ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより   作:ひいちゃ

18 / 36
キリマンジャロ編#03『永遠?のカレル』

 地球連邦軍のキリマンジャロ基地(実際にはティターンズの基地に近いが)に潜入し、ある部屋に入ったカミーユ・ビダンとフォウ・ムラサメ。

 その部屋で二人に銃を突き付けていたのは、茶色の髪をポニーテールにした女性だった。

 仮面をかぶっているものの、その面影は変わらない。ましてや、フォウには一目でわかった。

 

「カレル……まさかあなたが強化人間になっていたなんて……あのサイコガンダムのパイロットになっていたなんて……」

「カレルさん……」

 

 だが、カレルと呼ばれた女性は、それを一蹴して、一歩踏み出した。

 

「私はカレルではない。K……。ティターンズの意思の代行者である」

「カレル、私がわからないの!? フォウよ! フォウ・ムラサメよ!」

「知っているぞ。エゥーゴのエースパイロット、カミーユ・ビダン。そして、元ムラサメ研究所の四番目の被検体、フォウ・ムラサメ……。重要人物としてマークされているお前たちとここで出会えるとは……ふふふ、運がいい」

「カレル……!」

 

 さらに一歩踏み出そうとしたフォウに、Kは躊躇なく、銃を放った。

 銃弾がフォウの肩をかすめ、血が少し飛び散る。

 

「うっ!」

「フォウ!! カレルさん、あなたは……!」

「無用な殺生はしたくない。警備兵が来るまでじっとしていてもらおうか」

「カレル……!」

 

 と、その時だ。

 

(フォウ……)

 

 どこからか、フォウの意識に優し気な声が届いた。懐かしい、あの声だ。

 

「え……?」

「どうした? 私の顔に何かついているか? ふふふ、おかしな奴だ」

 

 と、その時。

 

 ズズーーーーンッ!!

 

 激しい揺れが部屋を襲った。近くで爆発があったのだろうか?

 その拍子に、カレルが足を取られて仰向けに倒れてしまう。

 

 後頭部を近くの棚にぶつけてしまう。

 

「ぐっ!」

「カレル!!」

 

 駆け寄るフォウとカミーユ。そこに。

 

「来るな!」

「え……?」

「すまん、今はいつもの口調で話してる余裕がないんだ。今のショックで、なんとか身体の主導権を取り戻すことができた……。一時的にだろうが……」

 

 男口調で話すカレル。だが、フォウには直感でわかった。あのカレルだと。自分の親友のカレルだと。

 

「カレル、元に戻ったの!?」

「あぁ……。だが、長くはもたない……。だから、俺が身体の主導権を取り戻している間に……くっ……!」

「でも、あなたを置いていくなんて……」

「心配ない……。俺にはサイコガンダムがある……。いざとなれば、それで脱出するさ……。うっ、くっ……逃がすか……。それまで、俺が身体の主導権を握っていられれば、だけど……くっ……」

 

 頭を押さえて苦しむカレル。洗脳された人格に戻りつつあるのだろうか。

 

「早くいけ……。俺が俺でいる間に……。うっ、ぐっ……!」

「カレル……」

「カミーユ……フォウのこと、頼んだぜ……」

 

 そのカレルの願いを聞いて、カミーユがうなずく。

 

「わかりました……。どうかご無事で……行こう、フォウ」

「カミーユ……でも……」

「大丈夫。彼女はそう簡単に死ぬ人じゃない。いつか助けるチャンスはあるよ。さぁ」

「……うん……」

 

 その部屋……調整室から駆け出す二人。そして。

 

「くっ……亡霊は亡霊らしく、大人しくしていればいいのだ。逃がすか、カミーユ・ビダン、フォウ・ムラサメ……!」

 

 と、そこで部屋に備え付けられたインターフォンが鳴る。それをとるカレル。

 

「何? ジャミトフ閣下が脱出される? わかった。これから直掩に向かう」

 

* * * * *

 

 カミーユとフォウが部屋から脱出する少し前。

 

 クワトロ・バジーナことシャアは、ジャミトフ、そしてその護衛兵と対峙していた。

 

「赤い彗星も地に落ちたものだな。こんなところで終わりを迎えるとは」

「くっ……。だが、私が力尽きたとしても、ここでお前を倒せば希望は残る。あとは若い者たちに任せればいい」

 

 だが、そのクワトロの言葉を聞いたジャミトフは、再び高笑いをあげた。

 

「はっはっはっ! やはり地に落ちたようだな。表面だけしか見ることができず、その裏に気づくことすらできぬとは」

「なんだと……?」

「お前はもう少し賢明だと思っていたのだが……残念だよ」

 

 と、そこに。

 

「クワトロ大尉!」

 

 横から銃撃。護衛兵の一人が射殺され、残りの護衛兵とジャミトフがそちらに向きなおる。

 その隙にシャアは物陰に隠れ、護衛兵に銃撃を行う。

 

「くっ……。どうやら遊びすぎたようだな。命拾いしたな、赤い彗星」

 

 そう言って、ジャミトフは残りの護衛兵と、シャトルポートへ走っていった。

 

 それを見送るシャアのもとに、カミーユとフォウが駆け付ける。フォウの左肩に応急処置がされているのは言うまでもない。

 

「カミーユ、無事だったか。フォウも」

「はい!」

「よし、脱出しよう。外に出て、ジャミトフのシャトルを追うぞ!」

「わかりました!」

 

 そして三人で、洞窟の出口に向かって駆け出していく。

 

* * * * *

 

 物陰から発進していく百式とZガンダム。それと同時に、基地からシャトルが発進した!

 

「逃がすか、ジャミトフ!」

 

 シャトルを撃墜しようと、それに向けて突撃する百式とZガンダム。そこに。

 

「ジャミトフ閣下脱出の邪魔はさせない!」

 

 同じく発進していたサイコガンダムが立ちはだかった!

 

「くっ……!」

 

 サイコガンダムが胴体部の拡散メガ粒子砲を発射する。それを百式とZガンダムはかろうじてよけた。

 しかしそれは致命的な隙となった。その間にシャトルは百式のビームライフルの射程外まで上昇していた。

 百式が苦し紛れにビームライフルを撃つも、それはむなしくそれるだけだ。

 

「逃がした……か……。だが今は……!」

 

 そしてそのまま、アムロのディジェも加わり、百式、Zガンダム、ディジェは、サイコガンダムとの戦いに移行した。

 

 サイコガンダムが右腕の五連ビーム砲を放ち、百式がそれを回避する。ディジェがクレイバズーカをサイコガンダムに命中させ、サイコガンダムがそのディジェを叩き落そうと拳を振るう。

 

 そんな中、カミーユとフォウは、サイコガンダムの攻撃をかわしながら、説得を続けていた。

 

「カレル、元に戻って!」

「カレルさん!!」

 

 だがカレルは、頭痛に苦しめられながらも、攻撃の手を緩めない!

 

「うるさい! 私は『K』……。ティターンズの意思を遂行するもの……カレルではない!!」

 

 そしてさらに叫ぶ。

 

「うるさい! お前は私ではない! 引っ込んでいろ、『カレル・ファーレハイト』!!」

 

 なぜか、その目からは涙がこぼれ落ちていた。

 

* * * * *

 

 それは悪夢だった。

 

 俺の見ている前で、俺が動けないまま、俺はティターンズの尖兵として戦い続けた。

 俺は冷徹に、サイコガンダムを駆り、カラバと戦い続けた。

 

 戦いの中で、街の一部が爆発し、命を落とした人や、親の遺体にすがりついて泣く子供を見たときには、もう張り裂けそうで、吐き気を催した。身体の主導権を握られているので、吐くことはできなかったが。

 

 それからも、この体の本来の持ち主である『カレル・ファーレハイト』はただ冷徹に戦いを続けた。

 

 アウドムラに迫った時、フォウの姿を見て、なんとか撃つのを止められたのは本当に僥倖だった。

 

 アッシマー・アグラ墜落の影響で、『俺』と『カレル』の人格が一時的に分離し、『カレル』に施された洗脳の影響が『俺』にまで及ばなかったのは幸いだったが、それは慰めにもならない。カレルの体は、洗脳された『カレル』の意思のまま戦いを続け、俺はそれを意識の奥底から見ていることしかできなかったのだから。

 

 キリマンジャロで、フォウとカミーユと再会し、その時に一時的に身体の主導権を取り戻せたのは本当に幸運だった。この手で、二人を殺すという最悪の結末を迎えずに済み、その二人と再会することができたから。

 

 そして今、カレルは、俺の制止も介さず、アムロ、シャア、カミーユ、そしてフォウと戦い続けている。

 

 俺がその戦いを止めようと、『カレル』の人格を非力ながらも抑えようとしていたその時。

 

 俺は聞いた。

 

 『カレル』の心のどこかが泣いているのを。

 その泣き声を俺は聞いた。

 

 あぁ……そうか。

 

 『カレル』は全てを洗脳されたわけではなかった。

 

 『カレル』も心を痛めていたのだ。自分の本意ならず、洗脳により、己の手を血で染めてきたことを。

 後悔していたのだ。戦いの犠牲者を生み出していったことを。

 いや、もしかしたら、本来戦いが嫌いだった『カレル』は、ここまでの戦いでも、心を痛めていたのではないだろうか。例えそれが刻の涙を減らすためであっても。

 もしかしたら彼女があそこまで洗脳されていたのは、そのせいもあったのかもしれない。

 

 それを悟った俺は、抑えるのではなく、優しく『カレル』を背中から抱きしめた。

 

―――済まなかったな。ここまで、お前を苦しめてしまって。お前のその心の痛みを慮ってやれなくて。

―――……。

―――そのお前の心の痛み、血の涙を一番わかってやらなきゃいけないのは、俺のはずなのにな。

―――……さん……。

―――もう、お前が一人で苦しむ必要はないんだ。俺が、お前の罪も苦しみも、半分受け持ってやる。だからもう、一人で全てを抱え込み、傷つくことはないんだ。

―――ありがとう……。

 

 そして俺たちは再び一つになった。理解しあい、和解できた影響か、『カレル』が身に着けていた仮面……洗脳が砕け散ったのが感じられた……。

 

* * * * *

 

 サイコガンダムの動きがそれまでとは変わった。

 

 戦う意思がないかのように、迎え撃とうという構えを解き、ひざまづいたのだ。

 

 そして通信が入る。

 

「私はもう戦う意思はありません。カラバに投降します」

 

 それを聞き、カミーユもフォウも目を潤ませる。

 

「カレル……!」

「カレルさん……!」

 

 そしてクワトロ……シャアからの返事。

 

「了解した。動力を切って、ハッチを開けてくれ」

「わかりました……」

 

 だがそこに。

 

「見つけたぞカミーユ! カクリコンとマウアーの仇、取らせてもらう!!」

 

* * * * *

 

「私はもう戦う意思はありません。カラバに投降します」

 

 再び、身体の主導権を取り戻した……いや、和解した『カレル』から主導権を譲ってもらった俺は、そう通信を入れた。

 その返事はすぐに来た。

 

「了解した。動力を切って、ハッチを開けてくれ」

「わかりました……」

 

 安堵のため息をついて、俺はサイコの動力炉のスイッチを切ろうとした。

 その時。

 

「見つけたぞカミーユ! カクリコンとマウアーの仇、取らせてもらう!!」

 

 前世と現世の両方、そのどこかで聞いた声が通信機から聞こえてきた。

 声のしたほうにサイコガンダムを向けると、そこには、こちら……正確にいえばZガンダムに突っ込んでくるバイアランの姿が。

 

 じ、ジェリド!! まさかここにまでやってくるなんて! って、原作でもフォウが正気に戻ってきて、ハッピーエンドかなって時にやってきたよね君!

 というか、俺が洗脳されていた間に、カクリコンとマウアーをカミーユにやられてたのね。というか、その気持ちはわかるけど、こんな時に出てこなくていいだろうに! 空気嫁馬鹿!!

 

 何はともあれ、フォウとカミーユ(大切な親友とその彼氏)をやらせはしない! 俺は思わず、サイコガンダムをバイアランの前に飛び出させていた。

 

* * * * *

 

「裏切者め! 立ちはだかるなら、まずはお前から血祭にあげてやる!」

 

 ジェリドはそう言って、バイアランのビーム砲をサイコガンダムの頭部に向ける。

 しかし、トリガーを引こうとしたその時。

 

「!?」

 

 ジェリドの頭に飛び込んでくるイメージ。それは、ジェリドがよく知っている女性の姿だった。

 

「な、なぜあいつの姿が……くっ……!」

 

 だが、指は今にもトリガーを押そうとしている。ジェリドはとっさに照準を頭部ではなく、胴体……三連拡散メガ粒子砲に向ける。それと同時にビームが放たれ、砲口に直撃。大爆発が起こる。

 

「ジェリド!!」

 

 戸惑うジェリドのバイアランに、Zがビームライフルを連射し、その一発が、バイアランの右腕を吹き飛ばす。

 

「くっ……!」

 

 そしてバイアランは、そのままどこかに撤退していった。

 

* * * * *

 

 全天周スクリーンが、次々と画像が乱れ、消灯していく。コンソールのダメージ画面が次々と真っ赤になっていく。

 もうじき、サイコガンダムは俺もろとも爆散するだろう。

 

 やれやれ、脳をやられて即死(フォウ)ルートは避けられたのはいいが、結局は、爆発に巻き込まれて死亡(ステラ)ルートか……。

 

 通信機からは、フォウとカミーユの、脱出を懇願する声が聞こえてくる。だがダメなんだ。今のダメージで、ハッチが開かなくなってしまった。脱出はほぼ不可能だろう。

 

 まぁ、カミーユとフォウを助けられただけでもよかったかな……。

 

 俺はそう思い、あきらめの気持ちで目を閉じた。

 

 その時、俺の頭にあることが浮かんだ。

 それはロザミィことロザミアと交わした約束。

 

 この戦争が終わったら、必ず会いに行く。

 

 そうだ! その約束を果たすまで死ぬわけにはいかない!

 いや、フォウやロザミィ、俺と親しい人たちを悲しませないためにも、俺は生きなければならない!

 

 だがどうする……? ハッチは開かないんだ。

 サイコのボディが爆散するのも秒読み段階、というギリギリの状態で脱出方法を模索している中、俺は思い出したことがあった。

 

 そうだ、ZZ(機動戦士ガンダムZZ)の作中で、サイコガンダムMk2のボディがやられた時、プルツーは頭部を切り離して難を逃れたはず! もしかしたら、このサイコガンダムにも!!

 

 俺はカレルとしての記憶を探りながら、コンソールを探してみる。すると……あった!

 

 一か八か! 意を決して、俺は拳を分離ボタンにたたきつけた。

 

* * * * *

 

 爆発を繰り返すサイコガンダム。その時、その頭部が突然、勢いよく胴体から分離したのだ。

 それと同時に、残された胴体は激しい爆発を起こして爆散した。

 

「カレル!」

「カレルさん!!」

 

 カミーユとフォウの乗るZは、急いでそのサイコガンダム・ヘッドを追う。

 その三人を見て、クワトロ……いや、シャアとアムロが互いに言葉を交わす。

 

「過ちを繰り返さずに済んだな……」

「あぁ。そうでなければ、とても人類に希望など持てんよ」

 

 その彼らの背後で、キリマンジャロ基地は激しい炎を発して、大爆発するのだった……。

 

 




ただいまファンアート募集中です!

* 次回予告 *

カラバは地球連邦の議会を制圧し、シャアは時代が変わる狼煙を上げるため、ダカール演説に挑む。

「さぁ、どこからでもかかってきなさい! 演説の邪魔はさせないよ!!」

その演説の声が流れる中、カレルは戦いの中、忌まわしい前世の因縁と再び相まみえるのだった。

「あいつの動き、まさか……!」
『カレルさんも、あいつを知っているんですか?』
「うん、詳しくは言えないけど……」

次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』

第19話『ダカールの決意』

刻の涙は、止められるか?

※次の更新は、12/11 12:00の予定です。

味方になったジェリド君。新しい愛機は何がいいですか?

  • ガブスレイ
  • バイアランカスタム(もどき)
  • ガンダムMk2
  • ネモ
  • メタス
  • オリジナル機体
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。