時刻は夜10時、7人はつぐみの部屋で除霊についての段取りの確認が行われていた。
一弥「……何度も言うけど、今から行く夢はお化け屋敷なんかとは比べ物にならない程の地獄だぞ。僕が守ると言っても命の危険が常に付き纏う。それでも行くって言うのか?」
つぐみ「私も出来ることなら来ないで欲しい……本当に危ないし夢なのに怪我だってしちゃうと思う。」
一弥の念押しにつぐみも加わるが、その声は強がっているようだった。
当然4人がその事に気づかないわけはなく
蘭「アタシは行くよ、怖いなんて言ってられない」
巴「あぁ、悪夢の中でつぐが苦しんでるのに黙ってられるか!」
ひまり「私はリーダーだもん、つぐが困ってるならリーダーが真っ先に動かないと!」
モカ「アタシはそんなひーちゃんと蘭が心配なんだけどね~」
蘭「モカ、一言余計…」
各々の言葉を聞き、2人は改めて4人を止められないことを悟る。
すると…
イヴ「皆さん……凄いですね……ワタシはそんな勇気がどうしても出ません。これではブシの名折れです…」
イヴは自分の無力さに嘆いていた。
イヴは日本の「武士」や「武士道」に憧れを抱いており、自身もそうなれるように剣道や日本語の勉強、茶道などといった、和の文化を日々勉強している。
そんな彼女からすれば、『怖いから助けに行けない』というのは恥ずべきことだった。
勿論そのことを咎める者は誰もいないし、命の危険があると分かればそういった反応をするのが当然だ。
一弥「……若宮さん、だっけ?」
イヴ「……はい」
一弥「いいか、危険なことに身を投じることだけが戦うことじゃないんだ。」
一弥はイヴに語り始める。
一弥「発言からして君は武士が好きなようだね」
イヴ「はい、私もそうなれるよう日々精進しています!」
一弥「武士にもいろんな人がいたはずだ、刀を使って戦う人もいれば、弓矢を使って戦う人もいる」
イヴ「紗夜さんみたいな人ですね!」
一弥「さよ?(若宮さんの知り合いかな?)まぁいいや、じゃあさ……」
一弥は1呼吸おいてイヴに尋ねる。
一弥「……弓矢を使って戦う人はみんな弱虫で卑怯者なの?」
イヴ「そんなことありません!」
一弥の問いにイヴは全力で否定する。
一弥「そうだろ?彼らは戦場からは離れているし全く命の危険がないって訳じゃないが、それでも直接戦ってる人に比べればもしかしたら危険は少ない……かもしれない」
実際にどうなのかは分からないが、と付け加え
一弥「若宮さんに頼んだ役目はそれと似ている。直接戦場には居ないが重要な役割なんだ」
イヴ「重要な……役目?」
一弥「あぁ、だから逃げてもいないし恥じることなんて何も無い、むしろ若宮さんは別のことで苦しむことになるかもしれない。それでも忘れないで欲しい。一緒に戦っていることを。」
一弥はイヴ諭すように言った。
実は少し前に一弥はイヴの役割を説明していた。
彼曰く、それは蘭たちと違い、直接助ける役割では無いものの、この怪異解決の重大な要となると言われている。
それを聞きイヴは…
イヴ「…わかりました、精一杯やります」
覚悟を決めた。
一弥「頼んだぞ」
イヴ「それともうひとつ良いですか?」
一弥「ん?なんだ?」
イヴ「………私はイヴです。若宮さんじゃ嫌です」
一弥「……???」
彼の頭の中は一瞬ショートしかけた。この土壇場で一体何を言っているのかを理解するまでにラグが生じたからだ。
一弥「えーっと……若宮イヴだから若宮さんでも」
イヴ「イヴです」
一弥「いやでも」
イヴ「イヴです」
一弥「……」
イヴ「イ ヴ で す」
一弥「……イヴ」
イヴ「はい!!」
一弥(そんな拘るとこか?そこ)
そんなことを考えていると横から殺気にも似たオーラが飛んできた。そちら側に目を向ければ
蘭、ひまり、巴、つぐみ「<●><●>」
物凄い目力で一弥を睨みつける4人がいた。
一弥「な、なんだよ……」
つぐみ「……イヴちゃんは名前で呼べるのに私たちのことは呼べないんだ」
一弥「命がかかってるこの状況で何拘ってんだよ!」
ひまり「だってだって!私たちの方が付き合い長いのになんか寂しいじゃん!!」
一弥「……それってつまり、嫉妬か?」
蘭「はァ?!誰がアンタなんかに嫉妬なんてするの!」
一弥「青葉……どうにかしてくれー!」
先程から面白そうに傍観しているモカに助けを求めるも
モカ「乙女心が分からないかずくんが悪いよ~」
即見捨てられるのであった。
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閑話休題
あれから呼び方の討論を30分以上続けた結果「なるべく呼べるように努力する」という結論に至った。
……夜中に一体何討論してるのやら
そうこうしているうちに時刻は11時、彼らもそろそろ怪異の処理を始めようと準備を整えた。
一弥「はざ……つぐみ、僕の言ったこと覚えてるか?」
つぐみ「うん、全力で頑張るから」
一弥「こっちも早く合流出来るようにするから」
そういうと、一弥は左手をつぐみの目の前にかざし、
一弥「おやすみ、すぐに行くから」
そう言って左手を退けると既につぐみは眠っていた。
巴「一弥の術…本物なんだな」
一弥「当たり前だ、命かかってる以上こっちも本気だ。さて、準備が出来たら僕らも行くぞ。」
一弥は濡れたタオルで左手の掌を拭った。
それが終わると右手の人差し指の先を少し噛みちぎり出血させ、その血で左手の掌に何かを書き始めた。
一弥「若宮……イヴ、後のことは任せた。」
イヴ「はい!」
一弥「準備が出来た、4人とも僕に触ってくれ」
蘭「うん」
巴「わかった!」
モカ「あいあいさー」
ひまり「うん!」
4人がそれぞれ一弥に触れたことを確認すると
一弥「最後の確認だ、引き返すなら今のうちだ。ここから先は解決するまで戻れないからな、気が変わった人がいるなら触れた手を離せ」
その問いに対して誰1人彼から手を離す者は居なかった。
一弥「……わかった、行くぞ」
彼は再び左手をつぐみの目の上にかざす。
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♪〜
─次は〜、挽き肉、挽き肉~─
前回の夢の続きをつぐみは見ていた。聞きたくもないアナウンス、耳障りなチェーンソーの音、不気味に嘲る小人たち。
つぐみ(怖い……けどなんで、身体が動かない!!)
今から挽き肉にされることを受け入れるように立ち尽くすつぐみ、逃げようとするも脚が一向に動かず、その間にも凶器が近づいてくる。
つぐみ(……!?そうだ)
つぐみは眠る前の話を思い出した。
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一弥「羽沢、眠ったら最初にやるべき事がある」
つぐみ「やるべき事?」
一弥「あぁ、夢の中で『覚めろ』って言うんだ。それも何度もだ」
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つぐみ(そうだ!そうすればこの夢から逃げられる!)
つぐみ「覚めて……
覚めて覚めて覚めて醒めてさめて覚めてサメて覚めてサメて覚めて醒めてサメてサメてサメてサメてサメて覚めてサメてサメてサメて覚めてサメてサメてサメてサメてサメてサメてサメて!!!」
つぐみ(あれ?……そういえばあの話、続きがあったような?)
♪〜
─次は逃がしませんよと言いましたよね?
モウニゲラレマセンカラ─
つぐみが咄嗟に目を開けると、チェーンソーの刃がすぐ目の前にあった。
文字数どうでしょう?
もう少し増やした方がいいでしょうか?