Ace Combat インデペンデンス・デイ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第四話 決死の航空戦

……July 3rd

 

カリフォルニア州、州都上空。

 

壮観な摩天楼が見事だったはずのアメリカ大都市の一つ、ロサンゼルスはその姿を一変させていた。見渡す限り瓦礫の山。墓標のように立つビルの骨格残骸を見下ろすのは、突如として現れたエイリアンの円盤だった。

 

たった一夜でこの地獄を作り出した星の方舟の眼下。そこではすでに苛烈を極める戦いが繰り広げられていた。

 

 

『ちくしょう!ロバートがやられた!』

 

『奴ら!船の周りにシールドを貼ってやがる!!』

 

 

転生の影響なのか。

 

原作ではエルトロ基地からの航空戦略のみであったが、現地に到着した段階でエイリアンと軍の戦闘は始まっていた。AWACSであるクラックスからの報告によると、戦っているのはロサンゼルスのエドワーズ空軍基地から出撃した航空小隊だ。

 

と言っても、行われているのは対等な航空戦闘ではない。エイリアンの機体は文字通り〝シールド〟で守られており、エドワーズ空軍のミサイル攻撃をすべて跳ね返していたのだ。

 

 

『ひ、光の弾が……う、うわぁあああ!?』

 

 

エイリアンの戦闘機に追いかけ回された挙句、緑色の極光によって爆発した戦闘機を目撃したのは、ラリー率いるスターズ小隊が戦闘空域へと突入してすぐのことだった。

 

 

《た、隊長!!他の基地の飛行小隊が!!》

 

「落ち着け、ユージン!!各機、状況は分かっているな!?」

 

 

編隊飛行など生優しいことを言ってる場合じゃない。すぐに散開したスターズ小隊の面々は迫るエイリアンの戦闘機から逃れながら奥に居座る巨大な円盤を睨みつけていた。

 

 

「こりゃあETのケツの穴にミサイルぶち込むのは難しそうだ!!」

 

 

ひらり、とF/A-18ホーネットの機体を翻しながらビームを避けるスティーブンは軽口を叩いた。スターズ小隊の力量は原作よりも遥かに上がっている。

 

赴任して今まで、化け物機動を平然と行う隊長とのマンツーマン飛行訓練のおかげで、ただ高機動で追い回してくるエイリアンの戦闘機を見ても動じなくなってしまっていたのだった。

 

 

 

「エルトロ基地、スターズ小隊のホイットモアだ!!エドワーズのパイロット、聞こえるか!?」

 

『こちら、エドワーズのタスク隊です!隊のほとんどがやられています!!』

 

 

無線通信に応じたのは若いパイロットだ。旋回しながら空を見上げると一機の戦闘機が火を噴いて墜落していくのが見えた。幸いにも通信相手のパイロットの機体ではなかったが生き残っている機体もジリジリと追い詰められている。すかさず、ラリーは生き残ったパイロットたちへ指示を出した。

 

 

「よし、無事な機体は低空域で飛べ!高度は300M以下だ!相手はバリアで守られている。まともな航空戦術では勝ち目はないぞ!!」

 

 

 

300メートル以下!?という悲鳴のような返事が聞こえたが無視だ。とにもかくにもあの無敵バリアーを持つ戦闘機をなんとか振り切って離脱する。それしか彼らに生き残る道はないのだ。

 

 

「スターズ1から各機!聞こえたな!?低空域で散開し、敵機に追われている味方機を援護!!奴らは空中戦は得意そうだがやりようはある!」

 

「しかし隊長!ミサイルもバルカンも効かない相手にどうしろってんですか!?」

 

「そのために俺から逃げ回る訓練を何十回もしてたんだろうが!!」

 

「なるほど。つまりは逃げて囮になれと!!」

 

 

そりゃあ簡単だ!そう口々に言いながらスターズ小隊の各機がエドワーズ空軍基地の戦闘機を逃すために囮となってゆく。横合いからバルカンで邪魔された戦闘機は追いかけていた相手を変更し、スターズ小隊の各機の後ろを追いかけ回し始めた。

 

 

「敵は誘導性のある武装は使っていない!!直線で飛ぶな!!円を描け!ハイGターンを活用しろ!!燃料には注意を払え!!スティーブン、ジミー!俺に続け!敵を蹴散らすぞ!」

 

「了解!」

 

「そうこなくっちゃ」

 

 

無論、部下たちにただの囮をさせるつもりはない。ラリーは隊で腕が立つスターズ2のスティーブンと、スターズ3のジミーを連れて一気に空戦機動へと移行する。すかさずエイリアンの戦闘機も3機を追うが、その攻撃が三人を捉えることはなかった。

 

 

「ええいクソ!緑のなんかを俺に撃ってくんな!」

 

「こう見えても逃げ回るのは得意でね!!」

 

 

追いかけてくるエイリアンの攻撃を右へ左へ避けながらスティーブンは囮となっているメンバーの背後に張り付く敵機に狙いを定めてサイドワインダーを打ち込むが、機体はシールドに守られていて致命攻撃には至らない。

 

 

「クッソ!隊長、やっぱりこいつらに攻撃は……」

 

「スターズ1、フォックス2!!」

 

 

スティーブンがラリーがいる方向を見たと同時、ミサイルが矢のように放たれた。矛先は低空を飛ぶ友軍機を追うエイリアンで、ミサイルは敵機の上側へと着弾。シールドでダメージは与えられなかったが、爆風と衝撃で弾き出された敵機はビルの残骸へと激突。砂煙を上げながら地面に墜落したのだ。

 

 

「イェアエイ!!!!Foooーー!!」

 

「バリアは硬かろうが、地面とキスすればひとたまりもないな!」

 

 

歓声を上げるジミーとスティーブンも、ラリーがやった戦法を見習って低空で飛ぶエイリアンの戦闘機へミサイルを打ち込んでゆく。囮と攻撃役が入れ替わり立ち替わり。敵機の何機かが爆風によってカルフォルニアの地面に激突するが状況は悪化していた。

 

 

「消耗戦は不利だ!!クラックス!!ユージン!!状況はどうなってる!!」

 

《友軍機の五割が作戦域から離脱しています!!隊長たちも早く!!》

 

「馬鹿野郎!お前やエルトロ基地の面々もさっさと逃げろ!!」

 

《エルトロ基地もですか!?》

 

 

驚いたような声を上げるユージンだが、想像するのは容易かった。敵はこれほどの航空戦力を出した。ということは、エルトロもエドワーズ空軍基地も制圧されるのは時間の問題となる。

 

 

「基地を放棄して離脱するんだ!!いいな!!」

 

 

ラリーからの通信を受けたエルトロ基地もすぐに退避命令が発令。管制官や作業スタッフたちがすぐに輸送ヘリへと乗り込み基地からの脱出に取り掛かった。

 

ラリーたちはエドワーズ空軍基地のパイロットたちの離脱と、エルトロ基地からの人員脱出までの足止めをする作戦に出た。

 

 

《クラックスよりスターズ小隊へ!!残存戦力の八割が離脱!!あと少しです!!》

 

 

最初は敵機を地面に叩きつけて撃墜する方法が効果を発揮していたが、ホーネットの積載武装の枯渇、そして戦法を学んだエイリアンたちは数機でスターズ小隊のメンバーを追いかけるようになったのだ。

 

 

「スターズ6!!敵機が後ろに張り付いた!!」

 

 

ジミーが悲鳴のような声をあげる。ハイGターンの最中、南側を飛ぶスターズ6の背後には三機の敵機が張り付いているのが見えた。

 

 

「ふんばれ!スターズ6!!」

 

「だめだ!!振り切れ……」

 

 

ブツリと通信が途絶したと同時に、緑色の極光が直撃したスターズ6の機体が真っ赤に燃え上がって爆発した。

 

 

「スターズ6!!」

 

 

そこからスターズ小隊は劣勢に立たされる。撃墜されたスターズ6を皮切りに、背後を取られた他の二機も続け様に撃墜された。

 

 

《スターズ5、スターズ7もロスト!?》

 

「ええい!クソッタレが!!」

 

「ユージン!!離脱はどうなってる!!」

 

 

もうこっちも持たないぞ、と叫ぶジミーにユージンは味方の最後の一機が作戦空域を離脱したことを確認した。

 

 

《最後の機体が離脱しました!!》

 

 

よし!その言葉を合図に空域に残ったスターズ小隊のメンバーが一気に離脱を開始する。何も言わずに地面スレスレまで降下した小隊は、ビルや高速道路の残骸をくぐり抜けながら作戦空域からの離脱を目指した。

 

 

「各機、エレメントを組め!!現空域から離脱する!!」

 

「おおっと、隊長!奴ら本気で怒ったみたいですよ!」

 

 

スティーブンの言う通り、十機程度のエイリアンの戦闘機が離脱するスターズ小隊を追いかけ始めていた。

 

 

「過激な接待を受ける前に引き上げるとしよう!!飛ばすぞ、スティーブン!!各機も続け!!」

 

 

ラリーを先頭にホーネットはぐんぐんと速度を上げてゆく。倒壊したビルの隙間が見えるが、ラリーは速度を落とすどころかさらにスロットルを上げて進んでゆく。おい、マジかよ……とジミーがつぶやくが、方法はこれしかない。ラリーが機体を綺麗に九十度に傾けると、機体はスレスレの隙間を高速度で通り抜けた。

 

スティーブン、ジミー、そして残りのスターズ小隊も無事に通り抜け、あとを追ってきた戦闘機が残骸に激突して墜落したのが見えた。

 

 

「ヒィイイーハァーーー!!」

 

「地球の飛び方ってやつを教えてやるぜ!!」

 

 

さらに止まることなく、高速道路の橋下などの隙間をくぐり抜けると、追ってきていた敵機の数機が壁に激突して動きを止めた。ちなみにスキマクグリはスターズ小隊の必須科目でもある。

 

だが敵は諦めていない。隙間を避け、迂回してでも追ってきた敵機がすぐ後ろまで迫ってきていたのだ。

 

 

「隊長!スターズ4の後ろに!!」

 

 

気がつけば最後尾を飛ぶスターズ4の背後に敵機がべったりと張り付いている。高速機動で振り切ろうとするが敵は是が非でもこちらの小隊を撃墜したいらしい。歯を食いしばりながら旋回のGに耐えていると、最後尾の戦闘機から通信が入った。

 

 

「ラリー隊長!自分に構わず行ってください!!」

 

 

それは最後尾にいる者の責任だとスターズ4は叫んだ。最後尾は一番遅い者という意味じゃない。後を追いかけられた際、身を盾にしても仲間を守るという重要な役割があったからだ。

 

だが、ラリーは諦めていなかった。

 

 

「馬鹿いうな、スターズ4!!お前を見捨てられるか!!スティーブン!!あとは任せるぞ!!……殿は俺がやる!!」

 

 

それだけ伝えて、ラリーは機体を大きく横へと旋回させてゆく。意図的なストールを引き起こした機体はそのまま最後尾を通り越して、スターズ小隊を追い回す敵機の更に後ろへと回り込んだのだ。

 

 

「おいおい、だめだ!!ラリー!!」

 

「ポイントL54で合流しよう!!さぁ!!早く!!」

 

 

ミサイルは撃ち尽くした。バルカンで敵の進行方向を妨げるラリー。敵の大多数が背後についたラリーのホーネットを狙って進路を変えてゆく。

 

 

「ラリー隊長!!」

 

「隊長ーーーっ!!」

 

 

敵を引き剥がしたラリーの機体がどんどん遠くなってゆく。スティーブンとジミーの大声が響き渡る中、ラリーは最後まで叫んでいた。

 

 

「行け!!振り向くな!!行けぇええーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、アメリカ合衆国に存在する航空戦力、および防衛地上戦力はその数を大きく減らし、大損害を受けたのだった。

 

 

 

 

 

 

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