多分グラブルで1番ヤバい奴なら最高のヴィランになると思った話   作:にやけ野郎A

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初めまして。グラブル知っている方も知らない方も少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。


災禍の魔術師

 

 ロベリア・ガーディナリスは正しく”全てを与えられた”と言うべき少女だった。

 

 個性はロベリア本人いわく”魔術”であった。……魔術なんて大雑把で何が出来るのかよく分からない個性だが……結局こう名付けるしかなかった。

 

 指を鳴らすだけで物に触れずに動かしたり、自分自身を強化して高く飛んでみたりと全貌がまったく掴めなかったからだ。

 ロベリア自身にどんなことが出来るのかと聞いてみたが……

 

「……今のが、クラポティ? というやつなのかな?」

「ノンノン! パパ、クラポティは違うよ! 今のはただのコンセールでこう……ひょいっとやったんだよ!」

「……ひょい?」

「そう! こう……ほら絵で描いてあげるよ! ほらこれがコンセールだとするだろう!? そしたらこれが……」

「…………さっぱり分からないわね」

 

 残念なことに、ロベリアは絶望的に説明が下手だった。

 結局本人以外、何が何だか分からないので”魔術”という曖昧な個性になった訳だ。

 ただ間違いなく当たりも当たり、大当たりと言って良い個性であることに違いはない。

 

 

 それに容姿だって最上のものといって差し支えない。癖のかかった茶髪。つり上がった眉に対し、目は少しタレ目で人懐っこく笑う顔は本当に可愛らしい。

 将来は確実に誰もが振り返るような美しい女性となるだろう。

 

 

 

 そんな容姿も才能も優れたロベリアを両親は本当に可愛がった。

 そんな両親はある1つの事をロベリアに熱心に言い聞かせた。

 

「ロベリア、人間にはね。誰でも幸せになる権利があるのよ。勿論、ロベリアにだってね」

「そうだぞ! その才能があればお前は絶対に幸せになれる!」

「ええロベリア! あなたは誰よりも幸せに生きなさい!」

 

 人間は誰であろうと幸せに生きる権利があって、才も容姿も持っている自分は誰よりも幸せになれる。

 

 この愛する両親からの言葉をロベリアは疑うことはなく、自分は天才で誰よりも幸せにならなければならないと思うようになった……のだが。

 

 

「……ボクの幸せってなんだろう?」

 

 ロベリアは人生で初めて困った。

 何故なら彼女は”幸せ”というものがどういうものか分からなかったからだ。

 

 幸せ、幸福

 激しい喜びや、快感を感じること。

 満足していること。

 

 言葉の意味は理解していた。

 だがその上で分からない。

 

 ボクはどうすれば世界で一番幸せになれる? 

 

 パパがボクの個性を褒めてくれること? 確かに嬉しい……でも違う。

 ママが作ってくれるシフォンケーキをお腹いっぱい食べた時も満足してる。

 ……でもこれも求める幸福じゃない。幸福かもしれないけれど、こんなのじゃ世界一とら言えない。

 

 悩んで悩んで……

 

(パパとママが幸せなのがボクも凄く幸せだ!)

 

 そんな子供らしい答えを出した。

 ロベリアは勇んで両親に2人はどうすれば幸福になれるのかと聞いてみた。

 

「パパとママはあなたが幸せになるのがいっちばん嬉しいのよ?」

「そうだぞロベリア。私たちのことより、お前自身が幸せなことを探しなさい!」

 

 その結果、こんな答えが返ってきてしまった。

 

 ロベリアはまた困った。

 両親を幸福にするためには結局自分自身が幸福にならなければならない。

 振り出しに戻ってしまったわけだ。

 

 

 それからも暫く幸福に対する答えは出せず、ロベリアは悶々とした日々を送ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転機が訪れたのはロベリアが8つの時。

 父親の仕事の都合で数ヶ月ほど故郷のフランスから、日本へと移り住むこととなった。

 

 それから一月程。日本語の習得も完璧に終わらせたロベリアは、ものは試しと母親の外出に着いていくことにした……のだが、運悪く大型のヴィランが暴れているところに遭遇してしまった。

 

「逃げましょうロベリア!」

「……」

「……ロベリア!?」

「……あ、うん。分かったよママ」

 

 対応しているヒーローも数名いるが、ヴィランが相当強いのか、若しくはヒーロー達の実力があまりないのか、状況は良くならなかった。

 電信柱が倒れ、建物が崩れ。

 まさにパニックという状況の中で、これまた本当に運悪く……大きな瓦礫が勢い良くロベリアに飛んできた。

 

 

 

 別に問題ではなかった。

 

 チョイと魔術で身体に強化を施して、さて……右に避けようか、左に避けようか。飛び越しても良いかも。受け止めるのはちょっと痛そうだし……流石に即興の身体強化だからボクの腕折れちゃうかもなぁ……

 

 なんて、そんなことを悠長に考えた後よし飛び越えようと思った瞬間に──―

 

「ロベリアッ!!」

 

 横から強く突き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 グチャり、いや、そんな生易しい”音”ではなかったが。

 

 そんなグロテスクな音と、色々なモノを撒き散らしながら

 

 潰れた。目の前で、母親が。

 

「うあああ!」

「イヤァ!」

 

 周囲に響く叫びも怒声も何も聞こえなかった。

 

 あまりに衝撃的なひとつのことに気づいてしまって。それ以外に何も考えられなかった。

 

 

「……」

 

 

 なんだろうか、さっきの”音”は。

 ママが、潰れる瞬間のこの音は! 

 

「……くっ」

 

 肉と骨がミンチになってグチャグチャになる瞬間のあの音と、ママの美しい叫び声、この2つのアルモニー……

 

 なんて、なんて──―

 

 

 トレッビアンなんだろうか! 

 

 

 

 素晴らしいこの感触……、ああ、なんだろ、うなんなんだろうか。この心が満たされる感情は! 

 

 ……あぁ、そうか! 

 これが、これこそが!! この何かが壊れるこの音こそが! 

 

「おい! 子供に見せるな!!」

「ヒーロー! ヒーローと警察を呼べ! 救急車もだ!」

「お嬢ちゃん!? 大丈夫か! 逃げるぞ! 気をしっかり持てよ!」

「アッハ! ア八! ハハ! ハハハ!!」

 

 ボクの幸福だ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どかりと真っ暗な部屋の中で椅子へと腰を下ろす。ちらりと携帯を見れば深夜の2時をまわっていた。

 

「……」

 

 ため息のひとつも出ないほどロベリアの父は疲弊しきっていた。

 精神的にも肉体的にも。

 

 それもそうだ。

 急に警察から連絡があったと思ったら愛しい妻が死んだと聞かされて。

 順風満帆だった生活が突然脆く崩れ去った。

 それから手続きだなんだで病院や警察をたらい回しにされて。ここまで悲しむ暇すらなかった。

 

「うぅ……」

 

 だが、こうして落ち着いてしまうと様々な思いがあふれ出てくる。

 

 なんで……どうしてこうなったのだ。

 よりにもよって何故私の妻なのだ。

 

 この治安の良い日本で偶然出かけた先でヴィランに遭遇し、しかもたまたまロベリアへと瓦礫が飛んでくるなんて、どんな確率だと言うのだ。

 こんなことが現実に起こりえて良いのだろうか。

 

 

 妻が死ぬ原因となったヴィランも許してなるものか。数時間前に漸く捕まったらしいが、絶対にタルタロスへとぶち込んでやる。

 日本のヒーローもヒーローだ。あの程度のヴィラン、さっさと取り押さえられないものだろうか。

 そもそも私が単身で日本に来ていればこんな事にはならなかった。

 妻が外出するのが1時間ズレていれば……

 

「こんなことを考えていてはダメだ」

 

 立ち上がり娘はの部屋へと向かう。

 そう、私にはまだロベリアがいるのだ。

 妻はロベリアを守って死んだそうだ。

 本当に私には勿体ないほど素晴らしい女性だった。

 そんな彼女が守ったロベリアを、私たちの愛しい我が子を守ってやれるのは、もう私しか居ないのだから。

 

 しっかりしなければ。

 そうでなければ妻にしめしがつかない。

 

「……ロベリア。パパだ。開けるぞ」

 

 返事を待つ前に扉を開けると、娘の部屋は変わり果てた姿になっていた。

 

 照明も壁も机も。全てがボロボロだ。他にもペットボトルにクッション、フランスから持ってきたお気に入りのぬいぐるみまで。見たところ無事なものは殆どなかった。

 

 娘は警察に保護されてからひたすらに何かを壊し続けてたらしい。

 

 ……誰が責められようか。目の前で母親が凄惨に死んだのだ。

 十にもならない少女にとって。どれほどの衝撃なのだろう。

 

「ただいまロベリア」

「……パパ! おかえりなさい!」

 

 私に気がつくとロベリアは勢いよく私に抱きついてきた。

 これまでとなんの代わりもなく。いつも通りに。

 

「疲れたなロベリア。大丈夫か?」

「うん? ボクは大丈夫だよ!」

「……」

「……パパ?」

 

 なんだ、なんだろうかこの違和感は。

 

 ロベリアは本当に賢い子だ。

 だから、私に気を使って気丈に振舞っていると、そう思っていた。いやそう思うのだが。

 流石におかしくないだろうか。

 

 

「……無理しなくてもいいんだよ」

「無理なんかしていないさ!」

 

 母親が死んだというのに、こんなに無邪気に笑えるものだろうか? 

 まるで本当に微塵も気にしていないようではないか? 

 

「……しかし、こんなに色々な物を壊して」

「あぁ! これは確かめていたんだよパパ!」

「……確かめる? ……何、を?」

「ママが教えてくれたボクの幸福を、だよ!」

 

 何を言っているのか理解出来なかった。

 幸福? 確かにロベリアは自分の幸福について最近はずっと考えていた。いたが……死んだ妻が教えてくれた? 

 この子は……何を言っているのだ? 

 

「そして、アハ♪ やっぱりそうだったんだ! ボクの幸福はコレだった! アッハ! アッハハハ!! あぁ、ありがとうママ! メルシー!! 本当に愛しているよ!」

 

 狂ったようにロベリアが笑う。

 

 本格的に嫌な予感がした。

 逃げろ、今すぐ駆け出せと本能が警鐘を鳴らしている気がしてならない。

 

 

「ねぇ、パパ!」

 

 だが……私はロベリアのこの子の父親なのだ。私が向き合わずに誰が向き合うのだ? 

 

「……なんだい、ロベリア」

「パパとママはボクが幸福になってほいんだよね!?」

 

 

「……勿論だとも」

 

 

 そう答えた瞬間。

 ロベリアは人懐っこい笑みを私に浮かべながらパチリと指を鳴らした。

 

「なっ……? はっ? ……あっアア! ぐぁああ!!」

 

 右手が弾けてなくなった。

 感じたことのない激しい痛みでのたうち回るしかなかった。

 

「……ロベ、リァァァ、グッァア! ぎぃぁあぁ!!」

 

 今度は左足が先端から少しづつ捻れ、潰れはじめた。

 

「ああ、ああぁぁ……なんて、なんて音を奏でるんだパパ! 満たされる! アッハ!! ああ! ああ!!」

 

 

「……な……、ど……ゔ……で?」

「もう大丈夫だよ! メルシー、パパ! ママ!! ボクは幸福に生きられる! 世界で一番幸福になってみせるよ! アッハ! アッハハハ!」

 

 朦朧とする意識の中、私が最期に見たのは幸せそうに笑いながらもう一度指をパチりと鳴らすロベリアの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、ある家を中心とした辺り一帯を巻き込んだ大火事が発生した。

 

 原因は妻を不慮の事故で亡くした夫による一家心中であるとされた。

 

 この火事での死者はその家の父親と娘の2人。しかしながら、あまりにも火の勢いが強かったせいか、遺体は父親のものかと思われる骨が数本見つかったのみだった。

 

 

 




グラブル知らない人のためコーナー

ロベリア(原作)
→22歳の自称全空一(世界一)の魔術師を名乗る男。所々にメルシーとかトレビアンとかフランス語が入る。クッハ!ってよく笑います。ウザイです。
人が壊れる音が大好きなヤベー奴。ですが世界一名乗るだけあって才能とか能力は本っ当に凄まじく、何をどこまで出来るのか分かりません。音魔術が得意らしいですが多分その気になれば何でもやれます。因みにちゃんと味方のキャラです。仲間にできます(最重要)。

余談なんですがコイツ十賢者って奴らのうちの1人なんですけど、賢者の中にもう1人ガチでヤベー女がいます。因みに超可愛いです。殺されたい。


流石にコイツやばくないか?キャラ盛ってない?
→原作だと父親だけじゃなくて母親も自分でヤってます。しかもそのキッカケは転んで貝殻壊しただけ。ですのでまだこのロベリアはマイルドです。


なんで女にしたの?
→話構成的にただウザいだけのやつになっちゃうと困っていまして。そんな時にあれ?女にしたら割と良いのでは?&男のままだと青山とキャラ被りすぎる。



グラブルやってる方はロベリアが最後に原作だとどうなるかとか諸々についてはコメントしないようにお願いいたします。
知らない方が面白いですしね。
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