Ace Combat インデペンデンス・デイ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第三話 侵略のはじまり

 

 

サンフランシスコとロサンゼルスの間に位置するモハーベ航空宇宙空港。

 

スペースシャトルの着陸点としても利用される宇宙空港には、通信機器はもちろん、地下への退避シェルターも完備されている。

 

 

「義姉さんはここに避難しておいてください」

 

 

何より、あの馬鹿みたいに大きな円盤が頭上にない場所だ。

 

ロサンゼルスから少し近いようにも思えるが、航空戦力どころか武装もしていない空港にエイリアンがわざわざ攻撃を仕掛けてくるとは考えにくい。劇中でエイリアンたちが電撃的に制圧したのは軍事力を持つ航空基地や防空設備がある場所だ。非武装の場所も上から見えるはずだが襲わなかった。

 

ここなら安心して大統領夫人を避難させられる。それに、少し東へと飛べば〝あの場所〟にも向かえる。

 

 

「ラリー。ですが、トーマスはまだホワイトハウスに……」

 

「最後の通信で、コンスタンスらと共に避難を始めたようです。今はエアフォース1へ向かっているはずですよ」

 

 

コニーとディヴィットとの関係が映画よりもまだマシな関係だったからか、俺が伝えるのが早かったからか、大統領府にエイリアンたちのカウントダウンの話が伝わるのは幾分か早くなった。円盤が停滞する場所からの避難勧告も正式に通達されたようだが、長距離通信用の衛星が破壊されたため、一般回線ではそれ以上のことは聞けず終い。

 

市民をパニックにさせないため、大都市であるロサンゼルスへ向かおうとする大統領夫人マリリンをなんとか説得して、俺は彼ら政府関係者に地下に避難しておくよう釘を刺した。

 

タイムリミットまでもう時間はない。

 

日が落ち、夜がくる。

 

あの悪夢の夜がくる。

 

 

「トラヴィス中尉。夫人を任せる。代わりのヘリは俺が行ってから向かわせる」

 

「了解であります」

 

 

行動を共にしてきた米軍パイロットに俺はそう告げてすぐに準備を始める。俺自身もここから去って行かなければならない場所があったからだ。

 

 

「ラリー。エルトロに戻るの?」

 

「こう見えても、自分は航空小隊の隊長ですからね」

 

 

あんな馬鹿みたいにでかい円盤がアメリカの各都市の頭上にいるのだ。休暇中だったパイロットも通信士も全員呼び戻されている。今ごろ基地内では不満の声が上がっているだろうが文句を言ってる暇などない。

 

大急ぎで準備を進める俺の手に、マリリンがそっと手を置いた。

 

 

「これは大統領夫人ではなく、貴方の義姉として言います。どうか無事で……ラリー」

 

「また迎えにきますよ」

 

 

俺は夫人や政府関係者に見送られながらヘリに乗り込み、そのまま帰還命令が出されたエルトロ基地へと進路を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

「家族とバカンスだったって言うのに急に呼び戻されるなんてな」

 

「仕方がないさ、何せ相手は空に浮かぶETどもなのだからさ」

 

 

休暇早々に呼び戻されたことに不満を抱くスティーブンは、同じタイミングで基地に帰還したジミーにそんな愚痴を漏らしていた。

 

夜は熱く過ごし、昼まで寝て、そしてご機嫌なブランチを食べてジャスミンの息子であるディランと共に新しくできたバーガーショップに行く予定が全部台無しだ。それもこれも、いきなりロサンゼルスの頭上に現れた宇宙船が原因だ。

 

 

「映画のような優しいエイリアンならいいんだけどな」

 

 

ジミーの皮肉に応じたのは、帰還した小隊長であるラリーだった。二人はすぐに敬礼を打って出迎えるが気にするなとラリーは気張った態度を解くように言う。

 

スティーブンから見ても、ジミーから見ても、ラリーは親しみやすい性格をしていた。彼はなによりもメンバーとのコミュニケーションを大切にしていた。もちろん隊長として締めるところはきっちりと締めるが、それでも他の基地の偉そうな上官と比べれば天と地ほどの差がある。

 

ラリーと共にエルトロの作戦司令部に入ると、すでに小隊の大部分のメンバーが揃っていた。全員が立ち上がって入室した隊長へ敬礼を打つ。ラリーが赴任してきた当日なんて誰も立ち上がらなかったのに。

 

エルトロ基地の司令官はそんな昔のことを思い出しながら口を開いた。

 

 

「全員が揃い次第、すぐにブリーフィングを行う。AWACSの担当官は……」

 

「は、はい。今年赴任しましたユージン・ソラーノです」

 

 

そう言って立ち上がったのは若い通信官だった。なんでも航空戦略部が新たに提唱した管制システムであるAWACSに対応するために訓練を重ねてきた士官であるが、パイロットたちから見ればモヤシみたいな容姿をしていた。

 

だが、彼の状況判断には誰もが疑いを持っていない。オドオドした性格ではあるが、彼の状況分析にミスはない。先日の航空演習の通信官も彼が務めていたのだから。

 

 

「よし、ユージン。君がデータ通信の司令塔となる。準備はいいな?」

 

「は、はい!問題ありません」

 

「ですが隊長。900億光年も離れた場所からやって来て、戦いをしかけて暴れまわるとは思えませんが……」

 

「それは、奴らの出方次第かもしれんな……」

 

 

スティーブンの言葉に少し言葉を濁しながら答えるラリー。彼は知っている。現れたエイリアンたちはそんな生やさしい存在ではないと言うことを。だが、一パイロットでしかない自分にできることは限られている。あの円盤の口がひらけば全てが終わり……そして全てが始まる。

 

あの熱波に晒される人々を救うことは自分にはできない。大統領にも……誰にも……。

 

 

(頼むぞ、ディヴィット。上手くやってくれ)

 

 

せめて、あの敵に報いることができる人物たちの生還だけを祈った。

 

そして、そのカウントダウンは終わりを迎え……アメリカは緑の閃光と共に炎に包まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員、揃っているな?ブリーフィングを始める。

 

知っての通り、昨晩……アメリカ合衆国は多大な被害を受けた。攻撃してきたのはロシアや中国ではない。宇宙からやってきた宇宙人どもだ

 

円盤が陣取っていた主要都市は壊滅状態だ。通信インフラも衛星を破壊された以上、満足に機能していない。だが、作戦本部は奴らに好き勝手な真似をさせるつもりはない。さきほど、円盤に対しての迎撃命令が正式に出された。諸君の出番というわけだ

 

通信を担当するユージン・ソラーノです。今作戦の内容について説明します。

 

現在、ロサンゼルス上空に留まる円盤型の浮遊物体がターゲットとなります。我々はこのターゲットへの攻撃、撃破、そして撃滅となります。

 

エルトロ基地からはスターズ小隊が出撃。隊長はホイットモア少佐となります。

 

まずは低空で作戦領域へ進攻してください。高度1000M以上は通信が不安定のため、味方機をこちらで識別できません。

 

他基地からも数小隊の迎撃作戦が展開されるため、現地で合流した後の小隊運用は隊長に一任します。

 

では、出撃をお願いします。宇宙人たちへ一矢報いて下さい。

 

また、作戦行動中のAWACSのコードネームは「クラックス」です。状況の変化などお伝えしますので無線には注意をしてください。

 

 

 

以上、ブリーフィングを終了する。

 

スターズ小隊、出撃。

 

幸運を。

 

 

 

 

 

 

 

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