ゆりキャンパーは斉藤さんが好きすぎる   作:くもくも@ハーメルン

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6話

 私の暮らす1LDKは、一部屋をキャンプ道具の倉庫として使っている。

 ほとんど冬が終わりに近づいてきたので、今日はキャンプ道具の衣替えを行っていた。

 

 一軍から二軍の道具を順に棚に並べていくと、やはりそこからあぶれた、使わなくなった道具がかなり多いことがよくわかる。

 こういうのをちゃんと処分していかないと、新しい道具を買いづらくなってしまうのだ。

 

 

 先日の斉藤さん、もとい恵那ちゃんと千明ちゃんと行ったキャンプは、結果的には大成功だったと言える。

 あれだけ陰湿な癇癪を起こしてしまったので、もう二人とのご縁もこれまでか……と覚悟していたのだが、意外にも朝から二人は私にかなりフレンドリーで、キャンプ以降も向こうからちょくちょくラインでやり取りをしてくれている。

 

 自分の秘密や恥ずかしいところを共有する、というのも、人と親しくする上では大事だと言うことだろう。

 長いボッチ生活で、そんなことはもうとっくに忘れていた。

 

 

 動画のネタとして購入したが、全く私のキャンプスタイルに合わなかった薪ストーブを部屋から運び出し、お風呂場に持ち込んでため息をつく。

 

 なんだか、恵那ちゃん千明ちゃんに対して、少し私は罪悪感があるのだ。

 二人が、それぞれ自分たちの同性愛のことを私に教えてくれたのに、私は自分のことを何も教えていない。

 

 そもそも、私の方が二人よりずっと年季の入ったがっちがちの同性愛者だし。

 自分が、恵那ちゃんが見てくれているキャンプ動画配信者だということも、未だに話せていない。

 

 大人になると、いろんなことに臆病になる。

 自分の秘密を話すことも。大好きな恵那ちゃんに対してきちんとアプローチすることも。

 

 いや、そんなのは言い訳か。私は昔からこうだった。コミュ障で、だからボッチになるんだ。

 二人もそのうち私に飽きて、私のことなんてすぐに忘れてしまうだろう。

 

 薪ストーブを浸け置き洗いしていると、なんだか寂しくて涙が滲んでくる。

 だめだな、一人暮らしはなんだか急に情緒不安定になる。

 今日は無心でキャンプ道具を整理していかないとね。

 

 

 この冬で使わなくなったキャンプ道具たちは、一応並べて、使わなくなったキャンプ道具特集として動画撮影しておいた。

 こういうのはバズりはしないが、それなりに再生数がじわじわ伸びるのだ。

 最後まで私の糧になってもらわないと、買った道具については元が取れないし、気に入らないところを言葉にしておかないと、処分するにも未練が残る。

 

 

 キャンプ動画の配信は趣味で始めたが、今や私のライフスタイルの重要な部分を占めている。

 

 早死にしたが、けっこうなお金持ちだった父の遺産のおかげで、死ぬまでたぶん食うに困らないくらいの貯蓄が私にはあり、動画配信の収入自体はあまり重要ではない。

 広告収入なんかで得たお金は、キャンプにかかる費用など、贅沢する部分にそのまま当てている。

 コンビニバイトに至っては最近、恵那ちゃんに会うためだけに続けているようなもの。

 

 

 私が動画配信を続ける一番の理由は、視聴者さんたちにちやほやされたいからだ。

 私は最近のキャンプブームの初期の頃から配信を行っているので、経験も含めたそのアドバンテージのおかげもあって、最近ちまたに溢れた女子キャンプ動画配信者の中では、かなりチャンネル登録者も多いほうだ。

 

 さらに、プロフィールや他配信者とのコラボ動画では、百合を全面に押し出しているので、実は顔を隠したままの動画の世界の中の方が、普段の自分よりずっと正直な自分自身でいられる気がしている。

 

 そんな私でもちやほやしてくれるファンの方々。動画を通じて満たされる承認欲求で、私は普段の寂しさをごまかしているのだ。

 

 ああ、でも本当はもっと直接的な潤いが欲しい。

 具体的に言えば、若くてかわいい、趣味が合って、心も優しい、黒髪の女子高生とお付き合いしたい。

 さらに具体的に言えば、マイエンジェル斉藤恵那ちゃんといちゃいちゃしたい。せめて何か、彼女に会うための口実が一つでも増えないかな。

 

 

 まだ使えそうな道具は、中古でネットオークションに出しておく。

 面倒なので、お高くて、まだきれいなものに限られるけど。

 

 だけどオークションに出すほどでもない、クッカーや、使い込んだ焚き火台などの細かいものは処理に困る。

 何ゴミに出せばいいのかもよくわからない道具も多いし。

 

 だが処分しなければ、新しい道具を買っても置き場がない。

 今回は棚一つ分の道具をきれいに処分してしまいたいのだが、何かいい手はないかなあ。

 

 あ、そうだ。

 

『中古のキャンプ道具いるひとこの指とーまれ!』

 

 

 

「お邪魔しまーす!」

 

 水曜日の夕方。

 

 私は制服姿の女子高生3人を、自分の部屋に連れ込むことに成功した。

 

「うわぁ! 三条先輩……じゃなくてつばめちゃんのお部屋、すごくきれいです……じゃなくてきれいだねえ!」

 

 一人はもちろん恵那ちゃん。今日も制服姿が神々しい。

 未だに慣れない感じで呼んでくれる私の名前に、毎回きゅんきゅんさせられる。

 

 好きすぎてもう、自分の表情がデレッとするのは抑えようがない。

 

 

「こないだからいつもありがとうございます! あ、これお土産っす!」

 

 千明ちゃんは、また丁寧にお土産まで用意してくれた。

 お、身延まんじゅうか。よし、後でみんなでこれ食べながらお茶にしよう。

 ていうかやっぱり千明ちゃんも、制服姿かわいいなあ。

 

 先週末に恵那ちゃんが切ったという髪も、かなりいい感じだ。

 恵那ちゃん結構才能あるねえ。私もぜひいつか切って頂きたいものだ。

 

 そしてもう一人が、とっても気になる新メンバー。

 ふわふわの金髪に、嫌でも目を引くお胸の膨らみ。柔らかく微笑むこの美少女が、千明ちゃんの彼女でもある、犬山あおいちゃん。

 

「はじめまして~。犬山あおいです~。三条さんのことは、恵那ちゃんからいつもよく聞いてます~」

 

 優しい印象の関西弁に、笑顔から覗くかわいらしい八重歯。

 

 ……この子は正直、すごくタイプですわ。

 

「はじめまして犬山さん。恵那ちゃんのバイト仲間の三条つばめです。よろしくね。……いやあ、美人さんだって聞いてはいたけど、本当にすごくきれいだねえ。びっくりしちゃったよ」

 

 ここは精一杯の笑顔で、媚び媚びのおもてなしだ。

 

 もちろん恵那ちゃんがナンバーワンではあるが、お近づきになりたいという気持ちに嘘はつけない。

 

「……つばめちゃん? ほら、早く道具見せてよ」

 

 恵那ちゃんが急にちょっと冷たい声で、私の袖をぐいぐい引っ張ってくる。

 

「おお~? もしかしたら恵那ちゃん、今の挨拶だけで嫉妬したんかあ? ふふ、なんや普段の恵那ちゃんとちょっと違ってかわいらしいねえ」

 

 犬山さんの柔らかい関西弁はなんだか心地よい。めちゃくちゃに男性にもモテそうだけど、これで百合っ子だなんて、素晴らしい逸材だなあ。

 

「もう! あおいちゃんにはあきちゃんがいるのに! ねえあきちゃん?」

 

 なんだかプンプン気味の恵那ちゃんに、千明ちゃんは微妙な表情だ。

 いやはや尊い。女子高生って素晴らしいよ本当に。

 

 

「で、この棚に置いてあるのが、もう捨てる予定の道具だから、欲しいのがあったらいくらでも持って行ってね。あ、運ぶの大変だろうし、良かったら今度車で本栖高校まで運んであげるよ」

 

 私の言葉に、三人は棚を見て目をキラキラさせていた。

 そうでしょうそうでしょう。

 

 二軍三軍落ちした道具とはいえ、あくまで好みの問題で使わなくなったものも多い。

 私はこれでも中堅どころの配信者。企業案件で、道具の提供を受けて動画撮影することも多いので、棚には割と真新しい道具も並んでいるし。

 

 

「わあ! これ、雑誌で見たことあるで! お宝の山やないの!」

「お、そういや今度、薪の無料配布があったら斧とかあったほうがいいよなあ。これがあったらバッチリじゃん」

 

 犬山さんと千明ちゃんが早速棚を物色し始めてくれた。

 二人の物理的な距離の近さが、ほんといい目の保養になる。百合ってほんと素晴らしいなあ。

 

 ……が、なんかおかしい。

 あの大天使、恵那ちゃんがちょっとまた情緒不安定気味の表情だ。なんだかむすっとしたまま棚をぼんやり見つめていた。

 

「……あー、じゃあ千明ちゃんと犬山さん、二人はそのまま色々見ておいてね。で、恵那ちゃん。お茶準備するから、ちょっとお手伝いお願いしてもいいかな?」

 

 私の言葉に、恵那ちゃんは急に元気を取り戻したかのように、ぱあっと微笑んで頷いてくれた。

 何を考えているのやら、よくわかんないけど、まあとにかくマイエンジェルは今日もかわいい。

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