彼方の近衛   作:瑠和

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とりあえずこれで序章はおしまいです!次のメインストーリーの更新は来年の三章を見てからになるかもしれません!

今後の活動としては間話の「るなよんのべらいずEX」と「Anotherdays -case of Shizuku true end-」作成予定です。「嵐珠のために鐘は鳴る」はちょっと制作に行き詰ってしまったのでいったん進めやすい話を作っていきます。楽しみにされている方には申し訳ありません。


第六節 臥薪嘗胆

「……………」

 

アイラが参加したライブの打ち上げ後、瑠和は一人で悩んでいた。璃奈には先に帰れと言ったが、璃奈は帰りたがらなかった。瑠和の隣で、瑠和の腕を抱いている。

 

「どうかしましたか?」

 

「栞子」

 

「栞子ちゃん」

 

「……」

 

一瞬、璃奈の距離の近さに目が行くが、すぐに逸らした。

 

「もう皆さん帰りましたし、最終下校時刻が近づいてます」

 

「そうだな…………そうだ、栞子。お前にアイラはどう見えた?」

 

「え?」

 

「いや、ライブは楽しそうだったんだけどさ、妙に、なんていうか、諦めの「色」が見えたっていうか…」

 

「っ!!!!」

 

「っ!!」

 

二人は素早く瑠和の前に移動し、顔を見た。瑠和の眼は、栞子と同じ色をしていた。事故が起き、瑠和の眼は璃奈と同じ黄金色になり、もう他人の色は見えなくなっていたはずだ。

 

だが、いま瑠和の眼の色は依然と同じ色に戻ってる。

 

「お、お兄ちゃん!頭!見せて」

 

「え?」

 

「早く!」

 

「うお!」

 

瑠和が戸惑っている間に璃奈は瑠和の頭を掴んで無理やり下ろす。そして髪をかき分けて生え際のあたりを見る。そこにはちゃんと、事故に遭った日に縫われた手術跡がある。

 

ほんの一瞬瑠和が記憶を失ったのではなく、過去の瑠和と入れ替わったというオカルト的な考えになってしまったが、どうやらそうではないらしい。

 

「………どうして…」

 

「何がだ?」

 

「色が、見えるんですか?」

 

「あ?当然だろ」

 

「………」

 

 

 

―天王寺家―

 

 

 

「さすがに少し疲れたな」

 

「お疲れ様」

 

栞子はアイラのことについて調べてみると言ってくれたのでとりあえず瑠和は栞子に託して帰宅した。慣れないライブ会場の設営作業や受付の仕事は記憶を失った瑠和には少し重労働だった。

 

「お兄ちゃん、先にお風呂いいよ」

 

「え?いや、璃奈の方が汗とかかいてるだろ?」

 

「大丈夫。先に入って」

 

「まぁ、そこまで言うなら………」

 

変だとは思いながらも瑠和は璃奈の言葉に甘えてシャワーを浴びに行った。瑠和がいなくなると、一人残った璃奈は大きく深呼吸して自分の頬をぴしゃりと叩く。

 

「少しくらい過激じゃないと、本気だって思ってもらえない」

 

 

 

―風呂―

 

 

 

「ふー疲れたぁ」

 

シャワーを浴びながら瑠和は鏡を見る。軽く髪を上げてみるとそこには傷跡があった。事故に遭ったという話すらさっき璃奈から聞かされた。

 

この身体が本当に自分の物かも妖しくなってくる気分だ。

 

「………記憶、戻らなかったらどうしよう」

 

そんな時、風呂場の扉が開く。

 

「え」

 

自分で出したどうかも怪しい声が漏れるようにあふれ出した。振り返った先にいたのは胸にタオルを巻いた璃奈だったからだ。

 

「璃奈……………?」

 

「えっと……………背中、流す?」

 

「なんで疑問形?」

 

「お兄ちゃん疲れてるって言ったから、さぁさぁ」

 

「さぁさぁって………」

 

「…………ダメ?」

 

「うっ」

 

上目づかいでお願いされると弱い。瑠和の記憶に残ってる中三だった時の璃奈ではこんな行動取れなかったはずだ。明らかに自分の可愛さを武器に使っているのが伝わってくる。

 

「あー、わかったよ」

 

瑠和は背中を向けて座る。高校生とはいえあくまでも兄妹だ。間違ったことにはならないだろうと思ったのだ。

 

「じゃあ、お背中流しますね」

 

そういって璃奈は急に背中に触ってきた。いやにぬるぬるする。

 

「…………背中にボディソープ直接塗ってんのか?」

 

「あたり」

 

「………なんで?」

 

「えいっ」

 

璃奈は背中から思いっきり抱き着いた。

 

「璃奈!?」

 

「あかすりって肌によくないんだって。だから私の肌で洗ってあげる」

 

そういって璃奈は主に胸を押し付けながら、身体を上下させる。瑠和の背中に柔らかく、心地いい感覚が広がる。

 

「んっ……………ふっ…」

 

逆もまた然りだ。瑠和のまだ未成熟だが、ごつごつとした肌の感覚を璃奈は感じ、つい声が漏れてしまう。

 

「璃奈…ちょっと………やめろって…」

 

「………んっ……聞こえない」

 

「やめろって!!」

 

珍しく瑠和が怒号を飛ばした。それを聞いた璃奈はさすがに驚き、身体を離す。璃奈は振り向くと同時に璃奈がしていたタオルを再び胸に巻く。

 

「…………璃奈…ごめん」

 

「…………ごめんなさい………お兄ちゃん」

 

「…………………璃奈」

 

瑠和はシャワーで璃奈の身体のボディソープと自身のボディソープを落とす。璃奈の顔を見るとわずかに涙が浮かんでいるのが見えた。

 

「…………一緒に入ろうぜ。昔みたいにさ」

 

「うん………」

 

璃奈と瑠和は背中合わせで風呂に入る。

 

「……………」

 

「ちょっと狭いね……」

 

「まぁ………一緒に入ってたのは小学生の時だからな」

 

「…………どうしたんだよ、急に」

 

「急じゃない」

 

「え?」

 

「ちっちゃいころからずっと、好きだったもん」

 

「………」

 

兄弟だから当たり前だ。それはきっと気のせいだ。

 

なんて言葉は無粋だ。璃奈がこんなことをしたのは、自分の気持ちに気付いて、考えて、悩んで、悩んで、悩み抜いた末の行動だっていうのは理解できたからだ。

 

次に必要になるものは、もうわかってる。

 

「…璃奈」

 

「?」

 

「璃奈はさ、俺が好きだっていう言葉の意味。わかってるのか」

 

「……………うん」

 

「そっか」

 

それ以上会話は進まなかった。必要になることはもちろんわかってる。それは瑠和の覚悟だ。

 

赤の他人。瑠和からすればなにもしらない相手だが、少なくとも信頼してくれている相手からの好意なら受け入れることにそこまで抵抗はない。

 

しかし、兄妹となればそれは別だ。

 

記憶を無くしたといってもそれは直近一年程度の記憶であり、璃奈との関係が、血の繋がりがリセットされるわけでもないのだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

―翌日―

 

翌日、彼方は朝早くに部室に向かっていた。昨日コンディションが悪かったせいか、ついうっかり部室にノートを忘れてしまったのだ。今日使うノートでもあったので、早朝に取りに来なければならなかった。

 

「はー、やれやれだぜ」

 

「お、近江」

 

「先生」

 

職員室に鍵を借りに来たタイミングで彼方のクラスの担任にばったり出くわす。

 

「ちょうどよかった。スクールアイドル同好会宛てにになんか来てたぞ。渡しておくな」

 

「はぁ………」

 

渡されたのは小さめのサイン色紙のような質感の厚紙。そこには彼方が見張る内容が書かれていた。

 

 

 

―昼休み―

 

 

 

瑠和はいつも通り授業を受け、昼休みになった。嵐珠に誘われ今日は学食に向かった。学食に到着すると、ミアと歩夢に合流し、一緒に昼食を食べていた。

 

他愛ない話をしながら昼食を進め、そろそろ昼休みも終わりそうな時、瑠和に電話がかかってきた。

 

「どうかしたのか」

 

『瑠和さんの言う通りでした!私たちは間違っていたのかもしれません!一番大切なことを伝え忘れていたんです』

 

「なら…………どうする?」

 

『地図を送ります!』

 

「………」

 

栞子から地図のスクリーンショットとこれからやることの内容が書かれていた。それを見たミアは小さく笑う。

 

「全員分の早退の理由、考えないとね」

 

「栞子は…………いや、栞子も変わったな」

 

「そうだね。みんな、変わったんだ」

 

「…………先に行けよ。全員のクラスの先生に頭下げてくるからさ」

 

「いいの?」

 

「少しくらい手伝わさせてくれよ」

 

「ありがとう!」

 

誰もいなくなってから、瑠和は少し天井を眺める。みんな変わった。璃奈も、栞子も、歩夢も、侑も。自分も変わるときなのだろうか。いや本当は変わらなければならないはずだった。それは、昨日の夜十分に感じたはずだった。それでも一歩前に踏み出せない自分がいた。

 

「………俺は」

 

 

 

―台場駅―

 

 

 

各クラスの担任に頭を下げてから瑠和は地図の示す場所まで走った。あともう少しで集合場所だ。

 

そんな時、前方に誰か虹ヶ咲学園の生徒がいることに気付いた。

 

「あれは…っ!?」

 

そこには茶髪でウェーブのある髪を肩より少し長く伸ばし、編み込みをリボンで結んだハーフアップ、左目は長い前髪で隠れているが綺麗な紅い眼、まぁまぁ凹凸のある身体つきの少女がいた。

 

だが、瑠和はその少女を見たことがある。そう、しずくの家にあった写真立てに映っていた少女。

 

「君は…虹乃アスカ……ちゃん?」

 

「………そう。知ってるんだ。誰かから聞いたのかな?」

 

明日和は少し悲しそうな顔をした。父親から娘が忘れられたなんて事態、悲しむ以外選択肢はない。

 

「うっ!」

 

刹那、瑠和は頭を押さえてよろめく。

 

「おと………っ!瑠和さん大丈夫!?」

 

よろめいた瑠和を明日和が支える。

 

「だ、大丈夫………信じられないかもしれないけど、俺いま記憶喪失なんだ。そのせいか、頭痛が…」

 

「うん、聞いた。ほら、水飲んで」

 

明日和は持っていた水を瑠和に渡し、近くのベンチに座らせる。

 

「大丈夫?」

 

「ああ………落ち着いた」

 

「…やっぱりそうなんだね」

 

明日和はなんとなく瑠和が記憶を失った原因を理解した。いや、本当は理解していたが、再確認したという言い方が正しいだろう。

 

記憶を失った原因が、自分にあるということを。

 

「……なんか、いなくなったって聞いたけど」

 

「いなくなってないよ。学校にはいる。ちょっと格好変えてるけどね。おとう……瑠和さんが記憶失ったって聞いて心配してまたこの格好でいるだけだよ」

 

「そうか………心配かけてごめんな」

 

「………瑠和さんは、いま、幸せ?」

 

「………なんだよ急に」

 

「私はさ、あなたのコト好きだけど、それは親愛の意味。だから、もう同好会とは関わりのない私なら、好きなだけ相談していいんだよ」

 

「………………俺はどうするのが正解なんだろうな」

 

「嵐珠さんや、しずくさんのこと?」

 

「お見通しか……いや、それだけならまだ良かった。問題は、璃奈だ」

 

「そっか…」

 

はっきりとは言わなかったがその言葉が何を意味しているのか、明日和は理解した様だった。

 

「………驚かないんだな」

 

「うん、見ててなんかわかってたから」

 

「女の勘ってやつか」

 

「そんなとこ…」

 

「…………」

 

少し、沈黙が流れる。

 

明日和はここにある決意をしに来ていた。それは、明日和にしかできないことであり、同時にかなりの覚悟が必要なことだ。

 

しかし責任は取らなければならない。記憶を失わせてしまったのは自分であるからだ。そしてそのしわ寄せを食らったのは自分の両親である。

 

両親である瑠和も彼方も、とくに彼方は悩み、考え抜き、苦しい道を選んだ。培った時間が長ければ長いほどそれを失う恐怖はひどいものとなる。

 

その恐怖を解消できる方法は瑠和につかず離れずいる方法だったはずだ。しかし、彼方はそうしなかった。記憶を失ったという事実を受け入れ、時間が経って結果を見守るだけの道を。

 

ならば、自分もその時だ。

 

決意するときだと思った。

 

「瑠和さん」

 

明日和は瑠和を思いっきり抱きしめた。

 

「アスカちゃん………君もやっぱり」

 

「そうじゃないよ。だから言ってるじゃない。私は親愛の意味で好きなだけって………………聞いてほしい言葉があるの」

 

「?」

 

「あなたは、自由に生きていい。自由に好きな人を決めていい。血の繋がりも、元カノだとかそんな関係も全部忘れて。それがきっと今のあなたに必要な事………………私が許すよ」

 

それは、明日和が生まれる未来を捨てることにもつながる言葉だった。つまり明日和は自身の命を賭けて瑠和の自由を許したのだ。

 

当然瑠和はこの言葉の意味を100パーセント理解してはいない。いないのにも関わらず、瑠和の頬に熱いものが伝った。

 

「…………なんで」

 

「もぉ………こんな時まで優しいんだから。全部忘れてるくせに」

 

「…………」

 

何も理解していないのにも関わらず瑠和は重荷が降りた気がした。それは、きっと深層心理に残った責任感と罪悪感が明日和にそれを言われることを望んでいたのだろう。

 

「じゃあね。私が伝えたいことはそれだけ!」

 

明日和は瑠和から離れ、駆けて行ってしまう。瑠和は慌てて追いかけようとした。

 

「明日和!ちょっと待……」

 

そこで言葉が止まる。

 

「いま俺………なんで………「明日和」って呼んだんだ…?」

 

自分の言葉の意味すら分からない。だけど、何か大切なものを託されたことは理解できた。瑠和は決意を決め、集合場所まで走った。

 

 

 

―ダイバーシティ―

 

 

 

ユニコーンガンダムの前では、学校を抜け出した同好会メンバーが集合していた。そこは始まりの地。せつ菜が一人でライブをやった場所。

 

「アイラさんにトキメキをくれた歩夢さんはここから始まったんです」

 

「同好会にとっても、ここが再スタートのきっかけになったんですよ」

 

「ええ?」

 

「同好会は最初、全然うまくいってなかったんです………私が身勝手だったせいで……」

 

アイラには聞かされていない同好会始まりの物語。知らない人間からすれば、こんなに仲良さげな同好会にそんな時期があったこと自体驚きだろう。

 

「も~そんな昔のこと気にしないの」

 

「身勝手だったのはお互い様だったんですから」

 

「でも、そこから歩夢ちゃんや侑ちゃんがスクールアイドルを大好きになってくれた」

 

「それでまた始まったのよね」

 

「話は聞いたよ」

 

「思い通りに行かないことって、どうしたってあるわよ」

 

「私も一人じゃ難しかった」

 

「うん」

 

「だけど私たちは一人じゃなかった」

 

「アイラちゃんもひとりじゃないよね」

 

その言葉に、アイラは自分の親友の姿を思い出した。

 

「はい、います!一緒にやってくれる人!」

 

「私たちもいますよ」

 

「はい!」

 

「偉そうなことを言ってしまいましたが、私もずっと悩みっぱなしなんです。どうしたら、この堅苦しい性格を直せるのか………」

 

「栞子!!!」

 

そこに、瑠和がたどり着いた。全力疾走でここまで来たのだ。息は絶え絶え、冬場なのに汗が体中から噴き出ている。

 

「瑠和さん!」

 

「はぁ………ぜぇ…………はぁ……そんな事ねぇ………よ。お前…はぁ…めちゃくちゃ変われたじゃねぇか…………」

 

瑠和は息を整えながら栞子の前まで歩く。

 

「瑠和さん………」

 

「俺は………少なくとも俺の知っている栞子は………困っている友達のために、授業を抜け出したりなんてしなかった」

 

瑠和は栞子の前までたつと、大きく深呼吸をして栞子にまっすぐ向き合う。

 

「こんな笑顔見せるやつじゃなったお前が笑顔でスクールアイドルできてんだ。そんな堅苦しさ、お前が勝手に思い込んでるだけ、勝手に限界を決めてるだけだよ」

 

「…………」

 

一瞬、瑠和の姿が記憶があるころの瑠和に重なった。

 

ああ、記憶を失い、あんなに忌み嫌っていた眼を取り戻してもなお、彼は、彼なのだ。栞子は、いや、そこにいる大半がそう感じたことだろう。

 

歩夢が帰ってきた日、栞子に「アホ」とだけいった瑠和の言いたかったことが理解できた気がした。きっと、瑠和が「アホ」の一言にまとめたのはこれだったのだろうと。

 

「ありがとうございます。記憶を失っているあなたにそういわれては、私も立つ瀬がありませんね…………」

 

栞子は階段を上る。

 

「私も、自分で自分の限界を決めるのはやめます」

 

そういって、リボンを外し、それで髪を縛った。

 

「だから…………思いっきり楽しみましょう!」

 

そこから、ライブが始まる。元気で、陽気で、不思議と元気づけられる曲。

 

歌い終わるといつの間にか歌声に導かれた観客の拍手であたりが埋め尽くされた。アイラも元気を取り戻し、電話で向こうの友人であるペネロペと話していた。

 

瑠和はその様子に微笑み、ライブを終わらせ、少し息を切らしたメンバーが降りてくる。嵐珠は降りてくる彼方を見た。

 

「昨日のライブとはまるで違った。何かあった?」

 

「…………嵐珠ちゃん、今日の放課後、話したいことがあるの。西棟の屋上に来てもらっていい?」

 

彼方の眼にはあの日の屋形船にはない闘志が宿っていた。

 

「…………………ええ、上等よ」

 

嵐珠は武者震いが一瞬起きた。ライバルがライバル足りえる状態になったことがうれしかったのだ。一方で、瑠和は璃奈の前に歩いてきた。

 

「お兄ちゃん?」

 

「璃奈……」

 

一瞬だった。瑠和は璃奈の頬に手を添え、キスをした。

 

「…………」

 

「…………」

 

最初は驚いた璃奈だったが、すぐに瑠和を受け入れる。二秒ほどのキスを終えると、瑠和は離れる。

 

「ぷはっ………璃奈、俺覚悟決めたから」

 

「そっか…………ありがとう、お兄ちゃん」

 

瑠和も腹を決めた。明日和の言葉と、今回のライブを見て、そして栞子にああいった手前、自分が限界を作るのはやめたのだ。例え妹であろうと、恋の気持ちに、女として見ることに、そして他のメンバーからの愛情も、平等に受け取る覚悟を決めたのだ。

 

 

 

―放課後 屋上―

 

 

 

放課後、嵐珠は西棟の屋上にやってきた。嵐珠の視線の先には、海に沈む夕日に照らされた屋上に一人たたずむ彼方がいた。

 

「来たね」

 

「ええ」

 

「……嵐珠ちゃん、この間の」

 

「待ちなさい」

 

話始めようとした瞬間、誰かが割って入ってきた。

 

「内緒話なんて連れないじゃない」

 

「果林ちゃん」

 

「そうですよ」

 

「私も混ぜてほしい」

 

さらに別方向からしずく、璃奈が現れる。璃奈が現れたことで勘違いされたのかと思ったが、璃奈の眼には、彼方と同じ、何ならそれ以上の闘志が宿っているのが分かった。

 

「しずくちゃん、璃奈ちゃん………なるほど、来るべきしてきたってところかな?」

 

「……璃奈ちゃんも?」

 

「うん。勘違いされてほしくないから言う。迷いは捨ててきた」

 

「……わかった」

 

彼方はそれ以上誰も来ないことを確認すると、懐から今朝担任に渡された同好会宛ての厚紙を取り出し、掲げる。

 

「それは……?」

 

「GPX……スクールアイドルグランプリ。平たく言えば一番のスクールアイドルを決める大会が、もうすぐ開かれる。これはその招待状。今朝先生から渡されたんだ」

 

「……一番の」

 

「今の私たちに、ぴったりだと思わない?」

 

「それでトップを取ったアイドルが、瑠和を奪えるってことでいいのね?」

 

「それでもいいけど、やっぱり決めるのは瑠和君だから。これが最後の全力アピールってことにしない?スクールアイドルとして、女として」

 

不意打ちやそれぞれの得意分野で勝負するのではなく、新たな思い出を作るのでもなく、ここではっきり白黒つけようということだ。その提案に一同は少し考える。

 

そして、最初に口を開いたのはしずくだった。

 

「…………私は賛成です。明確な勝ち負けを決めずにグダグダ続けてても、先輩を困らせてしまうでしょうから」

 

「そうね、いいじゃない。その方が、スクールアイドルらしくて」

 

「私も………」

 

「わかったわ。勝っても負けてもそれが最後!その数日間で手に入れようじゃない。私たちの、未来地図!!」

 

全員の了承を得たところで彼方は拳を前に突き出す。あの日、屋形船での嵐珠に応答するように。それを見た嵐珠、しずく、璃奈、果林も拳を突き出した。

 

「勝負だよ…………絶対、負けないから」

 

 

 

続く

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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