ペルソナ5 Dark Revengers   作:海色ベリル

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第15話 Believe in myself

「では次のニュースです。

先日東京で発生した放火殺人についての

新たな情報が入りました。

警察の調べによると放火の罪で

女子高生が逮捕されたとのことです。

逮捕された女子高生は、

かの雪之丞家の娘だと名乗っておりますが、

本家夫婦は否定していると

警察の調べでわかっています。

さらに女子高生は、融資と名乗って

慰謝料を利用した詐欺をしたことも認め、

警察は詐欺罪も含めて調査しています。

また、女子高生の元には、

心の怪盗団を名乗る者からの手紙が届いており、

警察は詳しく調べています」

 

雪之丞を改心させてから数日後、

パレスで見たあの姿で現れた彼女は、

そのまま自主退学した。

どうやらホップ曰く、力を無くしたから

元の醜い姿に戻ったそうだ。

この一連の事件を通したことで、

怪盗団の存在は大きくなった。

名家出身の二人の悪事を暴いた謎の集団として、

早速テレビやニュースで

様々な憶測が飛び交うようになった。

で、その怪盗団に改心させられた二人が

秀尽学園の生徒だとバレたせいで、

しばらく学校はメディアに追われ、

職員会議はしっちゃかめっちゃか。

生徒会もその肩翼を背負うはめになって

すっごく大変になっていると茜が言っていた。

とはいえ、これでまた一仕事終えた僕達は、

今回も新メンバー歓迎を兼ねた

打ち上げパーティーを開催することになった。

「というわけで、霧矢歓迎と

改心成功を兼ねて、乾杯!」

『乾杯!』

ジュースの入ったグラスを打ち合う。

そして今回は、笹野さんからの

差し入れがあるそうだ。

「はーい、お待たせ〜!」

笹野さんが大きな鍋を持って階段を上がってきた。

鍋がテーブルに置かれ、蓋を開けてみた。

『おお〜!』

入っていたのは、出来立てのカレーだった。

「これが噂に聞くホームズカレーかあ!」

そう。この喫茶ホームズは、

コーヒーとカレーが美味しいことでも有名だ。

特にこのカレーはコーヒーに合うように

スパイスをうまく調合しているそうだ。

早速僕達は一口食べた。

『!』

口の中にスパイスの辛さと旨味が混ざり、

絶妙な美味さが広がる。

「うおお……美味ぇ……!!」

「美味しい……美味しいです!」

「本当? 良かった〜」

「今まで食ったカレーで一番美味いな!」

茜も霧矢もスプーンが進んでいる。

「ふっふっふっ……師匠の直伝に

やはり狂いはなかったわね!」

「師匠?」

「私の喫茶店経営の先生。

四茶で今も喫茶店のマスターやってるの。

昔、たまたまそこのコーヒーとカレーを食べたら

すごく感動しちゃってね、

ぜひうちの店の参考にしたいって頼み込んだのよ。

マスターはぶっきらぼうだけど憎めなくて、

なんだかんだですごく良い人だったわ。

今も時々だけどお互いの店に来ては

駄弁ってたりしてるの」

「そうだったんですか」

「そうそう! そう言えばそこも昔、

勇気君みたいに下宿しに来た子がいたみたい。

聞けば勇気君並みに真面目な人だったそうよ?

今は実家に帰って大学で勉強しているって」

お皿を並べながら笹野さんは

思い出話に花を咲かせていた。

「じゃ、あとはごゆっくり〜。

ご飯とか足りなくなったら言ってね!」

そう言って笹野さんは部屋を降りた。

「もういいでちゅかっ?

あたちにもカレー頂戴でちゅ!」

「はいはい、ちょっと待ってて。ん?」

僕はふと霧矢の皿を見た。

何故か霧矢は人参と玉ねぎを避けている。

「おいおい霧矢。何人参と玉ねぎ残してんだよ?」

「……別に」

見れば笹野さん手作りの豆腐サラダも、

豆腐とベーコン以外食べていない。

「……え、もしかして霧矢、野菜嫌いっ?」

霧矢のスプーンの進みが止まった。

もしや図星だったのか。

「あー! ダメだよ古城君! 好き嫌いしたら!

野菜は風邪を引かなくなるくらい

栄養満点なんだよ!」

「うるせえ」

「野菜は美味いぞ〜?

このサラダだって胡麻ドレが最高に美味いし!」

「あ、それ笹野さんの自家製らしいよ?」

「マジか! 道理で!

ほらほら、食わず嫌いせずに食ってみろよ!」

そう言って宗馬はたっぷりドレッシングがかかった

キャベツを霧矢に差し出す。

「誰が食うか」

「カレーなら大丈夫じゃないかな?

カレー味って野菜嫌いの子も

食べやすくなるって言ってたし、

ちょっとはチャレンジしたら?」

僕はカレーの人参を霧矢に差し出す。

「……まあ、てめえがそう言うなら」

文句を言いながら霧矢は人参を食べてくれた。

「偉い偉い」

「……やっぱり五十嵐君の言ってた通りかもっ?」

「だろだろ?」

鍋にたくさん入れてあったカレーも

あっという間に少なくなった。

「あ〜、駄目。もう食えね〜……」

「あたちもお腹いっぱいでちゅ〜」

「二人共、結構食べたからね」

「ん」

霧矢がカレー皿を僕に差し出す。

「あっ、まだ食べるっ?

いや別にいいんだけど、霧矢もうこれで

七杯ぐらいは食べたんじゃ……」

「まだいけるし」

「いや……最近知ったんだけどよ、

そいつ俺らの倍ぐらいは食うらしいぜ?」

「倍って、どのくらい?」

「……朝飯食って、通学中にパン食べて、

学校で午前中は購買のパン食べて、

昼飯食ったら午後肉まん食って、

帰りにステーキハウスに行って、

夕飯食べて風呂上がりにアイス最低でも三つ……

一日七、八食ぐらい?」

本当に倍食べてるんだ。

野菜嫌いの割にはよく食べるんだなと

僕は心の中で呟いた。

「そんなに食べてよく太らないねっ?」

「太りにくい体質なんで」

僕はソファーで寝ている茜をちらりと見る。

もし聞いていたら茜がどんな顔をするのか

ちょっと怖い気がする。

まあ、女の子にそんなこと口にするのも野暮だし、

チャックしておこう。

「茜、寝ちゃってるね」

「寝かしてやろうぜ。この所忙しかったしな」

「……ちょっと気になったんだがよ、良いか?」

「ん?」

「五十嵐と篠崎って一緒にいる所を多く見るけど、

実際どういう関係なんだ?

学年も歳も違うはずだし、

気の置けない仲のようにも見えるし」

「二人は幼馴染なんだよね」

「まあな。家が近所同士ってのもあるけど、

茜の親父さんが俺の兄貴の小学時代の先生っていう

繋がりもあるんだよ」

「お兄さんっ?」

宗馬にも兄がいたんだと僕は親近感が湧いた。

「うちの家族はまあ、言うなれば歪んだ家族さ。

勇気には前言ったけど、俺は昔から体が弱くてよ、

小学校の時に心臓に爆弾が出来た。

親父とお袋は俺が赤ん坊の頃から

すごく心配してた。

過保護かって引かれるぐらいに。

心臓に爆弾が出来た時からそれは加速した。

負担がかかるかもしれないから外で遊ぶなとか、

力仕事は危ないから家でじっとしてろとか、

とにかく俺を箱入り息子みたいに育てていた。

その反面、五つ上の兄貴には全くと言っていいほど

愛情を与えていなかった。

俺に出来ないことを押し付けたり、

兄だからと言う理由で我慢させられたり、

挙句の果てには旅行に

連れて行ってくれなかったりと、

まあ散々だったさ」

「そんな……」

「……人の事言えねえけど、

ひでえ親もいるもんだな」

「けど、兄貴はそれでも折れたりしなかった。

真面目で気配り上手で、俺とは全く正反対だ。

いつも俺のことを心配してくれてた。

ガキの頃はよく看病してくれたもんさ。

でも親はそれすら気に入らなくてな、

悪影響だからってあんまり

近づかないようにされてる。

進路だって、本当は進学させるはずだったのに、

俺のために働けって理由で結局中卒のまま就職。

しかも就職先は超がつくほどのブラックな企業だ。

給料が高いってだけで無理矢理入社させられて、

朝から晩までずっと働きっぱなし。

おかげで心体共にボロボロ状態。

どっちが病弱かわかんないくらいだ」

宗馬は派手なカラーリングの

エクステを指に絡ませる。

「この校則違反級の格好も、

病弱なのを悟られないようにってのもあるけど、

俺なりの親への反抗でもあるのさ。

ちょっとグレれば目が変わるかなってな。

でも結果は無反応。何も変わらない。

まあ、俺はこの格好案外しっくりくるけどな!」

宗馬は苦笑いを浮かべる。

「……初めて勇気の本性見た時よ、

なんか兄貴に似てんなって感じがしたんだ。

変だよな? お前俺より年下なのに。

こう、ついつい世話かけたくなってさ」

照れながら宗馬は頭を掻く。

そうか。宗馬が僕の世話を何気に焼いていたのは、

僕をお兄さんと照らし合わせていたからか。

やっと納得した。

「でも、だからって俺はお前に

兄貴を求めちゃいないから安心しろ。

お前はお前だってわかってるからさ」

「求めてたらそりゃヤンデレっつーやつだろ」

「うぐっ……きついこと言うなよ……」

「……田嶋は? てめえは兄弟とかは?」

「あー……長くなるけど、良い?」

「別に構わねえ」

僕は霧矢に自身の事情を語った。

「……そうか。てめえも苦労してたんだな。

しかしそっちの兄貴は、胸糞悪くなりそうなくらい

どうしようもない奴だな」

「ああ……何度聞いても腹が立つな!」

「でちゅ! そういう人こそ改心させて、

性根を叩き直すべきなんでちゅ!」

「田嶋の兄貴に限った話じゃねえだろうな。

自分勝手な理由で他者を踏みにじる

連中は腐るほどいる。

その上相手次第ではそれすら

黙認されることだってあるしな」

「泣き寝入りは最悪の事態だしな!

くそっ、世の中腐ってんぜ!」

「けど、それを変えようとした連中がいた。

そして俺達はその人達の

意志を受け継ごうとしている。

腐った人間を叩きのめし、

弱者を救済するっつー意志をな」

言い方はあれだが、それは良い意志だろう。

悪い人達を改心させて、困っている人達を助ける。

顛末がどうであれ、先代の怪盗団は

本当にすごい人だとそう思う。

「ああ! そのために力を得たしな!

今の俺達なら何でもできる気がするぜ!」

「ふふふっ、それはちょっと大袈裟じゃない?」

寝ていたはずの茜が起きてきた。

「あっ、ごめん。起こしちゃった?」

「ううん、途中から起きてたし。

でも、あながち間違ってはいないかも。

みんながいれば、

きっとできない事はないかもって、

ちょっと期待してたのは事実だもん。

なんかね、不思議な感じなんだ。

私達、何かの力で惹かれあっている。

そんな気がするんだ」

「惹かれあってるっ!?」

変な感じに捉えてしまった僕は

思わず声を上げてしまった。

「違う違う。何かの引力でって意味だ。

何だあ勇気君? 何と勘違いしちまったかあ?」

「い、いやいやいやっ!!

別にっ、変な意味じゃ!!」

「止めろ。話が変わる」

茜はくすりと微笑んでいる。

「私達、過去も育ちも思想も全く違うはずなのに、

なんか似てる気がするの。

これって、似た者同士ってやつなのかな?」

「はあ? 俺はてめえらと違ってろくでもねえさ。

ガキの頃からガキらしいことしてないし、

てめえらみたいにポジティブにもなれねえ。

似てる部分なんて一欠片もないと思うけど?」

「そうかな? 僕達と似てる部分、あると思うよ?」

「どこが?」

「……絶対に逃げないとこ、とか?」

なんとなく言ってみたけど、

なんか反応が薄いようだ。

「あ……違った?」

「……ぷっ、はははっ」

「ええっ!? なんかおかしかったっ?」

「いや、別に。てめえらしい返答だなって思って」

「絶対に逃げない、かあ……」

「確かに、沙城の時も、雪之丞の時も、

俺達は決して逃げはしなかった。

ピンチもあったけど、だからって逃げたりしたら

絶対に後悔するからな。

諦めたくなかった……そういう思いがあったから」

そう。諦めたくない。

あそこで逃げたりしたら、

何もできないのと同じだから。

みんな同じ気持ちだったんだ。

「……ねえ、本当にやろうよ。怪盗団。

私、どこまで行けるかわからないけど、

行けるとこまで行ってみたい!

困っている人達を勇気づけたいの!」

「だな! 元々それで次やってんだ!

やろうぜ、本格的に! 世直しってやつをよ!」

「……利用させてもらうって言ったしな。

ここまで来たからには協力する他なさそうだ」

「よく言ったでちゅ、みんな!

このあたちがビシバシ鍛えてあげまちゅから、

覚悟しておくでちゅよ!」

「いや、実際ビシバシって感じないけど?」

「ガーン!!」

霧矢の一言がショックだったのか、

ホップはよよよとしょげてしまった。

「ああっ、これから!

これから頑張っていけばいいんだよ!

ホップには感謝してるし!」

「茜ちゃあ〜ん!」

「……つーわけだから、

改めてよろしく頼むぜ! リーダー!」

「うん。頑張る」

 

その後、僕と霧矢は店から宗馬と茜を見送った。

すっかり夜も更けて星空が見える。

「今日はよく見えるね。明かりがないからかな?」

「かもな」

僕と霧矢は星空をしばし眺める。

「……あのさ」

「うん?」

「……あの時てめえが言ったこと、マジか?」

「え?」

「俺の心が、その……綺麗だって話。

俺は死刑囚の子供として、

昔っから周りの目は良くなかった。

そのせいで俺は人の裏の顔っつーのを、

嫌と言うほど見てきた。

あっちの人は良い顔してるけど腹黒い。

あの人は口だけで考えたりしない。

正直、養子にしてくれた祖父母以外、

誰も信じちゃいない。今だってそうさ。

五十嵐も、篠崎も、てめえも、

いつかは裏切るんじゃないかって怪しんでしまう。

こんな猜疑に塗れた心に、

綺麗さなんてないと思うけど?」

ああ、ひねくれたのはそういう理由か。

そりゃあそうなっちゃうのも納得だ。

けど、僕は知っている。

「だって、霧矢は本当はいい人でしょ?」

「!」

「花子さんを気にかけてくれてたし、

口は悪いけどそれで弱い人を

傷つけたりはしなかった。

何より、なんだかんだで僕達に協力してくれたし。

素直になれないだけで、

本当は優しいんじゃないかなって。ただそれだけ」

「……」

「あと、ポジティブになれないって言ってたけど、

その部分は僕とも似てるよ。

僕も小さい頃から兄さんの凄さに怖気づいて、

自分は平凡だからって決めつけてたんだ。

ペルソナに目覚めて、宗馬や茜に励まされてからは

ちょっとはましになれたけど、まだまだ……

少なくとも、僕達二人は似てると思うよ?」

すると、霧矢が僕の額を指で弾いた。

「痛っ!?」

「本っ当、てめえは馬鹿みたいに素直だな。

けど……嫌いじゃない」

よかった。嫌われたかと一瞬思った。

「……送るよ」

「悪いな」

 

「心の怪盗団、ねえ……」

その男はテレビのニュースを眺めて思索する。

男の名は、誠司。一介の刑事だ。

ニュースで報道されているのは、

心の怪盗団にまつわる特集だった。

「お前のとこの学校も大変だな。

生徒が二人も逮捕による退学。

その内の一人は生徒会長だったんだろう?

学校への寄付金も賄賂だって疑いもあるし、

職員会議とかは大騒ぎだろうな。

怪盗団とやらもいたずらにしては巧妙すぎる。

その辺どう思う? 一輝」

彼の背後には、机の上で勉強している一輝がいた。

「……先日、校長から頼まれました。

いたずらの犯人を突き止めてくれと」

「おっ、刑事の子としてか?」

「いえ、学園の風紀のためです。

本来なら生徒会が調査するべきですが、

例の事件の肩代わり役として忙しいそうです」

「まあ、生徒会は学校に

一番近い立場でもあるからね。

学校に問題があれば処理する係は、

一に教師陣、二に生徒会だ。

今の生徒会長さんも大変だろうね?」

「俺は今の会長を生徒会長とは認めていません。

まだまだ認識が甘く、愚かだ。

何故あんな凡人を選んだのやら」

「手厳しいな。真面目が過ぎると

いつかぽっきり折れるぞ?」

一輝は徐に席を立った。

「風紀委員長に務まったからには、

それなりの覚悟と責任が必要ですから。

生半可な気持ちでいったら後悔しますし」

「それは、刑事になるためか?」

「当然です。誠司さんの跡を継ぐために」

一輝はその場を去り、

誠司はそれを見届けていた。

「……心の怪盗団。ふざけた名前を掲げた愚者。

お前達の示す正義など、俺は認めんぞ」

 

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