ペルソナ5 Dark Revengers   作:海色ベリル

7 / 22
Beauty of the truth
第7話 This is where everyone's palace


最初の改心は上手くいったようだな。

結構、結構。

これで反撃に一歩近づいた。

ペルソナ使いも増え、同士も得た。

だが油断は禁物だ。

歪みは着実に世界を蝕んでいる。

早く彼奴を止めなければ、

前回以上に悲惨な結末になるだろう。

ー気をつけてください。

悪意はあなたのすぐそばにいます。

そう、すぐそばに……

 

「新聞部部長、日下部影男っ?」

僕は渡された名刺の名前を読む。

僕の目の前には、眼鏡をかけ、

首にはカメラが下げられた天パの青年がいた。

「そう! ちょっと君に言いたいことがあってねえ?

今、お時間よろし?」

顔が異常に近い。

「あの悪徳生徒会長は去った!

しかーし! 悪い連中は星の数ほどいる!

そんな奴らを怪盗団ならなんとかしてくれるかも?

ってことでスクープがてら

ちょうどいい案件頼まれてね?」

「案件というのは?」

「実はここのOBさんからあるサイトの管理人を

引き継いでほしいと頼まれてねえ、

もうどうせ使わないから好きに使っていいよって

直々に管理人用アカウント渡されちゃって。

それがこれ!」

スマホの画面に写っていたのは、

“怪盗お願いチャンネル”と名付けられたサイトだ。

「怪盗お願いチャンネル?」

「ああ。不思議なことにここだけの話、

そのOBさんどうしてこのサイトを立ち上げたのか

全く記憶にないらしく、

気づいたらこのサイトの

管理人になっていたらしいよ?」

「……でも、何でそれを僕にっ?」

「わかるわかるよ? 君怪盗団に関係ないしね?

まあ告知ってことで、じゃ!」

日下部さんは意気揚々と去った。

もしや、僕が怪盗団の一人とバレてるのか。

そう思うとちょっとヒヤリとした。

とりあえず僕は放課後、

この事を宗馬と茜に相談した。

「怪盗お願いチャンネル?

へえ〜、そんなのがあるんだ?」

「でも、その話を聞いた限りじゃ、

そのサイトは前々からあったってことだよな?

「その通りでちゅ!」

僕の鞄からホップが勢いよく出てきた。

「うわあっ!? ホップ!?」

「まさにそのサイトは、

先代怪盗団も利用していたサイトでちゅ!

イセカイナビ同様便利なツールだったでちゅ!」

「でも、このサイトの前の管理人さんは、

立ち上げた記憶がないって」

「多分それも、パレスが再び出現した謎にも

関係しているかもでちゅね。

ともあれいい機会でちゅ!

早速そのサイトを利用してみるでちゅ!」

「で、このサイトには何があんだ?」

「えっと……」

僕はサイトを見てみる。

すると、コメント欄にいくつかコメントがあった。

“怪盗団ってすごい!”

“勇気もらえました。ありがとう”

“よくやった!”

といったコメントが書かれている。

よく見るとそのコメントは、

先日の沙城の件についてのコメントだった。

あの名家の御曹司の逮捕は

ニュースにもなっていたから、

世間にも知れ渡るのも納得だ。

「ほお〜、称賛の声だな?」

「すごいね! みんなからこうも認めてもらえると、

なんだか嬉しい気持ちになるよ!」

「あとは……」

メニューを見ると、依頼掲示板があった。

どれも怪盗団宛てのリクエストが書かれている。

「姑からの圧力がすごくて耐えられない。

助けてください、怪盗団。

息子が怠け者で手に負えない、助けて。

なんか色々書いてある」

「それでちゅ! その依頼を利用するでちゅ!

ということで今から渋谷駅に行くでちゅ!」

ホップに促されるまま、僕らは渋谷駅に向かった。

宗馬と茜が怪盗お願いチャンネルを検索する。

「嘘ばっかついては

ドタキャンする友人に困ってます。

怪盗団、成敗してください。これはどうだ?」

「う〜ん、ちょっと微妙でちゅね〜。

もう少しこう、ほっとけば

危ないかもー! って感じの

依頼が良いでちゅね」

「あ、じゃあこれはっ?

職場の後輩から嫌がらせに遭ってます。

名前は、夏目奈津子」

「おお! それがいいでちゅ! それにするでちゅ!

じゃあ宗馬君、次は異世界ナビでちゅ!」

「えっと……名前言うんだっけ?」

「いや、今回は“メメントス”でちゅ」

すると、突然景色が変わった。

初めて沙城のパレスに行った時と同じように、

周りには僕ら以外誰もいなくなった。

「あ、あれっ? 誰もいない?」

「ついて来るでちゅ!」

ホップが渋谷駅の地下鉄に向かう。

僕らも後を追っていると、

そこは見慣れた渋谷駅ではなかった。

異様な空間と化した改札口に着くと、

改札機の上にホップがいた。

でもその姿は、パレスにいる時と同じ姿だった。

「ホップ、その姿……って、ああ!?」

気づけば僕らも、怪盗の姿に変身していた。

「俺達も変わってる!?」

「てことは、ここもパレスなのっ?」

「正確には、みんなのパレスでちゅ」

ホップが歩きだしたので、僕達もついて行く。

「ここはメメントス。

いわゆる集合的無意識となる場所でちゅ。

この前の沙城のような独立したパレスは、

欲望が人並み外れて歪んだから出来たものでちゅ。

そうじゃない人達は、

この集合体となる場所にパレスが出来るでちゅ」

「つまり、みんなのパレスが一緒になった場所。

それがメメントスってこと?」

「そうでちゅ! パレスが独立していなくても、

ある程度歪んだ欲望を持つ人もまたいるでちゅ」

「じゃあ、ここでだったらパレスを

持っていない人でも改心ができるってことかな?」

「その通りでちゅ!」

宗馬が周りをキョロキョロ見回す。

「しかしよ、渋谷駅だからかな?

結構広いしでかいし、探すの苦労するんじゃね?」

「ふっふっふっ、ついにモルガナから授かった

“あれ”を見せる時でちゅね!」

「あれ?」

「……ホップ、メタモルフォーゼ!」

ホップが高くジャンプすると、

突然ホップの姿がピンクのワゴン車になった。

「ええーっ!?」

「く、車っ?」

「あ、ありえねえ……!!」

「さあさあ、早く乗るでちゅ!」

言われるがまま僕達は車に乗った。

当然ながら免許は持っていないのだが、

何故か普通に運転できた。

「おいおい、大丈夫かよ!?

勇気免許あんのか!?」

「ないよ! でもなんか普通にできてる!」

「できてるの!? でもなん…ひゃあ!?」

突然ブレーキがかかった。

見ると、周りには黒い化け物が彷徨いていた。

「しっ、シャドウがいるでちゅ!

あまり刺激しちゃダメでちゅよ!」

「シャドウって?」

「あの黒くてもごもご動いてる奴か?」

「メメントスは大衆のパレスでちゅ。

当然シャドウもいるんでちゅ」

そうこうしているうちに、車は目的地に着いた。

先にいたのは、ボブカットの金髪をした

きらびやかな女性だった。

「もしかして、あいつが夏目奈津子っ?」

「間違いないでちゅ!」

僕達は車から降りた。

どす黒いオーラを放った夏目がこちらに気づいた。

「誰よ、あんた達!?」

「お前さんが話に聞いた嫌がらせ女か!

どういう事情があるかはわからんが、

いじめはよくねえぞ!」

「はあ!? 関係ない奴は黙っててくれる!?

あいつはムカつくのよ!!

年下のくせに先輩ぶって!!

働いているキャリアならこっちが上だっつーの!!

そうよ……アタシは悪くない……

ムカつくことをぶちまけて何が悪いの!!」

「悪いに決まってるよ!

どんな理由であってもイライラをぶつけるのは

ただの八つ当たりだよ!

相手の人の気持ち、考えたことあるの?」

「黙れ黙れ黙れっ!!

アタシよりも悪い連中は、

いくらでもいるだろーがああああっ!!」

夏目の体がバキバキと音を鳴らして変形していく。

「そうだ……悪いのはあの女……“雪之丞”……!!

あいつがいなければ、アタシはキラキラの生活で

満たされるはずだったのに……!!」

「え……雪之丞……?」

「あいつのせいで、あいつのせいでアタシは

やりたくない仕事をやらせる羽目になった!!

家族からも勘当されて、狙ってた男も消えた!!

みんなみんなあいつのせいなのに、

なんでアタシばかりこんな目に遭わなければ

いけないのおおおおー!!」

夏目の姿が人型のモンスターへと変わった。

「来るでちゅ! 構えるでちゅよ!」

 

ドカバキドカバキドカッ!!

ーへへっ、見たか!

【I'm No.1 Definitely!】

 

なんとか退治し、夏目は元の姿に戻った。

「……そうだ。アタシ、頭に血が上ってた。

雪之丞に騙されて、何もかも失ってたから、

幸せそうな人を見ると

イライラしてて、だから……」

「何か訳ありだったみたいだな?」

「でも、だからって誰かに当たるのはよくないです。

これからは用心してくださいね」

「わかったわ……アタシは現実のアタシに戻るわ」

夏目のシャドウが光に包まれて消えた。

その跡地には、小さな光があった。

「これは?」

「欲望の歪みになりかかっていたものでちゅ。

放って置いたらパレスに

なっていたかもしれないでちゅ」

僕はその光を手に取った。

「……よし! 次はあそこを確認しに行くでちゅ!」

そう言われて僕らはホップについて行く。

たどり着いた場所は行き止まりだったが、

僕達がそこに着いた途端、道が開いた。

「何だっ? まだ先があんのかっ?」

「おおー! やったでちゅ!

前来た時はここまでだったでちゅ!

でも、沙城の一件で怪盗団が少しだけ

認知されるようになったから、

メメントスに新しい道が出来たんでちゅ!」

「き、気のせいかな……?

なんだかあそこから不気味な感じがする……」

茜の言う通り、確かに開いた道からは

どこか不気味な雰囲気を感じた。

「この先には、一体何が?」

「それは進んでみないとわからないでちゅ。

いや、進まないといけない。

そんな気がするんでちゅ」

ホップは開いた道を見つめる。

「……メメントスはみんなのパレスであり、

全てのパレスの源になる場所。

だからこの場所を攻略すれば、

きっと謎が解けるはずでちゅ。

何故消えたはずのパレスがまた出来たのか。

沙城にパレスを与えた者は一体何者なのか。

そして何より、何故世間から怪盗団の記憶が

消されてしまったのか。

それが判明すれば、きっとイゴールやモルガナも

助けることができるでちゅ!

もちろん、あたちが生まれた理由も……」

「ホップ……」

「……だから、怪盗団のみんなは、

これからビシバシ鍛えていくから、

覚悟するでちゅよ!」

「もちろん!」

「うん、よろしく」

「そこで一つ提案でちゅ!

今後の活動は全会一致。つまり全員が納得してから

オタカラを盗むことにするでちゅ!

あたち達は運命共同体、一つでちゅ!」

「異議はないぜ」

「うん!」

メメントスを攻略することは謎を解明すること。

きっとこの先にその謎が隠されていると思うと、

なんだか不思議とワクワクした。

 

その夜、実家から父さんが電話してきた。

「そっか……兄さんは

まだ見つかってないんだね?」

〈ああ。入所予定だった施設の関係者からは、

毎日のように謝罪をしてきて参ったよ〉

「母さんはどう?」

〈それがな、どうあれ剛がいないおかげかな?

最近は調子が良いんだ。

このままでいいとも思えている。

母さんの調子が悪くなったのは、

剛がおかしくなってからだからな。

お前が剛に殴られて怪我を負ったあの時、

母さんはひどく追いつめられていたし、

これ以上剛のことで気に病むのは見てられん〉

「父さん……」

僕はギュッと拳を握った。

「……ねえ、父さん。もしも、もしもだよ?

兄さんがおかしくなった原因がわかって、

それを解決するためには最悪

殺すかもしれないってなったら、どうする?」

〈はあ……?〉

「ああ、ごめん! わかんないよねっ?

殺すとか物騒なこと言って……」

〈……そうだな。私だったら、ギリギリまで

殺さなくても良い方法を探すかな。

何があっても剛は家族だしな〉

「そっか……」

父は漫画に出そうな厳しくて頑固な人だ。

兄も僕も悪いことをしたら

火山の噴火の如く怒るし、

多分ゲンコツされた数は百は超えると思う。

特に兄に対してはかなり厳しく、

兄が会社を辞めてからは

毎日のように叱責していた。

時には勘当するとまで言うほどだったのに、

なんだかんだで兄のことを考えている。

「……父さん」

〈うん?〉

「もし、兄さんに何かあったら、

僕に任せてもらえないかな?

僕、一度兄さんと話がしたいんだ。

ちゃんと向き合わないと

わからないことだってあるし、ね……」

〈どうした勇気? らしくないことを言うな?

何かあったのか?〉

「ううん、別に。ただそう思っただけ」

〈そうか……うん、わかった。

こっちも剛が見つかったらすぐに連絡する〉

「うん、ありがとう」

電話はそこで切れた。

「お兄さん、見つかるといいでちゅね」

「うん」

気分を変えようと僕はラジオを流し始めた。

「……では続いて、トルコのブーセン大統領

突然死に関するニュースです。

先日トルコの大統領ブーセン氏が

謎の突然死を迎えたと報道がありましたが、

今日専門家の調べで死因は突発性の

心臓停止であることが新たにわかりました。

地元警察は事故と殺人の両方で

さらに調べを進めているそうです」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。