チュンチュン
チチチチチチ
スズメの鳴き声が朝を告げる。
しかし、寝室のベッドで寝ている人影はそんなこともお構いなしと布団から出ようとしない。
今日は日曜日。
そして今日の午前中は特にこれといった予定もない。
だからこそ、特に目覚ましもかけていない。
そう思い、再び眠りにつこうとすると
タタタタタタタ
バァン!
「起っきろ〜〜!!」
小さな人影が寝室のドアを開け、カーテンを開け、布団をめくる。
「う〜ん………。」
布団の中身は男であった。
これでもかつては敏腕トレーナーと称され、今は教官としてトレセン学園で教鞭を振るう立場でもある。
「アンデス…とーちゃんは眠いんだよ……。」
「えー、だからってずーっと寝てたら日曜なんてすーぐ終わっちゃうよー。」
歳の頃は小学生低学年くらいだろうか。
彼らの長女が八重歯を見せてニシシと笑う。
ちょっと母親に似て来たかななんて思う男である。
「そっかー。じゃ、かーちゃんに言ってやろ。」
「ちょ、アンデスさん。それはないっスよ〜。」
急にタジタジになる男。
この反応だけでも家庭のパワーバランスは窺い知れよう。
しかし、よくよく見ると彼は本気で困った顔などしていない。
むしろ少しニヤけてさえいる。
実の娘に手を引っ張られながら一階に向かう。
キッチンでは男の妻がエプロン姿でフライパンを振るっている。
他の子は既にテーブルで朝食を食べ始めている。
ご飯とお味噌汁。漬け物におひたし、そして焼き魚に焼き海苔にゆで卵。
納豆は冷蔵庫からお好みで。
ごくスタンダードな日本の朝食だろう。
ちなみに彼の妻の服装は上はTシャツで下はジーパンというラフな格好である。
日頃の努力の成果か、選手時代からそのスタイルは一向に変わっていない。
「やあっと起きたのかい?」
妻はいつもの快活な笑みを浮かべる。
「おねぼーさんだー。」
「バラード、とーちゃんに牛乳取って。」
「あいー。」
「ありがと。」
「ラスター、空いた皿取っとくれ。」
「ほい。」
「さんきゅ。」
「あいよ、アンタの分のシャケ焼けたよ。」
「おー、ありがとう。」
「野菜も食べるんだよ。」
「おーう。」
箸を持ちいつものように朝食をいただく。
時々愛娘が食べ物で遊んでいるのを注意しながら食べ進めていく。
何度食べても飽きない味だ。
「ご馳走様。」
「食べ終わった皿はちゃんとシンクまで持って来な。」
「はーい。」
「ほいほい。」
朝食を食べ終えると、少しの間パソコンに向かう。
教官としての仕事の資料の作成のためだ。
と言ってもトレーナー時代ほどたくさん必要なわけでも無いので、午前中には終わるだろう。
午後は家族でお買い物だ。
あのおもちゃが欲しい。あのお菓子が食べたいとねだられるのを想像して少しふふっとなる。
「幸せだねぇ。」
ふと、パソコンから手を離しそんなことを考える元トレーナーの男なのだった。
続くと良いなぁ…。