彼方の近衛   作:瑠和

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メリクリ。彼方さんとクリパやりたい。というか最近ランジュが推しになりそうで怖い


第八話 走る予感

瑠和は改めて同好会のメンバーとなり、侑とともに同好会のマネージャー的立ち位置で支えることになった。そしてさっそく仕事を任され、同好会へ衣装つくりのために使ってほしいと衣服関係の同好会から譲り受けた生地をせつ菜とともに運び出していた。

 

「そちらは大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だ。それじゃ行こうか」

 

「はい、それではありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

二人は生地を譲ってくれた同好会に頭を深々と下げた。

 

「いいのいいの、ライブ見てすっごいなぁって思ったから。これからも頑張って」

 

「はいっ!」

 

せつ菜は威勢よく返事をした。そんなせつ菜を見て瑠和は「あのころとは全然違うな」と軽く笑った。その間、部室では軽い清掃と仕事を終えた瑠和とせつ菜を労わるためのお茶会の準備が始まっていた。

 

「こんにちはー」

 

そこにクラスの係の仕事を終え、少し遅れてかすみがやってきた。

 

「あれ、せつ菜先輩と瑠和先輩は?」

 

「いま別の同好会から衣装用の生地もらいに行ってるよ。少し前に行ったばかりだから……まだもう少し時間がかかるんじゃないかな」

 

お茶を準備しているエマがかすみに伝える。

 

「そうですか………」

 

それを聞くとかすみはにやりと笑う。そしてクッキーを準備する璃奈に忍び寄って肩を寄せる。

 

「そういえばりな子~瑠和先輩って今好きな人いるとか聞いてない~?」

 

「…わからないけど、そういう話は聞いてないよ璃奈ちゃんボード「ハテナ」」

 

「そっかぁ、皆さんはなにか聞いていませんか?」

 

かすみは他のメンバーに尋ねてみるが皆顔を見合わせるだけで何か知ってそうなメンバーはいなかった。

 

「ど、どうして、そんなこと聞くの?」

 

歩夢が苦笑いをしながら訪ねる。

 

「いやぁ、実はですねぇ?先日先輩とカフェであったとき、どうしてりな子にスクールアイドル勧めたんでかって聞いてみたんですよ~。そしたらぁ~適当な理由話した後に顔赤くして出てっちゃったんですよ~♪これは絶対りな子以外にもなにか理由があるなって思ったんですよぉ~。それはやっぱり異性の存在だってかすみん気づいちゃいました!」

 

かすみはビシッと指を前に出して自信満々に宣言した。後ろにいた璃奈も璃奈ちゃんボードの目が「!?」になっている。

 

「それだけで好きな人がいるとも限らないと思うけど…」

 

「いーえ!かすみん乙女の勘には自信ありますから!これは間違いないです!それにですね…」

 

さらに理由の続きを述べようとするかすみの頭をほうきの柄が襲う。

 

「馬鹿なこと言ってないで掃除手伝いなさい」

 

かすみの頭を叩いたのは果林だった。

 

「ぐえ、果林先輩は気にならないんですか~?」

 

「気にならないわそんなの。それに、それが事実だったとして彼が好きな子とは別の子が彼に好意を寄せていたらどうするの?」

 

それはつまり三角関係の意味だ。下手に公にするのは間違いだと言いたいのだろう。

 

「これ以上気まずいのはノーサンキューよ」

 

「ぐぬ、正論…」

 

「さ、わかったらこのゴミ出してきて頂戴?」

 

果林は笑顔でゴミ袋をかすみに渡した。その様子を見てみんなは笑っていたが、エマだけは果林を不思議そうに見ていた。

 

その日の夜、夕食の準備をしていると璃奈がやってきた。

 

「璃奈?」

 

「………お兄ちゃんは…好きな人とか………いる?」

 

「なんだ急に」

 

瑠和は笑いながら言った。

 

「お兄ちゃんもそういう人いるのかなって…璃奈ちゃんボード「ワクワク」」

 

「期待されてもなぁ…別に好きな人は………」

 

瑠和の脳裏にとある人物の顔が思い浮かぶ。

 

「…いないよ。それより今日は鴨肉のオレンジ煮があるんだ。好きだろ?」

 

「…うん、好き。璃奈ちゃんボード「キラキラー♪」」

 

璃奈は璃奈ちゃんボード「キラキラー♪」を出したが、内心は璃奈ちゃんボード「びっくり」であった。まさかここまで露骨に話を逸らされるとは思ってなかった。核心はないが、かすみの言う通り好きな人がいる可能性が高い。瑠和の行動の多くを璃奈は同好会のメンバーに聞かされていた。

 

瑠和の行動に感謝はしていた。璃奈はまったく気にしていなかったというのに瑠和は自分を責め続け、璃奈に尽くしてくれた。しかし、それが瑠和が好きな人と一緒にいるために利用されたとしたら。璃奈の心にそんな疑心暗鬼を生じさせた。

 

「…」

 

翌日の昼休み、璃奈は少し沈んだ気分で昼食を取っていた。今日は一人だ。昨日の出来事をいろいろ考えているせいで箸もあまり進んでいない。

 

「…」

 

「あれ、りなりー?」

 

そこに愛が現れた。

 

「愛さん」

 

「元気ないね。どうしたの?」

 

「…っ!そんなことないよ。璃奈ちゃんボード「むんっ!」」

 

璃奈は璃奈ちゃんボードでごまかそうとするが、愛に対してそれは通じなかった。短い付き合いとはいえ愛は璃奈の感情をしっかり理解できた。

 

「愛さんにはわかっちゃうよりなりー。無理して元気に見せなくていいよ。話したくなかったらいいけど、もしよかったら、相談乗るよ?」

 

「…実は」

 

璃奈は昨日のことを話した。もしかしたら瑠和の行動が全部が全部璃奈のためだけでない、最悪の場合利用された可能性のあることまで話した。

 

「お兄ちゃんのこと疑いたくないし、きっとそうじゃないとは思うけど、お兄ちゃんがあんなに露骨にごまかしたの初めてで………」

 

「そうじゃないと思うよ」

 

愛はにっこり笑って璃奈を撫でた。

 

「愛さん…」

 

「もしそうなら、部活が始まってからあんなに長い期間部活に来ないなんてないと思うな」

 

「でもそれは、私がいたからで…」

 

「だからこそだよ。りなりーに気づかれることの方を恐れたってことは、仮に好きな人がいたとしてりなりーの方を取ったってことはりなりーの方が大事だったってことじゃないの?それに……初めて愛さんと会った時のこと覚えてる?」

 

璃奈は小さく頷く。

 

「これ、るなりんには秘密ね?あの日、りなりーと別れた後にるなりんにあったんだ。こっそりついてきてたみたい。それで、りなりーのことよろしくって言われたんだ。それだけで、るなりんがりなりーのことどれだけ大切に思ってるか…わかりそうなもんじゃない?」

 

やはり、客観的な意見は大切だと璃奈は思った。早とちりであんなにいい兄を恨んでしまうところであった。

 

「うん…」

 

「それにしても、りなりーは可愛いなぁ!そんなこと思うってことは嫉妬しちゃったわけだ!」

 

愛は笑いながら璃奈を思いっきり抱き締める。璃奈は愛にそう言われてはっとする。瑠和は同好会に関わるようになってから活き活きしていた。それが、璃奈ではなく別の誰かのためであるかもしれないということに嫉妬していたのだ。

 

「嫉妬………そう…かも」

 

「あっはは!それにしてもるなりんに恋の予感かぁ……これは面白そうだねぇ」

 

昨日果林が言ったように三角関係などで少しギスギスするのも問題だが、それ以上に愛の中のゲスが勝った。普段身の回りではそんな話がないため、興味がわいたのだ。愛はかすみに連絡し、カフェで落ち合う。

 

「それにしても誰なんだろうねぇ」

 

まずは対象を絞ることから始まる。

 

「かすみんが考えるに、多分同好会の初期メンバーの誰かだと思うんですよ。瑠和先輩が同好会に協力し始めたのはまだ五人のときからですから」

 

かすみが得意げに話す。愛はそれを聞き、最初の五人のメンバーを考えてみる。愛が聞く限りでは初期メンバーはせつ菜、彼方、しずく、エマ、かすみの五人だった。

 

「ん?ってことはかすみんも入るわけだ」

 

「…」

 

かすみは少し固まる。

 

「や、やだなぁ~!いくらかすみんが可愛いからってそんなわけないじゃないですかぁ~♪」

 

かすみの反応を見て璃奈と愛は顔を見合わせる。

 

「まんざらでもなさそう」

 

「そうだね」

 

「でも、かすみんが好きっていうのはないと思います…だってかすみんが困ってるとき瑠和先輩「侑先輩にも相談してみろ、頑張れ」だけで済ませたんですよ!あの人!」

 

「あ、そこ見てた」

 

「見られてた!」

 

偶然だがそのシーンを目撃されていた。

 

「まぁ、その頃はせっつーの一件で忙しそうだったしねぇ。愛さんせっつーの居場所知らないか聞かれたりしたよ」

 

「家でも、疲れてた」

 

二人はあの頃の瑠和のことを思い出す。確かにあの頃は仮にかすみが好きだったとして深く関わることができない可能性もあった。

 

「だから…かすみんも案外あり得るんじゃない?かすみんはどう思う?るなりんのこと」

 

「うーんどうでしょうかねぇ…異性として可もなく不可もなくって感じだと思いますが……まぁ、優しいですし、頼りにはなりますし……ま、まぁ?かすみんのこと好きになっちゃったなら付き合ってくれてもいいですけど…」

 

かすみは少し顔を赤くしながら聞いてもいないことまで口にする。

 

「おや?皆さんお揃いですね」

 

「あ」

 

「せっつー。あ、いまは菜々ちゃんか」

 

そこに現れたのは中川菜々だ。まだ昼休みなので優木せつ菜ではなく中川菜々の姿だ。菜々の姿をみると、かすみは菜々およびせつ菜が戻ってきたときのことを思い出す。

 

「珍しい集まりですね」

 

「うん、ゲスな集まり」

 

「げ、ゲスですか?」

 

「…」

 

かすみは瑠和がせつ菜を呼び戻したときのことを思い出す。

 

(おまえは何のために歌う!?自分のためか!?ラブライブのためか!?行ってみろ!!)

 

「……あそこまでアツく語る瑠和先輩初めて見たなぁ…ってことはもしかして…」

 

「どうしました?」

 

「いえ…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「はぁ…」

 

果林は小さくため息をついて部屋を見回す。部屋は散らかり放題だ。数日前までは瑠和が定期的に部屋を片付けていてくれたから綺麗だった。エマが片付けてくれたこともあるが、見せたくないものをクローゼットに突っ込んでいたこともあり、表面上綺麗になってただけだ。

 

「好きな人……か」

 

幼い頃から達観したものの見方をしていた果林は同年代の友人からは良く言えば憧れられ、悪く言えばその分どこか孤立してるところもあった。中学時代に告白されることは多々あれどすべて断り、また果林が誰かに告白するようなこともなかった。理由は簡単だ。

 

そんなのは朝香果林には似合わないと思ったから、即ちスクールアイドルをやらなかった理由と同じだった。そんな果林に心情変化が起きたのは瑠和に自分を見抜かれた時からだ。

 

瑠和に部屋の掃除等々を任せたのは、せつ菜を呼び戻したときの姿を見たからだ。あそこまで真っ直ぐに誰かにぶつかっていける人を見たことがなかった。璃奈のことに関しては過去の失敗があったせいか中々向き合えていなかったが、覚悟を決めた瑠和はやはり真っ直ぐだった。

 

頼りがいがあって、自分の本当の姿を晒せる家族以外の唯一の存在。親友のエマですらそこまでの域に達していない。

 

「あのとき感じたのは…なんだったのかしら」

 

瑠和に好きな人がいるかもしれないというかすみの話を聞いたとき、わずかな期待と不安が胸の中に現れた。だから話を逸らすために行動した。

 

「はぁ、らしくないわね考えるのやめておきましょ」

 

果林はベッドに横になり、考えるのをやめた。しかし、やめたつもりでも同じ考えはぐるぐると頭の中に渦巻いていく。

 

「はぁ…」

 

 

 

―天王寺家―

 

 

 

瑠和は部屋で横になりながら先日璃奈がなんであんなことを聞いてきたか悩んでいた。もちろんそういうお年頃でもあるので不思議はないといえば確かにそうだが、なぜ、自分に聞いてきたのかがわからなかった。

 

「まさか…璃奈…俺のことが…?いや、まさかな」

 

と、一瞬考えたがそれはないとすぐに冷静になる。根拠はないが、そういう視線を向けられたことがないというだけの勘程度だがそういうことも早々ないだろうとも思った。それより気がかりなのは自分の心だ。

 

この間からどうもとある人物の顔が脳裏をよぎる。その人物のことが異性として好きなのか、それともスクールアイドルとして好きなのか、それがわからない。

 

「やめよ、とりあえず明日の部活の練習場所更新申請書を作っておこう」

 

瑠和は書類を作り始めた。

 

翌日、放課後に同好会で練習をしている最中、果林はタオルを忘れていたことに気づき、部室まで戻ってきた。

 

「あら?」

 

そこには机に突っ伏して眠る瑠和がいた。机に置いてあるノートパソコンを見ると備品のリストが途中まで作成してあった。

 

「………そういえば昨日申請書で徹夜したとか言ってたわね…家の仕事もあって忙しいでしょうに…」

 

果林は汗をかいている瑠和を見てエアコンを付け、近くに飲み物と簡単なメッセージを置いた。そして、眠る瑠和の顔を見つめる。

 

「可愛い寝顔ね………普段の不愛想な態度からは想像がつかないくらい…」

 

果林は瑠和の髪を撫で、クスリと笑いながら部室を出る。部室を出た瞬間、目の前にエマがいた。

 

「エマ!?」

 

「遅いなって思って、迎えに来たんだけど…」

 

エマはタオルを取りに行っただけの果林が妙に遅いことを心配し、迎えに来ていた。

 

「そう、心配かけたわね。さぁ行きましょ?」

 

「………果林ちゃん」

 

「なに?」

 

「ひょっとして瑠和君のこと、好き?」

 

エマは果林の行動を見ていた。そしてこの間の部室での出来事を見ていてひょっとしてと思って聞いてみた。

 

「………」

 

果林は黙っている。

 

「果林ちゃん?」

 

「そ、そそそそそそんなわけないじゃない!わ、私が瑠和のことを好きだなんてそんなっ!」

 

果林は顔を真っ赤にし、ごまかしたがはっきり言ってごまかせていない。自分ではあまりどうとは思ってなかったが、他人に指摘されて初めて自覚したのだ。自分の中の想いに。

 

「そっかぁ、好きなんだ」

 

「エマ!?何言って…」

 

「ごまかさなくていいよ。なんでかは知らないけど。果林ちゃん、きっと瑠和君のこと好きなんだろうなぁって思ってたから」

 

「………そんなにわかりやすかったかしら…」

 

エマにそういわれ果林は顔を赤くしながら己の行動を反省する。

 

「んーどちらかというと勘だけど。だけど、とっても素敵なことだと思うから恥ずかしがることないよ!スプレンディド!」

 

「んー…」

 

果林は照れながら髪をいじる。

 

「応援するよ、果林ちゃん」

 

「まだ私もよくわからないのよ…本当にそうなのか…」

 

「そうなの?」

 

「だから………応援とか…」

 

「そばにいればわかることもあると思うよ」

 

バレてしまってはしょうがないと、果林はあきらめエマの応援を受けることになった。果林は少し不安を抱きつつも自分の心に向き合うことにした。

 

 

 

続く

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