ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより   作:ひいちゃ

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さぁ、いよいよ終章、グリプス2決戦ですぞ!


終章#01『ジョン・コーウェン』

 ゼダンの門での戦いを終え、再編中のエゥーゴ艦隊。

 その旗艦アーガマでは、今後の戦略に関する会議が開かれていた。

 

「コロニー・レーザーにティターンズ艦隊を引き込み、レーザーで一気にせん滅する……か。確かに成功すれば一気に勝利をつかむことができるが……」

 

 とアーガマ艦長、ブライト。

 それを聞き、クワトロ・バジーナ大尉ことシャアもうなずく。

 

「わかっている艦長。ハマーンからコロニー・レーザーを譲り受ける必要があるし、それがうまくいっても、発射準備が整うまで持ちこたえることができるかどうかも問題だ。でも勝つにはこの手しかない」

「それはわかっている。だが実質問題、ティターンズとエゥーゴ艦隊の戦力差は絶望的だ。これを埋め合わせることができなければ、作戦は机上の空論に成り下がってしまう。大尉には、何か腹案があるのか?」

「あぁ。バスクやシロッコから離脱したティターンズの良識派の力を借りようと思う」

「奴らの力を?」

 

 シャアが言う良識派とは、ティターンズ前総帥ジャミトフ・ハイマンが暗殺された後、バスクたちの指揮下に入るのを良しとせずに主力から離脱した、T3部隊をはじめとする艦隊のことだ。彼らは今、かつてデラーズ・フリートが拠点にしていたという暗礁地帯、茨の園に潜伏しているという。

 

「彼らの力を借りれば、なんとか持ちこたえることはできるだろう。それでもギリギリの線だがな。だが、我々だけで戦うよりははるかにマシだ。ハマーンの元へは、私とカレル少尉が行こう」

「へ?」

 

 クワトロ大尉ことシャアの言葉に、ただ仏像のように会話を聞いていた俺……カレル・ファーレハイトは思わず、間抜けな声を出してしまった。いや、なんで俺も? 俺はただの少尉なんだけど。

 

「ハマーンはどうやら、少尉にご執心のようだからな」

 

 と、シャアが意地悪な笑みの形に唇をゆがめた。……え、シャア。もしかして俺がハマーンとミネバに気に入られてるのに嫉妬してるんディスカ!?

 まぁ、それは置いといて……。

 

「わかりました。私で役に立つかわかりませんが」

「決まりだな」

「だが、もう片方の良識派との交渉のほうはどうする? 信望があり、良識的で反ティターンズというかなり厳しい条件の交渉人が必要となるが、エゥーゴにそんな者は……」

 

 確かにその通りだ。ブレックス准将は既にこの世にはいないし、シャアは俺と一緒にグワダンへ行く。ブライトさんは(失礼だが)良識派との交渉にあたるには役不足だし……。

 だが、シャアは会心の笑みを浮かべた。

 

「それについては心配ない。事前に目星をつけ、レコア少尉に見つけてきてもらっている……来たようだ」

 

 そのシャアの言葉とともに、レコアさんと共に、ブリッジに入ってきたのは……。

 

「こ、コーウェン中将!?」

 

 コーウェンと言っても、某スーパーロボに出てくる人類やめた化け物のことではない。

 何はともあれ、俺はこの戦いとは無関係と思っていたかの人が入ってくるのを見て、思わず声を出して驚いてしまった。

 

 連邦軍の軍服を着た、褐色の肌を持つ武骨そうな軍人。

 ジョン・コーウェン中将。

 

* * * * *

 

 ジョン・コーウェン中将は、今から約4年前。ガンダム0083に登場した人だ。

 『ガンダム開発計画』を主導し、機動性と運動性重視の1号機、核装備というとんでもない機体の2号機、そしてオーバーテクノロジーな化け物機体の3号機の開発に関わった人だ。

 だが、ジャミトフとの政争に敗北、デラーズ紛争の責任を取らされる形で左遷、フェードアウトしていった。

 

 その後は語られなかったから、もしかして死んだのかと思っていたが、まさか生きていたとは。

 

「私を知っていてくれたのか。今はただの少将だよ」

 

 そういうコーウェン中将改め少将に、ブライトさんも困惑しているようだった。

 その彼と俺、そして他の面々に、レコアさんが説明する。

 

「コーウェン少将は左遷された後、サイド5の基地司令になっていたそうです。それを探し当てたあと、コンタクトを取りまして……」

「そういうわけだ。私自身、ジャミトフには煮え湯を飲まされたし、奴らの暴虐は目に余る。微力であるが、私でよければ力になろう」

 

 彼はそう言うが、これはかなりの助けになる。何しろ、彼は中将当時は連邦軍の改革派に属する人なのだ。彼がこちらについてくれれば、良識派との交渉もさることながら、エゥーゴがティターンズに勝利した後、連邦軍と統合してからも、明るい未来が開ける感じがする。

 

 なんとか立ち直ったブライトさんが口を開いた。

 

「これでなんとかなりそうだな。コーウェン少将には、ボスニアと共に、茨の園に向かい、ティターンズの良識派と交渉をしてきてもらいます。よろしくお願いします」

「了解した」

「クワトロ大尉は、カレル少尉とともにグワダンへ向かい、コロニー・レーザーを譲り受ける交渉をよろしく頼む」

 

 その言葉に、シャアと俺がうなずく。

 

「わかった。心配はないだろう。ハマーンの意中の相手がここにいるからな」

「だから大尉、やめてください。そんなんじゃありませんって」

 

* * * * *

 

 そして俺たちは、行動を開始した。

 コーウェン少将は、ボスニアに乗り、茨の園へ。そして俺たちは、百式とメタスに乗って、グワダンへ。ちなみに俺は、レコアさんが操縦するメタスに乗せてもらった。今まで乗っていたガルバルディは大破してしまったしな。

 

 その途中、レコアさんが言う。

 

「本当にあなたって、相変わらずミステリアスな魅力の持ち主なのね。私だけでなく、ハマーン・カーンにまで気に入られるなんて」

「レコアさんもよしてください。私はそんなミステリアスな人間じゃありませんよ。買いかぶりです」

 

 特別扱いされるのは、本当に勘弁してほしい。俺は自分ではただのガンオタ男子高校生転生者だと思っているんだから。まぁ、グリプス戦役どころか、1年戦争からはるか未来のリギルド・センチュリーまで宇宙世紀世界の歴史を知っている時点で普通ではないんだけれども。

 

「ううん、魅力的な人よ、あなたは。改めて考えてわかったことがある。あなたの魅力の源は、先に待つ悲劇を回避しようと頑張る、そのひたむきさじゃないかしら」

「……」

「そのひたむきさが魅力へとつながって、私やハマーン・カーン、いいえ、それだけじゃなく、他の人を惹きつけるんでしょうね。ふふふ、私も多くの人と接してきたけど、あなたのような人ははじめてだわ」

「はぁ……」

 

 と、そこでレコアさんがいたずらっぽい笑みを浮かべた。

 

「ねぇ、もしこの戦いが終わったら、一緒に放浪の旅なんてやらない?」

「前向きに善処します。ですが、もし途中でそっけなくなっても、恨まないでくださいね」

 

 原作みたいに、俺の態度が原因で、敵に寝返るのは勘弁してほしい。

 

「ふふ、大丈夫よ。そうなったら、あなたが嫌でも離してあげないから。まぁ、この先どうなるかはわからないけど……あ、グワダンが見えてきたわね」

 

* * * * *

 

 そしてグワダンの謁見室で、俺とシャアはハマーンと会談していた。ちなみにミネバはお休み中とのことでここにはいない。

 

「なるほど。コロニー・レーザーを譲ってほしいというのか。よかろう、条件はそちらと詰めてのことになるが、譲ることは承知した」

「そうか、感謝する。ハマーン」

「いや。だが、それはそれとして……シャア」

 

 そういうと、ハマーンはシャアに対して頭を下げた。

 

「!?」

「お前の期待を裏切ってしまってすまなかった。私は、自分の『ザビ家を見返したい』という望みにあらがえず、ミネバ様をあのように育ててしまった。反省している」

 

 ハマーンがミネバのことについて、素直にシャアに謝罪したのだ。俺が以前、『腹を割って話し合うべき』と伝えたのを覚えておいてくれたのだろうか。

 

 それを察した俺は、シャアのほうを向いて言った。

 

「ハマーン様はああして、素直に自分の非を認め、謝罪したんです。あなたも腹の底を打ち明けるべきではないんですか? クワトロ大尉……いえ、シャア・アズナブル」

「……」

 

 しばし躊躇するシャア。そして彼も口を開いた。

 

「私のほうこそ、済まなかった。ララァに縛られていたせいで、私もお前の想いにこたえきれず、出奔することになってしまった。本当に済まない」

「……」

「もう遅いかもしれないが、言わせてほしい。再び私と共に歩んでくれないか」

 

 そのシャアの言葉を聞いたハマーンの瞳がかすかにうるんだのは気のせいだろうか?

 

「……その言葉をずっと待っておりました。私とあなたの時は再び重なり始めた。あなたと共に歩みましょう」

 

 よかった……これで少なくとも、ハマーンがジュドーに敗れて戦死するフラグも、シャアが第二次ネオ・ジオン紛争を引き起こすフラグも折ることができそうだ。

 

「カレル・ファーレハイト。お前のおかげで、シャアと和解することができた、感謝する」

「いえ、私のしたことなんてささいなことです」

「ふ……そういえば、シャア。あなたに見せたいものがある。ついてきてほしい」

「?」

 

 そして俺とシャアがハマーンに着いていくと、そこには……。

 

* * * * *

 

 俺とシャアが連れてこられたのは、MSの開発工場だった。そこには一機のゲルググのようなMSが鎮座している。いやこれはゲルググではない……リゲルグだ。リファイン・ゲルググの略で、ZZでイリアさんが乗っていた奴だ。

 だが、それとは少し形状が違うような……プロトタイプか?

 

「これは?」

「これは、ゲルググの近代化改修型……リゲルグのプロトタイプをもとにして、お前のために開発したMS……サイコ・リゲルグ。略してサ・リゲルだ」

「サ・リゲル……」

「シャアにはやはり赤いゲルググが似合うと思ってな。ニュータイプ用として、キュベレイのものと同仕様のサイコミュも搭載してある。あなたと一度決別した時に開発を中止してしまったので、申し訳ないが、ファンネルは搭載されていない」

「いや、大丈夫だ。サイコミュが搭載されているのがわかっていれば、あとはうちのスタッフがなんとかするだろう。ありがたく使わせてもらう」

「それはよかった。やはりあなたには、赤いMSがよく似合うからな」

「ありがとう。それで今まで使っていた百式だが……カレル少尉」

 

 と、そこで少し考えていたシャアが俺のほうを向いた。なんだなんだ?

 

「私はこれから、このサ・リゲルを愛機として使うことにする。君はそれまでの愛機を失ってしまっただろう? これからは私の百式を使ってほしい。私のお古を押し付けるようで申し訳ないが」

「私は気にしませんが……でもいいのですか?」

「あぁ。ハマーンとの和解に導いてくれた礼だ。それに、君ならこのMSを有効に使ってくれると信じている」

「わかりました、それならありがたく使わせてもらいます」

 

* * * * *

 

 そして俺たちは、百式、サ・リゲル、メタスに乗ってアーガマに戻ってきた。

 

 到着するやいなや、シャアが何やらアストナージさんに伝え、そしてアストナージさんが騒ぎ出している。どうしたんだ?

 

「任せてください、大尉。話を聞いた時から既に、改良プランが浮かんでいます。きっと、こいつのサイコミュを有効活用できるようにしてやりますよ! ついでに、カレルの百式もすごい奴にしてやります!」

「ふえ?」

「実は百式についても、考えていたプランがあったんだ。今までは大尉に遠慮して実行にはうつしてこなかったんだが、カレルのものになったんなら話は別だ。バシバシ魔改造してやるよ!」

 

 俺は思わず引いてしまう。なんかアストナージさんの目がめらめら燃えているように見えるぞ。

 

「は、ははは……もう好きにしてください」

 

 そして俺は少し疲れながら、シャアと艦橋へ向かった。すると、ブライトさんがさっそく出迎えてくれた。

 

「帰ってきたか、グワダンから連絡はもらっている。クワトロ大尉、カレル少尉もご苦労だった」

「あぁ。コーウェン少将のほうはどうなっている?」

「そちらもうまくいったよ。コーウェン少将の人望もあって、良識派はすんなりとこちらを支援することを了承してくれた。ティターンズをそのまま連邦に残す、という条件つきだがな」

 

 それを聞いて、シャアが眉をひそめた。その条件に懸念を持ったそうだ。なぜなのかは、俺にもうすうすわかる。

 

「そんな条件をのんで、大丈夫なのか? また奴らが同じことをやる可能性もあるぞ」

「それについては心配ない。連邦軍上層部とも交渉して、外郭部隊とすることと、監査役を置くこと、文官を最高指揮官に据える、という条件をつけたからな。最高指揮官にはジョン・バウアー氏がつくことになるそうだ」

「なるほど……」

 

 そうシャアがうなずく。俺も心の中でうなずいた。

 要するに史実でのロンド・ベルみたくなるってことか。ジョン・バウアーが最高指揮官(神輿だけだろうが)になるってことは、後に彼ら(良識派ティターンズ)が再編されて、ロンド・ベルになるのかな?

 

「それなら問題はないか」

「あぁ……だが」

「なんです?」

 

 表情を曇らせたブライトさんに、俺がそう聞くと、彼はその表情のままこたえた。

 

「バスク・シロッコ派の行動が迅速でな。良識派の合流を待ってコロニー・レーザーに行ったのでは間に合わん。バスク・シロッコ派にコロニー・レーザーを奪われかねないんだ」

「ふむ……そうなったら、おびき出されてレーザーで焼かれるのは、私たちのほうになりかねんな。ということは……」

「あぁ。コロニー・レーザーで合流することにして、我らが先に行くしかあるまい」

「そういうことだ」

 

 ……これはまだまだ、厳しい状況が続きそうだ。

 

* * * * *

 

「しばらく世話になるぜ、シロッコ」

 

 ジュピトリスのMSデッキで、ヤザン・ゲーブルとラムサスが、パプテマス・シロッコと向き合っていた。

 シロッコは満足そうな笑みを浮かべている。

 

「君のような、有能なエースを助け、迎え入れることができて、とてもうれしく思う、ヤザン・ゲーブル大尉」

 

 シロッコの言葉は本心であった。

 サラを失い、自分の手元にはエースと呼べる者たちはいない。ジェリドは消息不明になっている。そんな状況下でヤザンという優れたパイロットを迎え入れることができたのは、大きな収穫だ。

 一方のヤザンとしても、シロッコの部下として迎えられたのは嬉しいことだ。まだ戦い足りない彼としては、良識派とかいうやつらと一緒に茨の園に隠れるなんて御免こうむりたかったし、それにシロッコとはどこか馬が合いそうな気がする。

 彼の下であれば、好き放題、思いっきり暴れることができる。そんな気がする。

 

「それで、俺もラムサスも機体を失ってしまったんだが、いい機体はあるか?」

「あぁ。まずはラムサス少尉にだが、これはどうだろうか?」

 

 シロッコが指し示したのは、丸いシールドと、右腕の2連装ビームガン。そして、背中のバインダーのようなものが板状のパーツが特徴の緑色のMSだ。

 

「私が開発したMSの一つ、PMX-001、パラス・アテネ。ビームガンのほかに、拡散ビーム砲やメガビーム砲を持ち、さらにオプションで対艦ミサイルも装備することができる、対艦攻撃をコンセプトに作ったMSだ。その代わりに機動性が少し下がってしまったが、ヤザン大尉の部下なら乗りこなせるだろう」

「はっ、ありがとうございます」

 

 うれしそうなラムサスに、少し面白くなさそうな顔をするヤザン。その様子に、ラムサスは少ししまった、という表情を浮かべ、シロッコはその二人を面白そうに見ている。

 

「それで俺には? ハイザックとかマラサイとかだったら承知しないぞ」

「わかっている。ヤザン大尉にはこれを任せようと思う。まだ一号機ができたばかりだが、実戦には耐えられるはずだ」

 

 シロッコが次に示したのは、その横にある大型で重厚なMS……シロッコ専用機、ジ・Oを少し細身にしたようなMSだ。だがよく見ると、ジ・Oよりもバーニアがたくさんあるように見える。

 

「こいつは? お前さんのと似ているように見えるが」

「私のジ・Oを、量産を前提に再設計して開発したMS、PMS-001、ノーネームだ。開発してみたはいいのだが、いろいろ癖がありすぎる機体でね。乗り手がいなくてどうしようかと思っていたので助かった」

「俺は実験体かよ?」

 

 そう軽口を叩くヤザンだが、表情からはむしろ、期待やうれしさがにじみ出ていた。

 

「それで、癖がありすぎるってどんな感じなんだ?」

「あぁ。機動性を上げるため、装甲を薄くしてバーニアを増設したんだが、それが悪い意味でかみあってしまった。おかげで機動性が私の想定以上に跳ね上がってしまって、作ったはいいが、乗りこなせる者がいなかったんだ」

「なるほどな。気に入った。ノーネーム(名無し)なんてイカした名前だし、乗りこなす者がいないほどの機動性というのも俺好みだ。バリバリに乗りこなしてやるぜ」

「そうか。気に入ってくれてよかった。私たちの本隊は、あと二日後にコロニー・レーザーの宙域に出発する予定なので、それまでに乗りこなせるようになってくれるとありがたい」

「へへ、二日どころか、今日中に乗りこなしてやるぜ」

 

 そしてヤザンはその言葉を有言実行した。

 

* * * * *

 

 そして、もうすぐコロニー・レーザーの空域という時。俺とシャアは、アストナージさんから改装や改造ができた、というので行ってみた。

 

 サ・リゲルはそれほど変わっていないように見えるが、百式のほうはかなりゴチャゴチャしている。

 もう百式の部分が3割ほどしか残っていないように見えるぞ。

 

「本当に魔改造しちゃったんですね……」

 

 そう茫然とつぶやく俺に、アストナージさんは会心の笑みを浮かべた。やりたいこと、全部やっちゃったんだろうなぁ……。もう、ZのMSVにのせてもいいレベルだぞこれは。

 

「あぁ。だがまずは、クワトロ大尉のサ・リゲルからだ。サ・リゲルですが、少し苦労しましたが、サイコミュをゼータのバイオセンサーのように、機体制御の補助に使うように改造を加えておきました。これで、ニュータイプが乗れば、カミーユのゼータ並みの機動性を発揮することができます」

「ほう……それは楽しみだ」

 

 そして続いて俺のほうを向いた。うわ、すっごいまばゆい笑み。目がつぶれてしまいそうだぞ。

 

「そして百式のほうだが、バイオ・センサーを内蔵しておいた。仕様はゼータに積んでいるものと同じだが、お前さんに合わせて調整しておいたからな。さらに駆動系を改良したり、バーニアも増設したから、通常の百式より3割ほど機動性が上がっているはずだ」

「なるほど……そういえば、この前頼んだあれはどうなりましたか?」

「あぁ、なんとか形にしたぞ、ほれ」

 

 アストナージさんが指さした百式の左上腕部には、何やら小さいパーツがついていた。

 

「ビームをシールドにするんだったか? なんとかできるようにはしたが、やはり技術力不足でな。通常のシールドサイズの最大出力で3秒、MSの手のひらサイズの通常出力でも1分が限界だ。おまけに一度展開すると、冷却のために3分は使えない」

「そうですか……。でも、作ってくれただけで助かりますよ」

 

 何しろ、ビーム・シールドは40年ぐらい後の技術だからな。こうして一応形にしてくれただけでも奇跡だ。ダメ元で言ってみてよかった。

 

「それと、フルアーマー百式改とかいう機体の開発で作られた、ロング・メガバスターという高出力ビーム砲、その予備を取り寄せて搭載してある。カタログスペックによれば、メガバズーカ・ランチャーより火力が大幅に劣るが、連射速度は勝っているそうだ。そうそう、お前さんがガルバルディに積んでいたトンデモ装備も実装しておいたぞ」

「本当にすごいですね……」

 

 本当にすごいとしかいいようがない。このアストナージさん、実はスパロボの世界からやってきたんじゃないのか?

 

「俺もそう思うよ。我ながら、もうこいつは百式を超えた百式といっていいんじゃないかと思う。あえて名付けるなら……百式決戦仕様、いや『千式』ってところか」

「千式ですか……いい名前ですね」

 

 ネーミングセンスがビシッと刺さった俺であった。

 と、そこで。横からジェリドが割り込んできた。

 

「なぁ、俺には乗る機体がないんだが、何かないのか?」

「そうだなぁ……これなんかどうだ?」

 

 そこにあったのは……箱のようなボディにパイプで作られたような手足がついただけのMS……これ見たことあるぞ。『サム』じゃねーか!

 

「俺が趣味で作ったMS、『サモ』だ。なかなかいいだろ?」

「おい! 俺に死ねっていうのか!?」

「半分冗談だ。そう怒るなよ」

 

 肩をすくめるアストナージさん。って、半分かい。

 そして改めて指し示したのは、ジェリドが乗っていたと思われるバイアランだ。だが、ところどころ細部が違うようだし、頭部がいわゆるバイザータイプになっていて、さらに背中に細長いパーツを二本背負っている。

 

 俺の頭の中に、『バイアランカスタム』という名前が浮かんだことは言うまでもない。

 

「お前さんのバイアランを、エゥーゴにあった部品で修復したんだ。ついでに、両肩にスプレーミサイルランチャーとプロペラントタンクとブースターが一体化したムーバブル・バインダーを取り付けてある」

 

 二号機!? 俺の千式にもびっくりしたが、アストナージさんがバイアランをカスタムもどきに改造したことにもびっくりだ。この人、実はマッドエンジニアじゃないのか?

 その機体を見て、ジェリドは上機嫌のようだ。どうやら乗り気みたい。

 

「とてもいいな。こいつとまた戦えるなんて最高だぜ。ちなみに名前はあるのか?」

「あぁ。バイアラン・ジェカスって名前をつけてある」

「……おい、なんだそのジェカスって」

「決まってるだろ。ジェリド・カスタムの略さ」

 

 それを聞いて、ジェリドは渋い顔をする。確かに、ちょっと語感がよくないよな。

 

「……もうちょっとどうにかならんか?」

「うーん、それならバイアランJCなんてどうだ?」

「いや、JCだと女子中学生になっちゃうんじゃ?」

 

 そして三人で話し合った結果。

 

「バイアラン・ガラハド……うん、なかなかいい名前だな。よし、それにしよう」

 

 俺が提案した、バイアラン・ガラハドに決まった。Twilight Axisに出てきたバイアランの一機、バイアラン・イゾルデが円卓の騎士に由来する名前だったから、それにならって、円卓の騎士の一人、ガラハッドからつけてみた。

 うん、我ながらいい名前だと思う。ジェリドにも気に入ってもらえて何よりだ。

 

 と、そこに。

 

『警報、警報! コロニー・レーザーのアクシズ艦隊が、バスク・シロッコ派に攻撃を受けている! 全艦隊、第一級戦闘配備! 繰り返す!!』

 

 と、そこに急を告げるアナウンスが、格納庫に鳴り響く。

 

 いよいよ正念場だ……!

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

ブライトは、メールシュトローム作戦を発動した。コロニー・レーザーから脱したアクシズの警備艦隊とともに、グリプス2を包囲して、ティターンズの先遣艦隊を撃滅しようというのである。

その中、カツはサラの無念を晴らそうと奮戦し、カレルは再びヤザンと対峙する。

次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』

第32話『コズミック・メールシュトローム』

刻の涙は、止められるか?

[今回登場新MS]
〇MSN-100(Z) 千式(百式決戦仕様)
カレルのおかげで、ハマーンと和解したシャアからその礼として、彼女に譲られた百式を、彼女に合わせて(+整備スタッフの悪ノリで)改装した戦時臨時改装機。

強化人間にされたカレルのNT能力をできるだけ有効に活用できるようにバイオセンサーを内蔵。さらに、守れる者を守りたいという彼女の願いから、左腕に小型ビームシールド『ビームバックラー』を搭載。さらにスタッフの悪ノリにより、フルアーマー百式改の開発にあたって作られた、予備のロング・メガバスターを搭載し、攻防のバランスの取れた機体になっている。

千式はあくまで通称であり、正式名称は『百式・最終決戦仕様』である。また、あくまで戦時の臨時改装であり、正式な仕様ではないため、Zはかっこで囲まれている。
千式の名称は、バイオセンサーやビームバックラー、ロング・メガバスターの装備で百式を超えた百式だとスタッフが自画自賛して命名してつけたもの。

〇MS-14JP サ・リゲル
ハマーンが、シャアが戻ってきたときに備えて開発させていたリゲルグの改良型。(正確にはリゲルグのプロトタイプの改良機)
シャアのNT能力を活かすために、ハマーンのキュベレイと同じサイコミュを搭載しており、さらに原型機からバーニアを多数追加し、機動性を高めている。
当初は、ファンネルも搭載予定だったが、最初の会談時にシャアと決別したさいに開発を中止した影響で非搭載となってしまった。その代わりに、サイコミュを機体制御の補助として利用できるようアーガマ配備後に手を加えられている。
それでも、その機動性は百式以上のものを誇り、シャアの腕とNT能力があれば、シロッコのジ・Oとも対等に戦えるだけの戦闘力を持っている。
なお、サ・リゲルはサイコ・リゲルグの略

〇PMS-001 ノーネーム
シロッコがヤザンに与えたジ・Oの簡易量産型(の試作機)。
サイコミュをオミットし、装甲も簡略化することでコストダウンを図り、一方でバーニアを増設して機動性を増した。
ただ、装甲の簡略化と、バーニアの増設が重なった結果、機動性が想定より上がってしまい、ヤザン級のエースでないとのりこなせなくないジャジャ馬なMSとなってしまった。また、装甲をプロペラントタンクにするというジ・Oの設計を廃止、プロペラントタンクは外付けになっている。
武装はビームライフルとビームサーベル、そしてメガ・ビームランチャー。

次の更新は、1/17 12:00の予定です。お楽しみに!
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