ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより 作:ひいちゃ
読んでくださった皆さん、ほんとに本当に本当にありがとうございます!!
感謝感激雨霰時々雪崩でございます!(;_;
さぁ、ここから新章、ボスニア編となります!
ライラさんご登場ですぞ!
なお、ボスニアに赴任したのはカレルだけなので、ジェリドとカクリコンとは、前話で一時お別れです(エマさんはエゥーゴに寝返り)
※味方になった時にジェリドの愛機アンケート、終了させていただきます!
結果は……
ガブスレイ 35 / 16%
バイアランカスタム(もどき) 91 / 42%
ガンダムMk2 46 / 21%
ネモ 11 / 5%
メタス 3 / 1%
オリジナル機体 30 / 14%
ということで、バイアランカスタム(もどき)に決定しました!
ぱちぱちぱち!
彼が味方になるのは終盤になると思いますが、どうぞ期待してお待ちください!^^
※ボスニア艦長の名前を間違っていたので訂正しました(原作準拠にしました
「はぁ……」
俺……カレル・ファーレハイト曹長は、窓の外を眺めながらため息を吐いた。軽く自己嫌悪。
結局あの後、原作通り、エマさんはカミーユと一緒に、Mk2を3機とも手土産としてエゥーゴに投降したという。さらにその後、カミーユの父のフランクリン氏が、その投降先のアーガマからリック・ディアスを持ち逃げしようとしてやられる、という(ほぼ原作通りの)一幕もあった……と、ジェリドから連絡があった。
そして、一方の俺といえば、元上司のバスクの目論見を邪魔したことで彼の怒りを買い、ティターンズを追い出されて連邦軍に移籍、この巡洋艦ボスニアに転属と相成ったのだった。なおそれにあたって、階級は曹長に格下げである。
まぁ、転属や降格のことはいい。あのハゲオヤジの邪魔をして、修正の嵐や最悪、銃殺刑にならなかっただけ儲けものだし、ボスニアの艦長チャン少佐は確かに厳しいが、あのバスクほど暴虐でもないし、優しい時は優しい。艦内の雰囲気も、アレキサンドリアよりは遥かにマシだ。何より、これ以上、あの外道ハゲと一緒にいるのは御免こうむりたい。
なので、そのことでため息をついたり自己嫌悪してるわけではない。ではなぜかというと……そこでまたため息。
「はぁ……。カミーユにあんな偉そうなこと言って、自分がこんなんじゃなぁ……」
そう。カミーユと交わしたあの会話。
あの時、『覚悟と、戦ってまでして叶えたい願いがないなら戦いには加わるな』と警告したけど、自分を顧みると……。
今の自分は戦い続ける覚悟はあるものの、願いも信念もなく、ただ戦っているだけ。そんなんじゃあ、偉そうに言う資格はないよなぁ、というかなんというか。
誰かさんに、『じゃあお前はどうなんだよ』と聞かれたら、『はい、ごめんなさい』と土下座するしかない状態であるし、俺本人としても、このままではいけない、というのはわかっているのだが……。
はぁ。
俺は再びため息をついた。
* * * * *
昼食の時間が来て、食堂にやってきても、俺のため息はやまなかった。自分でもこの問題がかなり難しいというのがわかる。一朝一夕で解決する問題ではないというのはわかっているのだが……はぁ。
と、そこに。
「おや、あの赤い彗星とやりあったという姫様が何ため息ついてるんだい?」
いかにもオトナの女性という感じの女性軍人が俺の隣にやってきた。あまりにオトナって感じで、中身はガンオタ男子高校生(なお恋愛経験なし、男女の経験もなし)な俺としては、思わずドキドキしてしまったり。
「あ、隊長」
そう、この人はライラ・ミラ・ライラ。俺の所属している、この巡洋艦ボスニアのMS隊長である。
とてもさばさばした感じの女性で、まさに女性軍人って感じ。俺がこのボスニアに配属してからは、俺がグリーンノアでシャアと互角にやりあったという噂(半分事実だが)もあってか、とてもよくしてもらってる。
「姫様はやめてくださいよ。それに、赤い彗星とやりあえたのは、赤い彗星が手を抜いてくれたのと、他に二人仲間がいたからこそなんですから」
「そう謙遜することはないさ。それがあっても、赤い彗星と戦ったというのは、誇りに思っていいと思うよ」
「はぁ……」
自分ではそんなに大したことじゃないと思うんだけどなぁ。
「それで、どうしたんだい?」
「はい。それが……」
と、そこでブリーフィングを告げる放送が入った。
まぁ、話の続きは出撃中でもいいか。そう思いながら、俺はライラさんとブリーフィングルームに向かっていった。
* * * * *
そして、ブリーフィングが終わった。
俺がブリーフィングルームを出ようとすると、ライラさんに声をかけられた。
「カレル、一杯付き合わないかい?」
と言って、ライラさんは小さなウィスキーボトルを抱え上げる。
「……ライラさん。作戦中は、飲酒禁止のはずですよ?」
飲酒運転ダメ、絶対。
でもライラさんは、快活に笑って答えた。
「大丈夫だよ。中身はノンアルさ。ウィスキーボトルに入れてるだけだ」
「はぁ……それならいいですが」
そう言って俺は、近くの自販機でジュースを買って戻った。
「なんだい、カレル。あんたアルコール苦手かい?」
「はい、あまり好きではないですね。というか今は作戦中ですよ」
「そうかい、それは残念」
そんなライラさんに苦笑を浮かべる。
「ライラさんは酒は好きなんですか?」
「どんな酒でもってわけじゃないさ。ただ、いい男と飲む酒は大好きだね」
そういえば原作でも、「いい男にもたれかかって酒が飲めることはいいものだ」って言ってたなこの人。
なんか大人の女性って感じだ。
俺もそんな女性になりたい……いやいや、俺は元とはいえ男なんだ。
「でも、あんたも、私とおいしい酒を呑める人になれる素質はあるよ。あんたが酒が飲めるようになって、それでお互いこの戦いを生き残れたら、一杯やろうじゃないか」
「はぁ……」
本当にそうなれたらいいし、そうなってほしい。心からそう思う。
だって原作では……。
* * * * *
「ライラ・ミラ・ライラ、ガルバルディβHMU、出るよ!」
その言葉とともに、ライラさんの機体、高機動型ガルバルディβが発進していく。
確か高機動型ガルバルディβは、史実?(外伝のADVANCED OF Z)では、テストパイロットごとエゥーゴに寝返ったはずだけど、この世界ではライラさんが使っているらしい。どうやら、乗り逃げ事件は発生せず、そのまま試験配備されたか、ライラさんがテストパイロットになっているかのどっちかになってるみたい。やはり俺が転生してきたことで、史実と違ってきてるんだろうか?
そう思ってるうちに、俺が発進する番がきたようだ。俺は新しい愛機であるガルバルディβ(こちらは通常型だ)をカタパルトまで移動させ、そして言い放つ。
「カレル・ファーレハイト、ガルバルディβ、行きます!」
そして、俺のガルバルディβは宇宙へと飛び出していった。
* * * * *
今回の任務は、エゥーゴのアーガマに合流しようとしているエゥーゴの援軍、巡洋艦モンブランを阻止することだ。
実戦はこれで二度目だが、やはり緊張するものは緊張する。
と、そこで通信が。ライラさんのガルバルディからだ。
「はい、こちらアスグリム。クリムゾンローズ、どうぞ」
クリムゾンローズというのは、ライラさんのコールネームだ。
全天周スクリーンに通信画面から開き、ライラさんが映し出される。
「どうだい、ガルバルディの乗り心地は?」
「はい。前に乗っていたガンダムMk2もいい機体でしたが、こちらもなかなかです」
これはお世辞でもなんでもない。Mk2ほどではないが、こちらも捨てたものではないと思う。
ガルバルディβは、元ジオンのMSガルバルディ(そのB型という説あり)を改修したものなのだが、そのガルバルディからして、運動性が従来機より向上しているという話なので、その性能は推して知るべし。
とても乗りやすいうえに、機動性もなかなかいい。本当に悪くない機体だ。
ただ一つ文句を言いたいのは、ライラさんが俺を気に入り、余計な世話を焼いてくれたせいで、パーソナルカラーを俺の髪色の茶色に(勝手に)決めたうえで、その色に機体を塗装してくれたことだが。
まぁ、でもそれ以上の恩をライラさんから受けているので、これ以上文句を言う気はないけどな。
「そうかい、それはよかった。それで、さっきはどうしたんだい?」
ライラさんに問われて、俺はまた少し気が重くなってしまう。あの問題のことを思い出したのだ。
「はい……。自分も顧みて、特に信念も理由もなく、流されるままに戦ってるな、このままでいいのかな、って……」
「……そうかい」
そこからまた、少しの沈黙。
「そういえばライラさんはなんで戦ってるんですか?」
「私かい? まぁ、色々あるけど、やっぱりMSに乗るのと、戦うのが好きだからだね」
……身もふたもない答えだった。
「それだけでもないよ。やっぱり私たちが戦えば戦うほど、敵が減って、その分地球が平和になっていくからね。私が好きなことで、世界が平和になっていくなら、それほどうれしいことはないさ」
「そうですか……」
それも一つの『戦う理由』かもしれない。自分の好きなことが平和につながるなら、それは十分理由になるだろう。その犠牲も含めて。
俺はどうだろうか。俺が戦うことで、果たして平和が進むことになるのか……?
「まぁ、戦う理由なんて、そうすぐに見つかるものではないさ。今はその種があれば十分だと思うけどね。あんたにはそういうのはないのかい?」
「それは……」
思い返してみる。自分の心の中を探り、そして見つけた。
目の前で光に飲み込まれ消滅するカプセル。
カプセルと一緒に塵となった女性。
少年の泣き声。
「……ありました。まだ漠然とですけど」
「そうか、なら今はそれで十分さ。無理に早く咲かせる必要はない。早く咲かせようとたくさん水をあげても、種が腐るだけだからね。自然のまま、流れのまま、咲くのを待てばそれで大丈夫さ」
「そうですね……ありがとうございます」
「礼を言われるほどのことじゃないよ。おっと、モンブランが見えてきた。気合入れなよ」
「はい!」
そして俺は気合を入れなおし、ガルバルディβを、巡洋艦モンブランへと向けた。
* * * * *
モンブランがかなり大きく見えてきたところで、艦からエゥーゴカラーのGM2が出撃してきた。
さっそくそのうちの一機がこちらにビームライフルを撃ってくるが、俺はそれをなんとかかわす。
さすがガルバルディβ。運動性がハイザックと比べて段違いだ。俺としてはかなり限界のつもりだったんだが、ガルバルディにとってはこのくらいは朝飯前らしい。何を言っているかわからないと思うが(略
「前世では友達の中で、ガンダム対戦ゲー最強だったんですからね……!」
次の射撃もかわし、ビームライフルの射撃を敵のGM2の右腕に定める。トリガーを引くと、そのGM2の右腕が吹き飛ばされた。さらに急接近し、左腕をきり飛ばした。
むやみやたらに敵を殺すのは好きじゃない。もちろん必要とあらばヤることに躊躇は……ないと思うけどな。
でも、あのライラさんから色々レクチャーしてもらったからか、かなり操縦や戦いがうまくなったような気がする。原作のジェリドが、月面でMk2を追い詰めたのもわかる気がするな。
そのGM2を無力化した俺は、周囲に敵影がないのを見てとると、愛機をモンブランに突っ込ませた。そして、対空砲火をかわしながら、その機銃とビーム砲をかたっぱしから破壊していく。
そして俺は、ブリッジの正面に移動すると、ビームライフルを突き付けて勧告した。
「ただちに降伏してください。逃走の素振りを見せたり、なおも抵抗するならブリッジを吹き飛ばします!」
* * * * *
結局その後、モンブランはこちらの勧告に応じて降伏してくれた。ブリッジを吹き飛ばすなんてことをしなくて済んでよかった。その後は、ボスニアにいる連邦軍の士官をお目付け役としてモンブランに送り込んだうえで、月面のグラナダに向かうという話だ。
そしてボスニアのブリッジでは……。
「モンブランを無力化したうえで降伏させるとは。よくやった! さすがはライラ大尉が見出した『褐色の姫』だ!」
「よしてくださいよ。モンブランを無力化できたのは、ライラ隊長や他のみんなが敵のMS隊を引き受けてくれたからですし。というかなんですかその『褐色の姫』って」
ボスニアの艦長、チャン少佐からお褒めの言葉をいただいていた。こんなにほめられてくすぐったいけどな。だけど異名をつけられるのはいかがなものかと。俺はここに配属されて一週間しか経ってないし、なんだその『褐色の姫』って。異名がつくにはまだ早いけど、つけるならつけるでもっといい異名をつけてくれ。
それに、あえてモンブランを降伏させたのは、余計な犠牲を出したくないから、という私情もあったしな。本当にこそばゆい。
でも、和やかな雰囲気はそこまでだった。ブリッジクルーがある通信を、チャン艦長に知らせたからだ。
「ティターンズから要請だ。エゥーゴのアーガマが、追跡を逃れて30バンチに向かっている。これを撃破されたし、とのことだ」
その艦長の言葉を聞き、俺は身が引き締まる思いがした。
30バンチ。かつてティターンズが毒ガスで住民を皆殺しにした『30バンチ事件』のあった場所。
そして……。
* 次回予告 *
「カレル……本当なのかい? さっきのことは……」
ライラは絶対有利な立場で戦うつもりであった。しかし、サイド1「30バンチ」の悪夢が、ライラを死に招き寄せた。彼女を助けようと急ぐカレルの想いもむなしく、Mk2の必殺の銃撃が、ライラを撃ち抜いた。
(あんな子供に!子供なのに!)
ライラの復讐に燃えるカレルに、ライラの鎮魂の歌が届く。
次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』
第4話『ライラの声』
刻の涙は、止められるか?
※4話の更新は、10/30 17:30の予定です。お楽しみに!
[今回登場新MS]
・RMS-117-HMU
ガルバルディβ高機動型
ガルバルディβHMUとも。ガルバルディβにブースターユニットを追加して機動力を向上させたタイプ。
史実(A.O.Z)では、テストパイロットによってエゥーゴに持ち出されたが、この世界では、ガルバルディ乗りであるライラの腕を買われて、ボスニアにテスト配備されている。
このブースターユニットは不要時にはパージすることも可能。
味方になったジェリド君。新しい愛機は何がいいですか?
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ガブスレイ
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バイアランカスタム(もどき)
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ガンダムMk2
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ネモ
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メタス
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