オレは中部、ヒシアマゾンの夫である。
今日は仕事も休みなので、家でまったりする気満々である。
ふと横を見ると同じタイミングで起きていたのか妻と目が合う。
「おはよ、トレ公♪」
「いや、オレはもう…。」
「分かってるよ。アタシと結婚して教官になったんだよな。」
エヘヘと少し照れ臭そうにヒシアマゾンは言う。
そうなのである。
ウマ娘のトレーナーは担当ウマ娘のため、レースの日以外はほぼ二十四時間学園にいる。
故に給料はいいがブラックと言われるのだ。
まして、ベテランクラスになるとチームを持つのが一般的で、学園内のトレーナー寮くらいしかプライベート空間が無いのも珍しくない。
その点、教官はデビュー前のウマ娘達に座学やレースの基礎知識などを教える役職であり、オレのような寿引退した元トレーナーの受け皿でもある。
故に、この通り学園の敷地外にマイホームを持つこともできる。
無論、トレーナーとは別に若くしてウマ娘の教官を目指す人もいるが。
そんなことを考えているとでも、とヒシアマゾンは続ける。
「二人っきりの時は別に構わないだろ?」
そうイタズラっぽく笑う。
「そうだね。」
とオレが返すと、改めて照れているようだった。
ベッドから降り、パジャマから着替えて朝食を済ませ、借りていた映画を見る。
「ビコーのヤツが勧めて来たんだ。」
と嬉しそうに取り出したのは戦隊モノのDVD。
ポップコーンにジュースと、よくある映画テイストなチョイスで用意したオヤツをテーブルに置いて、年代もののプレイヤーにDVDを入れる。
内容はまぁ、よくある感じだ。
五人組のヒーローが、怪人と対決して世界の平和を守る。
ありふれたものではあるが、結構楽しめた。
なお、ヒシアマゾンはかなりノリノリだった。
「あの巨大化した敵とロボのタイマンは心躍るね!」
とのことだ。
他にも負けそうになっても根性で乗り切るところとか、仲間同士の絆などアツい展開は、ヒシアマゾンの琴線に触れるものがあったらしい。
「五人がかりで一人の敵を攻撃するのはいいのか?」
と問うと
「何言ってんだい。あっちだって数の暴力に訴えて来たろ。お灸を据えるにはアレくらいでちょうどいいのさ。」
と如何にもヒシアマゾンらしい明朗快活な言い分だ。
「ん、いけないね。飲み物が切れちまった。トレ公、悪いが取って来て貰えるかい。」
「はいよ。」
こう言うところで、彼女が夫を尻に敷いていると言われるのだろう。
だが、別にオレとしては尻に敷かれているつもりは無い。
現にオレが困っている時は真っ先に駆けつけてくれるし、失敗しても笑顔でフォローしてくれる。
器量よしで面倒見もいい自慢の嫁であり、なによりオレの大切な人だ。
なんでオレなのか聞いたら
「ヒシアマ姐さんは追い込み脚質だからさっ!」
と言った。
まぁ、要するに思いの丈は勝負どころで一気にぶちまけるタイプということなんだろうと受け取った。
実際告白されたのも、その年のドリームトロフィーが終わった直後だったし。
「うん。でもそれ答えになってないよね?」
「いつのまにか惚れてた!そして最適のタイミングを見計らった!それだけさ!」
と更に続ける。
卒業するまでは婚約という形でいいと理事長にも了承を得ていた。
無論ご両親にも会いに行った。
「娘が決めた相手なら。」
と、あちらも乗り気だったのを覚えている。
飲み物を持って行くと、ヒシアマゾンはソファーで寝ていた。
久しぶりに映画を見てはしゃいだので疲れたのだろう。
いつもしっかりしている彼女だけに、珍しいものが見られて役得な気分だ。
オレは冷蔵庫から持ってきた飲み物を机の上に置き、彼女を起こさないよう毛布をかけた。
なんとなくその瞬間が幸せに思えたのだった。
需要があるかはわからん。
書きたいから書いた!
以上!