ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより   作:ひいちゃ

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グリーンノア2編#02『蒼い弾道』

 色々な偶然の末、ガンダムMk2を反地球連邦組織エゥーゴに奪われてしまった。

 なので早速、それを取り返すためのブリーフィングが行なわれることになった。

 だが俺……カレル・ファーレハイト少尉は、あまり乗り気ではなかった。なぜなら……。

 

「Mk2奪取犯の一人、カミーユ・ビダンの母であるヒルダ・ビダンを人質に、Mk2の引き渡しを要求する、ですって……!」

 

 説明を受けた俺の同僚、エマさんことエマ・シーンがそう絶句する。だが言い出した当の本人、俺たちの上司バスク・オムは悪びれもなくうなずいて言い放った。

 

「人質にではない。ヒルダ女史とMk2との交換を持ち掛けるのだエマ少尉」

 

 同じことではないかと思うのだが。しかもこのハゲ親父、しまいには用済みとばかりに、そのヒルダ女史をジェリドに殺させるんだから、悪辣すぎるというかなんというか。

 

「ファーレハイト、貴様はどう思う?」

 

 と、そこでバスクが俺に話を振ってきた。

 

「……なぜに私に聞くんです?」

「反抗的で不服そうな雰囲気を発しているからだ」

 

 ……ごもっとも。俺としてもそんな非道なことは御免こうむりたい。

 

「私も乗り気ではありませんね。非道とかそういうのではなく、エゥーゴはただの小さな抵抗勢力でしょう? そんなのに、人質作戦なんてティターンズの名誉を損ないかねないことを仕掛けるのは割が合わないんじゃありませんか? しかも、それで得られるのが試作とはいえMS1機だけなんて」

 

 本当はずばりと言いたいことを言ってやりたいのだが、原作を視聴し、さらに転生から一週間、彼の下で働いてきた俺としては、そんなことを言ってやっても聞く耳持たないし、反対者を殴ってでも強行するだろうというのはわかっている。

 だからできることは、こんな風にやんわりと別の切り口から反対することと、あとは、悪い結果にならないように任務の範囲内で頑張ることぐらいしかない。

 

「まぁ、命令とあれば仕方ありませんけどね。どうせ私たちが反対してもやるんでしょう?」

「なんだその反抗的な口は!」

 

 ……修正された。なんか理不尽だ。

 

* * * * *

 

 ともあれ、作戦(?)は決行された。俺とジェリド、カクリコンは自分用のハイザックで、母艦であるアレキサンドリアの周囲で警戒にあたっている。残り一人、エマさんは今頃、エゥーゴの旗艦・アーガマに赴いて、交渉にあたっている。

 

 やがて、アーガマからMk2と赤いリック・ディアスが発進してきた。それと同時に、アレキサンドリアから一個のカプセルが射出される。まず間違いなく、ヒルダ女史が閉じ込められたカプセルだろう。

 

 そしてやはりというべきか、なんというべきか、ジェリドのハイザックが、そのカプセルに向けて狙いを定めたではないか! 俺は思わず叫んでいた。

 

「撃っちゃダメ! 中に人が入ってる!」

『え!?』

 

 驚くジェリドの声。そしてハイザックがマシンガンを発射するが、動揺したからか、ジェリドがわざと照準をずらしてくれたからか、弾がカプセルに当たることはなかった。

 

* * * * *

 

「ファーレハイトとメサめ……。あとで修正してやる!」

 

 アレキサンドリアのブリッジで激昂するバスク。だがすぐに思い直し、艦長席に着きなおす。

 

「まぁいい……。こうなるのも、少しは予想していた」

 

 ブリッジクルーは前方を注視していて、誰も気づかなかった。

 

 バスクが邪悪な笑みを浮かべていたのを。

 

* * * * *

 

 幸いにも、ジェリドがカミーユ母ことヒルダ女史を射殺することは避けられた。本当によかった……。

 そのカプセルに、赤いリックディアスが接近していく。

 あとは、手はず通り、リックディアスがカプセルを回収し、ガンダムMk2がアレキサンドリアに着艦すれば取引は無事に終了となる。色々言いたいことはあるけど、犠牲が出ずにすべてが終われば、とりあえずは万々歳だ。

 

 だが!

 

「!?」

 

 どこかからビームが発射されると、それはカプセルを飲み込んで、塵すら残さず消滅させた!?

 俺はあわてて、ハイザックをビームが飛んできたほうに向けた。

 

 そこには、小惑星に隠れて、一機の濃紺のハイザック・カスタムがビーム・ランチャーを構えていた。そのハイザック・カスタムは、こちらをあざ笑うかのように敬礼すると、どこかへ飛んで行った。

 

 あのはげえええええええ!! 俺が邪魔したり、ジェリドが外すことを見越して、狙撃兵を伏せさせていたな! そんなにヒルダ女史を殺したいのか? 人を殺すのを楽しみたいのか!?

 

 俺は激情と嫌悪感と怒りを抑えるのにかなりの労力を費やさざるを得なかった。いや、それよりも。

 

「……っ!!」

 

 俺は思わず、コクピットに備え付けてあるエチケット袋を取り出すと、その中に嘔吐した。

 

 それと同時に、俺の心の中にも、悲痛な悲鳴のようなものが……聞こえたような気がする。

 

 ヒルダ女史の死はアニメでも見ていたが、やはりこうして生で見ていると結構きついものがある。生々しさが当社比数倍というか。ましてこの体は女性だからな。

 

 吐きながら目に涙を浮かべている俺の視界の片隅に、暴れるMk2を抑えながらアレキサンドリアに連行していく、カクリコンのハイザックの姿が映った。

 




* 次回予告 *

カレルが投げかける言葉。それはカミーユに進む道を問いかける。

「ねぇ、カミーユ君。君、この戦いに参加して成し遂げたい願いはあるの?」

カミーユにとって彼女は、新しい年上の恋人か、それとも進むべきを指し示す道標か?

次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』

第3話『カレルの言葉』

刻の涙は、止められるか?

※次の話の掲載は、10/24の予定です。

味方になったジェリド君。新しい愛機は何がいいですか?

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