広々とした高原を存分に駆け回って満足したのか、娘達は両親のもとへホクホク顔で戻って来た。
「つかれた!」
「たのしーねー」
「ひとやすみー」
「ほいほい、飲み物あるよー」
その内のとーちゃんの言葉に娘達は駆け寄る。
スポーツドリンクの入ったコップをそれぞれ受け取ると、ゴクゴクと美味しそうに飲み始め、あっという間に飲み干してしまった。
「のむー!!」
「おいしー!」
「おかわりー」
コップを持った手を高々と掲げ、おかわりを所望する娘達。
「こらこら、お腹が痛くなって夕飯のバーベキュー食べられなくなっても知らないよ?」
そんな彼女らのかーちゃん、ヒシアマゾンの言葉に
「ばーべきゅー!!」
「おにく〜!!」
「たべたーい!!」
と目をキラキラさせる。
ついさっきまで駆け回っていたと言うのに、子どもというのは元気なものだ。
しかし、まだ日も高いため散策に時間も取れそうだ。
「まだ準備にも早いし、ちょっとしたら探検しようか?」
「たんけーん!!」
「するするー!!」
「わたしたいちょー!!」
すっかり乗り気の三人娘。
一家は揃って探検という名のお散歩と洒落込むことに。
キャンプ場内には釣り場として大きな湖があり、現に何人か釣り糸を垂らしてジッとしている人が何人もいた。
「こちらたいちょー、こちらたいちょー、ぜんぽーにおおきないけをかくにん。おーばー」
「おーけーたいちょー」
「えーぽいんとでごーりゅーだ。おーばー」
娘達はすっかりウマンドーごっこと洒落込んでいる。
探検隊がいつの間にか軍隊へと様変わりしていたようだ。
なお、そんな彼女達に周囲は微笑ましいものを見る目をしていた。
「あれは池じゃなくって、湖って言うんだよ〜」
とーちゃんがそう優しく指摘すると
「とーちゃん!さいごにおーばーってつけて!!」
と、長女アンデスは御立腹だ。
しかし怒られているとーちゃんは、最愛の妻も小さい頃はこうだったのかななんて、のほほんとしている。
「ごめんごめん。オーバー」
そういうと「ゆるす!」とニカッと笑い手を繋いでくる。
それを見た他二人もかーちゃんの両側に小走りで向かい、同じように手を繋ぐ。
それからは穏やかな散策だった。
空気は澄み渡り、向こうに見える山々は夕焼けの空を背景に、積もった雪に美しく光をキラキラと反射させる。
ひと家族ごとのスペースが広いのも良い。
川や林はきちんと整理され、なおかつ自然を損なっていない。
クマが出るにも浅いし、その辺りの心配もない。
テントに近い平原に腰かけ、ゆったりとしていると連絡が入る。
「バーベキューの準備が出来たってさ」
その言葉を聞くと娘達が跳ねるように反応する。
「ばーべきゅー!!」
「おにく!!」
「たべるー」
三人娘は未だに元気いっぱいだ。
ルンルンでテントに向かうと、よく手入れされたバーベキューコンロに専用の炭が用意されていた。
元トレーナーはクーラーボックスを取り出し、調理の準備を始める。
「アタシも手伝うよ」
アメリカ育ち故か、夫と一緒にてきぱきと用意を済ませる。
コンロに火をつけ、鉄板を温める。
この間にピーマンや輪切りにしたとうもろこし、にんじんなどの具材を肉と共に串に刺す。
バーベキューソースをつけ、適度に焼く。
ウマ娘だからか、いざ作ってみるとかなりの量になった。
準備した分が全部出来上がったのは周囲が暗くなり始めた頃だった。
なお、娘達は焼けた端から食べていった模様。
「こらこら、意地汚いよ」
そうかーちゃんが諌めても、ちびっ子の空腹は止まらない。
「ハフハフ」
「おいひー」
「ぴーまんいやー」
どうやら娘達はご満悦の様子だ。
「君もゆっくり食べて」
「アタシももらってるさ」
ほれ、と手にした串を見せる。
賑やかな宴はあっという間に終わり娘達はテントの中、もっと言えば寝袋の中でグッスリだ。
テント前に置かれた椅子に座って夫婦は話す。
「まさか寝袋でもはしゃぐとはね」
「小さい頃はなんでも新鮮なのさ」
夫婦の会話は先ほどと打って変わって静かなものだ。
無論だからと言って雰囲気が暗いだとかそう言うわけでは無い。
「ありがとね、トレ公」
そう言うヒシアマゾンは昔と違い母の顔をしていた。
自分は小さい頃キャンプで思いっきりホームシックになりました。