彼方の近衛   作:瑠和

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昔から愛さん好きだったけど、今回の映画でハートを射抜かれました。

今更ヒロインを増やすわけにはいかないかもしれないど、いつかAnotherDaysを書けたらな。


第二話 愛の場合

「いらっしゃーい!」

 

少々狭いが十分活気も賑わいもある店から元気な声が響く。ここは門前仲町にある「もんじゃ宮下」という店。書いて字のごとく、宮下愛の実家だ。

 

かすみの実施した瑠和の記憶を取り戻すためのプロジェクトで、愛は瑠和を自身の店に招待した。瑠和は二階の部屋に通され、愛と二人きりになった。愛は慣れた手つきでもんじゃを作る。

 

「流石、上手いな」

 

「そりゃ小さいころからやってるからね!はい、出来上がり!おあがりよ!」

 

「サンキュ」

 

もんじゃ用のへらでつかみながら瑠和はもんじゃを食べる。

 

「どう?」

 

「ああ、うまいよ」

 

「よかったぁ!いっぱい食べてね!」

 

そういって愛は自身も食べ始める。そんな愛を見ていた時、瑠和は妙な既視感に駆られた。かすみと一緒にいたときに感じたものとは違い、ぼやけた記憶だ。

 

「………なぁ、以前にも、こうして食べたことってなかったか?二人きりで」

 

「え……えー?そりゃ同好会のみんなととか、カナちゃんとるなりんが食べに来てくれたことはあるけど、二人っきりってのはなかったかなぁ」

 

「そうか…………デジャヴってやつかな」

 

「あるよね~そういうこと」

 

「…………最近多いんだ。それ。でも周りに聞いてもわからないっていうことが多くて………まるで、もう一人の自分の記憶をたどってるような…」

 

「え~なにそれ~」

 

「はは、何言ってるんだろうな」

 

急に瑠和の声が暗くなった。愛はそれに気づいて瑠和を見る。あからさまに暗い表情だ。考えてみれば瑠和が暗い表情をする理由もわかる。

 

記憶がなくなり、周りはわけのわからない競争をはじめ、おまけに記憶にないはずの記憶まで出てくる始末。落ち込みたくなる気持ちも十分に理解できる。

 

「………るなりん」

 

「ん?」

 

愛はいつの間にか瑠和の隣に移動し、両手を広げて瑠和を待っている。瑠和はそれを見て思いっきり嫌な顔をした。

 

「…………はい?」

 

「おいで!」

 

「なんでだよ」

 

「だってぇ寂しそうな顔してるんだもん!」

 

「いいよ別に…」

 

「じゃー愛さんから!」

 

そういって愛は瑠和を思いっきり抱きしめた。

 

「どぉうぁ!み、宮下!離れろ!男女だろうが!!」

 

「え~愛さんからすればるなりんなんてちょっとおっきいりなりーと一緒だよ」

 

「はぁ!?」

 

「人一倍優しくて誰かのために動けるけど、その割に臆病で、他者との関わりそのものは避けたりさ」

 

「…………まぁ、兄妹だから似るところは出るだろうけどよ……ともかく離せ!」

 

瑠和は愛の手を無理やり引きはがし、少し離れて再びもんじゃを食べ始める。

 

「も~照れなくていいのに」

 

「照れてない」

 

「………じゃあ、食べたらデート行こうよ!」

 

「なんだよデートって」

 

食事を終えた後、愛は瑠和を連れ出して以前栞子と一緒に遊んだコース(にじよん参考)と同じコースを回った。しかし、愛の明るい性格と行動力は、記憶を失う前の瑠和の性格にはどうにも会わないようだった。

 

夕方になったが、瑠和はどちらかというと愛に振り回されているといった感じだ。

 

無論、愛もそのことに気づいてはいた。

 

気づけば夕方になり、瑠和と愛は海浜公園で夕暮れの海を眺めていた。

 

「るなりん、よくここにいるよね」

 

「ここが一番好きなんだ。気が落ち着く…………ギター、持ってくればよかったな」

 

「そうだ!愛さんギター教わりたいって思ってたんだ!」

 

「あ?別に気を使わなくていい」

 

「そんなことないよ。ずっとやてみたいなって思ってたし!」

 

「…………はぁ」

 

瑠和は愛が少し苦手だった。性格が合わないこともあるのだが、いかんせん感情が読みにくいところがあった。純粋で、他者のために動こうとしているのだが、その分自分を犠牲にしているところがある。しかしそれに愛本人が気づいていないことだ。

 

だが、これ以上愛を避けてもいいことはない。ここはさっさと要望に応えて解散したほうがいいと考え、璃奈に連絡した。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「お待たせ」

 

璃奈は瑠和から連絡を受け、家に遊びに来ていたかすみと一緒に家にあったギターを二つ持ってきた。

 

「悪かったな。璃奈、かすみちゃん」

 

「まったくしょうがないですね先輩は」

 

「ううん、これからお台場行こうと思ってたから大丈夫」

 

「そうか、遅くならないようにな」

 

「うん」

 

璃奈と別れ、瑠和はギターを一本、愛に渡す。

 

「親父がくれたやつだ。そこまで高くもないらしいから、別に壊れても大丈夫だ」

 

と言って渡してくるが、天王寺家の人間の金銭感覚なので安いといってもどれほどのものだろうと感じながら愛は受け取る。

 

「へー、かっこいいね」

 

「……とりあえず基礎から軽く教えていくから」

 

もう日もだいぶ落ちている。教えるといっても大したことは教えられないだろうと瑠和は高を括っていた。

 

 

 

ー1時間後ー

 

 

 

「こんな感じ?」

 

「……………化け物かお前」

 

高々一時間と少し教えた程度で、愛はかなりレベルが上がっていた。瑠和が押してたことを一度で覚え、応用させ、瑠和の動きを盗み、そこから別の技術を想定する。宮下愛という人間の能力の高さに驚いていた。

 

「そこまでできりゃもう十分だろうな。なんか弾いてみたい曲とかあるか?」

 

「あ、じゃあるなりんがフェスティバルの時歌ってたやつ!愛さんあれ大好きでよく聞いてたんだ!」

 

そんなことを伝えられ、瑠和は少し顔を赤くする。

 

「………親父から教わった曲だけど……まぁそれでいいなら」

 

瑠和と愛は二人で息を合わせ、曲を弾きはじめる。愛も一通り覚えたとはいえ高々一時間練習しただけだ。そこまで勢いよく弾けるわけではない。

 

愛の速さに合わせながら、瑠和もゆっくり曲を弾く。

 

「青空がある限り、風は時を運ぶよ♪」

 

瑠和が最初に歌う。

 

「勇気がある限り、夢は必ずかなうよ♪」

 

それに合わせて愛も歌い始める。

 

「涙があふれるままHey、Hey、走りだせ♪」

 

「「赤い地平線の彼方、明日があるのさ」」

 

曲が進み、愛も歌いながら弾くことに慣れてきた。二人の息も合い始め、二人の歌声が重なる。それを互いに理解したとき、自然と微笑み合う。

 

「誰よりも何よりも君だけを守りたい♪」

 

その時だった。二人の前に少女が現れ、二人が弾いている曲を歌い始めた。

 

瑠和と愛は一瞬驚いて顔を見合わせるが、すぐに息を合わせる。

 

「「「いつまでもどこまでも君だけを守りたいWow Wow Wow 叫ぼう世界は終わらない♪」」」

 

とりあえず一番を歌い終えた。そこで瑠和と愛はいったん演奏を止め、少女を見る。見た目7歳かそこらだろうか。ふわふわのピンク髪の少女だ。

 

「君は?」

 

「アタシ?アタシはルア!」

 

少女はにっこり微笑んで言った。

 

「もう遅い時間だろ。なんでこんなところに一人で…」

 

「お姉ちゃんとお散歩してたんだけど………はぐれちゃって…」

 

「あらら………じゃあお姉ちゃん探してあげよ!るなりん!」

 

「そうだな…」

 

二人はいったんギターをしまって少女と手を繋いでお台場の町を歩く。瑠和はあたりを見回しながら声をかける。

 

「この子のお姉さ~ん!いらっしゃいませんか~!?」

 

愛も声をかけつつ、時々ルアの方を見て微笑んで安心させようとしていた。だが、かなり幼いにも関わらずルアは特に不安そうな様子も見せない。

 

「お姉ちゃん、歌うまかったね」

 

「ありがと~。愛さんスクールアイドルやってるんだ!」

 

「………そうなんだ!私もおっきくなったらスクールアイドルやってみたいなぁ!」

 

「できるよ!さっきもきれいな歌声で………そういえば、さっきの歌、どこで知ったの?」

 

「お父さんから教わったの!」

 

「そっか、るなりんと一緒だね♪」

 

そんなことを話しながら歩いていると、前方から瑠和たちと同い年くらいの少女が歩いてきた。

 

「ルアちゃん!」

 

「あ、お姉ちゃん!」

 

少女が呼びかけると、ルアはすぐに反応して少女の方へ走って行った。見たところあまり似ている姉妹には見えなかったが。ルアが「お姉ちゃん」と言っているのを見る限り姉なのだろう。

 

瑠和と愛は顔を見合わせて安堵の顔をする。

 

「どうもすいません。少し目を離した隙に…」

 

「別にいいけど、こんな小さい子を連れてくるんならもっとちゃんと見とけよ」

 

「はい。大変申し訳ありません………なんだか、よくしてくれたようで…」

 

確かにルアは会ったときより随分ご機嫌だ。

 

「ま、気にすんな」

 

「では、また…」

 

「愛さん!またね!」

 

ルアは手を振る。愛も手を振り返した。

 

 

 

―帰路―

 

 

 

「なんかさー」

 

帰りの電車。愛と瑠和はぼーっと虚空を眺めていたが、静寂を愛が崩す。

 

「ん?」

 

「あの子、妙に見覚えがあるんだよねぇ……」

 

「見覚え………か。俺もなんかある気がする」

 

「なんなんだろうねぇ…」

 

結局瑠和の記憶は戻らなかったが、不思議な出会いで、心が揺れた一日となった。

ストーリー中に出す次元系の設定(ナタや不思議な石等)って必要だと思いますか?

  • これまで通りでいい
  • 減らしてほしい
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