ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより   作:ひいちゃ

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終章#03『生命……』

 俺……カレル・ファーレハイトはエマさん、ジェリド、そしてフォウとささやかな飲み会を開いていた。とはいえ、飲むのは酒ではなくソフトドリンクだが。それと、飲み終えたら、そこで解散という簡素なもの。

 ほんとはずっと飲んだり語らったりしていたいのだが……。

 

「大丈夫、カレル? 何かとても疲れているようだけど……」

「ははは、先の作戦でちょっと頑張りすぎたみたいです……。でも、栄養剤も飲みましたし、なんとか大丈夫です。飲み終わったら、すぐ休むことにします」

 

 心配そうに言うエマさんにそう答える。

 

 そう、先の作戦での『カレル』の大暴れで、いつもより消耗していたのだ。何しろ、『カレル』に無理やり身体の主導権を奪われ、彼女の怒りのままに暴れ、さらにピンチを回避するために、身体の一部の主導権を急遽返してもらって対処したのだ。その疲労はかなりのものがある。

 

 ちなみに、『栄養剤を飲んだ』というのはうそではない。正しくは、あのクスリを打ったのだが。

 

「そう……でもカレル、無理はしないでね」

 

 フォウがそう心配そうに声をかけてくる。彼女も俺と同じ強化人間だったこともあり、俺の疲労の原因に感づいているのかもしれない。

 

「ありがとう、フォウ。大丈夫だよ。こんなところで終わるつもりはないから」

「しかし、また俺たち三人、こうしてまた会って、ジュースを飲みかわす時が来るとはな。やっぱり生きてみるもんだぜ」

 

 ジェリドがそう言うと、エマさんも苦笑してこたえる。

 

「そうね。このまま誰も欠けることなく、また飲みかわせるときが来るといいわね」

「そうですね……」

 

 そしてジュースを飲み終えると、俺たちはそれぞれ自分の部屋へと戻っていった。

 

* * * * *

 

 そして簡単な飲み会が終わると、俺はそのまま自室のベッドに倒れこんだ。

 

―――すみません、私のせいで……。

 

 と、脳裏に聞こえる、『カレル』の謝る声。

 

―――いや、謝らなくていいよ。お前の活躍がなければ、カツをやられていたからな。

―――ありがとうございます……。

―――いやいや、お礼を言うのは俺のほうだよ。お前の身体を使わせてもらってる身だし。

―――身体を……。

 

 あっ、こら。変な想像して赤面するな!

 

―――す、すみません……。

―――しかし、とうとうここまで来てしまうなんてなぁ……。

―――そうですね。私も、ティターンズに入った頃は、こうなるとは思ってなかったです。私たち、生きて帰れるんでしょうか……?

 

 『カレル』の不安が、俺の心に伝わってくる。

 

―――確実なことは言えないな。全ては俺たち次第なんだから。

―――……。

―――だから、明日は頑張ろうぜ。お互い生き残れるように、な。

―――はい。……さん、今まで……

―――おっと、それはそこまでだ。

―――え?

―――そこから先は、お互い、寿命でくたばる時にとっておくとしようぜ。

―――はい……。

 

 そして俺は目を閉じ、睡魔に身体をゆだねた。

 

* * * * *

 

 翌日。俺は警報で目を覚ました。フォウの声で敵の接近が告げられる。

 

『敵艦隊接近! 主流派ティターンズの本隊だと思われます! 全艦、第一級戦闘配置! 繰り返します!――』

 

―――よし、行くぞ、『カレル』! 必ず生きて帰る!!

―――はい!!

 

 飛び起きた俺、いや俺たちは、部屋を出て、MSデッキへと向かった。

 

 そして。

 

『カミーユ、気を付けて』

『ありがとう、フォウ。カミーユ、Zガンダム、行きます!』

 

 カミーユのZガンダムが、フォウに見送られて発進していく。そして。

 

『クワトロ・バジーナ、サ・リゲル、出る!!』

『エマ、ガンダムMk2、行きます!』

 

 アーガマから次々とMS隊が発進していく。

 と、身体の動きが鈍い気がした。これは……。

 

―――怖いのか? 『カレル』

―――はい……。

 

『カレル』の抱いている恐怖が、俺の心へと伝わっていく。

 

『ファ・ユイリィ、Gディフェンサー、行きます!』

 

―――大丈夫だ、俺がいる。一緒に戦いぬいていこうぜ。二人ならきっと大丈夫だ。

―――はい。私もあなたがいれば、戦う勇気が出ます。

 

 そして、俺の番が回ってきた。

 

「カレル・ファーレハイト、千式、出る!!」

 

* * * * *

 

 レーダーを見ると、まだボスニアと良識派の艦隊は到着していないようだ。しばらくは、エゥーゴ艦隊だけで戦わなければならないということだ。

 

 援軍の到着まで持ちこたえることができるかどうか、それに全てがかかっている。

 

 モニターに、多数のMS隊が映し出されている。かなりの数だな……。

 

『カレル少尉、私のサ・リゲルのメガバズーカ・ランチャーと、君のロング・メガバスターで先制攻撃をかける。いいか?』

「了解です!」

『よし、アーガマ。メガバズーカ・ランチャーを射出してくれ!』

 

 シャアの要請から時を置かずして、アーガマからメガバズーカ・ランチャーが射出される。

 サ・リゲルはそれに取り付いて、発射態勢をとる。俺もバックパックにマウントされたロング・メガバスターを展開する。

 

 そして、メガバズーカ・ランチャーとロング・メガバスターから高出力のメガ粒子ビームが放たれ、射線上の多くのMSと、いくつかの巡洋艦を薙ぎ払っていく。

 

 しかし、それでも数はまだ多く、多くのMSがこちらに対して突っ込んでくる。

 

* * * * *

 

 戦艦ラーディッシュのブリッジから見えるサラミス級が、敵MSの攻撃を受けて轟沈していく。

 

「ルネ、撃沈!!」

「沈むなよ! もうすぐボスニアと援軍が来る!」

 

 ラーディッシュ艦長のヘンケンがそう檄を飛ばしている中、轟沈していくルネが大爆発を起こし、ラーディッシュのブリッジを閃光で染める。

 

* * * * *

 

『見つけたぜ、坊やぁぁぁぁ!!』

 

 乱戦の中、バウンド・ドックもどきが、カミーユのZガンダムに向かっていく。まだ生きてたのか。本当にしぶとい奴だ。

 

『ルブラか!』

 

 カミーユのZガンダムもそれに気づき、バウンド・ドックもどきにビームライフルを発射! しかし、バウンド・ドックもどきはまるで獣のような獰猛な動きでそれを回避する。

 

―――……さん、前!

 

「え?」

 

 正面を向くと、ちょうど直撃コースでビームが飛んでくるところだった。

 急いで回避。なんとかよけることはできたが、ビームがかすり、ロング・メガバスターの砲身を破壊されてしまった!

 

『よくよけたな、女ぁ!! 今度こそ決着をつけてやるよ!!』

 

 その声と共に、ヤザンのジ・Oもどきと、あと……パラス・アテネだとぉ!? レコアさんはエゥーゴを裏切っていないから、誰か別な奴が乗ってるのか。ヤザンと一緒にいるってことは……脱出に成功していたラムサスかな?

 

―――あの……そんなことを考えてる場合じゃないと思います。

 

 おっと、そうだった。まずはヤザンとの戦いに集中しなければ。ビームライフルを発射するが、やはりヤザンはそれを軽くかわす。くそ、やっぱりもどきでも、ジ・Oは厄介だな!

 

 と、横からジ・Oもどきにビームが放たれた。エマさんのガンダムMk2がロングライフルを撃ったのだ。いつの間にか、Gディフェンサーと合体していたらしい。

 

『くそ、まずはお前から餌食にしてやるよ! ハイパーヴォイルを喰らえ!!』

 

 そして、ジ・Oもどきが海ヘビを発射した。海ヘビはMk2の腕に絡みつき、電撃を浴びせる。

 

『うああっ!!』

「エマさん!」

 

 ビームサーベルで海ヘビを断ち切る。

 

「大丈夫ですか、エマさん!?」

『えぇ。耐電シートが強化されてなかったら、死んでいたわ……』

 

 とはいえ、今の電撃で、電子機器が一部死んだらしい。Mk2ディフェンサーの動きはいつもより鈍い。

 俺はエマさんのフォローをしようとするものの……。

 

『金色め、隊長の邪魔はさせんぞ!』

「くっ……!」

 

 パラス・アテネがシールドの小型ミサイルを撃ってくる。どうやら、ヤザンの相手をしている暇はなさそうだ。早く、エマさんのフォローをしなければならないのに……!

 

 俺は機体をくるりと回転させ、バックパックのマインレイヤーから爆雷をばらまいて、小型ミサイルを誘爆させた。

 

 しかし、そうしているうちに……。

 

『もらったぞ、Mk2!!』

 

 いつの間にか後ろに回っていたジ・OもどきがMk2にビームライフルを発射!! バックパックごとGディフェンサーを破壊された!

 

『あああっ!!』

 

* * * * *

 

 一方、戦艦ラーディッシュ。

 

 エマの苦戦は、そのブリッジのモニターにも映されていた。

 

「エマ中尉……!」

 

 そうつぶやくヘンケンの心中を察したクルーの一人が口を開く。

 

「ラーディッシュ、Mk2に接近させます!」

「だめだ、ラーディッシュは……!」

 

 別のクルーも口を開く。

 

「エマ中尉を見殺しにはできません!!」

「お前たち……済まない、よし、ラーディッシュ、前進だ!」

 

* * * * *

 

 状況はかなり不利である。今俺は、ヤザンのジ・Oもどきと、パラス・アテネの二体を相手に奮闘している。

 エマさんのMk2もヤザンたちに応戦しているが、一部の電子機器が死んで性能がダウンし、さらにバックパックを失って、もはや死に体だ。このままでは……!

 

 と、その時だ。

 

 ラーディッシュが俺たちとヤザンたちとの間に割り込んできたではないか!

 

 ヘンケン艦長、なんてことを! エマさんが好きだからとはいえ、ヤザンの前に来るなんて、死ぬようなものだ!!

 

 エマさんとヘンケン艦長の通信が聞こえてくる。

 

『ヘンケン艦長、無茶です。撃沈されます!』

『エマ中尉が無事ならいい。ラーディッシュを盾にしろ!』

『だめですよ!』

 

 そんな中でも、ジ・Oもどきはその機動性でラーディッシュの対空砲火をかいくぐりながら、ブリッジに迫る!

 

 俺は切りかかってきたパラス・アテネを蹴り飛ばすと、フルパワーでラーディッシュのブリッジに飛んで行った。

 間に合え!!

 

『なんで沈められん!?』

『ヘンケン艦長、逃げてえええ!!』

 

 二人の会話をBGMにさらに加速。

 間に合え、間に合ってくれ!!

 

 俺はもう……。

 

 この手が届く限り……

 

 誰も失いたくないんだよ!!

 

 お前もそうだろ、千式!! そうなら……!!

 

 俺に……

 

 私に……

 

 力を貸せ!!(力を貸して!!)

 

 その時。

 

 千式が銀色の光に包まれた。

 

* * * * *

 

『戦艦ごときが!!』

 

 ヤザンがそうほえながら、ラーディッシュのブリッジに照準を定める。

 左手に持つ、メガ・ビームランチャーからビームを発射。

 その瞬間、何かがビームの射線上に割り込んできた。

 

 そして爆発。

 

『ヘンケン艦長ーーーー!!』

 

 絶叫をあげるエマ。

 ヘンケン艦長は、今のビームで死んだと確信した。

 

 ここにきて、エマは自分の気持ちに気づいた。

 自分はヘンケン艦長のことが好きだったのだと。

 

 だが、もう遅すぎる。彼はその愛艦と運命をともにしたのだ。

 

 だが、爆発がやんだ時。

 

 涙を浮かべたエマは、呆然とした。

 

 ラーディッシュのブリッジの前には。

 

 銀色のオーラに包まれ。

 

 光り輝く大きな盾を構えた。

 

 千式がそこにあった―――。

 




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* 次回予告 *

宇宙というキャンバスに咲いていく光芒の花々。
それは因縁の戦いの決着が着いたことの証だ。

カミーユとルブラの戦いも。
そして、カレルとヤザンの戦いもまた。

――『カレル』、また二人でやるぞ!

次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』

第34話『幾多の決着』

刻の涙は、止められるか?

※次の更新は、1/23 12:00の予定です。お楽しみに!
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