めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ? 作:慧都
『僕』は生まれてから今まで、
恨まれ、蔑まれ、嫌われる、そんな人生を歩んできた
それに関して思うことはない
自分が
環境以前に存在が、在り方以前に性質が、自分と周りは違っている
そんな風に一年を過ごしたある日、『僕』に転機が訪れた
それが無かったら今の『僕』という存在はなかっただろう大きな転機が
僕が生まれた時、その瞬間に世界は自分を肯定していると悟った
好かれ、敬われ、愛される、そんな人生になるのだと
なんてつまらない人生だろう
自分が
生まれ以前にが有り様が、立場以前に霊格が、自分と周りで違っている
そんな風に思ってすぐに、僕は『彼』と出会う
もし何かが変わっていれば、僕は僕なり得なかっただろう大きな出会いが
この時、僕『僕』は感じた
『彼』彼こそが、自らの隣にあるべき至高の存在であると
広い廊下の片隅に置かれているベンチ
大人3人がゆったりと座れるほど大きなベンチは、その上にちょこんと座る2人の子供のせいか実際よりも大きく見える
「『暇だね』『さっさと診察してくれればいいのに』」
その片方、大きな兎(?)の縫いぐるみを持つ子供がポツリと呟いた
どうやら親を待っているのではなく、自身の診察を待っているようだ
短くて地に届かない足を揺らしながら、子供は遠くを見つめる
「まだ高々15分だろ?それくらい待つのは当然なんじゃないの?」
今度はもう片方、縫いぐるみを持っていない以外は先の子供に瓜二つな少年はそう答えた
子供だとは思えない大人の反応、凄まじい精神の成長速度である
「『おいおいここは先進国日本だぜ?』『時間にルーズな外国と違って』『日本は時間を厳守しないと』『なんか変なこと言ったかな?』」
「その通りだが診察は複雑なものだと聞いている。それに相手は子供、予想はあくまで予想ってだけだよ」
「『そんなものかい?』」
「そんなものだろ」
会話だけ聞けば別段変わったことはない
だがこの場に居合わせれば
子供の背格好から見るに2人は4、5歳、流暢に難しい話ができる歳ではないのだから
そのまま待つこと数分、痺れを切らしたのか縫いぐるみを持った子供が立ち上がった
「どこに行く気だ?トイレなら先ほど済ませただろう?」
「『暇だから託児室に行ってみようかなと思ってね』『僕たちの友達ができるかもしれないでしょ?』」
口元を歪めながらそう言うとさっさと歩いて行ってしまう片割れに、渋々と立ち上がり追いかけて行く少年
二人がしばらく歩くと託児室に辿り着いた
「誰もいないな、さあ戻ろうか」
「『えーここで遊んでようよ』『僕たちはまだ子供なんだから待ちきれずに遊びに行くなんておかしくない』『それに少ししたら人が来るかもしれないじゃないか』」
駄々をこね始めた子供の手を引いて、少年は元来た道を歩く
乱暴そうでありながら手を掴む力は弱い、嫌ならすぐに逃げられるくらいの力加減だ
「『むー』『そんな生真面目だと自由な発想はできないよ』『少しくらいいいじゃないか』」
年相応に拗ねた顔で大人しくついて行く姿はどこか嬉しげだ
そんな雰囲気を知ってか知らずか、少年は大きなため息をついた
「時間厳守は当然なんだろ?だったらまず自分が守らないとな」
「『ルールは守るためにある!』『だから僕は悪くない』」
「僕が悪いと決めた、だからお前は悪い」
そんな軽口を言い合いながら2人は先のベンチに辿り着く
先ほどと同じ位置に座り直した時、一人の幼女が訪れる
「そこの二人、私も座って構わんか?」
凛、そんな音を体現したかのような佇まい
たがその外面とは裏腹に少年たちと同じく不相応な印象を与える幼女
カチリッ
世界がいま、回り始める