多分グラブルで1番ヤバい奴なら最高のヴィランになると思った話   作:にやけ野郎A

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 閲覧ありがとうございます。
 皆様のおかげで日間ランキングに乗ることが出来た他、ルーキー日間1位まで頂けました。感無量です。

 きっとロベリアも喜んでると思います。あのサイコパス野郎を喜ばしてもいい事なんてないんですけどね。


天才と天災

 

 暗く、寂れたバーで私は一人グラスを磨いていた。

 バー、といっても当然店という訳なく膨大な数ある拠点の内のひとつである。

 当然客などあるわけもない。

 

 故にこれは私の趣味だ。

 何も考えずにただひたすらにグラスを磨く。この時間が嫌いではなかった。

 

 

「……ふぅ」

 

 つい溜め息が零れたが、1人でいるのだか許されても良いだろう。悩みがあれば人なのだから溜め息のひとつやふたつ出てしまうものだ。

 

 ……その悩みの種は自身が世話を命じられている死柄木弔のことだった。

 確かに崩壊という個性は優れたものではあると思うが……余りにも扱いづらい。すぐに癇癪を起こすし、何がキッカケで怒り出すかも分からない。もう13か14くらいになるはずだがまるで幼子を相手にしているようだ。

 何故先生が彼に執着しているのか理解ができない。理解出来ずとも従うことに変わりはないのだが。

 

「おや……」

 

 そんな事を考えていると、コツりコツりと一定のリズムの足音が聞こえた。

 

 はて、誰だろうか。

 先生もドクターも来るという報せは受けていない。取引相手の商人か何かか? いや、そうであった場合でも連絡のひとつはあるはずだ。

 

「サリュ! 久しぶりだね、クロキリ。元気だったかい?」

「貴女でしたか、ロベリア。……ドリンクは?」

 

 ドアを開けてやって来たのはロベリア・ガーディナリスだった。

 以前ここにきたのは一月ほど前だっだろうか。前より少し……出会った時と比べるとかなり、身長が伸びたように見える。成長期真っ只中、と言ったところか。

 

「メルシー。いただくよ」

「今日は何用ですか?」

 

「うん。ちょっと先生の所まで飛ばして貰いに来たんだ。座標も聞いてある」

「そうですか。では早速……」

 

「あぁ、待ってくれ。まだ約束には少し早いんだよ。だからもう少しお話しようじゃないか。ね、いいだろう?」

「ええ。構いませんよ」

 

「おや? 今日は随分と素直じゃないか? ボクと久しぶりにあえて嬉しいのかい?」

「……」

 

 正直当たらずも遠からず……と言うべきで反応に困る。

 なにせロベリアは私の近辺で唯一と言って良い気を使わなくて良い相手なのだ。

 先生やドクターは無論のこと。死柄木弔に関しては先程あげたとおりでお話にならない。

 1人でいるのが1番楽、と言ってしまえばその通りなのだが……時には会話のひとつもしたくはなる。

 

 その相手としてこの”気を使わなくて良い”という1点だけで彼女の存在は十分に有難い。

 

「おっと、冗談さ。怒らないでくれよ! ……そういえばクロキリ、さっき溜息をついていなかったかい? 何かあったのかな?」

 

「貴女の足音が聞こえる前の筈ですが……何故聞こえているのです……」

「アハッ♪ 音に関してボクに適うものはいないのさ! ということで話すといい!」

 

「……何もありませんよ」

「おいおい隠さなくてもいいじゃないか! キミにボクは感謝してるんだ。その恩返しの1つとして悩みや愚痴の1つ2つ喜んで相談にのるとも!」

 

「…………貴女に相談したいと思う人間はは目を取り替えてもらった方が良いかもしれませんね」

「ふぅん……酷いなぁ。レディに対してのセリフかい?」

 

 

 加えて……あの異常性を除けば結構いい人間に見えてしまうのだ。

 

 挨拶は普通に出来るし、なんならこうして心配だってしてくれる。

 出会ったばかりの頃はことある事に自身を称えていて非常に鼻につく感じだったが、少し注意するとかなり改善された。

 

 

 

「……少し任務で疲れただけですよ」

「……なら元気を出す為にボクの"クラポティ"でも聞くかい? そうだな……肋骨が肺に突き刺さって血を吐きながら悲痛の声をあげる少年の……ノン! 冗談! 冗談さ!! あぁ! ドリンクを取り上げないでくれよ!」

 

「……貴女のそれは冗談じゃないでしょう」

「……いや、今回のは本当さ。ここ最近全く幸福とは程遠い音しか得られないんだ。とても他人に聞かせられるようなクラポティは無いんだよ……」

 

「私としては助かりますよ。……ドリンクはお返ししましょう」

「……ふん、クロキリは僕に幸福なってほしくないって言うのかい? ……そんなこと言う君は任務で失敗してセンセイにこっ酷く叱られてしまえば良いんじゃないかい?」

 

 

 その唯一目を瞑らなければいけない異常性が余りにも致命的なのだが。

 

 最初は自身が聞いた音の感想を聞かせてくるだけだったが、半年ほど前に”クラポティ”という貝殻に音を記録する魔術を開発してからは、ことある事に人が無惨に死ぬ音を聞かせようとしてくるのだ。

 しかもそれが悪意ではなく自分の幸せを分けてあげたい、という厚意から行っているのだから余計にタチが悪い。

 

 因みに携帯などで録音すれば良いのではないか、と聞いてみたところ……

 

『ノンノン!! あぁ! 分かっていない! クロキリは本当に何も分かっていない! 質が! 音の質が何よりも違うだろう!? ほら、聞いてみてくれよ!? 

 

 ……いいや! 今回は逃がさないさ! この違いが分かるまで聴き比べて貰うからね!!』

 

 その後『喉を潰された状態で左足からじっくりと破壊され、小さく掠れた悲鳴をあげながら死んでいく男』という訳の分からないクラポティを十数回聞かされた。

 

 後は……クラポティの貝殻は自らの魔術によるものだから何時でも取り出し可能なことが主な利点。貝殻を選んだのは故郷の海でみた貝殻が気に入ったからだそうだ。

 

 …………嫌な事を思い出してしまった。

 

「任務……君の任務は……あぁ! シガラキトムラっていう子の教育だったかな?」

「えぇ。まぁ……多少手がかかりましてね。少なくとも貴女の時よりは大変です」

 

 そもそもロベリアの時は全くと言っていいほど手はかかっていない。一般常識程度は教えるように、と先生から命令を受けたが、改めて教えることは殆どなかった。

 

 あえてあげるならば先程言ったように”もう少し自重した方が印象が良い”ということくらいで。

 2週間もする頃には私の手を離れ主にドクターの手伝いをするか、ふらりと”幸福な音”を探しに行くようになった。

 

 ドクターもかなり重宝しているようで私にもロベリアが何処行ったか知らないか、と連絡が良く来る。

 

 

「ボクは天才だからね! アッハ! ……おっと、こういうのはケンソンするのが日本人の美徳、だったかな?」

「……まぁ今は良いでしょう。それに紛うことなき天才ですよ。貴女は」

 

「そうかい? 

 

 ……ふふ、メルシー。クロキリ」

 

「……!」

 

 いつもの笑いではない、ゆるりとしたにこやかな笑み。

 その姿は、本性を知る私でさえも一瞬見惚れてしまうほど美しく思える程だった。

 

 

 

 

「……このくらいの反応ではどうだろう?」

「…………良いのではないでしょうか?」

 

 これは……なんとも恐ろしい。

 今でさえこれなのだ。

 更に少女から1人の淑女へと成長してしまったならば、釣られない男など存在しなくなるのでは無いだろうか? 

 

 そして一度引っかかってしまって場合、その先待ち受けるのは──。

 

 

「……恐ろしいトラップですね」

「……? なんだい?」

 

「……いえ。独り言です」

「ふぅん……それにしてもシガラキトムラかぁ……会ってみたいなぁ。年上らしいけれど……ボクと年は近いんだろう?」

 

 

 先生は死柄木弔とロベリア・ガーディナリスを頑なに会わせようとしなかった。

 それどころか死柄木弔にはロベリアの存在すらも知らされておらず、私も念入りに口止めされていた。

 

「……そういえば先生は何用で貴女を及びになったか聞いていますか?」

 

 故に話題を変える。

 このまま理由をつつかれても私には先生の思考など理解出来るはずもないから答えられないし……問い詰められると面倒だ。

 

「あぁ……よく分からないけど誕生日プレゼントらしいんだ。ボクを連れていきたいところがあるんだって」

 

「なんと。貴女、今日が誕生日でしたか?」

「ウィ! 今日で11才さ!」

「それはおめでとうございます。

 ……何も用意出来ず申し訳ありませんが……」

「ノン! 言葉だけで十分さ! それにさっきドリンクも貰っただろう?」

 

「その程度ではプレゼントに……」

「アッハ! それなら君が死ぬ際に僕が殺す権利をくれないかい!? やっぱりボクは君の壊れる音が……」

 

「そろそろ時間ではありませんか?」

「アッハハハ! やっぱり駄目か! 

 

 ……うん。それよりも確かにそろそろ時間だ。お願い出来るかい?」

「……畏まりました」

 

 

 正直に言おう。

 ロベリア・ガーディナリス、この異常な少女を私は嫌いになれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やぁ、ロベリア。よく来てくれた。

 黒霧は戻ってくれて構わないよ。ご苦労だったね。

 

 

 ん? ここは何処かって? 

 

 日本のとある山の奥の地下施設さ。

 来たことがないのも無理はないよ。僕だってここに来るのは本当に久しぶりだ。20数年前に少し確認にきた以来かな? 

 

 それよりも……まずは誕生日おめでとう

 、ロベリア。いつも助かっているよ。

 

 プレゼントはこの先にあるんだ。行こうか。

 

 

 

 

 歩きながらになるけれど……少し昔話をしよう。ああ、プレゼントに関わる話だよ。

 

 

 

 僕の個性は前に教えたね? 

 そう。個性を奪い、与える能力さ。

 

 ……はは。誕生日プレゼントは個性じゃないよ。欲しいのならいつでもあげるけれど……君は嫌がるだろう? だから違うさ。まぁ近いモノではあるかもしれないかな。

 

 

 話を戻そうか。

 その個性のひとつで成長を止めることでボクは長い時間生きている。それこそ超常黎明期以前からね。

 

 今でこそオールマイトのせいで数は相当減ってしまったけれど、昔は数え切れないほど部下がいたんだ。

 当然色んな奴がいてね……いつの間にか悪の帝王、大魔王なんて言われたりしたんだ。ハハ……だから君への最初の自己紹介もあながち嘘じゃなかったんだぜ? 

 

 

 それで悪の帝王になった僕はね……強い部下が欲しくなったんだ。1人で他の部下達を一掃出来るようなとびっきりの奴がね。

 

 だってそうだろう? コミックだってゲームだって悪の大王にそういう部下はつきものさ! 

 

 けれど、そんな個性を生まれ持っていることなんてほぼありえない。世代を経て個性は複雑化し、進化した今ならまだしも……昔は単純なものばかり。

 それこそロベリア、君のような個性があの時に生まれるなんとことは奇跡が起きても有り得ないといっていいレベルさ。

 

 

 だから……自分で作ることにしたんだ。

 

 力を得て裏切られちゃ面白くないから僕の部下の中で最も忠誠心を持った人間を改造する事でね。

 

 

 そうして出来たのがギガントマキアっていう僕の忠実で最強の下僕さ。

 元の名前は忘れてしまった。

 

 ……うん、もちろんフィクションじゃない。実在してるし、生きているよ。

 今は訳あって隠しているけどね。

 

 何が言いたいか分からなかったって? 

 いや、まだ話は終わりじゃないんだよ。長くて申し訳ないね。

 

 そのギガントマキアを作る時にさ、一発勝負はしたくなかったんだ。

 僕のために笑って死ねるような部下は何人かいたけれど……マキアはそのなかでもずば抜けて忠誠心が強かったからね。

 失敗して使い物にならなくなるのは避けたかった。

 

 

 そんな時、1人の男が僕に志願してきたんだ。自分に力をくれってね。

 

 よく分からない奴だったよ。

 

 普段何も喋らない静かな男なんだけれどね、何よりも色んなものを破壊する事を好んだんだ。敵も見方も、人も物も関係なく。目に映るもの全てをね。

 

 そのせいか他の部下たちからも気味悪がられていたんだ。

 

 

 ……だから僕はね、彼は非常に丁度いいと思ったんだよ。

 

 

 

 

 最終的にいくつ混ぜたんだったかな? 

 10は確実超えてる筈。20は……確かいってなかったと思う。

 

 実験だからね。強力な奴をいっぱい入れてみた。雷……暴風……地震に巨大化あとは……あまり覚えてないけれど。確か8か9個目くらいで全く反応がなくなったんだ。でも、その頃には結構要領も分かってきてさ。

 だからもういいか、と思って放っておいたんだ。

 

 

 

 

 そしてその後、暫く経ってドクターと出会って……僕は()()の事を思い出した。

 

 ドクターは君も知っての通り個性の研究が大好きだからね。

 できる限り個性を突っ込んだ実験体がいるけど弄ってみるかって聞いてみたら大喜びでさ。僕も付き合ってあげることにしたんだ。

 

 まぁ正直ダメ元だったよ。

 そもそも生きているのかすら怪しい代物だぜ? 普通に考えて動くわけが無い。

 

 

 

 

 ……でもさ、動いたんだよ。

 

 流石に忘れられないね。

 

 皮膚硬質変化の個性を入れた瞬間だったよ。

 形が変化したんだ。ただ動かないだけの大きな人型から今の……まるで巨大な()()()のような姿に。

 今までなんの反応を示さなかったのに、急にさ。

 

 ……その硬質変化の個性がキッカケだったのかもしれないけれど、詳しい理由は一切不明。個性というものは何が起きるのか本当に分からないものだね。

 

 

 ……そしてソレはそのまま動き出し……地面を突き破って外に出て……何がをしたと思う? 

 

 

 

 

 

 街を1つ、一瞬で滅ぼしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ただそれ以来1度もソレは動くことはなかった。言葉も発さない。生きているのかも分からない。只ひたすらにまるで無機物のように聳え立つのみ。

 

 ……そして僕はそれを封印する事に決めたのさ。言うことも聞かないし、下手に手を出して暴れられたらどうなるか分からないからね」

 

 

 センセイの話を聞き終わったボクの気持ちはどう表せば良いだろうか? 

 

 歓喜? 

 尊敬? 

 羨望? 

 嫉妬? 

 

 幸福な音を聞いた時とも少し違う。

 心が満たされる……と言うよりは跳ねて飛んだしまいそうなこの思い! 

 

 初めての感触だった。

 

「センセイ……そのカレは、今、何処に?」

 

「……会えるよ。今すぐにね。

 ……もう少しだ。着いておいで」

 

 途中パスワードが必要なゲートを何回か通る事になった。

 

 とてももどかしく感じたが、その厳重さが先程の話は嘘ではないんだということの証明のように思うとそれもまた楽しくなった。

 

「プレゼント……とは言ったけれどね。

 正直な話、君に見てもらいたくてそういう言い方をしただけなんだ。

 

 ドクターからの提案でね。君の別角度の視点と発想があれば万が一があるんじゃないかってさ。だから正直動くかどうかは分からないし──」

 

 もうセンセイの声は右から左へと抜けていくだけだった。

 

 喉が渇く。

 心臓の鼓動も凄まじい。

 

 一歩一歩、一秒一秒がとてつもなく長く感じられる。

 

 こんな事も生まれて初めてだった。

 あぁ、これを緊張と呼ぶのだろうか? 

 

「遅かったのう。待っておったぞ。……開けるぞ。この奥じゃ」

 

 一際大きく、厳重な最後の扉の前でドクターが待っていた。

 

 あぁやっと、これが最後。

 

 ゆっくりとゆっくりと、扉が開いていく。

 そうしてようやく人がひとり入れそるくらい開いた瞬間に、駆けだした。

 

 何故だか分からないが、見たことも会ったこともない彼が早く来いと、ボクを呼んでいる気がした。

 

「あぁ……! キミが……!!」

 

 表現するならば……機械の巨人だろうか。中世ヨーロッパの城の城砦のような見た目の外殻。それにSFの映画に出てくるような青白い光が組み合わさったその姿。なるほどセンセイが建造物と表現したのもうなずける。

 

 

「……彼は……彼の名前は何と言うんだい?」

「名はない……けれど僕とドクターは便宜上こう呼んでいる──

 

 

 (ザ・タワー)、とね」

 

 

 

 

 

 




 グラブル知らない人向けコーナー

 原作のタワーとロベリアについて

 前に説明させて貰った十賢者というヤツらはそれぞれ1人一体づつ”星晶獣”という、なんか姿形も能力もそれぞれ全然違うけど、共通して凄い力を持つヤツらと契約しています。

 ロベリアは十賢者のうちの1人なので当然契約しているのですが……その相手がこのタワーという星晶獣です。

 故にロベリアとタワーは切っても切れない関係なので無理やり出しました。
 ちょっとこじつけみたいな流れになってしまいまして申し訳ありませんがタワーがいないとロベリアじゃないと思いました。

 なお、これより先でグラブルのキャラが出ることはありません。



 ザ・タワー
 →見た目めちゃくちゃ説明しずらいので気になった方は調べて見てくださると有難いです。面倒い方はでっかい人型の塔みたいなヤツだと思って頂いて大丈夫です。

 今ある世界滅ぼしてもっと良い世界作れば良いんじゃね? と思った奴が世界を滅ぼす手段として作った星晶獣のうちの一体。

 因みにその十体はそれぞれタロットがモチーフとなっておりまして、塔のタロットの正位置は崩壊です。






 書き方を色々と試行錯誤中です……読みにくかったら申し訳ない。
 また誤字報告、感想、評価本当にありがとうございます。助かっております。
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