変態レズ団長と花騎士達   作:イッチー団長

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今回はバナナオーシャンでのお話
季節感が現実と真逆で申し訳ない……


真夏の海のナンパ対決

 夏だ、海だ、水着ギャルだ!

 というわけで、長期休暇を使用して我々は常夏の国、バナナオーシャンへやって来た。ウィンターローズとは真逆の気候に最初は戸惑ったけれど、このカラっとした暑さは中々好きだ。

 それに何より、そこら辺の女の子が皆半裸で歩いている。これは本当に最高だ!

 

「はぁ……はぁ……あっちのロリっ子も、こっちの少女も良いですね……。むっはー!」

「だ、団長さん、鼻血出てますよ」

「はっ! いかんいかん……」

 この調子では身体が持たない。干からびてミイラになってしまう。どこかに逃げなければ……。

 

「団長、もうすぐ海に着くッスよ」

「海っ!? ひゃっほぉぉぉい!!」

 こんなに幸せなら、干からびてしまってもいいか。そう思う今日この頃だった。

 

 

 

「ふふ……ビックウェーブが私を待っている!」

「……ハツユキソウさん、何してるんですか?」

「わぁっ!? ソヨゴさん、それに皆さんも!」

 

 地元民のハツユキソウちゃんは先に着いて準備をしてくれていたようだけど……

「ハツユキソウちゃん、何ですかその格好は?」

 サーフボードにサングラス、そして何故かサンタ服。どう考えても季節感がおかしい。

 

「冬と夏の融合ですよ。最近流行りなんです」

「そう……なんですね」

 ハツユキソウちゃんが言うのなら、そういうことにしておこう。

 

「でもハツユキソウちゃんはサーフィン出来るんですね。何だか意外です」

「勿論です。何たってバナナっ子ですからね!」

 江戸っ子的なニュアンスなのかな?

 

「それに、サーフィンが上手ければ女の子からキャーキャー言われますよ」

「何ですと!? ハツユキソウちゃん、私にサーフィンを教えて下さい!」

 わいわいと真夏の海を満喫している、その時だった。

 

「むっ……!」

「あっ……」

 明らかにその場に不釣り合いな恰好の二人がいた。一人は黒いローブ、もう一人はロリータファッション。小柄なのにめっちゃ目立っとる……。

 

「カマボコ博士!?」

「アクア! 何故こんな所に……」

「それはこっちのセリフですよ。せっかくバカンスを楽しんでいる時に……」

「バカンスだと! 奇遇だな、余もバカンスなのだ。世界征服は体力を使うからなぁ。しかし休暇中であっても相手が貴様とあらば関係ない。今ここで決着を「ご主人、アクア団長もういなくなってるよ」

 砂浜の上に南風が一筋通り過ぎた。

 

 

 


「ふぅ……休みの日まで彼女達に構っていられませんよ……」

「コラァ! スルーするでない!」

「げっ……!?」

 砂埃を巻き上げながら、アーティちゃん達が滑空して接近してきた。観光客の目が痛い……知り合いだと思われたくない……。

 

「いや、ホント……今日はプライベートなのでお互い関わらないようにしません?」

「ダメだ! 貴様と余は永遠の宿敵、そこに休暇など存在しない。アーティ、やってしまえ!」

 こちらも迎撃体勢を取ったが、攻撃が始まることはなかった。

 

「むっ、どうしたアーティ? ……んんっ!?」

「ねぇねぇそこの彼女~、あたいとお茶しない~?」

 カマボコ博士が見たもの、それは水着ギャルをナンパするアーティちゃんの姿だった。

 

「何やっとるかぁ~!」

「だってぇ~……折角海に来たんだし、水着ギャルと遊ばないと勿体無くない?」

「この愚か者めが~!」

 

「……何か揉めてるみたいだし、今の内に逃げましょうか」

 花騎士達に耳打ちし、抜き足差し足でその場を後にしようとする。しかし、

「待てぃ!」

「ひゃんっ!?」

 逃げようとした我々の足元に銃弾が撃ち込まれた。

 

「むぅ~……余はお前達を倒したい、アーティは遊びたい……ならば仕方ない」

 カマボコちゃんが黒いローブを脱ぎ捨てると、ピンク色のワンピース水着が露になった。

「ここは間を取って、ナンパ対決を行うぞ!」

「はぁぁ~!?」

 

 やたらとドヤ顔のカマボコ博士。ギャグだと思ったら大真面目に言っているらしい。

「いやいや、何故そこで間を取るんですか!?」

「この大胆で柔軟な発想こそ、余を天才たらしめる所以なのだ」

 

 

 

「いや、だからと言って何故ナンパ対決なんて……」

「え~、何々~? アクア団長逃げるの~?」

 アーティちゃんが口元に手を当てて、流し目で私を見つめてくる。

 うん? 逃げる? 誰が……?

 

「そう煽るでない、アーティ。誰だって負けると分かっている戦はしたくないのだ。特に騎士団長などと偉そうに名乗っているお方だ、プライドだけは一人前だろうからな」

「ふふふ……それで挑発してるつもりですか?」

 だとすれば甘すぎる。私は花騎士を束ねる騎士団長。この程度のことがスルー出来なくてどうする。

 

「ふぅ~……ふぅ~……!」

「だ、団長! あんな安い挑発に乗っちゃダメッス!」

「の、乗ってませんけど? 全然平気ですけど!?」

(駄目そう……)

 

「それに女性経験も少なそうだしな。ナンパなんて夢のまた夢だろう」

 その言葉に何かがプッツンと切れるのを感じた。

「誰が童貞だ! やってやろうじゃないですか、ナンパ対決!」

 

(そこまでは言ってないのだが……)

(というか、女性経験はご主人も他人のこと言えないんじゃ……)

 

 

 


 そんなこんなで、真夏のビーチを舞台に、騎士団とカマボコ博士のナンパ対決が始まった。

「ルールは簡単。両陣営が連れてこられた女共の人数を競う」

「でもこっちは七人、そちらは二人ですよ。大丈夫ですか?」

 私の発言にカマボコ博士は高らかに笑い始めた。

 

「まさか対戦相手を気遣うとは。童貞女の癖に随分と余裕だな?」

「童貞じゃねぇし! フェアな勝負じゃないと、後々いちゃもんが付くかもと思っただけです」

 

「その点は問題ない。余のチームには最強の助っ人がいるのだから」

「助っ人?」

「出でよ、ナンパロボット『アバンチュール』よ!」

「ナンパロボット……アバンチュール!?」

 何だそのネーミング。というか、ナンパロボットって何だ……何の目的で造ったんだ……。

 

「って、来ないですね……」

「まったく何をやって……ん?」

 カマボコ博士の目線を追っていくと、そこには背の高く日焼けしたブロンドガールが女の子三人組に声を掛けていた。

 

「オジョウサンタチ、ワタシトアソビマセンカ?」

「おぉっ! 既にナンパしているとは、気の早い奴だ。というわけで、ナンパ対決スタート!」

「えぇ……」

 

 

 

「皆さ~ん、ヤドリギのケーキッスよ~!」

「物で釣るのはありですか……?」

「勝てばいいんスよ、勝てば。女の子は皆甘い物が好きだし、これは勝ったも同然ッス」

 

 しかし寄ってくる女の子はほとんどいなかった。

「海に来てまでケーキっ気分じゃないんだよね~」

「ね~」

「」

 

 ヤドリギちゃん、戦意喪失。

 

 

 

「ふっふっふ~♪」

 いつの間にかバニラちゃんが鼻歌交じりにハーレムを築いていた。

 

「バニラちゃんは好調みたいですね」

「えぇ。ヤドリギさんの仇は討ちましたよ」

 

「……うん? 何だこの匂い……身体が熱く……」

「あぁ、それはバニラちゃん特性の香水ですね。嗅ぐと快楽物質が頭の中を満たして、この世のものとは思えない極上の幸福感を味わえるんです」

「大丈夫なの、それ!?」

 

 バニラちゃん、失格。

 

 

 

「ん~……むにゃ……」

「なるほど、この機械の構造は……」

「ガンライコウちゃんとツキトジちゃんはもっとやる気出して!」

 

「……ふぅ」

 背後からため息が聞こえてきた。振り返るとそこには……

「皆動きが悪過ぎますよ」

「は、ハツユキソウちゃん……って、何でそんな偉そうなんですか?」

 

「見ていて下さい。王者のナンパ術を見せてあげますよ」

「聞いてねぇな?」

 私の言葉は無視し、大きなお尻を振りながら女の子の群れへ歩いていくハツユキソウちゃん。

(今日はやたらと調子に乗ってますね……地元だからか?)

 

「Hey お嬢さん達! 私と危険な火遊びを楽しみませんか!」

 しかし女の子達は誰一人振り返ることはなかった。そりゃあ、海でサンタ服なんて着てるイカれた女の子だし当然か。

 

「Hey! Hey!」

 そんな彼女の肩をポンと叩く。

「もう止めましょう、ハツユキソウちゃん。心折れてますよ」

「」

 

 

 

「み、皆さん脱落してしまいました……どうしましょう、団長さん」

 瞳をうるうるさせて、上目遣いでこちらを見つめてくるソヨゴちゃん。

 可愛い。このままソヨゴちゃんだけを奪い去りたい程に。

 

「二人だけでどうにかするしかありませんね。ま、ソヨゴちゃんの可愛さがあれば、ビーチ中の女の子は虜になっちゃうと思いますが」

「そんなこと……」

 と、その時だった。

「Hey、そこのAngel。あたしと遊ばな~い?」

 

 声を掛けてきたのは明らかに遊んでいそうな金髪女性だった。

「え、エンジェルって……」

「ふふ、そうやって照れた顔も素敵だよ。どうだい? このままあたしとひと夏の恋をがぁぁぁ!!」

「っ!?」

 

「殺”じでやる……!」

「団長さん! 一般の人相手に本気出しちゃダメです!」

 

 

 


「はっはっはっ! やはり貴様らなど相手にならんなぁ!」

「クチホドニモアリマセンデシタネ」

「くぅ~……」

 カマボコ博士側には既に女の子がわらわらと群がっていた。

 強い。アーティちゃんもナンパロボットも圧倒的にモテ過ぎる。

 

「……まだです」

「む?」

「カマボコ博士、あなたは一人もナンパしてないじゃないですか。ご主人として恥ずかしくないんですか?」

「ふふ……何を言うかと思えば。アーティもアバンチュールも余が造ったもの。つまり余の成果も同然なのだ!」

 

「どうですかね~。もしかして女の子を扱う自信が無いんじゃないですか?」

「何だと!?」

 よし、上手く乗っかってきた。

 

「ご主人、抑えて抑えて……」

 どーどーとご主人をなだめるアーティちゃん。しかしカマボコ博士の鼻息は確実に荒くなっている。

「ドウテイドウシノアラソイハミニクイデスヨ」

「っ~~~! ならばやってやる! アクアよ、一対一の大将戦をやるぞ!」

 測らずも勝負に漕ぎ着けた。この勝負に勝てれば一発逆転、今までの負けは帳消しになる。

 

 

 

「今回は早い者勝ちだ。先に女を連れてきた方の勝ちとする」

「いいでしょう」

 

 スタートと同時に走り出すが、二人がナンパしまくったせいか、フリーの女の子の姿があまり見えない。

「くっ……女の子がいないんじゃどうしようも……」

「ふん、だから貴様は凡人なのだ。見ておれ、天才の発想力を」

 

 カマボコ博士が自信満々に向かっていった先、そこには……

「いやいや、カップルはダメですよ!」

 そんなことは関係ないとばかりに、カマボコ博士は片方の女の子の手を引き、

「この女は貰っていくぞ」

「Noooo!」

 無理矢理連れ去ろうとしていた。

 

「待ちな。あたしの女に何しようってんだい?」

(良く見たら片割れは滅茶苦茶ガラが悪いですね……タトゥーとか入ってるし)

 そして懐から何か黒い物を取り出した。あれはまさか……

「拳銃!? カマボコちゃん、逃げて! マフィアですよ!」

 

 しかしカマボコ博士は余裕にも見える笑みを浮かべる。

「やれるものならやってみよ」

「な、なに~! このガキがぁ!」

 乾いた音と火薬の匂い。撃ち放たれた銃弾は一直線にカマボコ博士に……届かなかった。

 

「ふん、この水着には自動防衛システムが組み込まれているのだ。余を殺したければミサイルでも持ってこい!」

「「「姉御~、どうしたんですか~!?」」」

「って、仲間がいっぱい来ちゃいましたよ!」

 

「面白い。余の支配する世界に貴様らなど必要ない。今ここで叩き潰してくれるわ! 行くぞ、アーティ、アバンチュール!」

「よっしゃー! 暴れるぞー!」

「カワイイコイガイハミナゴロシニシテヤリマス」

 

 

 

「……」

 カマボコ博士達は去っていった。まるで嵐のように。

「何だったんだ全く……」

 

 翌日、バナナオーシャンを拠点とするマフィアが壊滅したというニュースが駆け巡ったのは言うまでもない。




ナンパロボットって何だよ……
多分今後も出番はないと思います(笑)

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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