ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより   作:ひいちゃ

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スードリー編#05『青海の脱出』

「前の戦いで戦力を消耗し、使えるMSも少尉のアッシマー・アーグラと、フォウ少尉のサイコガンダムのみか……」

「申し訳ありません。私が作戦を提案しましたのに……」

 

 スードリのブリッジで、苦渋の表情を浮かべているベン・ウッダー大尉に、俺……カレル・ファーレハイトがそう謝罪すると、彼は苦笑して許してくれた。

 

「いや、少尉のせいではない。エースパイロットの存在が大きすぎた。例え最初の作戦通り市街戦に及んでいたとしても、こうなっていただろう」

「ありがとうございます……。それで補給は?」

「打診してみたが、向こうからは『アウドムラを潰すまで補給はなし』だそうだ。ティターンズは、我々を捨て駒にして、使い潰すつもりらしいな」

「そうですか……」

 

 ニューホンコンの戦いで、スードリ隊のMSは、俺のアッシマー・アーグラとサイコガンダム以外、破壊されたり損傷したりして戦うことができなくなっていた。弾薬もエネルギーもあまり残っていない。

 

 ティターンズにとっては、そんなスードリ隊はもはや利用価値がない、ということか。戦力を消耗しつくした壊滅寸前の隊をけしかけて、それでアウドムラが潰せればよし、ってところだろう。ティターンズ……というか、あのバスクの外道ハゲらしい考えだ。

 

「とすれば残るは特攻しかあるまい。非戦闘員やパイロットたちを退艦させ、このスードリを弾丸として、アウドムラにぶつける」

「とはいえ、素直に特攻するのでは、私たちを捨て駒扱いするティターンズの思い通りになって悔しいですね……」

「まぁ確かにそうだな……。『褐色の姫』には何か腹案でもあるか?」

「腹案というわけではないですが、ティターンズにも一泡吹かせなくては気が済まないとは思います」

 

 これはリップサービスとかではなく、俺の本音だ。ティターンズの奴らをギャフンと言わせてやらなければ、腹の虫がおさまらない。

 

「ベン大尉まで死ぬ必要はないのでは? アウドムラをロックオンした後は自動操縦にして、ベン大尉も退艦すればいいと思いますが。ティターンズの奴らに使い捨てにされたままというのは、大尉も嫌でしょう?」

「確かにな」

「あとは……。アウドムラに無理して追いつこうとせず、彼らがティターンズの基地を攻撃しに行くのを尾行する」

「そして、アウドムラがその基地を攻撃し始めたところで、さっそうと現れて特攻をかける、か。面白いな。よし、それでいこう」

「わかりました」

 

* * * * *

 

 俺が作戦と退艦について、フォウとロザミィに知らせておこうと、居住区へ行った時のことだ。

 フォウの部屋から言い争う声が聞こえた。

 

「……嫌だ、私はもう戦いたくはない!」

「何を言っているの。記憶を取り戻したくはないの?」

 

 フォウと、彼女の調整を担当している技官、ナミカー・コーネルの声だ。

 その後も言い争いは続き、フォウはとうとう部屋から飛び出していった。

 

 俺もその後を追う。

 

 フォウはMS格納庫にいた。吊り下げられているサイコガンダムを見ながら。

 

「フォウ……」

「私はどうしたらいいかわからない……。記憶を取り戻したくないといえばうそになるわ。でも私は、カミーユとは……いえ、もう戦いは……」

 

 フォウの目から涙が一筋こぼれる。

 

「そうか……。フォウはもう、未来を見つけることができたんだね」

「え……?」

 

 俺は、フォウに顔を向けて続ける。

 

「フォウがカミーユ君と戦いたくないのは、彼と共に歩む未来を見つけたからじゃないかな?」

「カレル……」

「あなたは、カミーユ君との出会い、彼との戦いの中、カミーユ君と共に歩む未来を見出した。だから、その未来を壊したくないから、戦いを拒んだんじゃないかと思うよ」

「そうかもしれない……。でも、私は……」

「安心して。この戦いももう終わるよ」

「え……?」

 

 フォウが驚いた顔を向ける。

 

「スードリの特攻が決定したの。乗組員は総員退艦だって。そうなれば、フォウはこの隊を除隊となる。あとは、退艦後、適当なところに身を隠していればいい」

「でも……カレルはどうするの?」

「私は、まだ戦うわ。スードリを守らなきゃいけないし。ある程度まで戦ったら、その場を離脱するけどね」

「カレル……」

「さて、ロザミィにも教えてあげないと。退艦の準備、しとかなきゃダメだよ」

 

 そして俺は、MS格納庫を離れた。

 

* * * * *

 

 そして俺は、ロザミィにも退艦と特攻のことを話した。

 そして、レコアさんについていって、サイド6あたりにでも避難しているようにと。サイド6に逃げ込んでいれば、よっぽどのことがない限り、ティターンズの奴らに連れていかれることはないだろう。

 当然のことながら、ロザミィは俺と一緒じゃなきゃ嫌だと拒否したが、必ずこの戦争が終わったら会いに行くことを話して説得し、ひとまず納得させた。なおレコアさんにはあらかじめ話を通してある。

 

 そして。

 

「さて、それじゃそろそろ行きますか」

 

 アッシマー・アーグラに乗り込み、エンジンに火を入れ、発進準備を整える。

 と、スードリから発進していくサイコガンダムの姿が見えた。

 

「フォウ……?」

「私も、スードリの直掩につきます。スードリを守る気はさらさらないけど、カレルだけは守りたいから」

「……」

「カミーユと同じくらい、あなたにも死んでほしくない。お願い、一緒に戦わせて」

「……馬鹿ね」

 

 ふと苦笑する。でも彼女の声を聴いて、俺は説得するのをあきらめた。声色から、彼女の想いが感じ取れたからだ。その想いを無視することはできない。してはいけない。

 

「わかった。一緒に行きましょう」

「……はい!」

 

 そして俺は、スティックを強く握りしめる。

 

「カレル・ファーレハイト、アッシマー・アーグラ、行きます!」

 

* * * * *

 

 俺がスードリから飛び出すと、遠くでカラバがティターンズのハワイ基地を攻撃しているのが見えた。それと同時に、スードリがブースターを全開にして加速を始めた。

 俺も、アッシマー・アーグラのアフターバーナーに点火して、その後を追う。

 

 そして接近していくと、向こうもこちらの特攻に気が付いたらしい。数機のMSがこちらに接近してくる。

 間違いない。そのうちの二機は、カミーユのガンダムMk2と、アムロのリック・ディアスだ。

 

 となれば。

 

「フォウ、ガンダムMk2の下に……いえ、カミーユのところに行きなさい」

「え? でも……」

「私なら大丈夫。相手がアムロとはいえ、そう簡単にやられるほど、私は弱くはないわ」

 

 それに、親友(フォウ)の幸せのためなら、いくらでも頑張れる! 1機でも2機でもいくらでもかかってらっしゃい!ってなものだ。

 

「だから行きなさい。人の好意を無駄にすると、一生後悔するわよ」

「……はい……」

 

 そして、サイコガンダムは、ガンダムMk2に向かっていった。

 さてと。

 

「さぁ、かかってきなさい、アムロ・レイ! 二人の恋路の邪魔はさせないわよ!」

 

* * * * *

 

 そして俺は、アムロや、引き返してきたカラバのMS隊と激しい戦いを繰り広げた。特に、フォウとカミーユのいる方向へ向かっていく奴らは優先的に片端から撃ち落とす。

 

 オート制御で発射される、スードリからの対空砲火の支援を受けながら戦い続けた。

 ビームライフルで乗っているドダイを撃ち落とす。MSに変形して、ビームサーベルで飛び掛かり、一刀両断してからMA形態に戻って離脱する。

 アムロのリック・ディアスのクレイバズーカも、アッシマー・アーグラの機動性にものを言わせて、なんとか回避した。

 

 我ながらすごい戦いぶりだ。自分でもここまで戦えるなんて驚きである。

 スードリの護衛のためだけだったら、ここまで戦えただろうか?

 

「さぁ、いくらでもかかってきなさい!」

 

 もうテンションも爆上がりである。もう御大将やキャ〇様みたいに、笑いが吹き出そうである。

 でもそんな時間も終わりを告げた。

 サイコガンダムがMk2から離れ、スードリに向かっていったのである。きっと、カミーユを宇宙に返すために、ブースターを準備するためなんだろう。

 スードリのオートパイロットの設定が完了し、ウッダー大尉はすでに退艦したと報告が入っている。だからフォウが撃たれることはないと思うが、それでも心配は心配である。

 だから早くスードリに駆け付けたいのだが、アムロや他のカラバMS隊が許してくれない。

 

「もう、あんたたちしつこいのよ!!」

 

 引き続き、カラバと戦う俺。そこに。

 

(カミーユ、カレル……)

 

 フォウの声が響いた。ま、まさか!? 俺は急いでアッシマー・アーグラをスードリに向けた。

 カミーユのMk2もスードリに向かっている。

 カミーユはこちらを警戒していたが、俺がアッシマー・アーグラの機体を上下に振って、「撃たないから早く行け」とアクションで伝えると、それをわかってくれたらしく、スードリに加速していった。

 

 そして俺がスードリに近づいたころ、ブースターが上空へと発進していった。そちらのほうはうまくいったようだ。あとはフォウのことだが……。

 

 MS格納庫につくと、そこには血と、倒れているナミカー女史の姿が。

 おそらく、止めようとフォウを撃ったけど、駆け付けたカミーユのMk2にやられたんだろう、と想像がついた。でも今はそれよりもフォウのことが大事だ。

 

 サイコガンダムに駆け寄ると、ハッチは開いていた。フォウはコクピットの中で、右肩から血を流して座り込み、気絶している。

 どうやら、頭にズドン(劇場版)の結末にはならなかったようだ。それだけでも幸い。と同時に強い振動が。さらに、降下しているような感触。カラバのMS隊にエンジンをやられたんだろうか。だとすれば急がなければ。

 

 まずは止血をしなければ……。

 

「ごめんね、フォウ」

 

 気を失ったままのフォウに謝ると、そのノーマルスーツの上半身部分を脱がせ、止血処置を施し、傷口にスプレーをかけて応急処置を施す。

 

「うおおおお、火事場のクソ力ーーーー!!」

 

 そして、彼女を力を振り絞って抱き上げ、これまた全力でアッシマー・アーグラまで走る。愛機までたどり着いたころには、もう水面までかなり近づいていた。もう一刻の猶予もないーーーー!!

 

 乗り込み、機体を発進させる。水面がアッシマー・アーグラの右側面を叩き、右肩、右腕部の装甲をはぎとった。

 

「くっ……!」

 

 それでもなんとか上昇し、脱出に成功。その俺の下で、スードリは海面に激突し、大きな水柱を立てた。




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* 次回予告 *

スードリーから脱出したカレルとフォウ。
だが、ティターンズはそんな二人を逃がしはしなかった。

『スードリーごとサイコガンダムをロストしただと!? 馬鹿者、それで許されるか!!』

追っ手が迫る中、カレルは親友の幸せを守るため、再び銃をとるのだった。

「返事させてもらうわ。お断りよ!」

そして、その戦いの果てに、彼女は……。

次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』

第1部最終回、15話、『さよならフォウ』

刻の涙は、止められるか?

※次回の更新は、11/29 12:00の予定です。お楽しみに!

味方になったジェリド君。新しい愛機は何がいいですか?

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