ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより   作:ひいちゃ

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そういえば、カミーユ父が持ち出してやられたのはシャア専用だったんですね。失念してました汗

この世界では、一般機を持ち出していた、ということにしといてください(平伏


ボスニア編#02『ライラの声』

 サイド1、30バンチ。かつてここでは、反地球連邦政府の集会が行われていた。

 集会があまりに大きくなりすぎて手に負えなかった連邦政府は、ティターンズに鎮圧を要請。だがティターンズは、そこであまりに非情な策をとった。

 毒ガスをコロニー内に注入し、集会とは関係ない住民も含めて、集会の参加者を皆殺しにしたのだ。

 事件後、ティターンズと連邦はこの事件を徹底的に隠ぺい、事件は闇に葬られた。

 

 そんな暗い過去のあるこの地だが、俺……カレル・ファーレハイト曹長にとってはそれ以上に因縁(?)のある地だった。

 ここでの戦闘で、現世で俺の上司であるライラさんが、カミーユに敗れ、戦死したのだ。

 現世でそんなことはあってほしくないと思いつつ、俺は沸き起こる不安を抑えることができなかった。

 

 さて。ボスニアも30バンチに接近したが、やはりアーガマの狙いがわからない。原作を見てきた俺としては、『30バンチ事件を見せることで、ティターンズのひどさと、エゥーゴの理念をカミーユ(と寝返ったエマさん)に実地教習する』と予想はつくけど、作中世界の中のボスニアクルーにはそんなことはわからないわけで。

 ……待てよ。この世界でもそれをするということは、結局カミーユはエゥーゴに参加したのか? あれから、自分なりの戦う理由を見つけられたのだろうか? だったらいいけど。でもカミーユとやりあうのは嫌だな。

 

 まぁ、何はともあれ、彼らの狙いを探るべく、ボスニアはアーガマが入ったのとは別の宇宙港に入港した。そして俺とライラさんが偵察しに行くことになったのだが……。

 

「ライラさん。できればライラさんはここで、ボスニアの直掩についてくれませんか?」

「? なぜだい? 私はここのMS隊の隊長だ。行かないわけにいかないじゃないか」

 

 そこで俺はため息をついた。確かにその通りなのだが……。

 

「そういうのなら止めませんが……見たくないものを見ることになるかもしれませんよ?」

「???」

 

 できれば俺だって見たくはないんだから。30バンチ事件の惨状など。

 

* * * * *

 

 コロニーに入った俺たちを待っていたのは、思った通りの光景だった。住民のミイラがあちらこちらに散らばっている。

 あるミイラは、公園のベンチに腰掛けたまま干からびていた。

 また、あるミイラは、そのまま空を舞っていた。

 

 前世で見たことはあっても、こうしてリアルで目の当たりにすると本当にきつい。

 

「……っ」

「大丈夫かい、カレル? ほら」

「あ、ありがとうございます」

 

 ライラさんが差し出してくれたエチケット袋を受け取り、その中にこみあげてきたものを吐き出す。

 

「これはひどいね……。激発性の伝染病で全滅したと聞いたけど……」

「いえ、これは伝染病なんかではないですよ」

「え?」

 

 目を丸くして聞き返してくるライラさん。おっとしまった。ついポロリと出てしまった。どう言いつくろうとしたところで、聞き覚えのある声がした。

 

「……とアピールをしただけなのだ」

「それでバスクはこんなことを……」

 

 シャアとカミーユの声だ。まぁ、シャアの声は前世でアニメなどで聞いたぐらいなのだが。俺とライラさんはその声のするほうに歩いて行った。

 

* * * * *

 

 愕然として立っているカミーユとエマ。苦虫をかみつぶしたような顔をしているクワトロ・バジーナことシャア。

 少しして、カミーユが絞り出すように問いかける。

 

「なんでこんなひどいことができるんですか……?」

「手に刃物を持って殺さないからさ」

 

 そこに。

 

「手に血の付かない人殺しでは、殺される者の痛みはわからないんですよ。そうですよね?」

「「!?」」

 

 聞き覚えのある声に、衝撃を受けるカミーユとエマ。視線を向けた先から、二人の女性が姿を現した。

 

* * * * *

 

「カレルさん……!」

「カレル……。ここにきてたの……?」

 

 その場に現れた俺……カレル・ファーレハイト……とライラさんを見て、カミーユとエマさんが絶句する。それは当然だろう。カミーユにとっては、捕まっていた時に、色々世話になった女性兵士、そしてエマにとっては一緒に戦った戦友なんだから。俺は。

 

「久しぶりだね、カミーユ君、エマさん」

 

 そして、空を見上げる。そこには、ティターンズの非道を訴えるかのように、服の切れ端が舞っていた。

 

 しかし、ここで彼らに遭遇してしまった以上、事件の真相をライラさんにも話さないわけにはいかないだろう。俺が言わなくてもシャアに教えられる可能性が高いのだ。それならば。

 俺は覚悟を決めた。

 

「ティターンズはひどいことをするものですよね。集会を鎮圧するために、この中に毒ガスを流し込んで皆殺しにするなんて。その中にいた私が言うことではないですが」

「なっ……!」

 

 ショックを受けるライラさん。まぁ仕方ない。ここであった事件のことは、一部の以外には徹底的に隠ぺいされていたんだから。

 

「本当なのかい、それは!?」

「えぇ。アングラサイトを見て知ったことなんですけど、このありさまを見て確信できました。そうでしょう? 完全環境都市であるコロニーで突然伝染病が発生するなんて、おかしいじゃないですか」

「……」

 

 沈黙しているライラさん。よっぽどショックだったんだろう。そんな彼女に代わり、シャアが口を開いた。

 

「ほう……意外だな。ティターンズの中に30バンチ事件の事を知っている者がいるとは。いやそれより、それを許せない善人がいるとは」

「ティターンズだからって、悪い人たちばかりではないんですよ?」

 

 そう言って苦笑する。外伝ではあるがT3部隊みたいな人たちもいるし。

 

「ところでカミーユ君、エゥーゴに参加しているってことは、戦う理由は見つけられた?」

「それはまだ……でも、きっかけのようなものは見つかったような気がします」

「そう、なら私と同じだね。ならこれからは、手加減なんかしないからね」

 

 そう言って、私はシャアに銃を突きつけた。シャアが表情を引き締めて言う。

 

「それは、エゥーゴには入らない、という意思表示ということでいいのかな?」

「えぇ。私は今いる組織の中で、平和のためにできることをするつもりです。もし何かの事情でエゥーゴに拾われることがあれば、その時は話が変わってきますけど、今はまだ」

「カレル……」

 

 ふとつぶやくエマさん。そこでまた、シャアが口を開く。

 

「君の志は立派だが、ティターンズに牛耳られてる連邦が世界を平和にできるとは思えんな。ティターンズに乗っ取られて、第二のジオンになるだけだ」

「そうかもしれません。でも、ダメと思って何もしなければ、それで終わりですよ?」

 

 あなたがアクシズ落としをしようとしたとき、それを食い止めようと、ロンド・ベルと協力したネオ・ジオン兵(あなたの部下)もいたんですよ?

 そう心の中でつぶやく。

 

 とそこで、別の方向から銃弾が放たれて、俺の足元に着弾する。どうやら、シャアとカミーユ、エマさんだけでなく、ほかのエゥーゴ士官もここに来ていたらしい。俺たちは、あわててその場を後にした。

 

* * * * *

 

 宇宙港に戻った俺たちは、MSに乗り込み、アーガマ撃破のために宇宙を飛んでいた。

 

「カレル……本当なのかい? さっきのことは……」

 

 ライラさんの声が少し弱々しい。よほどさっきのことが堪えているらしい。俺だって、前世の記憶で知っているとはいえ、自分のいる組織がそんな非道なことをしたと思えば、心穏やかでいられない。事件のことを知らないライラさんはなおさらだろう。

 

「えぇ、本当です。信じたくない気持ちはわかりますが……」

「そうかい……。ジオンの残党の奴らがしたことを、ティターンズのせいにしたってことでもないのかい……?」

 

 そう思いたい気持ちもわからなくはないが……。でも、そう現実逃避しても、現実は変わらないし、何より前に進めない。

 

「えぇ、残念ながら……。ライラさん、気持ちを割り切りましょう。ティターンズはティターンズ。私たちは私たちです。それに、また同じことがあった時は、私たちがそれを止めればいいんです」

「強い子だね、あんたは……」

「ライラさんほどじゃありませんよ」

 

 と、そこで向こうからガンダムMk2と一機のリック・ディアスが飛んでくるのが見えた。そのリック・ディアスは赤い。シャア専用だろう。

 

「と、敵が来たね。話はここまでにしようか。こいつらを振り切って、一気に叩くよ!」

「了解です!」

 

 よかった、いつものライラさんだ。そう安心して、俺はスティックを握る。

 

 しかし、俺は見逃していた。

 

 そのライラさんの声に、少しの揺れがあったことを。それが彼女をオールドタイプゆえの悲劇に導こうとしていることを。

 

* * * * *

 

 ライラさんの高機動型ガルバルディβにはカミーユのMk2が向かい、俺には……シャアのリック・ディアスが向かってきた! なんだこれ! 無理ゲーすぎるだろ!

 

 シャアのリック・ディアスがクレイバズーカを発射する。俺はそれをなんとかかわす。……あれ?

 

 ライラさんの特訓の成果と、このガルバルディβのおかげか、回避に専念すれば、なんとかなりそうだ。

 でもそれでは、シャアを突破することはおろか、攻撃することもできない。ここは、ライラさんがカミーユを突破してくれることを願うしかないか……。

 

 それから、シャアとギリギリのMS戦を繰り広げる。ガルバルディの機動性を頼りに、シャアの放つビーム・ピストルやクレイバズーカをなんとかかわし続ける。

 

 その時。

 

 俺の耳……いや意識に、何かが聞こえた……気がした。

 

(あなただってさっきのカレルさんの言う事聞いたでしょ!?)

(何御託を並べて!)

 

 間違いない。俺の上司で恩人……ライラさんと、カミーユの声だ。

 俺の手のひらに汗がにじむ。

 

(あんな子供に!子供なのに!)

 

 いけない!!

 俺は嫌な予感を感じ、ガルバルディを声の聞こえたほうに向けて、ブースター全開でそちらへと突進した。

 

* * * * *

 

 間に合わなかった。

 俺がたどり着いたその時、ライラさんの高機動型ガルバルディβがビームサーベルを振り下ろす。マーク2はそれを回避。

 

 そして。

 

 Mk2がビームライフルを撃つ。

 ビームがガルバルディの胸に直撃する。

 

 ガルバルディが爆散した。

 

「ら、ライラさああああああん!!」

 

 絶叫する俺。その瞬間。

 

 アレキサンドリアで、俺がカミーユに話していた言葉も。

 ライラさんが俺にかけてくれた言葉も。

 さっき俺がライラさんにかけた言葉も。

 

 全て、頭の中から抜け落ちていた。

 

 よくも!

 よくも!!

 よくも!!!

 

 よくもライラさんを!! 俺の恩人を!!

 

 ただあるのは、俺の上司、俺の恩人、俺の大切な人だったライラさんを倒した仇敵、カミーユ・ビダンに対する怒りと憎しみのみ。

 その怒りと憎しみに突き動かされるように、俺はガルバルディを駆る。

 

 後ろからのリック・ディアスのクレイバズーカに左腕を吹き飛ばされるが、気にしない。ただ、目の前の仇を討つためだけにガルバルディを突進させる。

 

 ライラさんの無念を!

 彼女を奪われた俺の怒りを!!

 胸を焦がすこの憎しみを!!

 

 お前も思い知れ、カミーユ・ビダン!!

 

 その時だった。

 

 俺の耳にまた、聞き覚えのある声が届いた。

 

(気持ちを割り切ろう、ティターンズはティターンズ、連邦は連邦、って言ってたのはあんたじゃなかったかい? カレル?)

 

 ライラさんの声。さらに声は続ける。

 

(あんたは強い娘じゃないか。そんなあんたが、憎しみと怒りに駆られるなんて、らしくないよ……)

 

 そして声は消えた。でもその声が、俺に冷静さを与えてくれた。

 

 そうだ。ここで復讐でカミーユを討っても、ライラさんは喜ばないだろう。

 あるガンダムキャラも言ってたじゃないか。

 

「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで世界が平和になるのかよ!?」

 

 って。

 

 俺は大きく息をつくと、ガルバルディβを反転させ、ボスニアに帰還させるルートをとった。

 情けをかけてくれたのか、他に思うところがあるのか、アーガマからの対空砲火こそあれど、ガンダムMk2からもリック・ディアスからも、ビームが飛んでくることはなかった。

 

 ボスニアに向かうMSの中。その中で俺の中に一つの考えが浮かんでいた。ついに見つかった戦う理由。

 

 もう、大切な人を失い、泣く人を見るのはたくさんだ。

 もう、大切な人を失い、憎しみと怒りに胸を焦がす人を見るのはたくさんだ。

 そんなのはもう、俺だけで十分だ。

 

 ボスニアが見えてくる。

 

 俺はこの力を、戦いの犠牲者を少なくするために使う。

 俺のできることなど、限られているかもしれないが

 それでも。

 俺のできる限りで、刻の涙を少なくするように頑張ろう。

 

 それが、俺がこの世界に転生してきた理由かもしれないから。

 

 そう決意を固める俺の目からは、大粒の涙が流れていた。

 




* 次回予告 *

ライラの死を胸に刻み、エゥーゴとの戦いに向かうカレル。
そのガルバルディは、月での重力の中、ガンダムMk2と激闘を展開する。
一方、エゥーゴは、局面打開のために、大きな作戦を進めようとしていた。

次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』

第6話『月面の死闘』

刻の涙は、止められるか?

次の更新は、11/2 17:30の予定です。お楽しみに!

味方になったジェリド君。新しい愛機は何がいいですか?

  • ガブスレイ
  • バイアランカスタム(もどき)
  • ガンダムMk2
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