ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより 作:ひいちゃ
エマの視線の先に、ラーディッシュをかばうように立つ千式。
その機体は銀色のオーラに光包まれ、光の盾を構えるその姿は、まるで戦乙女のようであった。
そのうち、光の盾が消え、構えていた左腕が分解する。
だが千式はそれでも闘志を折っていないかのように、ビームライフルを構え、ノーネームとパラス・アテネに連射をかけた。ビームはノーネームが左手に構えたメガ・ビームランチャーを撃ち抜き、爆散させる。ここは不利と悟った二機はただちに後退したのだった。
* * * * *
「はぁ……はぁ……はぁ……」
俺……カレル・ファーレハイトは荒い息をついた。間に合ってよかった……。なんとかヘンケン艦長を守り切り、エマさんを悲しませずに済んだ。それにしても……。
―――すごいです。まさか、あんなことができるなんて……。
―――あぁ。俺もできるとは思ってなかったよ……。
そう。ニュータイプか強化人間がバイオ・センサーやサイコミュを使えば、ビームをはじいたりすることができることは知っていた。
原作でもカミーユがヤザンのハンブラビのビームライフルをはじきながら突撃していたり、ガンダムUCでは、バナージが、リディのバンシィと二人がかりとはいえ、コロニー・レーザーを防ぎきるなんて離れ業をやってのけたりしたから。(その代償に、あわやバナージは人を捨てかかったが)
だが知っていることと、できるかどうかはまた別の話だ。
正直、俺は強化されたとはいっても、カミーユのような規格外のニュータイプには及ばないと思ってる。
だからサイコ・フィールドは発生させることはできても、あのジ・Oもどきの高出力メガ粒子砲を防ぎきることはできないと思っていた。大破で済めばラッキーだ、と。
最悪、ガンダムSEEDのムゥさんみたいな最期になることも覚悟していた。
それを可能にしたのは……。
―――やっぱりお前のおかげかもな。ありがとな、『カレル』。
俺と同じ想いを抱き、力を貸してくれた『相棒』に、心の中でそう声をかける。
―――いえ。私のしたことなんて、ささやかなものです。奇跡を生んだのはきっと、あなたの『誰も失いたくない』、『大切な人を守りたい』という気持ちのおかげだと思います。
―――あぁ、ありがとう。
と、そこでMk2から通信が入ってくる。
『カレル、無事!?』
「えぇ、なんとか。大破は覚悟していましたが、左腕がぶっ飛ぶだけで済みました」
『本当に……なんて無茶をするの……』
「すみません。でも、ヘンケン艦長が死ぬ様も、それを見てエマさんが嘆き悲しむ姿も見たくなかったんですよ。だから、どんな結果になっても後悔はしません」
『本当に……馬鹿なんだから……』
―――そうですね。私も、……さんは馬鹿だと思います。
―――なんだよ、それは……。
そこでふと見ると、俺を叱るエマさんの目には涙がにじんでいた。泣き笑いの表情に顔がゆがんでいる。
『ありがとう……ヘンケン艦長を守ってくれて』
「いえ、こちらこそ無理やってすみませんでした。エマさん、ラーディッシュかアーガマに戻って休んでいてください。そのMk2で戦うのは、死ぬようなものです」
『でも……』
「だめですよ! 無茶して死んだら、ヘンケン艦長がどう思います!? ヘンケン艦長が死んだと思った時の、あなたの気持ちを思い出してくださいよ!」
―――……さん、目から……。
『カレル』に言われて、俺は泣きながら訴えていたことに気が付いた。
一瞬、ライラさんが死んだときのことを思い出したからかもしれない。でも俺は本当に、エマさんにもヘンケン艦長にも、いや、エゥーゴの誰にも死んでほしくないんだ。
俺は涙をぬぐうと、ラーディッシュに通信を入れる。
「聞こえましたね、ヘンケン艦長! 絶対に、エマさんを縛り付けてでも、彼女を出撃させないでください! もし出撃させたりしたら、千式のバルカン砲で威嚇射撃しますよ!」
『あ、あぁ、わかった……』
「それじゃ行きます! エマさん、ヘンケン艦長とお幸せに!!」
そして俺は千式を前線に向けて突撃させた。俺の言葉を聞いたエマさんが「もしかしてあの子、ヘンケン艦長のことが好きだったんじゃ……譲ってくれた彼女のためにも、幸せにならなくちゃね」と、変な勘違いをしていたことは知らない。知らないったら知らない。
* * * * *
アーガマのMS隊は、必死にティターンズのMSと戦っていた。しかし、やはり数が違いすぎた。
そのうち、MS隊の防衛線を抜けたハイザックが、アーガマの目の前に躍り出て、ブリッジにビームライフルを向けた!
「!!」
そこに。
『やらせるかよ!』
ジェリドのバイアラン・ガラハドが飛び込んできて、そのハイザックを殴り飛ばした。吹き飛ばしたハイザックに、両腕のビーム砲を浴びせて撃破する。
「助けて……くれたの?」
茫然とつぷやくフォウを一瞥したバイアラン・ガラハドから通信が入る。
『勘違いするな。お前を死なせたら、カミーユの奴に借りを作ることになっちまうからだ』
「そう……でも、ありがとう」
『……ふん』
つまらなそうに返したジェリドの表情には、しかしかすかな笑みが浮かんでいた。
「ありがとう、か。感謝の言葉をかけられるのもたまには悪くないな」
そして、次々と接近していくティターンズのMSたちに対して不敵に言い放つ。
「さぁ来やがれ! この艦には一機たりとも、近づかせはしないぞ!!」
バイアラン・ガラハドの両肩のスプレーミサイルポッドが火を噴いた。
* * * * *
一方、別の宙域では、カミーユとルブラの対決が佳境に向かっていた。
「ルブラ、まだ戦って、憎しみの連鎖を生むつもりなのか!? 人のやることじゃない!」
Zガンダムがビームライフルを撃つが、ルブラのヒュドラーはそれをかわしながら突撃し、ビームサーベルで切りかかる。
『お前も同じだろうが、人殺しの坊ちゃんがよぉ!! ヒャーハハハ!!』
Zガンダムも、そのビームサーベルを自機のビームサーベルで受け止める。
ルブラは、ビームサーベルを持つヒュドラーの腕のパワーを上げながら、さらに吠える。
『人殺しは人殺しらしく、じゃれていようぜ!!』
「俺は……人殺しじゃない!」
『それならそうなる前に殺してやるよ! 感謝しやがれぇ!!』
そこで、Zがヒュドラーを蹴り飛ばす。吹き飛ぶヒュドラーが両腕のビーム砲を発射するが、Zガンダムはそれをかわすと、グレネードを発射する。グレネードはヒュドラーに着弾し、その両腕を吹き飛ばした。
『善人づらの人殺しごときがああああ!!』
しかし、ルブラの闘志は消えず、両腕を失ったヒュドラーをさらに突撃させる。カミーユは、そのヒュドラーに照準を合わせ……。
「は、はしゃぐから、はしゃいじゃうから、そんなことになっちゃうんでしょ……!」
ビームライフルを撃った。そのビームは、突っ込んでくるヒュドラーのコクピットを貫き……!
『ひいいぃぃぃぃ!! 死にたくねぇぇぇぇぇ! 助けてくれよおおぉぉぉぉ!!』
ルブラを原子分解し、ヒュドラーを大きな火球にした。
「お調子……者が……!」
* * * * *
ジュピトリス。そのブリッジのシロッコは、脳裏に嫌な波動が流れてくるのを感じた。彼は知る由もなかったが、それはルブラの断末魔と、それを目にしたカミーユの、抑えきれない感情の波動であった。
「不愉快だな……この感覚は……」
「は?」
ふとつぶやいたシロッコに、副官がそう聞き返す。原作と違い、そばにレコアがいないので、独り言になっていたのだ。
「いや……なんでもない。ジ・Oの準備はできているな?」
「はっ。いつでも出撃できます」
「ならばいい。状況は定まった。あとは簡単だ。ジ・Oで出る」
「はっ」
そしてシロッコはブリッジを出た。
(感情をむき出しにして戦うなど……これでは人に品性を求めるなど絶望的だ。やはり人は、より良く導かれねばならん。指導する絶対者が必要だ)
* * * * *
前線を駆け、ティターンズのMSを撃破する俺の脳裏にある思念が届いた。
―――ひいいぃぃぃぃ!! 死にたくねぇぇぇぇぇ! 助けてくれよおおぉぉぉぉ!!
それは、カミーユとの戦いの果てに散った、ルブラの断末魔だ。
やったな。これで、カミーユの母のヒルダさんや、奴にやられたロベルトさんも報われるだろう。
―――そうですね。でも……。
―――『カレル』?
―――でも、考えてみるとかわいそうな人だったのかもしれません。
あぁ……そうか。
奴の現世での人生は戦いばかりで、それだけの人生だった。
いくらそれが彼の好きなことだったとしても、他のことを知らずできずに終わってしまったのは、もしかしたらかわいそうだったのかもしれない。
と、そこに。
『女ぁ!!』
ヤザンのジ・Oもどきが突っ込んできた! 俺は、ジ・Oもどきが連射してくるビームライフルをかわしながら、ビームライフルで撃ち返した。
「戦争を遊びでやって楽しいか!? 戦いたいなら、FPSかサバイバルゲームでやれよ!! このサーシェスコピーが!!」
思わず、素の口調で叫びながら、ジ・Oもどきに応戦する。まぁ、非人道的な行動も好物なサーシェスやルブラよりは、ヤザンはいくらかマシだが、それでも許せない相手だというのは間違いない。こいつの性根が治せない以上、ここで仕留めなければ奴の犠牲になる者が増えていく。
―――『カレル』、二人でやるぞ! また済まないが、力を貸してくれ!
―――はい!!
サイド2での戦いのように、『カレル』に身体の主導権の一部を譲り渡す。
そのとたん、千式の動きが大きく変わった。
『何、動きがまったく読めないだと!?』
驚くヤザンの声。そりゃそうだ。あの時と違い、ある時は俺、またある時は『カレル』というように、機体の操作をする人格を、『俺』と『カレル』とで交互に切り替えているからだ。二人の操縦の癖(のようなもの)はそれぞれ違う。だから、向こうからすれば動きが変則的に見えて、読めなくなっているのだ。
『カレル』がビームライフルを乱れうちし、ジ・Oもどきの左腕を破壊する。続いて、主導権が『俺』に戻り、ヤザンの攻撃を回避して、再びビームライフルを放つ。それで、右足を破壊した。ジ・Oもどきが右腕のビームライフルで反撃してくるが、それを交わしたところで、再び『カレル』にスイッチ。グレネードを発射して、メインカメラを破壊する。
それでヤザンは戦意喪失したのか、ジ・Oもどきを反転させて撤退し始めた。だが、俺もカレルを、このまま奴を逃がすつもりはない。その機体を追撃する。そして、ビームライフルの狙いを定める。
「戦争を遊びにしている奴は……」
―――人の命を何とも思っていない人は……!
俺たちのヤザンへの怒りにバイオセンサーが再び反応し、千式が再び銀色のオーラに包まれる。
「「地獄に帰れえええぇぇぇ!!」」
トリガーを引く!! ビームライフルから、ZZのダブルビームライフルや、ユニコーンのビームマグナムかと思えるほどの太く強力なビームが放たれた!!
そのビームは見事、ジ・Oもどきを貫き、そのコクピットから脱出ポッドが射出された直後、激しい爆炎を出して爆散した。
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* 次回予告 *
生き残った者たちが行くところはどこだ? その予測も立たないままに、人は人の生き血を吸う……。
『こいつら……!』
「緑色のMSだったら、ジャングルにでも突っ立っていればいいのだ!!」
シロッコのせせら笑いは、ただのあがきには聞こえなかった。
Zが呼ぶ最後の力、呼び起こすのは誰だ?
「強い……僕は勝てるのか……?」
『くじけちゃダメ、カミーユ。君は一人じゃない』
「カレルさん……?」
次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』
第35話、『宇宙を駆ける者』
刻の涙は、止められるか?
※次回は、最終話とエピローグの二話同時掲載となります。
※次の更新は、1/26 12:00の予定です。
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アーガマがシャングリラに立ち寄ったのは、運の尽きだというけど、それはアーガマにとってか? それともオレたち?
それはそうと、オレ、マリハ・クトゥル!
U.C.0088年のシャングリラにTS転生してきたんだけど、そのせいでとんでもないことに巻き込まれることになっちまった!
『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
2/1 12:00
もうすぐ出番だ!