黒しか愛せない   作:クロアブースト

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現実主義なポケモン世界+黒いポケモン縛りのトレーナーのお話です。


劇場版 ミュウツーの逆襲
プロローグ 執行機関とトレーナー達の現実


ポケットモンスター、縮めてポケモン。

10才を迎えた少年少女達は初めて貰ったポケモンと共に夢と希望に満ちた冒険を繰り広げる……

 

だがそんなのはごく一部でしかないとコクトは知っている。

 

 

 

『君にポケモントレーナーとしての才能はない』

 

ああ、分かっているよナナカマド博士。初心者向けの御三家と呼ばれるなつきやすいポケモン達からすら拒絶されたんだ。

色んなポケモンをゲットしていかなければいけないポケモントレーナーとしては致命的だ。

トレーナーになる前にブラッキーに進化してくれる色違いのイーブイがパートナーになってなければポケモントレーナーにすらなれなかっただろう。

数年経った今でもいうことを聞くポケモン達は1BOXで足りてしまう程に少ないのだ。まさに茨の道と言っていいだろう。

 

『ポケモンと人は歩み寄れば分かり合うことが出来るのです』

 

とあるポケモン評論家め、そんなのは幻想だ。

何せ生まれたばかりのポケモンですら俺のいうことを聞かないのだ。とある事情があるとはいえ、LV1のポケモンかつ親が自分のポケモンが一切いうことを聞かないなんて前代未聞である。

まあそいつはポケモンの巣に放り込まれて白骨死体になって帰って来たので身をもって証明に失敗したのだが……

 

『こんな沢山の産まれたばかりのポケモンを逃して……貴方に人の心は無いのですか?』

 

育て屋め、お前こそ人の心は無いのか!

色違いで将来黒いリザードンになるヒトカゲ以外はバッジを8個持ってても一切俺のいうことを聞かない。こんなのサトシのリザードン以上の問題児達だ。

どんな高個体値だろうが、トレーナーのいうことを聞かないポケモンは役立たず以外の何者でも無いのだ。

寧ろボックスを占有するなら賃料を払うべきである。それが出来ないから退去させて何が悪い。

まあそいつは多くのポケモントレーナーの孵化余りを引き受け続けたせいで家庭崩壊し、最後には娘を売るなんて最低行為をしでかしたがな。

 

 

何より許せないのは俺を転生させたアルセウス神である。

 

『お主にワシの加護をやろう!黒いポケモンしかいうことを聞かない加護じゃ(笑)』

 

ふざけるな!

それの何処が加護だ!

お陰で御三家や野生ポケモンの大半がゲット出来ない時点で一つ目のジム戦すらまともなパーティを組めないのだ。

俺が最も好きだった厨ポケと呼ばれる優秀なポケモン達の殆どが仲間に出来ないという縛りを与えられたのだ。

黒いポケモンしか仲間に出来ないなんてどれだけ大変だったと思っている。

 

覚悟しろアルセウス!

どんなに時間が掛かっても、いつか貴様をぶっ飛ばす!

 

コクトはアルセウス神に挑む為に仲間を集め続けた。

 

まずは黒いポケモンを中心に野生で捕まえた。

だが元々黒いポケモンばかり集めると偏るタイプを補う為に色違いで黒くなるポケモンの存在を知り、孵化厳選可能なポケモンは大量生産という膨大なコストを掛けて色違いを孵化させた。

孵化厳選の出来ない伝説ポケモンは何度も倒しては復活させて再挑戦という周回をこなして何とか色違いを出して捕まえた。

 

 

そんな努力をし続ける中で成長した彼はリーグに新設された組織、執行機関に所属する。

 

そして数年後………

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から執行機関に配属されたイッシュ地方出身のメイです!皆さんよろしくお願いします!」

 

茶髪のロングヘアーをお団子付きツインテールに結びサンバイザーを装着している少女メイが挨拶をする。

ポケモンBW2をプレイした人なら誰もが知る女主人公であるのがメイだ。

イッシュ地方を震撼させた『全力全壊ガール』と畏怖されており、彼女と対峙したプラズマ団を中心とした悪人達はノイローゼになった被害者が後を絶えないと言われている。

そしてそんな彼女を迎えたのは一人の少年と二人の少女である。

黒髪赤目に黒コートという何処ぞの執行人スタイルをしていた少年はメイに挨拶をする。

 

「ようこそ執行機関へ。俺の名はコクト、旅でも一緒だったが改めてよろしくな」

「はい!よろしくお願いしますコクトさん!」

 

コクトとメイは握手をする。

彼の名はコクト。『黒衣の執行者』と畏怖されるトレーナーであり、手持ちポケモン全てが黒いという変わったトレーナーである。

執行機関のメンバースカウトも兼ねており今いるメンバーの大半はコクトが関わっている。

 

メイとは有能な人材を探している時に新人トレーナーとなった彼女と出会い、師弟関係を結んで旅をしながらレクチャーをしていた。

 

「へぇ〜君もコクトがスカウトしてきた一人なんだね。私はミズキ、よろしくね」

「……リーフ……よろしく」

「よろしくお願いします!ミズキ先輩、リーフ先輩!」

 

同じく執行機関に所属している少女の二人が挨拶をする。

一人はウルトラサン・ウルトラムーンで女主人公だった少女、ミヅキ。通称ウルトラビーストの女王と畏怖されており、自称ベッドソムリエというベッドの生々しい感触をレビューしてたせいでポケモンセンターから出禁にされた変態である。

もう一人はファイアーレッド・リーフグリーンで女主人公だった少女、リーフ。

通称リビングレジェンドと畏怖される少女であり、基本無口だがポケモンへの愛情とポケモンバトルでの強さは無類の強さを誇りカントー地方ではチャンピオンに至るまで一度も敗北することなく勝ち続けた怪物である。

更に本人も防寒装備無しでシロガネ山を過ごすというスーパーマサラ人の潜在能力を持つ少女だ。

 

「うんうん、やっぱり可愛いね!コクト君ったらこんな美少女捕まえてきてぇ……悪い男だよねぇ♪」

「きゃ!?ミヅキ先輩!?」

 

ミヅキはスキンシップとしてメイに抱き付く。男女問わず気に入った相手には抱き付くのは執行機関では知れ渡っている。

 

「ミヅキは男女問わず抱き付き癖があるからな。それと容姿が良いのは認めるがメイをスカウトしたのは優れたトレーナーの才能を感じたからだ」

「え〜ミヅキちゃんみたいな可愛くて強〜い女の子ばっかり集めてハーレムを築きたいんじゃないのぉ?」

「そういう下心な連中の処理方法を教えたのは誰だと思っている」

「財布も実力も緩い新人女子トレーナーは破綻する……下心ある連中はそういう弱みにつけ込むのはよくあること……」

「あ、私も友達の女の子の六割がパパ活経験者でしたね」

 

メイはサラッと女子トレーナー達の爛れた肉体関係を語り出す。昨今新人女子トレーナー達のパパ活などの援助交際が社会問題となっているのだ。

 

「全く嫌だよねぇ……女の子はお洒落にお金を使うけど、バトルで勝てなきゃお小遣いは貯まらないから負け続けると援助交際に走っちゃうんだよ」

「……生きてくにはお金は大事、けど原因は資金繰りの甘さだから自業自得……」

「自信満々にパパ活をSNSとかで語ってる女子トレーナーがいますけど、自分の価値を落としてるって自覚が無いんでしょうね」

 

三人揃えば姦しいというように援助交際批判を始める彼女達。だがこの世界は残念ながらゲームやアニポケのような夢も希望もない現実主義な世界なので新人女子トレーナー達の援助交際は後を絶えないのである。

 

何せ生活資金だけでもバトルでの収入のみで得るのには勝ち続ける必要がある。

だが馬鹿正直にコラッタなどの弱いポケモンばかり使い続けるトレーナーばかりではない。

御三家を貰ったばかりの少年少女達に短パン小僧がバンギラスを繰り出すことだってあり得るのがこの世界である。

自分の手持ちのレベルに合わせたトレーナーと戦い勝ち続ける。

そんなのは主人公のような運命力を持つトレーナーでも無ければ不可能だろう。

だから新人女子トレーナー達の援助交際は止まらないのである。

 

因みに新人男子トレーナー達もパパ活では無いが、ショタ喰いの女トレーナー達の餌食にあってたりするのは余談である。

美人のお姉さんが子供達を優しく励まし、旅のサポートを行う。そんな夢のような話に引っかかった連中はホイホイとホテルへ連れ込まれて食べられるのだ。

あいつら食虫植物じゃねと思われても仕方ない奇行である。

 

「俺からすればトレーナーも付けずにソロで旅しようと思うのは無謀だがな。援助交際然り、経験者のサポート無しで旅するとか自殺行為だからな」

「確かにそうでしたね。私の友達の男の子で自分の力だけでポケモンマスターになってやる!って言ってた数人が数ヶ月で行方不明になってましたし……」

「彼等は甘い……ソロで手持ちポケモンが全滅=死なのを理解出来てない……」

 

メイやリーフの言う通りゲームと違って手持ちポケモンが全滅したら目の前が真っ暗になってポケモンセンターに直行出来るのは稀である。

何せポケモンと遭遇しておいて簡単に逃げられないからこそ手持ちポケモンを出して戦うのだ。

つまり抵抗できなければ待つのは捕食や殺害などの悲しい現実が待っている。

この世界では新人トレーナー向けの支援トレーナー制度というのが発足している。

未経験な新人トレーナーに向けてベテラントレーナー達がレクチャーしながら同行してくれるという制度である。

まあ仲介料として4割の賞金が徴収されたりするから利用しないトレーナーが多いのが現状である。

 

「コクトさん、執行機関のメンバーは全員でしょうか?」

「いや今フリーな連中の紹介をしただけだ。他のメンバーは各地で活動中だ」

 

執行機関、それは表向きのポケモンリーグのジムリーダーや四天王、チャンピオンで解決出来ないポケモンテロを解決する為の機関である。

基本的には基本給の他に有事に発生する依頼の出来高が主な収入である。

基本給だけでも一般的な生活は可能なのだが、チャンピオンでも解決出来ないレベルの事件を解決した際の収入はエリートトレーナーやチャンピオンの収入を大きく超える。

それ故に執行機関志願者は多いのだが、大体が最低条件のポケモンリーグ優勝後に現役のチャンピオンを打倒するという条件を満たせず実力不足で不採用になるのである。

つまり新人であるメイですらチャンピオンより強いのだ。

 

「さて早速依頼だ。メイは新人研修として同行してもらうがミヅキやリーフはどうする?」

「ミヅキちゃんはパス。先日の事件解決でお金に困ってないし」

「私もパス……お金はそんなに必要じゃ無いし……コクトが出るなら私が出るまでも無い……」

「それはシロガネ山に篭ってたらお金は必要ないもんね〜」

「えぇ…こんな感じで良いんですかコクトさん?」

「まぁ執行機関のメンバーは独特だからな。それに人数多いと山分けだから取り分減るしな」

 

コクトとしては今回の依頼は自分一人でも解決出来る簡単な依頼なので他の執行機関メンバーは来なくても問題ない。もし必要ならば後で増援要請すれば事足りるからである。

 

「因みにどんな依頼なんでしょうか?」

 

メイの呟きに答えるコクト。

 

「ミュウツーによる国際テロだ」

 

そうしてメイとコクトは『劇場版型国際テロ』の一つと対峙することになるのであった。


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