ゆりキャンパーは斉藤さんが好きすぎる   作:くもくも@ハーメルン

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13話

 一週間くらいしてから、恵那ちゃんとは約束通り、二人きりでキャンプに行くことができた。

 あんな大事件を起こした直後だから、お泊まりはやめておき、近場でデイキャンプ。

 

 恵那ちゃんの心情にも配慮して、まだ明確な一線は越えていないから、ギリギリ、本当にギリギリだけど、今のところ逮捕はされない関係性だと思っている。

 

 昼間から焚き火をゆっくり眺めながら、亡くなった恵那ちゃんのペットの思い出や、私が動画配信をはじめたころのどうでもいい話なんかを、取り留めもなく、ずっと二人きりで語り合った。

 

 恵那ちゃんは何度も泣いて、私はそのたびに何度も、彼女を抱きしめ続けた。

 

 こういうときの飼い主の気持ちなんて、私にはあまり良くわからない。

 だけど、恵那ちゃんがつらいときや苦しいときに、もう一人にしないで、ちゃんとそばにいることがたぶん大事なんだと思っている。

 

 まあそういうわけで、晴れて私は恵那ちゃんと恋人同士になれたのであった。

 

 

 タイミング的には不謹慎だけど、それとこれとは話が別。もう、そろそろはっきり言いたい。

 

 

 いやっほう!!

 

 

 ここ数日、自分でも驚くほど体調が良く、肌の艶も近年最高レベル。

 女性ホルモンがバンバン出ているのか、先日の断食自殺未遂がいい方向に作用したのか。

 

 配信した動画も尋常ではない再生数を弾き出しており、チャンネル登録者もうなぎ登りだ。諦めかけていた金の盾も、現実味を帯びてくるよこれは。

 調子に乗って、自宅での撮影を中心にしたサブチャンネルも開設するなど、まさに私は今、人生で最も輝いている。

 

 恵那ちゃんの騒動に伴う無断欠勤により、バイト先のコンビニからはかるーくクビを言い渡されたが、どうせ恵那ちゃんもいないことだし、全く問題なし。

 

 

 で、自分へのお祝いにちょっと贅沢をしようかと、酒屋さんへお酒を探しにいくと、見知った女の子に捕まった。

 

 なんと酒屋さんでは千明ちゃんが。そのとなりのスーパーでは犬山さんが働いていたらしい。

 

 

 

「……というわけでね、うへへ、そのキャンプで、恵那ちゃんは正式に、私の彼女になってくれたわけです。うひ、うひひ! あ、通報はやめてよね、まだチューとかは、ほら、控えてるからさあ、今のところ合法だよ合法。うひひ」

 

 ちょうどバイト終わりの時間だった千明ちゃんに誘われ、二人と近場の自販機コーナーでおしゃべりする。

 この二人となでしこちゃんには先日、電話で、この前迷惑をかけた謝罪はしておいた。

 志摩さんには……まだだけど。だって怖いんだもん。

 

「いや、ちょっとその笑い方、やばくないっすか? 不謹慎通り越して気味が悪いっていうか……」

 

 引いた表情の千明ちゃんの言葉も、今の私にはダメージゼロだ。

 

「いや、うちも気持ちはわかるで、あき。うちだってあきが私と付き合ってくれてからしばらくは、家ではあんな感じやったよ。……まあ、ちょっと不謹慎かもしれんけど、このくらいの方がかえって恵那ちゃんも気が楽やろ」

 

 同志犬山さんも、自販機で買ってあげたココアを飲みながら、頷いてくれる。

 さすがは同志。ほら、もっと飲みなさい。これは人気YouTuberである私のおごりだよ。ぐはははは。

 

 

「まあ、みんなもあんまり気を使いすぎないでいいんじゃないかな。みんなと過ごしてるだけで、気持ちは楽になると思うしさ。……で、恵那ちゃんは最近どんな感じ? 学校では私のこと、自慢しちゃったりなんかしてたりするかな? うひひ!」

 

「あー……付き合いはじめたのは一応聞いとりますけど。でもそれは、元々うちは時間の問題やって知ってましたし。あ、そうや、動画のコメント欄でかわいいとか美人とか言われて浮かれてるのが、ちょっと嫌やなーって、泣きながら言うてましたよ」

 

 犬山さんの言葉に血の気が引き、うそだろ、とその顔を見ると……いやいや、なんなのその表情。

 

「うそやで~!」

 

 かわいすぎかよ。人様の彼女ではあるけどさ。

 

 

「……それで、恵那も一昨日からはちゃんと部活にも来るようになりましたし。ちくわのことはまだ引きずってるんだろうけど、昨日は元気に薪割りしてましたよ、ほら」

 

 千明ちゃんが見せてくれたスマホの画面には、大きめな斧を不恰好に構える、相変わらず似合わないジャージ姿のマイエンジェルが写っていた。

 

 かわいすぎて胸が苦しいよ。

 

「私の彼女は天使かよ。ていうか、何でみんな学校で薪割りしてるの?」

 

 あの斧は確か、私からみんなに提供したやつだ。役に立っているのはうれしいけどね。

 

「ああ、この前あきが、身延で無料配布されてる薪を軽トラ1台分以上もらってきたんですわ。最近はみんなでずーっと薪割りばっかりで、腕がムキムキになってまいそうや」

 

 犬山さんは自分の腕をさすりながら笑う。

 犬山さんも、本当に幸せそう。千明ちゃんが作ってくれるいろんな出来事を、心の底から楽しんでるみたいだね。

 

 

 恵那ちゃんもそうやってみんなと、いろんなことをやっているうちに、きっと自分の中で、悲しいことやつらいことを、ゆっくりゆっくり整理していけるだろうと思う。

 

「いつもありがとうね、千明ちゃん。……ていうか、千明ちゃんの行動力は、ほんと尊敬するよ。どうせ今度の春休みも、なんか色々考えてるんでしょ?」

 

 この子がYouTuberになったら、私なんて一瞬で追い越されそうだよね。

 私の言葉に、飲み干したジュースの缶を捨てながら、千明ちゃんは嬉しそうに笑う。

 

「へへ、もちろんっすよ。三条さんには悪いけど、まずは恵那とみんなで遊びに行きたいっすよね。あと、実はあたしも三条さんやリンみたいに、ソロキャンプも一度はやっときたいなーって」

 

 ほう! さすが同志千明ちゃん。ソロキャンプとはお目が高い……。

 

「……うー。あき、キャンプならうちも行きたいわあ。なんでソロキャンプなん? あんたなでしこちゃんみたいにタフやないんやし、心配やで」

 

 犬山さんのこの表情。

 千明ちゃんが一人で遊ぶのは、自分が寂しいんでしょ。尊すぎじゃん。

 

 

「あ、それならソログルキャンってやつ、やってみたら? 最近流行ってるみたいじゃん。……私はやったことないけどさ。千明ちゃんたち以外、友達いないし……」

 

 言ってて寂しくなるけど。

 でもいいもんね。絶好調の私の人気にあやかろうと、何件か動画撮影のコラボ依頼も来てるし。

 友達とは違う現金な関係性だけどさ。

 

「あー、みんなバラバラのテントで、バラバラにご飯作ったりするけど、みんなで話しながら過ごす、みたいなやつっすよね。いいよなあ、なんだかんだやっぱり、みんなと一緒の方が楽しそうだし」

 

「それ言うなら、はじめから一緒にキャンプでもええやんか……。まあ、楽しそうやけど」

 

 尊い二人に、私もニヤニヤ笑いが止まらない。

 自分の心に余裕が出ると、周りのことを今まで以上に楽しめるようになるね。

 百合ってやっぱり最高やん?

 

 

「じゃあカップル対抗キャンプ対決なんていかが? キミたちは、私と恵那ちゃんのラブラブペアに勝てるかな?」

 

 自分で言ってて、なんか楽しそうな企画だ。動画のネタにも非常に良さそうだが、さすがにみんなを自分の飯のタネにするわけにはいかないけどね。

 

「いやあ、それだとちょっとやばいかもな。ベテランの三条さんには及ばなくて当然としても、リンにはなでしこがいるから、メシじゃ絶対敵わないし」

 

 お、おう?

 

「え、なでしこちゃんと志摩さんって、そういう関係なの? この前は、なんかなでしこちゃんの地元の友達と三人でキャンプしてたみたいだけど……」

 

 この前、志摩さんに私がつっかかってしまった、大井川らへんのキャンプ場での話ね。あのときは本当に申し訳ないことをしてしまったものだ。

 

「いやー、二人とも明らかに意識はしとるみたいですけど。なかなか進展せんみたいで。前は恵那ちゃんが色々サポートしてくれてたみたいやけど、最近は自分と三条さんのことでいっぱいいっぱいやったみたいですからねえ」

 

「リンはガチで狙ってるみたいですよ、なでしこのこと。でもなでしこがなあ。あいつ、そもそも恋愛なんてからっきしだろ? ……いや、あたしもほんのこの前までは同レベルでしたけど」

 

 志摩さんとなでしこちゃんのカップルか。

 想像してみると……いいね、すごくいい。

 男っぽいところのある志摩さんに、見事なまでに女の子女の子しているなでしこちゃん。でも夜は二人の立場は逆転して……みたいな、ね。どう考えても最高じゃん。

 

「じゃあさ、いつかデュオキャンプ対決って名目で、みんなでやろうよ。そしたら志摩さんなでしこちゃんペアも、私たちのラブラブに当てられてちょっとは進展するでしょ」

 

「いいっすねえ! でも最後に勝つのはあたしたちっすよ! なにせカップル歴は三条さんたちより、1ヶ月くらい長いんすからね!」

 

 

 二人とはそれで解散し、またラインでねー、と言っておいた。

 

 まあ、こういうノリだけの話は結局実現しないもんだよね、と当たり前のように思っていたけど、千明ちゃんの行動力を侮ってはいけない。

 

 恵那ちゃんのこともあるため、今のところ日程こそ未定ではあるが、すでにこのキャンプ対決の話はみんなの中で決定事項となっており、私は志摩さんも含めたラインメンバーに、場違いにも参加することになったのである。

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