ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより 作:ひいちゃ
この世界では、一般機を持ち出していた、ということにしといてください(平伏
サイド1、30バンチ。かつてここでは、反地球連邦政府の集会が行われていた。
集会があまりに大きくなりすぎて手に負えなかった連邦政府は、ティターンズに鎮圧を要請。だがティターンズは、そこであまりに非情な策をとった。
毒ガスをコロニー内に注入し、集会とは関係ない住民も含めて、集会の参加者を皆殺しにしたのだ。
事件後、ティターンズと連邦はこの事件を徹底的に隠ぺい、事件は闇に葬られた。
そんな暗い過去のあるこの地だが、俺……カレル・ファーレハイト曹長にとってはそれ以上に因縁(?)のある地だった。
ここでの戦闘で、現世で俺の上司であるライラさんが、カミーユに敗れ、戦死したのだ。
現世でそんなことはあってほしくないと思いつつ、俺は沸き起こる不安を抑えることができなかった。
さて。ボスニアも30バンチに接近したが、やはりアーガマの狙いがわからない。原作を見てきた俺としては、『30バンチ事件を見せることで、ティターンズのひどさと、エゥーゴの理念をカミーユ(と寝返ったエマさん)に実地教習する』と予想はつくけど、作中世界の中のボスニアクルーにはそんなことはわからないわけで。
……待てよ。この世界でもそれをするということは、結局カミーユはエゥーゴに参加したのか? あれから、自分なりの戦う理由を見つけられたのだろうか? だったらいいけど。でもカミーユとやりあうのは嫌だな。
まぁ、何はともあれ、彼らの狙いを探るべく、ボスニアはアーガマが入ったのとは別の宇宙港に入港した。そして俺とライラさんが偵察しに行くことになったのだが……。
「ライラさん。できればライラさんはここで、ボスニアの直掩についてくれませんか?」
「? なぜだい? 私はここのMS隊の隊長だ。行かないわけにいかないじゃないか」
そこで俺はため息をついた。確かにその通りなのだが……。
「そういうのなら止めませんが……見たくないものを見ることになるかもしれませんよ?」
「???」
できれば俺だって見たくはないんだから。30バンチ事件の惨状など。
* * * * *
コロニーに入った俺たちを待っていたのは、思った通りの光景だった。住民のミイラがあちらこちらに散らばっている。
あるミイラは、公園のベンチに腰掛けたまま干からびていた。
また、あるミイラは、そのまま空を舞っていた。
前世で見たことはあっても、こうしてリアルで目の当たりにすると本当にきつい。
「……っ」
「大丈夫かい、カレル? ほら」
「あ、ありがとうございます」
ライラさんが差し出してくれたエチケット袋を受け取り、その中にこみあげてきたものを吐き出す。
「これはひどいね……。激発性の伝染病で全滅したと聞いたけど……」
「いえ、これは伝染病なんかではないですよ」
「え?」
目を丸くして聞き返してくるライラさん。おっとしまった。ついポロリと出てしまった。どう言いつくろうとしたところで、聞き覚えのある声がした。
「……とアピールをしただけなのだ」
「それでバスクはこんなことを……」
シャアとカミーユの声だ。まぁ、シャアの声は前世でアニメなどで聞いたぐらいなのだが。俺とライラさんはその声のするほうに歩いて行った。
* * * * *
愕然として立っているカミーユとエマ。苦虫をかみつぶしたような顔をしているクワトロ・バジーナことシャア。
少しして、カミーユが絞り出すように問いかける。
「なんでこんなひどいことができるんですか……?」
「手に刃物を持って殺さないからさ」
そこに。
「手に血の付かない人殺しでは、殺される者の痛みはわからないんですよ。そうですよね?」
「「!?」」
聞き覚えのある声に、衝撃を受けるカミーユとエマ。視線を向けた先から、二人の女性が姿を現した。
* * * * *
「カレルさん……!」
「カレル……。ここにきてたの……?」
その場に現れた俺……カレル・ファーレハイト……とライラさんを見て、カミーユとエマさんが絶句する。それは当然だろう。カミーユにとっては、捕まっていた時に、色々世話になった女性兵士、そしてエマにとっては一緒に戦った戦友なんだから。俺は。
「久しぶりだね、カミーユ君、エマさん」
そして、空を見上げる。そこには、ティターンズの非道を訴えるかのように、服の切れ端が舞っていた。
しかし、ここで彼らに遭遇してしまった以上、事件の真相をライラさんにも話さないわけにはいかないだろう。俺が言わなくてもシャアに教えられる可能性が高いのだ。それならば。
俺は覚悟を決めた。
「ティターンズはひどいことをするものですよね。集会を鎮圧するために、この中に毒ガスを流し込んで皆殺しにするなんて。その中にいた私が言うことではないですが」
「なっ……!」
ショックを受けるライラさん。まぁ仕方ない。ここであった事件のことは、一部の以外には徹底的に隠ぺいされていたんだから。
「本当なのかい、それは!?」
「えぇ。アングラサイトを見て知ったことなんですけど、このありさまを見て確信できました。そうでしょう? 完全環境都市であるコロニーで突然伝染病が発生するなんて、おかしいじゃないですか」
「……」
沈黙しているライラさん。よっぽどショックだったんだろう。そんな彼女に代わり、シャアが口を開いた。
「ほう……意外だな。ティターンズの中に30バンチ事件の事を知っている者がいるとは。いやそれより、それを許せない善人がいるとは」
「ティターンズだからって、悪い人たちばかりではないんですよ?」
そう言って苦笑する。外伝ではあるがT3部隊みたいな人たちもいるし。
「ところでカミーユ君、エゥーゴに参加しているってことは、戦う理由は見つけられた?」
「それはまだ……でも、きっかけのようなものは見つかったような気がします」
「そう、なら私と同じだね。ならこれからは、手加減なんかしないからね」
そう言って、私はシャアに銃を突きつけた。シャアが表情を引き締めて言う。
「それは、エゥーゴには入らない、という意思表示ということでいいのかな?」
「えぇ。私は今いる組織の中で、平和のためにできることをするつもりです。もし何かの事情でエゥーゴに拾われることがあれば、その時は話が変わってきますけど、今はまだ」
「カレル……」
ふとつぶやくエマさん。そこでまた、シャアが口を開く。
「君の志は立派だが、ティターンズに牛耳られてる連邦が世界を平和にできるとは思えんな。ティターンズに乗っ取られて、第二のジオンになるだけだ」
「そうかもしれません。でも、ダメと思って何もしなければ、それで終わりですよ?」
あなたがアクシズ落としをしようとしたとき、それを食い止めようと、ロンド・ベルと協力した
そう心の中でつぶやく。
とそこで、別の方向から銃弾が放たれて、俺の足元に着弾する。どうやら、シャアとカミーユ、エマさんだけでなく、ほかのエゥーゴ士官もここに来ていたらしい。俺たちは、あわててその場を後にした。
* * * * *
宇宙港に戻った俺たちは、MSに乗り込み、アーガマ撃破のために宇宙を飛んでいた。
「カレル……本当なのかい? さっきのことは……」
ライラさんの声が少し弱々しい。よほどさっきのことが堪えているらしい。俺だって、前世の記憶で知っているとはいえ、自分のいる組織がそんな非道なことをしたと思えば、心穏やかでいられない。事件のことを知らないライラさんはなおさらだろう。
「えぇ、本当です。信じたくない気持ちはわかりますが……」
「そうかい……。ジオンの残党の奴らがしたことを、ティターンズのせいにしたってことでもないのかい……?」
そう思いたい気持ちもわからなくはないが……。でも、そう現実逃避しても、現実は変わらないし、何より前に進めない。
「えぇ、残念ながら……。ライラさん、気持ちを割り切りましょう。ティターンズはティターンズ。私たちは私たちです。それに、また同じことがあった時は、私たちがそれを止めればいいんです」
「強い子だね、あんたは……」
「ライラさんほどじゃありませんよ」
と、そこで向こうからガンダムMk2と一機のリック・ディアスが飛んでくるのが見えた。そのリック・ディアスは赤い。シャア専用だろう。
「と、敵が来たね。話はここまでにしようか。こいつらを振り切って、一気に叩くよ!」
「了解です!」
よかった、いつものライラさんだ。そう安心して、俺はスティックを握る。
しかし、俺は見逃していた。
そのライラさんの声に、少しの揺れがあったことを。それが彼女をオールドタイプゆえの悲劇に導こうとしていることを。
* * * * *
ライラさんの高機動型ガルバルディβにはカミーユのMk2が向かい、俺には……シャアのリック・ディアスが向かってきた! なんだこれ! 無理ゲーすぎるだろ!
シャアのリック・ディアスがクレイバズーカを発射する。俺はそれをなんとかかわす。……あれ?
ライラさんの特訓の成果と、このガルバルディβのおかげか、回避に専念すれば、なんとかなりそうだ。
でもそれでは、シャアを突破することはおろか、攻撃することもできない。ここは、ライラさんがカミーユを突破してくれることを願うしかないか……。
それから、シャアとギリギリのMS戦を繰り広げる。ガルバルディの機動性を頼りに、シャアの放つビーム・ピストルやクレイバズーカをなんとかかわし続ける。
その時。
俺の耳……いや意識に、何かが聞こえた……気がした。
(あなただってさっきのカレルさんの言う事聞いたでしょ!?)
(何御託を並べて!)
間違いない。俺の上司で恩人……ライラさんと、カミーユの声だ。
俺の手のひらに汗がにじむ。
(あんな子供に!子供なのに!)
いけない!!
俺は嫌な予感を感じ、ガルバルディを声の聞こえたほうに向けて、ブースター全開でそちらへと突進した。
* * * * *
間に合わなかった。
俺がたどり着いたその時、ライラさんの高機動型ガルバルディβがビームサーベルを振り下ろす。マーク2はそれを回避。
そして。
Mk2がビームライフルを撃つ。
ビームがガルバルディの胸に直撃する。
ガルバルディが爆散した。
「ら、ライラさああああああん!!」
絶叫する俺。その瞬間。
アレキサンドリアで、俺がカミーユに話していた言葉も。
ライラさんが俺にかけてくれた言葉も。
さっき俺がライラさんにかけた言葉も。
全て、頭の中から抜け落ちていた。
よくも!
よくも!!
よくも!!!
よくもライラさんを!! 俺の恩人を!!
ただあるのは、俺の上司、俺の恩人、俺の大切な人だったライラさんを倒した仇敵、カミーユ・ビダンに対する怒りと憎しみのみ。
その怒りと憎しみに突き動かされるように、俺はガルバルディを駆る。
後ろからのリック・ディアスのクレイバズーカに左腕を吹き飛ばされるが、気にしない。ただ、目の前の仇を討つためだけにガルバルディを突進させる。
ライラさんの無念を!
彼女を奪われた俺の怒りを!!
胸を焦がすこの憎しみを!!
お前も思い知れ、カミーユ・ビダン!!
その時だった。
俺の耳にまた、聞き覚えのある声が届いた。
(気持ちを割り切ろう、ティターンズはティターンズ、連邦は連邦、って言ってたのはあんたじゃなかったかい? カレル?)
ライラさんの声。さらに声は続ける。
(あんたは強い娘じゃないか。そんなあんたが、憎しみと怒りに駆られるなんて、らしくないよ……)
そして声は消えた。でもその声が、俺に冷静さを与えてくれた。
そうだ。ここで復讐でカミーユを討っても、ライラさんは喜ばないだろう。
あるガンダムキャラも言ってたじゃないか。
「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで世界が平和になるのかよ!?」
って。
俺は大きく息をつくと、ガルバルディβを反転させ、ボスニアに帰還させるルートをとった。
情けをかけてくれたのか、他に思うところがあるのか、アーガマからの対空砲火こそあれど、ガンダムMk2からもリック・ディアスからも、ビームが飛んでくることはなかった。
ボスニアに向かうMSの中。その中で俺の中に一つの考えが浮かんでいた。ついに見つかった戦う理由。
もう、大切な人を失い、泣く人を見るのはたくさんだ。
もう、大切な人を失い、憎しみと怒りに胸を焦がす人を見るのはたくさんだ。
そんなのはもう、俺だけで十分だ。
ボスニアが見えてくる。
俺はこの力を、戦いの犠牲者を少なくするために使う。
俺のできることなど、限られているかもしれないが
それでも。
俺のできる限りで、刻の涙を少なくするように頑張ろう。
それが、俺がこの世界に転生してきた理由かもしれないから。
そう決意を固める俺の目からは、大粒の涙が流れていた。
* 次回予告 *
ライラの死を胸に刻み、エゥーゴとの戦いに向かうカレル。
そのガルバルディは、月での重力の中、ガンダムMk2と激闘を展開する。
一方、エゥーゴは、局面打開のために、大きな作戦を進めようとしていた。
次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』
第6話『月面の死闘』
刻の涙は、止められるか?
次の更新は、11/2 17:30の予定です。お楽しみに!
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