ペルソナ5 Dark Revengers   作:海色ベリル

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第10話 Don't stop,Running!

翌日、僕はいつもとは違う気持ちで

学校に足を踏み入れた。

今日は古城さんに話しかけるんだ。

話しかけて、協力できるか聞くんだ。

僕は深呼吸をして校門を通る。

そんな中、最後まで気づかなかったが、

僕の背後には宗馬と茜が尾行していた。

「ねえ、本当にやるの?」

「やるんだよ! ホップから頼まれたんだ。

これほどいい機会はないしな!」

「田嶋君をリーダーとして

鍛えてほしいって話でしょ?

それなら別にこんなやり方でなくても……」

「茜も知ってるだろ?

あいつにはあと一歩が足りないんだ。

怪盗でリーダーとなったからには、

ちょっとでも喝を入れて

いざという時頼りにならねえと!

沙城の時は運も絡んでいたからな。

次の仕事もそうとは限らない。

何、あいつは困難で成長するタイプだ。

それに万が一ヘマをしたらカバーすればいい話さ」

「うーん……話が合っているようなないような……」

「……よーし、聴こえているか?

ターゲットが学校に到着した!

これよりプランAに取り掛かる!

わかっているとは思うが上手くやれたら……

ビックバンバーガーおごりだ……!!」

そう。僕の知らないところで計画されていたんだ。

根性叩き直し作戦という、実に理不尽な作戦が。

 

早速僕は下駄箱で古城さんを発見した。

よし、あまり人もいないし、

話しかけるなら今がいい。

「あの、古城さん! 今いい…」

「すみませーん! ちょっといいですかー?」

すると突然、僕の周りに

大勢の女子生徒が囲んできた。

「えっ、ええ!?」

「転入生ですよね? まだ部活は決まってませんか?

でしたら、うちの部はいかがですか?

新聞部は随時新入部員歓迎します!」

「水泳部はどうです?

初心者大歓迎です! カナヅチでも

親切丁寧に指導しますんで!」

「あ、あの、すみません……

今僕急いでるんで…」

「天文学部はいかがですか?

理科のテストに役立ちますよー!」

「図書委員なら国語力の向上に…」

女子生徒達の激しい押しのせいで、

僕は古城さんに近づけない。

そうこうしているうちに、

古城さんが行ってしまう。

「ああっ、待って! 古城さん…」

「柔道はどうだい!? 体力向上と防犯に…」

「書道は美学に…」

 

なんとか振り切れたものの、

結局朝礼のチャイムまでに古城さんに

近づけられなかった。

一時間目が終わり、今度こそ古城さんに会うべく

隣のクラスに向かった。

「よし……さっきは運が悪かったけど、

次は大丈夫だよね」

僕は隣の教室を覗き込む。

宗馬の話ではいつも席は窓際の端っこらしい。

僕は窓際に注意して覗く。

しかし、彼の姿はなかった。

「あれ? いないな……」

とりあえず僕は、教室にいる生徒に聞いてみた。

「あの、すみません! 古城霧矢さんって人、

どこにいるか知ってます?」

「古城? 古城って、あいつか……」

「いっつも窓の外ボーっと見てる奴か。

あいつなら確か図書室に行くのを見たな」

ということで僕は図書室に向かった。

聞いてた通り、図書室を覗くと

彼がライトノベルを読んでいるのを発見した。

「いた!」

僕はさっそく話しかけようとした。と、その時だ。

「見つけたぞー!!」

でかい声に僕はびくっと肩を震わせた。

思わず振り向くと、僕に向かって

めっちゃガタイの良い男子生徒達が走ってきた。

服装から見るにラグビー部のようだ。

「君! 田嶋勇気君だね!?」

「あ、えっと、はい?」

「話は新聞部の部長から聞いた!

君はラグビーに興味があるそうだね!」

「えっ、は……はあっ!?」

新聞部の部長って、怪盗お願いチャンネルの

管理人になったあの人のことだろうか。

しかし僕はその人とは名刺をもらって以来、

連絡先交換はしたが、

バレるのが怖いせいでまともに話してないし、

何よりラグビーの話なんてしていない。

うん、絶対にしてない。

しかしラグビー部員は続ける。

「君は貧相な筋肉だが、鍛え甲斐がある!

しかも君はまだ部活に入ってないそうだな!?

ならば話は早い!

ラグビー部に入り、共に熱い青春を過ごそう!

君にはその資格があるっ!」

「い、いえっ、お気持ちは嬉しいんですが

今ちょっと急いでるんで…」

「大丈夫だ! 君は変われる!

俺達が精一杯サポートしよう!」

すると、気づけば古城さんが図書室から出てきた。

「あっ、古城さん、あのっ…」

「さあ田嶋勇気君!

共に熱い青春を過ごし、かけがえのない時間を

手に入れようじゃあないか!」

ラグビー部の人達の押しが強く、

結局チャイムが鳴るまでそれは続いた。

当然、古城さんには話しかけられず。

その後も僕は古城さんに

なんとか話しかけようとするが、

どういう偶然か色々と邪魔が入って

近づけることすらできない。

トイレの時はオカルト部に邪魔され、

昼休憩の時はバスケ部に無理矢理勧誘されたり、

漫画研究会にデッサンモデルに誘われたりと、

全然古城さんに近づけられない。

何故だ? あんまり見てなかったけど

今日のテレビ占いか何かで

僕の運勢が悪かったのか?

てか当たるものなのか?

色々と疑問が頭の中を交錯する。

だが今日中に古城さんに話しかけないと

宗馬と茜に申し訳がつかない。

なんとかすり抜けて近づかないと。

残るチャンスはあと一回。

そう、放課後だ。

宗馬の話が本当なら、彼は

終業後すぐに下校してしまうはず。

急いで話しかけないと。

授業が終わり、僕は隣のクラスの様子を見る。

話の通り、もう彼は帰ろうとしていた。

僕は周りを警戒して古城さんを追いかける。

「……よし、最終プラン発動!

あいつらを投入しろ!」

もうすぐ追いつくと思ったその時だった。

曲がり角から突然相撲部の部員達が

どすこいどすこいと声を張り上げながら

走ってきたのだ。

「いいっ!?」

今まで以上に押しが強そうだ。

だが諦めてなるものか。

僕は決死の覚悟でその流れに抗う。

「す、すみませんっ!

ちょっと通してくださいっ!」

さすがは相撲部。ラグビー部以上の迫力と強さと、

溢れんばかりの筋肉に窒息しそうだ。

「ま、待って……っ!」

しかし僕と古城さんの距離は

どんどん離れていくばかり。

「ち、ちょっと! このままじゃ帰っちゃうよ!」

「やば! 足止め! 古城をなんとかしてくれ!」

すると、古城さんの前にあの新聞部部長が現れた。

「君〜! 古城霧矢だよね!

ちょっとお時間よろし?」

「……何?」

「ちょっとばかしアンケートをば……」

彼の足が止まっているうちに、

僕は相撲部員を潜り抜ける。

「もう、ちょっと……!!」

「ありがとうございやした〜!

ぜひ来週の新聞チェックしてね〜」

新聞部部長が去っていく。

 

「古城君っ!!」

 

僕の叫び声に彼は振り向いた。

間に合った……話しかけられた……

安心した僕に一気に疲労が襲う。

はあはあと僕は息を荒す。

そんな僕を彼、古城君はきょとんと見ていた。

「……何?」

「はあ、はあ……、ご、ごめん、ちょっと、話…」

「……深呼吸しろ。話が聞きづれえ」

もっともだ。僕は言われた通り、深く深呼吸する。

「……ふう」

「……で、何か用?

あんま長居はしたくねえんだが」

「ああ、ごめん。ちょっと、今から時間ある?

君に話したいことがあるんだ」

 

「……よし! よくやったぞ、日下部!

勇気のど根性作戦成功だ!」

「いやあ、危なかったねえ。

あの足止めなかったら逃してたよ」

「本当色々とありがとうな!」

「いいともいいとも!

これが怪盗団の良い報酬になるなら

いつだって協力するさ!

で……報酬の方は」

「ああ、安心しろ。協力してくれた奴全員に

ビックバンバーガーのおごりだろう?

任せろ、必ずきっちり果たす!」

「あざっす!!」

「あの〜……ちなみにそのおごりのお金って……」

「もちろん、沙城のオタカラからだ!」

「やっぱり……」

 

なんとか古城君を呼び止めた僕は、

彼と一緒にいつもの渋谷駅に向かった。

「えーと……」

「おーい! 勇気!」

集合場所から宗馬の声が聞こえる。

宗馬がこちらに向けて手を振っている。

「あ、いたいた!」

「あいつら……」

合流した時の宗馬と茜は、

何故か息を切らしながら汗まみれで

待っていてくれた。

「……あれ? はあはあ言ってるけど、

どうかした?」

「えっ? 別にっ? 何もねえけど?」

「ち、ちょっとランニングをね!

あはっ、あははは!」

引きつった茜の笑顔に違和感を感じていたが、

特に気にすることなく僕は話を始める。

「あ、えっと、この二人も一緒でいいかな?」

古城君は一瞬二人を睨むと、ふうとため息を吐く。

「別にいいけど」

僕はほっとした。

「で、話って何?」

「まあまあ、ここで話すのもあれだ。

ちょっと場所を変えよう。な?」

ということで僕達は場所を変えて、

駅前にあるカラオケボックスに寄った。

「どーよ! ここなら店員以外邪魔は入んねえぜ?」

宗馬は上機嫌にマイクを手に自慢気に話す。

電源を入れたばかりのせいで

エコーが激しく響いて耳が痛い。

「宗馬! 声が大きいよ!」

「別にいいだろ? ここはそういう場所なんだから」

「……」

僕の隣には古城君が座っているのだが、

なんだか不機嫌そうだ。

もうすでに飽きているのか、

足を組んでスマホをいじり始めた。

「で? 話があるならさっさとしろ。

カラオケの誘いならもう帰るが」

「ああ、違う違う! そんなんじゃないから!」

ここで逃がしたら僕の苦労が水の泡だ。

それだけはなってはならない。

「そうそう! ちょーっとばかしお前に

俺達の割と大事な仕事を手伝ってもらいたくてさ!

安心しろ、お前の安全は保証する!

うん、約束する!」

古城君は宗馬を睨んでいる。

いかにも信じらんねえって顔だ。

さすがの宗馬も引き気味だ。

「え……えーっと、ま、まあ

単刀直入に言うとだな、

俺達は今から雪之丞綾子を

改心させようと思ってんだ。

でも、ちょっとつまずいてしまってな、

そこでお前が必要なんだよ。

だから、協力してくれねえか?」

宗馬はマイクを古城君に渡す。

古城君は嫌々マイクをぶん取る。

「改心なんて無駄。だから断る。以上」

そう言うと古城君はマイクを乱暴に置き、

鞄を持って帰ろうとした。

「はあ!? おい、ちょっと!」

「ま、待って!」

「……てめえら馬鹿か?」

「え?」

「改心? あの女をか? そんなの無理な話だろ。

あの女は性根が腐りに腐ってやがる。

殺しでもしない限り心を入れ替えることはねえ。

あいつはたとえ倒したとしても

這いつくばってでも追ってくる。自分のために。

それくらい執念深いし、逃げ切れた奴はいない。

だから、諦めろ。目をつけられないうちに」

彼の声からは、冷たさと怒りが感じた。

ただ聞くだけなら淡々と

話しているように聞こえるが、

よくよく耳を澄ませばわかる。

台詞だけ聞いていれば僕達を

心配しているような言い回しだけど、

そんな優しさではない。

本気の警告。

受け入れないと危険だと感じた。

古城君は部屋のドアノブに手をかけようとした。

「待って!」

僕は怖気づきながらも彼の腕を掴んだ。

「……話を聞いて」

古城君は僕を睨みながら

僕の手を無言で離そうとする。

「……僕達は本気だよ。たとえ無理だとしても、

やらなきゃいけない理由がある。

でないと、きっと後悔すると思うから」

「……後悔しても取り戻せないことがある。

なら経験しない方がいい」

「だったら!」

僕は古城君を強く掴む。

「だったら、後悔しないようにする。

そうならないようにする。

たとえ後悔することがあったとしても、

逃げることはしたくないから……」

すると、茜が立ち上がった。

「古城君。信じてもらえないかもしれないけど、

私達には雪之丞さんを改心できる力があるの!

まだ絶対にってわけじゃないけど……

でもなんとかなるかもしれない!

私も生徒会長として見過ごせないの! だから……」

「とりあえず話だけでも、なっ?」

ここまでしたんだ。彼のことだから、

きっと睨まれてもしょうがない。

でもここまで来たからには引き下がれない。

何より僕は知っているから。

「……初めて君を見た時、

最初はちょっと怖い感じがしたけど、

花子さんを助けた時、憎まれ口叩いてたけど

本心で言ってるとは思わなかったし、

悪い人じゃないってわかったんだ。

君なら、信じてもらえると思ってる。

だから……お願いします……!」

「……」

古城君は不機嫌そうに舌打ちしながら

僕の手から腕を離すと、激しく宗馬の隣に座った。

「話聞けばいいんだな?」

僕は茜と顔を見合わせて安心した。

どうやら僕が感じた通り、

根は悪い人じゃないようだ。

一段落したところで、僕は古城君に話した。

沙城を改心させた心の怪盗団は僕達だということ、

パレスと認知世界のこと、

そして次のターゲットは雪之丞さんで、

彼女のパレスを攻略するために

古城君が必要になるということを話した。

「……つまりはあれか。

俺はてめえらが円滑に仕事を進めるための

鍵になるってわけか」

「そう! 協力してもらう代わりに、

俺達のことは内緒にしてほしいってわけだ。

お前は秘密を安安と話す感じはなさそうだから

鍵に選んだってこと!」

「お願い、古城君!

さっき五十嵐君も言ってたけど、

君の身の安全は守るから! 約束する!」

古城君はじとりと僕らを見渡す。

「……傷一つ付けたら即バラすからな」

「えっ!? じゃあ……」

「勘違いすんな。ただ単純に

付き合ってやろうと思っただけだ。

正直心の怪盗団とかパレスとか

到底信じらんねえワードだし、

てか信じるのがどうかと思う。

けど、俺がいないとてめえらは不都合なんだろ?

ならしょうがないから付き合ってやるんだよ」

「ありがとう古城君! 助かるよ!」

「うっし! なら早速パレスに潜入だ!

今ホップに連絡しとくな」

なんとか了承を得てほっとした僕は、

古城君に近づいて小声で話しかける。

「ありがとう、協力してくれて」

「……別に」

「やっぱり古城君、良い人だって信じてた」

「……霧矢」

「え?」

「霧矢でいい。てめえならそう呼んでいいから」

あれ、ひょっとしてちょっとだけ許してくれた?

僕は一瞬きょとんとなったがつい笑った。

「何がおかしい」

「別に?」

「よし! そうと決まればまずは……

時間あるし歌おうぜ!」

「ええっ!? パレス潜入じゃなくて!?」

「だってもったいないじゃん?」

僕は霧矢を恐る恐る見た。

「……」

渋々ながら霧矢は選曲マシーンを手に取る。

「さっさと曲名言え」

「ならフェザーマンで!」

 

なんとか霧矢の了承を得た僕達は

途中でホップと合流し、そのまま学校へ戻った。

「なるほど〜、ずいぶん賭けに出まちたね!」

「でもこれでいいんだろ?

これでオタカラに一歩近づいたわけだし!」

「僕達のこともそんなに驚いてなかったし、

怪盗団のことも秘密にしてくれるって言うから、

ホップも信じていいと思うよ。

まあ、傷一つ付けないのが

絶対条件なんだけど……」

「その条件、ちょっと野蛮じゃないでちゅか?」

「……なあ、てめえら。大丈夫か?」

後ろで霧矢が不思議そうに問いかける。

「さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?

あとホップって誰だよ?」

「ああ、そっか! 見えてないんだっけ?」

「学校にも着いたし、そろそろ行こうか」

「は? 行くって?」

「言ったろ? 雪之丞の心の世界だ」

僕はイセカイナビを起動させ、

雪之丞さんのパレスに潜入する。

「……は?」

霧矢は変化した周りに戸惑っている。

「何だよ、ここっ?

さっきまで学校にいたはず……」

「よかった。ちゃんといるね」

「……その声、田嶋か!?」

怪盗姿になった僕に霧矢は驚く。

「もうこれで君もあたちの姿が見えるでちゅ!」

ホップが霧矢に近づく。

初めて見るホップの姿に、

霧矢が目を丸くしている。

すると、霧矢は徐にホップの体を見つめ始めた。

耳を伸ばしてみたり、持ち上げて振ったり、

くすぐり始めたりしていた。

「……最近のは電池無しでここまでリアルなのか」

あ、おもちゃと勘違いしている。

「おもちゃじゃないでちゅ!!」

「ホップだよ。さっき話してたのはこの子。

ここに来たことない人には見えていないの」

「マジか……って、その声は篠崎か!?」

「俺達はここではこんな格好なんだよ」

僕達の怪盗服姿に、霧矢はまじまじと見ていた。

「……てめえらの話はマジのようだな。

わかった、信じるよ。てめえらが怪盗団ってこと。

それで、俺は何すれば良い?」

「とりあえず着いてきて」

僕達は霧矢を守りつつ、

例の行き止まりまでたどり着いた。

「あったぞ。これだ」

宗馬が見つけたのは、例の顔認証システムだ。

「これが通れば、この扉は開くんだよね?」

「ああ」

試しに僕はシステムに顔を近づけた。

緑色のレーザーが僕の顔を認識する。

しかし、ブザーが鳴って扉は開かない。

「当たり前だけど僕じゃダメか」

「じゃあ古城君」

「顔出せばいいのか?」

霧矢はシステムに顔を近づけた。

すると、ピンポンと軽快な音が鳴り、

ゆっくりと扉が開いた。

「おお〜! やったぜ!」

「これでいいんだな?」

「あとはオタカラの場所までの

ルートを探るだけだな」

「気をつけるでちゅ! この先は

ここより敵が多そうでちゅよ!」

「敵って、さっき通りかかった連中か?

見た感じ大したことなさそうだが」

「いやいや、油断はできないよ。

何より霧矢はペルソナがないから」

「ふーん。ペルソナねえ……

ま、そんなんなくても別に困らねえけどな」

すごいあっさりしている。

強がりなのか、本気でそう思ってるのか。

いや、強がりにしては恐怖は感じられない。

「え? 古城君って何か戦う術とかあるの?」

「ないわけじゃねえけど、

ほぼほぼ護身術みたいなもんだな」

「例えば?」

「んーと……足の甲を踏む、手をつねる、捻る、

腕を噛む、鳩尾を殴る、相手が男なら急所を蹴る、

耳を引っ張る……くらいか?」

「うわ……地味に痛そうだな……!」

護身術と言うよりちょっとしたお仕置きみたいだ。

まあ死ぬわけじゃなさそうだから良いけど。

「でも、やっぱり心配だから無理はしないで。

傷一つ付けるなって言ったんだから」

「まあ、それもそうだな」

「あらあらまあまあ!

誰かと思えば根暗君じゃないの!」

すると、扉の先から雪之丞さんのシャドウが

付き添いを連れて現れた。

「雪之丞……!?」

「誰かがこの扉を開けたから

さぞかし良い質の奴隷が来たかと思ったら、

まさかの根暗君だったなんて。

ふふっ、相変わらず暗い顔してること!」

僕達は霧矢を庇い臨戦態勢を取る。

「あなた達が怪盗さん? ようこそ我が劇場へ!

わざわざ私に殺されるために来たのかしら?」

 


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