多分グラブルで1番ヤバい奴なら最高のヴィランになると思った話 作:にやけ野郎A
時間がありましたら是非ロベリア ボイスで検索を。
ロベリアさんが鮫に喰われながら死ぬ女性の悲鳴をしっかり聞かせてくれます。かなりリアルです。
「ボクはロベリア・ガーディナリス。9歳さ!あぁ、もう少しで10になるんだけれどね!フランスの海が美しい街の出身なんだ!日本にやって来たのは1年半くらい前、パパの仕事の都合でやって来たのさ!日本は中々気に入っているよ!気候も悪くないし――」
あの後なんの抵抗もなく我々についてきた少女――ロベリア・ガーディナリスは、私と先生、転送先で待っていたドクターの3人に自己紹介を勝手にしはじめた。
それにしても…自身を誘拐した大人に対してこんなにも楽しそうに話すとは。不安や緊張という感情がこの少女には存在していないのではないだろうか。
「…おっと…ごめんよ!ボクは元々話すのが好きでね!つい止まらなくなってしまうんだ!」
「構わないさ。見ての通り暗いところだからね。君の声で華が咲いたようで嬉しいよ」
「メルシームッシュ!…だが君たちが知りたいのはボクの個性の事だろう?」
「そうじゃそうじゃ!魔術なんて個性見たことも聞いたこともない!はよう説明しとくれ!!」
何故ドクターがいたのかと疑問に思っていたが、成程こういうことらしい。
大方先生から見たこともないレアな個性が見つかったとでも連絡を受けたのだろう。
「ハハ…ドクター。ちょっとは慎んでくれよ。」
「良いとも、教えてあげよう!!と…言いたいところなんだけれど…ボクは説明が大の苦手でね。まずは実演するよ!あの椅子で良いかな?」
「…説明が苦手…天才なのに、ですか?」
「アッハ!手厳しいね!先程殴った事への当て付けかなクロキリ!?
まぁいいさ!天才にも1つや2つ欠点があった方が愛嬌があっていいものじゃないか?」
「…自分で仰らなければ尚良いかと。」
「そうかい?参考にしよう!まぁそんなことよりも…それ!」
掛け声と共に左手をパチリと鳴らすと少し遠くにあった椅子が無音で吹き飛んだ。
私と戦っていた時よりはかなり威力が抑えられているように思える。
「ホホーー!!」
「…へぇ。確かに只の衝撃系統の個性じゃないね。音も全くしなかった」
「クロキリには既に話したけれど…改めて説明しよう。ボクの個性は魔術。色んなことが出来るのさ。得意なのは音魔術だね。こんな感じで音をチョイと魔術で弄って衝撃に変えてみたり、音が外に漏れないように膜をはることとかね。」
「他に色々なこととは何があるのかな?」
「……今は身体能力の強化くらいさ。アッハ!まぁその気になれば大方なんでもできるさ!何せボクは天才だからね!やれることが多すぎて逆に困ってしまうくらいなのさ!!」
「…成程、魔術か。良い個性だね
…それじゃあ」
「待っとくれ待っとくれ!小娘!今のもう1回やっとくれ!」
「勿論だとも!ほぅら!」
先生が次の質問を投げかけようとした瞬間、もう堪えられんといった様子でドクターが割り込んで来た。
少女も上機嫌にドクターの要望に答える。やはりこういう褒められるとすぐに乗るところは子供らしいと言うべきか。
「ヒョーーー!凄いのう!どういう仕組みなのかのう!?ちゃんとワシに1から説明せんか!」
「いいね!だが先程も言った通りボクは説明が恐ろしく下手だ!それでも聞きたいかい!?ボクの魔術は凡人には欠片も理解できないよ!?」
「舐めるんじゃないわ!こちとら人よか長い人生の全てを個性の研究に費やして来とるんじゃ!お主のような小娘のチグハグな説明如きワシにかかればどうとでもなる!」
「アッハ!アッハハハ!最高だ!それじゃあしっかりとついてきておくれよ!?良いかい!まずは…」
珍しい個性の事を知りたいドクターと自分のことを話したい少女が意気投合してしまったようだ。
余りに白熱しすぎていて入り込む余地がない。
「…我々は置いてけぼりですね」
「仕方がないさ。レアなんてものじゃない個性だ。僕だって似たものすら見た事がない。ドクターが年甲斐もなくはしゃいでしまうのも仕方がないことさ」
そんな2人の様子を先生は愉快そうに見ていた。
長年連れ添った友人であるドクターの楽しそうな様子を見て笑っているのか。
…嫌、この方にそんな人の幸福を喜ぶような善性は残っている筈がない。
良い個性が手に入って利用できるからと、機嫌がよく笑みを浮かべているだけではないだろうか?
「…先生」
「なんだい?」
「…奪う、のでしょうか?」
「さて、どうだろうね」
聞いてみても当然私程度で彼の真意を読み取ることなど出来るはずもない。
「…僭越ながら意見を。…ロベリア・ガーディナリスはそのままで利用するのが良いかと」
「珍しいね。君が僕に意見するなんて。何か理由でもあるのかな?」
「はい。私は先程あのロベリア・ガーディナリスと戦いました。確かにあの個性は素晴らしいものです。先生がものにし、使いこなせば…オールマイトとの差はさらに明確なものになると思われます。」
「…ふむ」
「ですが…私はそれを踏まえてすら勿体ないと思うのです。…あの少女の価値は個性のみではありません。年に見合わない戦闘のセンス。私と先生でさえ発見するのに三ヶ月もかからせる程の狡猾さ。…そして何よりあの精神性。余りにも、惜しい。」
「ふふ…随分と庇うね、黒霧。彼女のことを気に入ってしまったかな?」
ハッと言われてみて初めて気がつく。
確かにここまで先生に意見をすることなど1度もなかった。
だがどうしても気になるのだ。
個性、才能、精神。全てを与えられた悪の申し子のような彼女が一体この先どうなるのか。
それ程までに私は彼女に期待…いや魅了されたのかもしれない。
「…申し訳ありません。しかし、きっと先生もお気に召すかと。特に最後の部分に関しては保証致します」
「精神性、ね。それじゃあ…聞いてみようか。
――白熱しているところすまないね!最後にひとついいかな?」
「なんじゃ、水をささんでくれオールフォーワン!今ようやく少し理解できてきたところだと言うの………むぅ、仕方がないのう。早く終わらせてくれ。」
議論を止められドクターも反論しようとしたが明らかな雰囲気の変化を感じて譲ることにしたようだ。
「ロベリア・ガーディナリス。君は何故人を殺し続けていたのかな?
先程キミは両親は死んだと言っていたが…彼らはその仇か何かなのかい?」
私でさえ緊張した。
返答によっては、ドクターへの説明が終わったら個性を奪われおそらく殺されるだろう。
子供でも何となく伝わるはずだ。それほどの重い重い圧の運命の問いかけ――だというのに
「仇?ノン。そんなんじゃないよ。
彼らはちょうど良かったから音になってもらっただけさ。」
なんてことなしに一瞬で返答した。
先程思った事は正しかった。
緊張、不安というものはこの少女には微塵も存在していない。
「ハハ。そうか。」
だが先生は中々その返答を気にいったようで、少々空気が和らいだ。
一先ず安心、と思っていたのだが。
「そもそもママが死んだのは事故だし、パパを殺したのはボクさ。仇なんているわけがないじゃないか」
「父を?…虐待でもされていたのですか?」
余りにもあっけらかんと父を殺したと言うものだから、つい会話に割り込んでしまう。
「そんなわけがないじゃないか!ボクはパパもママも世界で1番愛しているよ!だから2人のためにボクは誰よりも幸福にならなくてはいけないんだ!」
「2人のため…とは?」
「パパとママはボクが幸福になることが幸福だからね!!」
「…?」
「何を言っとるんじゃこの娘は?」
私はまだ彼女の言っていることが理解できなかった。ドクターも同様に首を傾げ怪訝な目を向けている。
「クク…あぁ。いいね」
そんな中、先生だけは笑っていた。
「つまり君は誰よりも幸せになりたいと言うことかい?」
「その通りさ!幸福に生きることは全ての人が持つ権利だろう?」
「…じゃあ君の幸福とは何かな?」
「人間が壊れる音を聞くことさ!」
「はは!やっぱりか!!
…それじゃあ、ロベリア。君の今までで1番幸福な音は何かな?」
続けて何か確信を持った様子で先生が問いかける。
質問の意図が分からなかった。
今置いていかれているのは私とドクターのようだ。
「…1番かい?…うーん迷うなぁ。ママ…いやでもあの時は幸福というよりは放心していた気もするし…
アハッ♪そうなるとやっぱりパパかな?右手が弾けた時の音はこれまでのどんな音よりもパルフェだった!それに左足がネジ切れるあの音とパパの悲鳴!そして最後は…ああ、ああ!!思い出すだけで…!アッハ!アッハハハ!!」
「…な」
「………壊れとるのぅ」
ようやく私にも理解出来た。
このロベリアという少女は自分が幸せになることで両親を幸福にするために自分の父親を殺したのだ。
「黒霧、君の言う通りだ。これを個性と考えるのは余りにも勿体ない…最高の拾いものだよ」
「…」
愉快そうな黒い笑いを浮かべる先生の言葉に、すぐに返事を返すことは出来なかった。
私では彼女の邪悪の深さを測りきることはできないようだ。
「おや、お疲れ様。…終わったかい、ドクター?」
「…終わったぞい。うん。色々とな…」
それから数時間後。ロベリアから個性のことについて聞き出していたドクターこと志賀丸太がオールフォーワンの元へと戻ってきた。
「…はぁーーー」
先程までの上機嫌はどこへ行ったのかという様子で床に座り込み、大きくため息をついた。
「…随分な落ち込みようだね。理解できなかったのかい?」
「舐めんじゃないわい。理解した。理解したわ。大雑把にだが構造と発生、いくつかの応用程度はな。
…そして分かったんじゃよオールフォーワン。ありゃ無理じゃあ。複製しても使い物にならんわい」
「どういうことかな?」
「個性を得たとしても使えないんじゃよ。個性行使に至るまでの過程が複雑すぎる。例えばさっき簡単にコップを破壊して見せたじゃろう?あれですら座標、威力、速度なんかの果てしない計算式のような過程と…あとは…感覚が必要なんじゃ。あんなにポンポン出来るもんじゃないわい。否、できてたまるかのぅ!」
「…へぇ。それは残念だね」
オールフォーワンの問に対して正に不満をぶちまける、といった早い口調で志賀は説明する。
対照的にオールフォーワンは口でこそ残念と言ってはいるが、気にしていないようだった。
「凡人ならただの無個性と変わらん。せいぜいなんか不思議な力がするとかそんなんを感じるくらいか、もしかしたら気が付かずに生涯終えるかもしれん。
…最悪じゃあ。オールマイトととの決戦の前にせっかく最高の個性が見つかったと思ったんじゃが…」
「それじゃあ…ボクが奪っても…」
「意味なしじゃよ。あんな風に使えるようには何年…いや何十年かかるか分かったもんじゃない。
…自称するだけあるわい。天才じゃ、あの小娘。」
「ふふ…いいじゃないか。それでいて弔とは別で最高に歪んでるんだろ?」
それどころか、どちらかというと喜んでいると言って良い様子にすら見える。
オールフォーワンは個性ではなく個人としてロベリアを評価していた。
つまり、もし有用であると報告されたとしても元から奪う気がなかったのだ。
自分の気も知らないで…上機嫌になりおって…と志賀は若干思わなくもなかったが。
「ドクター。彼女を引き入れよう。それほど頭が回るなら君の脳無の研究にも役立つはずさ。」
「随分と気に入っておるのう?…弔から乗り換えるのか?」
「まさか、変えないさ。メインは弔だ。それに制御出来る類のものじゃない、彼女の悪意はね。」
「ならば要らんのでは無いか?下手に動かれて我々の尻尾を掴まれる可能性もある」
「制御は出来なくても利用はできる。それに彼女は捕まらないよ。あの年でたった1人、1年半も生きていたそうじゃないか。狡猾に社会に溶け込む手段を既に知っている。加えて僕らがちょいと手を貸してやれば完璧さ。
…それに、見てみたいじゃないか。彼女の行く末をさ。生まれながらに最高にイカれた彼女の悪意がこのヒーロー社会をどう蝕んで、どう果てるのか。」
「全く、物好きじゃのう。」
オールフォーワン、偉大な悪の帝王。
彼の本心は長年連れ添い、最も苦楽を共にした志賀にさえ殆ど理解することは出来ない。
「ハハハ…あぁ本当に、楽しみだよ」
それでも今のこの言葉は、偽りのない本心といって良いだろう。
ドクターが一番書きにくい。