ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより 作:ひいちゃ
後半に突入!
俺たちボスニアは、アーガマをはじめとしたエゥーゴ主力と合流した。
カツと再会したカミーユとエマさん、ヘンケン艦長は、どこか見違えた彼を見て、とても驚いていた。『男子三日会わざれば~』とはまさにこのことか。
カツが見違えたことを受けて、カツは再びラーディッシュに配属されることに決まった。これから彼の活躍が始まるのかもしれない。
さて、戦況のほうはそれとは打って変わり、予断を許さないものになっていた。
修理を終えたコロニー・レーザーが、いよいよグラナダを攻撃すべく移動を始めたのだ。
これをどうにかしないと、グラナダはコロニー・レーザーの光に包まれ、エゥーゴは壊滅的な被害を受ける。
しかし、ティターンズの警戒は厳しく、エゥーゴの現戦力ではこれを突破できそうにない。向こうも、先のコロニー・レーザー襲撃を受けて、警戒を増し、コロニー・レーザーを守る戦力を増強させているのだ。
ではどうするかというと……。
「ティターンズに与し、コロニー・レーザーの背後に布陣しているアクシズ艦隊に、コロニー・レーザーを攻撃してもらうよう交渉……出資者は相変わらず無理難題をおっしゃる」
クワトロ・バジーナ大尉ことシャアがそう苦虫を百匹ほどかみつぶしたような顔でつぶやく。何しろ、言い方は悪いが、過去に振り、そして最近再会した時にまたけんか別れした元カノに頭を下げろというのだ。シャアが愚痴る気持ちもわかる。
まぁ、史実では結局シャアは折れ、ハマーンに対して頭を下げて彼女の嘲笑を受けることになったのだが……今回は話が変わってきているようだった。
「それで私に、ハマーンと交渉してほしい、と?」
「いや、大尉はハマーンの部下と交渉するだけでいい。あちらからは、カレル・ファーレハイト少尉を謁見相手に指定してきた」
『は?』
ブライトさんの話に、思わず、シャアと声が重なってしまった。いや、なんで俺? 俺はサイド2でハマーン、ミネバと会ってお話したくらいで、別にアクシズ上層部と交渉できるような立場ではないんだが。少尉だし。
―――もしかしたら、ミネバ様だけでなく、ハマーン様にも気に入られたのかもしれませんね。
―――いやいや、だからって、表向きとはいえ交渉相手に俺を選ぶか?
「それで、引き受けてもらえるか、少尉……少尉?」
『カレル』と脳内会話しているところで、ブライトさんに声をかけられる。まぁ、これは……。
「それしか交渉成立の手がないのでしたら引き受けます。私ごときで交渉をまとめられるかわかりませんが……」
―――謁見の時には、私は寝ていますのでよろしくお願いしますね。
おい!!
* * * * *
そういうわけで、俺とシャアは、それぞれガルバルディγと百式に乗って、グワダンへと向かった。礼儀として、ビームライフルなどの手持ち武器は持たせてないが、いざとなればバルカンがあるので大丈夫だろう。
そしてMSを降りると、アクシズの士官に案内される。
シャアは会議室に、俺は謁見室に。
謁見室が近づいてくるにつれて、ドキドキがとまらなくなってくる、やばい。
俺の意識の奥底で惰眠をむさぼっている『カレル』は、後で〆ようと思う。いや、しめ方なんかわからないが。エッチなことでもたくさん思い浮かべるか?
そう思ってるうちに、謁見室の前までついた。超立派な扉がゆっくり開くと、そこはまるで別世界のようだ。俺は謁見室は原作で見ただけだったが、こうして現実で見ると、本当にすごい。語彙力が足りないが、すごいという言葉しか思い浮かばない。はえー……。
そしてその奥には……。
「来たか、入るがよい」
玉座に座るミネバと、その横に立つハマーン。彼女に促され、俺はドキドキしながら室内に入る。
そして玉座の前まで来ると、記憶にある範囲でひざまづいて礼をとり……。
「エゥーゴのカレル・ファーレハイトと申します。謁見の機会をいただきまして恐悦至極……」
「うむ。私が、ミネバ様の摂政を務める、ハマーン・カーンである。まずは用件はうかがおうか」
「はい。詳しくはこちらにて……」
と、近寄ってきた文官に親書を渡す。それをハマーンに渡す。ハマーンはそれを一読するとうなずいた。
「なるほど。了解した。詳しいことは、そちらとの交渉によってとなるが、断ることはないであろう」
詳しい条件はこれからだが、とりあえず交渉は成立となったようだ。よかったよかった。
だけど……。
「あの……一つ質問よろしいでしょうか?」
「かまわない」
「あの……なんで、表とはいえ、交渉役に私を指名されたのでしょうか? 私は少尉でしかないのですが」
「建前から言えば、そんな深い理由ではない。シャアとのことは、まだ区切りがついていないのでな。冷静に交渉できるのが、他にそなたしかいないからだ」
「なるほど……」
下世話な言い方になるが、シャアに振られて、しかも前の謁見の時にミネバの育て方について喧嘩になったのが、まだ尾を引いているってことか。原作ではそれが元で、シャアに頭を下げさせて悦に浸る、なんてことになってたのだが。
今回それがないってことは、もしかして俺と会ったことで心境の変化があったのかな?
って、『建前は』って?
* * * * *
「……本当にいいのでしょうか……」
「ミネバ様がそうお望みなのだ。ならば遠慮することはあるまい?」
「そうだ、気にすることはないのだぞ、カレル」
「はぁ……」
俺は、グワダン内のティールームで、ハマーン、ミネバと一緒にお茶することになってしまった。
どうやら、本音は『ミネバが俺と話したがっていたから』らしい。彼女にとって俺は、年の離れたお姉ちゃんみたいな存在なのだろうか。
うわ……青っぽい髪の、ちょっとキザな青年士官……マシュマーかな? が怖い顔してこちらをにらんでるよ。ライバルだと思われたのか? やめてくれ、俺は(身体は)女なんだよ。
そしてこんな中でも、『カレル』は相変わらずぐっすり眠ったままだ。さっきから心の中で声をかけてるけど、全然反応がない……やっぱり後でイヤンなことを想像して〆るか。
そんなことを想いながら、ハマーンとたわいもないことを話したり、ミネバにアニメの話をしたり、遊んだりしてすごした。やがて。
「ふわぁ……」
「ミネバ様、もうそろそろお休みの時間でございますよ、行きましょう」
「うむ。またな、カレル……」
そういって、ミネバは女官に連れられて去っていった。さて……。
「あ、それじゃ、私もそろそろ……」
「まぁ待て。お前にはまだ聞きたいことがあるからな」
「は?」
するとハマーンは、視線で人払いを命じた。文官や武官、マシュマーに、ニーやランスらしい軍人まで、不満そうにしながらも部屋を去っていった。
* * * * *
そして。
「単刀直入に聞こう。お前にはどこまで見えている?」
「!?」
俺がこの世界の歴史について知っていることに気づかれている!? 思わず、背筋を汗が伝う。
俺の底の底を見抜くような眼をして見つめてくるハマーンの表情からは、確信のようなものが感じられる。もう、俺のことは確信を持っているってことだろう。さすがハマーンというべきか……。
……これはごまかしても無駄なようだ。
「……とりあえず、この戦争……私はグリプス戦役と呼んでいますが……の結末までは」
「そうか。私には、その先まで見通せているようにみえるがな」
「勘弁してください。それに、今のこの状況は、私が見通しているものと、いくらか変わってきてますし」
そう。ここまでの流れは史実(原作)通り進んでいるように見えるが、フォウ、ロザミィが生還したり、ボスニアがエゥーゴに合流したりと、細かいことは変わってきている。
さらに言うと、ハマーンの言う通り、原作を見てきた俺は、この先の流れ……ハマーンの行く末までも知っている。だが、『ハマーンは最後にはジュドーと出会い、彼との激突の果てに散る』なんて教えようものなら、俺の首が飛びかねない。
それに、未来を知ってることは、この世界では危険すぎる。俺のその知識を危険視した奴らに命を狙われたり、無理やり利用しようと洗脳しようとしたり……。そんなことは御免こうむりたい。
……って、そういえば目の前に、『俺が未来のことを知っていること』を知っていて、それを脅威に思う可能性が高い人がいるのだが……。
また一筋、背筋を冷や汗が流れた。
「安心しろ。ここで殺すつもりはない。お前を殺すつもりなら、わざわざこんなところでお茶などせん」
「そうですか……少しは安心しました」
確かにその通りだ。謁見して、さらにティータイムに招いた客を暗殺したりすれば、それはハマーンとアクシズの不名誉になる。暗殺するのなら、別のシチュエーションでやるだろう。あるいはMS戦の末に倒すか。
「この先の流れについても聞くつもりはない。どんな未来が待ち受けていようと、己の道は己で切り開くのが私の信念だからな」
「なるほど……」
やっぱりハマーンはハマーンだった。確か、ZZでのジュドーとの決戦でも、似たようなことを言ってたしな。
「だが、そのうえであえて聞きたいのだが……お前は私とシャアの関係について何か思うところがあるのか?」
「ふぁ!?」
あ、変な声が出てしまった。なんで急にそんな……って、あぁ、そうか。サイド2で会った時、別れ際にシャアのことについて何か言ったからか。
でも、『己の道は己で切り開く』と言っている彼女が、そんなことを言っているってことは、俺の助言を受けてでも、シャアとのことを解決したいってことなのだろうか。
それなら、こちらも思っていること、考えていることをすなおにぶつけるべきだろう。
俺は、紅茶を一口すすってから口を開いた。
「まぁ……しいて言うなら、どちらも本音をぶつけあうべきだろ、と」
「ファ!?」
あ、ハマーン様も変な声を出した。この人もこんな声出すことあるのね。
それはおいといて。
原作では結局、よりを戻すことなく、それぞれの結末を迎えた二人だったが、原作以外では、和解したことがないわけではない。具体的に言うならスパロボがそれだ。
俺が覚えているだけでも、F完結編、第三次Z(『自軍』と和解して、仲間になる作品は他にもあるが、明確にシャアと和解したと思われるのは、覚えている範囲ではこの二本だ)。これらの作品では、ハマーンはシャアと和解し、自軍入りしている。第三次Zでは、一度仲がこじれたりしたが。まぁ、あれはシャアがちゃんとハマーンに説明しなかったのが悪い。もげろ。
さて、それらの作品に共通しているのは、シャアが自分の気持ちを、ちゃんとハマーンに伝えているところだ。その結果、ハマーンも、自分の中に秘めたものを吐き出し、和解して自軍入りするに至る。
……自軍入りしたハマーン様は、テンション高い娘にドン引きしたり、シャアにデレデレになったり、動物の着ぐるみに癒されかけたあげく、大人げなく激昂したりと、なんか少しポンコツなところが出てくるが……まぁ、それは密に、密に。
それはともかく、そのように和解した事例があるということは、史実でも和解が不可能ではないということだ。
だからスパロボと同じく、お互いに腹を割って話し合えば、二人の和解は不可能ではないのではないかと思うのだ。
「お互いが腹の中を全て出して話し合うのは、和解において大切なことですからね。本心でシャアに戻ってきてほしいと思うなら、そうするべきです」
「ズケズケという……俗物め」
「俗物というのは否定しませんけど、俗物だって思うところはあるし、俗物がいるから世の中は面白いんですよ?」
あなたの中の人が言っていたことですけどね、と心の中で思う。
そう言ったところで、ハマーンは苦笑を浮かべた。苦々しいながらも、琴線に触れるものがあったようだ。
「確かにお前は俗物だが、不思議と嫌いではないな」
「恐縮です」
そう言葉を交わしてハマーンは立ち上がった。俺も一緒に立ち上がる。
その彼女からは敵意はほとんど感じられなかった。むしろ友愛の情を感じる気がする。
ハマーンに気に入られて、喜ぶべきか、悲しむべきか迷うところだけどな。
* * * * *
そして俺たちは、交渉を終えて、グワダンを後にした。
その途中、シャアの女関係の色々にちょっとむかついた俺は、軽くガルバルディを百式にぶつけてやった。
「……? なんだ、ファーレハイト少尉?」
「大尉はもうちょっと、女性との付き合いを勉強すべきです」
「……?」
そしてそのまま、俺たちはアーガマへと帰還していった。
TSしたとねりさんより、ファンアートをいただきました!
カレルの線画です。ありがとうございました!
【挿絵表示】
そして引き続き、ファンアート募集中です!
ルブラ君の専用機の名前が決定しました!
結果は……
オル・トロス 116 / 24%
ノートゥング 99 / 21%
ヒュドラー 188 / 39%
その他 79 / 16%
で、見事ヒュドラーに決定いたしました! ぱちぱちぱち。
ルブラ君がヒュドラーに乗ってくるその時を、どうぞお楽しみに!
投票や、名前の提案をしてくれた方々、本当にありがとうございます!(平伏
それでは次回予告です。
* 次回予告 *
ハマーンの協力を得たエゥーゴは、コロニー・レーザー発射を阻止するため、行動を開始する。
その戦いの中、カレルはハマーンの強かさに舌を巻くのであった。
「いずれ、我々がこれを使うこともあると?」
「察しがいいな。その通りだ。我々が使うもよし、さらにエゥーゴから条件を引き出すための交渉材料としても使えよう」
次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』
第26話『バック・アタック』
刻の涙は、止められるか?
次の更新は1/1 12:00の予定です。