は…」

 

しずくは嵐珠の手からフォークをひったくり、そのまま自分の口に運ぶ。ステーキを咀嚼し、勢いよく飲み込む。

 

「私は……私も…っ!瑠和先輩が…欲しい………」

 

「そう……なら、嵐珠としずくはライバルよ」

 

 

 

ー翌日ー

 

 

 

「おはよう、瑠和君」

 

「あ……おはよう…ございます」

 

ここはいつも瑠和と彼方が朝学校へ行く前に集まる集合場所。彼方はいつも通りそこでまっていると、瑠和と璃奈が来た。

 

まるで、他人を見るような目で。

 

「記憶は……どう?」

 

「すいません…まだ…」

 

「うん…そんなに暗い顔しなくても大丈夫だよ!ちょっとずつ、思い出していこ?」

 

「はい…ごめんなさい」

 

瑠和の謝罪は、ただ状況的に反射で出たものではない。記憶を失っている瑠和ですらわかるくらい彼方の表情は暗かったのだ。

 

 

 

続く




最近イラスト書いてます→https://www.pixiv.net/users/19514287
Xアカウント(旧Twitter)→https://twitter.com/Kanataruna2459

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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