ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより 作:ひいちゃ
グリーンノア2編#01『赤いモビルスーツ』
「はぁ……なんでこんなことに……」
基地への道を歩きながら、ふと愚痴をもらす。
ふと、自分の体を見る。
漆黒の軍服に包まれた、ちょっと小柄な体。その胸はほどほどに膨らんでいる。
どこから見ても、かつての俺とは似ても似つかない女性の体。どう見ても、特務部隊・ティターンズの女性軍人といった姿だ。
「でも、俺なんだよなぁ……」
そこでもう一つため息をついた。
* * * * *
ガンオタの高校生だった俺があの日、スマホでZガンダムを見ながら登校していたら、赤信号だったことに気づかずに横断歩道に入ってしまい、そこにトラックが突っ込んできた。
そこで一瞬意識が途切れた俺が気が付くと、そこは軍人寮らしき部屋の中。
カレンダーに書かれた『U.C.』の文字を見て、『ガンダムの世界に転生したのか!』と喜んでいたのもつかの間、それは衝撃に変わった。
上司にバスク・オムがいる。同僚にジェリド・メサとカクリコン・カクーラー、そしてエマ・シーンがいる。
そう、俺はティターンズの女性兵にTS転生していたのだ。名前は、カレル・ファーレハイト。階級は少尉。明るい茶色の髪をポニテにしていて。顔立ちはどこか幼い童顔。とても軍人には向かない、むしろ同僚からおもちゃにされそうな女性、それが俺である。
確か、原作アニメに『カレル・ファーレハイト』という名有りキャラは出てこなかったので、モブキャラなのだろう。
俺の意識が目覚めたのはちょうど一週間前。いったいどうなることかと思ったが、カレルが元々パイロットだったことと、俺自身がガンダムの対戦ゲームが好きだったことで、MSの操縦にも戸惑うこともなく、なんとかやっていけている。
それにしても、まさかティターンズ側に転生してくるなんて……。お先真っ暗じゃないか。これからどうしたらいいんだろう?
そう回想しているうちに、基地の前までやってきたのだが、そのゲートの前で何か騒ぎが起きている。どうしたんだ?
よく見ると……あれはZガンダムの主人公カミーユ・ビダン君と、俺の同僚、ジェリド・メサではないか。
それで何かピンときたが、とりあえず騒ぎの場所に近寄ってみる。
「こら、大人しくしろ!」
「もしもし、いったいどうしたの?」
「え? あ、これはファーレハイト少尉。いや、実はこの少年が、メサ少尉に殴り掛かりまして……」
……やっぱりか。俺は、ジェリドにジト目を向けた。
「ジェリド、彼に何か失礼なことを言ったんじゃないの?」
「そんな失礼なことは言ってないぞ。『女の子の名前かと思ったのに、なん』」
「それが失礼なことだと言うのっ!!」
俺は内心でこめかみを押さえながら、グーで、ジェリドの頭を上からぶん殴った。もちろん、たんこぶが出ない程度に力は抑えていたが。
まったく。某戦術SLGに出てくる、同じ名前の大佐殿の爪の垢でも飲んでほしい。
「人にとって何がトラウマなのかはわからないんだからね。あなただって、『そのリーゼント、ださい』と言ったら怒るでしょう?」
「それは確かに……」
俺の説教を受けて、ジェリドが申し訳ないという顔になる。普通のジェリドなら反発したり一蹴されるところなのだが、この一週間で、俺とジェリドたちとはとっても仲良くなった。俺が元男で、下ネタにも呆れながらも付き合ってやってるからだと思う。その努力は無駄ではないってことだ。
「わかったら、ほら彼に謝る。悪いことをしたときは素直に謝るのが、ナイスな男ってもんだよ」
「わ、わかった……済まなかったな」
「ほら、君も」
「は、はい……ごめんなさい」
カミーユがぺこりと頭を下げたところで、俺はやっと肩の力を抜いた。
「ほら、そしたら後はMPさんに絞られてきなさい。それじゃ行きましょうか、ジェリド」
「あ、あぁ」
そして俺はジェリドと基地の中に入っていった。
ひとつ大事なこと……カミーユに暴力を振るわないことをMPに言っておくこと……を忘れたまま。
* * * * *
そして簡単なブリーフィングを済ませた後、俺は全天周モニターに包まれたコクピットの中にいた。
「うん、さすがガンダムMk2。なかなかいい反応ね」
いい性能を見せてくれる乗機に、俺は少しほほを緩ませながら言う。まさか夢にまで見たガンダムに乗れるとは。
RX-178、ガンダムMk2。ティターンズが開発した試作型MS(モビルスーツ)である。開発したのは、ティターンズの正当性を世に示すためなんだとか。
ムーバブルフレームを採用し、従来のMSより優れた運動性を持たせることに成功したということだが、確かにこう動かしているとそういうのがよくわかる。
「シャアは、『所詮はMk2か』と愚痴ってたけど、そんなに悪くないじゃない」
さて、俺がどうしてこれに乗っているかというと、ほんの偶然だったのだ。
なんとおり悪く、エマさん(つい年上だからという理由ではなく、さんづけで呼んでしまうんだよなぁ)が、生理になってしまって、Mk2に乗ることができなくなってしまったのだ。原作ではそんなことはなかったんだけどなぁ。もしかして、俺がTS転生したことで、色々なことにズレなどが出てきているのか?
まぁ、そんなわけで、俺が彼女の代わりにこれに乗ることになったわけだ。嬉しい幸運なようなそうでないような……だって……。
と、そこで、コール音が鳴った。通信? なんだろう。何か予想がつきそうだが。
「はい、こちらアスグリム(俺のコールネームだ)」
『こちらコントロール。エゥーゴのMSがコロニー内に侵入した。至急、迎撃に向かってくれ。くれぐれも無理して、奴らにMk2を渡すことのないように』
「わかりました」
やっぱりか。でもどうしろと? 俺の前世の記憶に間違いがなければ、侵入者の中にはクワトロ・バジーナ(シャア)がいるんだぞ? いくらガンダムの対戦ゲーが好きでも、シャアの相手なんて無理ゲー。
とはいえ、敵が来たからには迎撃しないわけにはいかないし……。まぁ、コントロールも『無理はするな』と言ってくれてるし、無理しない程度でやってみますか。
俺はMk2を、敵がやってきたと思われる方向へ駆った。
* * * * *
俺が現地につくと、先に遭遇していたジェリドとカクリコンが、赤いMS……リック・ディアスと戦っていた。
あら、ジェリドのMk2がシャアのリック・ディアスに蹴っ飛ばされた。やっぱり、ジェリドたち……俺含む……では、シャアの相手は荷が重いよなぁ。
そう思いながら、俺はMk2のビームライフルで牽制射撃をかけた。あっけなくかわされたが気にしない。あくまで牽制なんだから。
「大丈夫、ジェリド?」
『あ、あぁ、なんとかな。援護してくれて助かったぜ』
「赤いMSということは、相手はシャアかもしれないんじゃない? 無理しないで、三人でコンビネーション組んでやったほうがいいかもよ」
『た、確かにそうかもな。でもどうするんだ?』
カクリコンの質問に、俺は少し考えて答えた。
「ジェリド、済まないけど、あのMSに近接攻撃を仕掛けて。私とカクリコンは後方から援護射撃するわ」
『無茶ぶりしてくれるぜ……』
「あら、ジェリド君、怖い?」
『そんなこと誰も言ってないだろ! やってやるよ!』
そして再び戦闘再開。ジェリドのMk2がリック・ディアスにビームサーベルで切りかかるが、相手はそれを軽くよけて反撃を返そうとする。だがそれは、俺がビームライフルによる援護射撃で牽制した。そこにカクリコンがビームライフルで追撃をかけるが、それはこれまた簡単にかわされた。うん、知ってた。
その後も、コンビネーションが功を奏して、ギリギリながらもなんとかシャアと戦えていた。うまく戦えていたが、これは俺に私たちのコンビネーションがうまいってわけじゃなく、シャアに本気で戦う気がないからじゃないかって気がする。彼の目的はこの機体……ガンダムMk2の奪取のためのはずだし。彼が本気だったら、三機ともやられていただろう。
だが、その戦いも終わる時がきた。コロニーの宇宙港のほうから、もう二機の黒いリック・ディアスがやってきたからだ。
「ここまでかな。さすがにペーペー三人と、シャア含めた手練れ三人じゃ無理ゲーすぎるね。ここは一度撤退しましょう」
『に、逃げるのか!?』
「無理してやられるわけにはいかないでしょ、カクリコン。コントロールからも『無理してMk2を奪われることのないように』って言われてたし」
『ちっ……わかったよ。ところで、無理ゲーってなんだ?』
ジェリドの問いには答えず、俺はMk2のビームライフルで牽制射撃をかける。その俺の横をジェリド機とカクリコン機が通り過ぎたのを確認し、俺もMk2を後退させた。しかし。
『うわ、しまった。推進軸が!?』
「ええええ!?」
なんとジェリド機が突然、バランスを崩したかと思うと、基地のほうに墜落していった。こんなところで歴史の修正力を働かせないでえええええ!?
俺はあわてて、墜落していくジェリド機を追いかけた。
* * * * *
そして追いついた俺だが、そこで信じられないものを見た!
あのカミーユが、ジェリドがMSから降りた隙を突き、Mk2に乗り込んで動かしたではないか! カミーユとジェリドはお互い謝罪して和解したから、カミーユのMk2奪取イベントは起きないと思ってたのに!?
SPか? SPがカミーユに何かしたのか?
その考えは正しかったようだ。カミーユのMk2が、足元のSPにバルカンを斉射したのだ。ジェリドのほうに向けないのは、彼のせめてもの良心ってところか。……一瞬、あのSPをしばいてやらないと、って思ったが、このバルカンでいい薬になっただろう、と思い直す。
何はともあれ、今頃コクピットの中で、「ははは! 怖いだろう!!」と愉悦に浸ってる悪い子にはお灸をすえてやらないといけないだろう。
俺はあえて、カミーユのMk2に当たらないように(もちろん、ジェリドとSPにも当たらないように)注意して、バルカンポッドを放った。
カミーユ機は驚いたような動きをすると、こちらのほうに機体を向けた。
「君、気持ちはわかるけど、バルカン撃たれた人の気持ちになったことはあるの!?」
『え、あ、あの時のお姉さん!?』
もう少しおしおきしてやりたいところだったけど、それは無理だったようだ。ちょうどそこに、シャアの赤いリック・ディアスと、後一機の黒いリック・ディアスがやってきたからだ。俺は舌打ちすると、Mk2を後退させた。それと合わせるように二体のリック・ディアスは、カミーユの乗ったMk2を連れて、宇宙港のほうに撤退していったのだった。
* 次回予告 *
Mk2を取り戻すために実行される非道な作戦。
「なんだその反抗的な口は!」
少女は、その作戦で流れる刻の涙を防ぐため、微力を尽くす。
「撃っちゃダメ! 中に人が入ってる!」
だが、その努力をあざ笑うように蒼い弾道が走った。
「まぁいい……。こうなるのも、少しは予想していた」
次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』
第2話、『蒼い弾道』
刻の涙は、止められるか?
ジェリド君にはどのようなことになってほしいですか?
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原作通り戦死でよろし
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敵だけど生存
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なんと味方化!