筆がのったので二話目投稿。
とある夏の昼下がり頃。
妻、ヒシアマゾンの様子が少し変である。
なんでも最近は食欲があまり無いとかなんとか。
知っての通り、ウマ娘は走ることが好きな性質で、その運動量の多さゆえか人間女性よりも食欲が旺盛なことが多く、ヒシアマゾンも御多分に洩れずそれなり以上に食べる方だ。
トレーナー業をしていた以上それをおかしいとは思わないし、たくさん料理を作り沢山食べる妻がオレは好きなので、それを聞いた時我が耳を疑った。
トレーナー時代の知識を総動員して原因を探る。夏バテにしても部屋は冷房が効いている。塩分、及び水分補給も知っている限りきちんと出来るからその線はない。
栄養バランスだってヒシアマゾンの料理はバッチリである。
ならば…と顎を手を当てて考えた時、もしやという可能性が頭をかすめた。
そう言えば最近、やたらと酸っぱいモノを欲しがっていたような…。
「!!」
「なんだい?なんかあったのかい?」
「ヒシアマゾン。」
ソファーで横になっている妻に話しかける。
「一度病院に行こう。」
「なんだい大げさだね。少し寝てれば良くなるって。」
「いや、病気を疑ってるわけじゃ無いさ。」
「?」
「むしろ喜ばしいことかもしれない。」
そう言ってたどり着いた病院。
ヒシアマゾンはそのまま診察室に。
オレは待合室でソワソワしつつ結果を待つ。
「中部さーん。」
「あっはい。」
「中へどうぞ。」
ヒシアマゾンを見ていたのは優しげな中年くらいの女医さんである。
オレは軽く会釈した後、ヒシアマゾンの隣の丸椅子に腰掛ける。
「おめでとうございます。二ヶ月ですよ。」
やっぱり、と思う気持ちと嬉しい気持ち、これから妻に掛かるだろう負担への不安と心配、そして生まれてきた子供を立派に育てられるかといった大小さまざまな感情がごっちゃになって胸に渦巻く。
「聞いた限りつわりもまだのようなのに、よくお気づきになりましたね。」
先生は感心したように言う。
「これでも元トレーナーなもので。」
「なるほど。」
「ですが、懸念はあります。」
「ええ、みなさんそう仰いますね。」
ですが、と先生は続けて言う。
「しっかりと奥さんを支えてあげてください。貴方が不安そうにしていると奥さんやお腹の子まで良く無い影響を受けてしまいかねません。」
「そう…ですね。」
チラと隣を見るとヒシアマゾンはいつもの眩しい笑顔でこちらを見ている。
「ほらほら、先生も言ってたろ?アタシは嬉しいよ。アンタとの愛の結晶が自分の中にできたってのは。アンタはどうなんだ?」
「それはもちろん嬉しいよ。」
「なら、今はそれでいいだろ。家事のこととか大変ならいつでも言うからさ。」
本当に敵わないなあ。
帰りの車の中、助手席でヒシアマゾンは言う。
「この子もアタシみたいにレース出たいとか言い出すのかね?」
「そうだねぇ、母娘でトリプルティアラなんてのも夢じゃ無いかもね。」
「いや、そこまでじゃなくてもさ。元気ならそれでいいさ。」
その声は、今まで聞いた中でも特に優しい声音だった。
その後、ヒシアマゾンのおめでたを知人や友人にしらせると、美浦寮の皆やナリタブライアン、理事長やトレバカのアイツからもお祝いが沢山届いたのだった。
意外と伸びててびっくりしましたわ。