ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより 作:ひいちゃ
Zガンダムという題材様様です。大感謝(平伏
なお、本文には書かれていませんが、ライラさんの戦死後、補充要員がMS隊に配属されています。モブですが(笑
「今日もシミュレーター訓練か。精が出るな、ファーレハイト曹長。さすが『褐色の姫』だ」
「成すべきことを成すには、力が必要ですから。というか、『褐色の姫』はやめてください。私はそんな異名をつけてもらえるような人ではないんですから」
ブリッジの艦長席で、シミュレータ使用届けを手にそう茶化すように言ってくるチャン・ヤー艦長にそう答える。
ライラさんを守れなかったことへの自虐も込めて。
その俺の内心を慮ったのか、チャン艦長はそれ以上は言わず、話題を変えた。別の書類を手に取って口を開く。
「そうだ。上からの辞令が届いた。ライラ大尉が戦死したことを受けて、副隊長のマクマナス中尉が隊長を引き継ぎ、大尉に昇進した。それに合わせて、貴官も少尉に昇進となった」
「昇進、ですか」
「そうだ。これからもその力量を連邦軍のために役立ててもらいたい」
「わかりました、拝命いたします」
そして艦橋を出る。
俺……ガンオタ高校生が転生した女性パイロット、カレル・ファーレハイト曹長改め少尉は、引き続き連邦軍内で、自分の立場で、自分のできる範囲内で、犠牲を、悲しむ人を、刻の涙を減らしていくようにこの力を使おうと決意した。
だがそのためには、エゥーゴのクワトロ・バジーナことシャア、そしてカミーユ・ビダンと対等に戦えるだけの実力を持たなければならない。彼らと戦場で遭遇することだってあるのだ。
今の自分では、まだそこまでの力も腕もない。今の自分では、到底彼らと戦って勝てるとは思えない。遭遇したところで最終的にやられるだけだ。
だから力をつけるしかない。練習して練習して練習して。せめて、彼らと一対一で互角に戦える力を。
ニュータイプである彼らに食いつくには、並みの訓練では追いつけないかもしれない。でもやるしかない。俺の願いをかなえるためには。
力なき正義は無力。
あるキャラが言ってた言葉が、今の俺の胸に大きく響いた。
* * * * *
その日、シミュレータ訓練に向かっていた時に、それはやってきた。その前日から具合が悪かったのだが……。
下腹部がなんか痛い。股に何か違和感が……。
「まさか……?」
俺はちょっと急いで女子トイレに駆け込んだ。そして……。
「うわああああああ!?」
悲鳴を上げた。そう、あの日だった。
* * * * *
「女なんて嫌いだ……」
食堂でテーブルに突っ伏し、俺はそう嘆いていた。あの後、カレルとしての記憶を探りながら応急処置と血の処理をした後、医務室に直行し、生理用品をもらってきたのは言うまでもない。
TS転生してからかなりの月日が経ったものの、やはり女の身体は慣れない。トイレも男とは勝手が違うし、女の肌は弱いから、男の時のように垢すりでごしごしするわけにもいかないし、それに何よりあの日。
最近はそうした違いも、少しは楽しめるようになったものの、やはり生理だけは嫌だ。
女子生徒の皆さん。「女子は大変だなー」と笑っちゃってすいません。俺が浅はかでした。
そして俺が突っ伏してると。
「今回はまた、大きな悲鳴だったな、姫」
「そうですね。少尉、もうこんなこと何回も遭遇して慣れてるんじゃないんですか?」
食事をのせたプレートを乗った、二人の男性軍人がやってきた。大柄の、いかにも軍人といった感じの30代に見える男性と、頭をスポーツ刈りにした、俺と年が近そうな男性だ。
もちろん、俺は二人のことをよく知ってる。大柄のほうが、先ほど艦長が言っていたヴァン・マクマナス大尉。このボスニアのMS部隊の副隊長だ。先ほどの話通り、ライラさんの戦死後は、その後を継いで隊長に就任している。
スポーツ刈りのほうはジョッシュ・ミレット少尉。MS部隊の一員であり、部隊のムードメーカーだ。階級が同じせいか、よく俺をちゃかしたり、時にはライバル視してきたりと、俺とはよく関わっている男だ。
「何回も遭遇しても、やっぱり慣れないものは慣れないんですよ。あと、今回はいつもより量が多かったですし」
「そうなんですか。本当に女性って大変な生き物ですよねー」
「そんな軽い気持ちで言って……。なんなら、ジョッシュも女になってみますか? そうすれば私の気持ちもわかりますよ」
「い、いや、それはやめとく」
そこで、マクマナス大尉がこほんと咳払いをする。
「そういえば二人とも、あのことは聞いているか? エゥーゴの動きのことは」
「あぁ、ジャブローを狙ってるって話ですね」
「今、奴らはアンマンで準備を進めているって話でしたっけ」
そう、もうそんな時期なのだ。目に見える成果を挙げたいエゥーゴのスポンサーが、エゥーゴに地球連邦軍本部ジャブローの攻略を指示した。それを受けてエゥーゴは軌道上からMS部隊を降下させてジャブローを制圧する作戦を発動させた。
そこで、ジャブローとその衛星軌道上で、降下を阻止しようとするティターンズとエゥーゴとの間で戦いが繰り広げられたのだ。
そうだ、確かそのジャブローでは……。
「どうしたのだ、姫? 何か考え込んでいるようだが」
「いえ。もしかしたら、ティターンズからこのボスニアにも、そのジャブロー降下作戦の阻止に向けての支援要請が来るのかな、と思いまして」
「まぁ、来てもおかしくないですよね。ティターンズは連邦軍を手下のように見てますし」
「ですよね」
なんか意見が一致してしまった。やっぱりジョッシュもティターンズのことを良く思ってなかったのね。まぁ、ティターンズを好意的に見れる奴がいたら見てみたいが。
そこで、マクマナス大尉がまた「こほん」と咳払いをした。
「まぁ、俺もティターンズは好きではないが、それでも要請が来たら全力を尽くすだけだ。二人とも、心身ともに準備を行い、その時には全力を尽くせるように」
「はっ!」
「了解です」
* * * * *
その後、本当にティターンズからの通達が来た。ジャブロー攻略準備のため、アンマンに向かっているアーガマを攻撃せよ、というのだ。
さすがにアンマンの上空で戦うわけにはいかない。そんなことをしたら民間人にも被害が出るし、そうなれば月市民たちの連邦への心証も悪くなるだろう。
というわけで。
「……」
『緊張しているな、ファーレハイト少尉。でも逸るなよ。焦りは隙を生む』
「はい、わかってます」
月の地表を飛ぶ俺のガルバルディβに通信が入る。そのマクマナス大尉の言葉に、俺はうなずいて応えた。
先ほども言った通り、アンマンの上空で戦うわけにはいかない以上、アンマンに到着されたらこちらの負けだ。ということで、このようにアンマンに向けて、月地表を飛行途中のアーガマを襲う、という作戦とあいなった。
正直言って、ライラさんの仇を討ちたくない、といえば嘘になる。でもそれよりも、誓いを果たすこと、刻の涙を減らすことのほうが重要だ。
それを何度も、心の中で呟きながら、俺のガルバルディは、隊の仲間たちと月面を進んでいった。
そうしているうちに、アーガマの偵察隊らしきMSがやってきた。幸いながらに、シャアのリック・ディアスやカミーユのガンダムMk2は含まれていないらしい。
とはいえ、地形から言って、彼らの目を盗んでアーガマに接近する、ということはできそうになさそうだ。
『偵察が出てきたか。仕方あるまい。こいつらを蹴散らして先に進むぞ。手が開いたMSは、そのままアーガマに向かえ』
「了解です!」
そしてMS戦が始まった。
* * * * *
さすがライラさんが鍛えた強者たちだ。雑魚……もとい一般兵とはいえ、アーガマのMS隊と互角以上にわたりあっている。
俺のほうにも、GM2が一体、向かってきている。GM2が撃ってきたビームライフルをかわし、シールドミサイルを発射! ミサイルがGM2のシールドを破壊したのを確認したところで、ビームライフルを発射する。
ビームは、GM2の胸部を貫通! パイロットが脱出した直後、爆散した。
こちらの手が開いたので、お先にアーガマに向かわせてもらう。後ろを見ると、さすがというべきか、マクマナス大尉も無事に、アーガマの偵察隊を突破してきている。ジョッシュは……うん、まだ偵察隊と戦ってるみたいだ。
このまますんなりアーガマに取り付ければ……と思ったことが、俺にもありました。
でも、現実はそう簡単にはいかないらしい。
アーガマからまたMSが発進してきた。どうやら、こちらが本命みたいだな。出てきたのは、黒いリック・ディアスが2機(まだシャアが百式に乗り換えていないので一般機は黒のままなのだ)と、シャアの赤リック・ディアス、そしてカミーユのガンダムMk2だった。
俺は冷や汗が流れるのと同時に戦慄を感じ、マクマナス大尉に警告した。
「大尉、気を付けてください。ガンダムはライラさんを倒した奴、そして赤い奴は、シャアが乗っています!」
『赤い彗星か! そいつは大変そうだな。カレル少尉も気をつけろよ! 無理はするな!』
「了解です!」
そして戦闘態勢をとる。マクマナス大尉のほうには、シャアと黒リック・ディアスの二機が、そして俺のほうにはカミーユのMk2ともう一機の黒リック・ディアスが接近してきた!
スティックを握る手に力がこもり、手汗がにじむ。犠牲を減らすのが重要で、ライラさんの仇にはこだわらないと決めているが、やはり、ライラさんを倒したカミーユに勝ちたいという気持ちは抑えがたい。
「行くよ、カミーユ君!」
『あの
ビームライフルを撃つ。カミーユのガンダムMk2はそれをかわすと、あちらもビームライフルを撃ってきた。俺は、ガルバルディの機動性に任せてそれを回避する。
と、別の方向から弾が発射された。それをシールドで防御する。シールドが破壊された。
今撃ってきたのは、黒いリック・ディアスのようだ。シャアと一緒に出てきた、ということはアポリーさんかそれともロベルトさんか?
しかし、二機を相手に戦うというのは、ちょっときついな。しかも、そのうちの一機はカミーユだ。ここは回避重視で、仲間か友軍が駆け付けるまで粘ったほうがいいかもしれない。とはいえ、そうしているうちにアーガマがアンマンに入ってしまうんだが。でも、やられないためには仕方ない。
それから俺は黒いリック・ディアスと、カミーユのMk2相手に戦いを繰り広げた。というより、回避に専念し、少ない隙ができたところで攻撃していた、と言ったほうが正しいな。
原作ではジェリドは、カミーユとかなりいい勝負してたんだけどなぁ。やはり、二対一という状況と、カミーユが戦う理由を見出して、戦いに参加することに抵抗が少ない、というのが大きいか。
と、その時、上空からビームが発射され、黒リック・ディアスの左腕が吹き飛ばされた。見ると、マラサイ二機が飛んでくる。
『そこのガルバルディ、無事か!』
「ジェリド君! カクリコンも来てくれたの?」
『カレルか!』
なんと、ジェリドとカクリコンが駆け付けてきてくれた。これで勝つる! 多分。
「私はガンダムMk2をやるわ。二人は、黒いリック・ディアスをお願い。あと、そっちで戦っているガルバルディの援護もしてくれると嬉しい」
『お願いが多いな。まぁいい。カクリコン、お前はそっちの援護をやってくれ。俺は、こっちの黒リック・ディアスをやる』
『了解』
そうだ、これもお願いしておかなきゃ。
「それと、できればパイロットを殺さない方向でお願いね。人が死ぬのをあまり見たくないから」
『お願いが多いな本当!』
「お・ね・が・い」
『わかったからやめろ! 気色悪いんだよ!』
かくして、黒リック・ディアスの相手をジェリドに任せ、俺は改めて、ガンダムMk2との戦いを再開した。
ガルバルディの機動力を全開にして、カミーユの射撃をかわしながら、Mk2に迫る。
俺はジェリドじゃないけど、あえて言わせてもらう。
「たとえ君がニュータイプでも、月面の戦闘ははじめてのはずだよね!」
『くぅっ!』
本当に僥倖だ。ジェリドの場合は、カミーユが月面戦闘に不慣れなことを突いて、月面での戦いを仕組んだのだが、こちらは作戦を仕掛けた状況でこうなったのだから。
対してこちらは、ライラさんに、色々戦いについて仕込まれた。MS戦は俺のほうに一日の長がある! 例えるなら、ラ〇ウとケンシ〇ウ!! 作品違うけど!
こちらのビームライフルをMk2はジャンプでかわすが、着地に失敗して倒れてしまう。
「消えろ少年!……いやうそうそ、消えてもらうつもりはないから!」
とクロ〇クルのセリフをパクりながら、左手にビームサーベルを構えて飛び掛かる。
と、横からクレイバズーカが放たれた。さすがに飛び掛かっている状況では回避もままならず、右腕を破壊される。
見ると、黒いリック・ディアスがもう一機、接近してきた。
通信が入る。
『戦いはそこまでよ、カレル! アーガマはもうすぐアンマンに入る!』
「エマさん……って、ええ!?」
見ると、ほんとだ。いつの間にか、戦いの舞台はアンマンのすぐ近くになっていた。カミーユとの戦いに集中しすぎていたせいだろう、たぶん。
『撤退して、カレル。アーガマがアンマンに到達した以上、これ以上の戦いは無駄なはずよ』
「そうですね……残念ですが。今度は負けないわよ、カミーユ君」
『カレルさん……』
俺は、カミーユ相手に、あと一歩で勝てるところまでいったことの、ささやかな満足と、作戦を達成できなかった無念さがないまぜになりながら、ガルバルディを後退させた。見ると、マクマナス大尉のガルバルディや、ジェリドやカクリコンのマラサイも撤退を開始している。
ボスニアの帰還の途中、ジェリドから通信が入る。
『なかなかやるようになったじゃないか、カレル。ガンダム相手にあそこまでやるとは』
「ううん、まだまだだよ。結局作戦の目的は達成できなかった。まだまだ訓練が必要だね」
『真面目な奴だな。だがお前なら、きっといいパイロットになれる。俺が保証するぜ』
そのジェリドの言葉に、ちょっと悪戯心がわいてくる。
「ありがとう。惚れたらだめだよ」
『ば、馬鹿、俺はそういうつもりで言ったんじゃない!』
「わかってるよ。助けに来てくれてありがとう」
『お、おう。これからもがんばれよ』
そう言って、ジェリドとカクリコンのマラサイは上空に飛び上がり、アレキサンドリアに帰還していった。
そうだ、俺は一人じゃない。ボスニアの仲間がいるし、ジェリドとカクリコンという旧友もいる。例え彼らと相対することがあっても、この彼らとのつながりがあれば心配はいらない、そう思い、俺はバーニアを全開にして、ボスニアへ飛んで行ったのだった。
* 次回予告 *
ティターンズの巡洋艦を奪う作戦を決行するアーガマ。そのアーガマの隙を狙う作戦が実施された。
「ありがとうございます。でも、別にHMU仕様にしなくてもよかったのに」
「なぁに、せっかく予備パーツがあるんだ。使わないともったいないだろう? そして使うとなったら、それはライラが見出した『褐色の姫』しかいないだろうよ」
ライラの遺したものを受け継ぎ、その戦いに参加するカレル。
彼女はそこで、カミーユの新たな素質の発現を見るのだ。
『カレルさん!』
「カミーユ君か。本当にいいタイミングで来るね!」
次回、『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』
第7話、『カミーユの発現』
刻の涙は、止められるか?
※次の話は、11/05 17:30に更新予定です。
味方になったジェリド君。新しい愛機は何がいいですか?
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