魔法少女と言えば悪堕ちですよねぇ
今回は至って健全なお話ですが、いつかエロい悪堕ちも書いてみたいです
「マジカルパワー解放☆ メタモルフォーゼ!」
少女の身体が光に包まれる。やがてピンク色のリボンやフリフリのドレスが装着されていく。
「魔法少女カマボコ、ただいま推参☆」
悪の科学者カマボコ博士は一晩考えた渾身の決めポーズを取り、鏡の前で細かいフォームをチェックしていた。
「エクスティアコラボに乗じて作ってみたが……なるほど、これは中々良いものだ」
「ご主人様可愛いぴょん。似合ってるぴょん」
白いウサギのぬいぐるみが跳び跳ねている。カマボコ博士が人工知能を入れた、魔法少女用のマスコットなのだった。
「ふふ、そうだろうそうだろう。やはり世界の支配者には可憐さも必要なの……だ……」
そこまで言って、カマボコ博士はある視線と鏡越しに目が合ったのに気付いた。
「あ、アーティ! 貴様いつからそこにいた!?」
「マジカルパワー解放☆の所からかな?」
「最初からじゃないか!」
カマボコ博士の顔が真っ赤に染まり、そんな彼女をアーティはニヤニヤと見つめていた。
「ご主人ったら~、意外と可愛いのが好きなんだね~。魔法少女カマボコ☆なんてね」
「貴様~~~!」
アーティの頬を引っ張るカマボコ博士。
「いだだだだ! ご主人めっちゃ力強くなってる!」
「余が形だけの変身機能など造ると思うか? メタモルフォーゼによって力も魔力も百倍以上に引き上げられているのだ!」
「そんな~!」
「来い、アーティ! 今から緊急メンテで貴様の記憶を消去する!」
「いやぁ~~~! 許してご主人~!」
そんな二人の姿を見て、ウサギのマスコットは若干引いていた。
(大丈夫かなこの人達……)
そして目に付いたのは魔法少女カマボコが手に持っているマジカルステッキ。
(他に良いご主人様がいるかも知れないぴょん!)
「アーティ! 絶対に許さ……ん……? 何だ? 変身が解けていく……」
その時、アーティが何かに気付いた。
「あぁっ! ウサギがステッキ咥えて出ていった!」
「何だと! コラ待てぴょん吉!」
「カエルみたいな名前!」
「待てないぴょん。僕は他のご主人様を見つけにいくんだぴょん!」
ぴょん吉の尻からジェットブースターが点火。その飛行速度は音速を超える。
「あのウサギ畜生めが……アーティ、追うぞ!」
「あ、うん……」
(何であの位置にジェットブースター付けたんだろ……)
「ふんふん~♪」
上機嫌な鼻歌がバスルームにこだまする。花騎士のソヨゴは白く華奢な身体を湯舟に沈め、戦いの疲れを存分に癒していた。
(ぐへへ、ソヨゴちゃんのお風呂……)
そしてそれを鋭く見つめる眼光。騎士団長のアクアが窓の外からソヨゴの入浴姿を覗いていた。ちなみに浴室は宿舎の3階にある。
「綺麗な星空です……」
(おっと、身を隠さなくては……)
「ん? あれは流れ星……?」
迫り来る白い光。それは星などではなく、ウサギ型マスコットのぴょん吉に他ならなかった。
「どんどん近付いて……こっちに来てます!」
「……ん? ぐぉぉぉ!!」
そしてアクア団長の後頭部にそれは直撃する。音速以上のスピードで飛ぶ物体の突進をもろに受け、アクアの身体は壁を突き破って浴室の中に入り込んでしまった。
「えぇっ! 団長さん!? それに……ウサギさん?」
「やぁ。突然だけど僕と契約して魔法少女にならないぴょん?」
翌日。
「えぇっ、ソヨゴさんが魔法少女に!?」
「そうぴょん。ソヨゴさんは僕と契約したんだぴょん」
「何か成り行きで……」
「変身とか出来るんスか?」
「えっと……えぃっ!」
ソヨゴの身体を光が包む。光の中から魔法少女のコスチュームを纏ったソヨゴが現れる。
「可愛いですよ、ソヨゴさん!」
「は、恥ずかしいです……でもこの衣装を着ると力が湧いてくるんです。これがあればたくさんの人達を守れますね」
「ソヨゴちゃんは花騎士の鑑だし」
「そ、そんなことは……」
顔を赤くするソヨゴ。その時だった。
「このウサギ野郎……昨日は良くもやってくれましたね……」
頭に包帯をぐるぐるに巻いたアクアが現れた。
「チッ、まだ生きてたぴょんか……」
「私を殺しかけた上にソヨゴちゃんをたぶらかすとは……万死に値します!」
槍を持って突撃するアクア。しかし、
「ぐぇぇぇぇ!」
「団長さん!?」
窓を突き破ってきた何かに吹き飛ばされてしまった。
「こんな所にいたよ、ご主人!」
「やっと見つけたぞ、ぴょん吉!」
「うぅ……か、カマボコ博士?」
よろよろと起き上がるアクア。そんな彼女を見て、カマボコ達はようやくこの場所が何処なのか理解したようだった。
「何だ、アクア騎士団に潜り込んでいたのか。悪いがぴょん吉は返して貰うぞ」
「嫌ぴょん」
「何……?」
「僕は既にソヨゴさんという新しいご主人様を見つけたぴょん。アンタなんかより百倍は可愛い、正統派の魔法少女の素質があるぴょん」
「何だと!? 余が花騎士より可愛くないだと!」
「ご主人、張り合う所そこじゃないよ……」
「そうだそうだ~。ソヨゴちゃんは世界一可愛いんです~」
「団長さんも、事態をややこしくしないで下さい!」
「ソヨゴさん、こんな奴らぶっ殺すぴょん!」
「て、手荒なことはダメですよ……取り敢えず落ち着きましょう」
「ぴょん吉、貴様~!」
「カマボコ博士も落ち着いて下さい!」
ぴょん吉に襲い掛かろうとするカマボコの首根っこを掴み、ソヨゴは軽々と彼女を持ち上げてしまった。
(しまった……元から強い花騎士が魔法少女化したら、最早手が付けられなくなってしまう……)
「……仕方ない、最終手段だ。アーティ、あれを出せ!」
「あれか……まぁ仕方ないよね」
アーティがポケットから取り出したのは赤いスイッチ。テプラで『非常停止ボタン』と貼ってある。
「貴様はこれでおしまいだ。余の敵に回るものには死あるのみ!」
ペタっとスイッチが押される。しかし、ぴょん吉から鳴り響いた音声は、カマボコ達の想定とは全く異なるものだった。
「悪堕ちシステム起動……悪堕ちシステム起動……」
「なっ……!? ぴょん吉ぃ! 貴様まさか、自分のプログラムを書き換えたのか!?」
「ふふ、僕に人工知能を与えたのが仇となったぴょんね。悪堕ちソヨゴさんの力で、この世界を僕が支配するぴょん」
「悪堕ち? 説明して下さい、カマボコ博士」
「……元はジョークのつもりで入れた機能だったのだ。変身者の悪の心を増幅させる形態。ついでに衣装も露出の高いものに変わる」
「何ですって!? そんなのをソヨゴちゃんに……」
(正直凄く見てみたい……)
「ダークメタモルフォーゼだぴょん!」
「こ、これは……わたしの中に何かが入り込んで……!?」
ソヨゴの身体が黒いオーラに包まれていく。そして現れたのは黒いハイレグ姿になった魔法少女ソヨゴだった。へそが丸出しになっていて、露出されたイカ腹にはピンク色の淫紋が刻まれている。
(あぁ~~~! エッチ過ぎる! 今日のオカズ決まったわ!)
「魔法少女ダークソヨゴ、ただいま見参★」
アクアやカマボコを見回し、ソヨゴは挑発的な笑みを浮かべた。普段の彼女からは考えられないその妖艶な姿に、アクアは若干股を濡らしている。
「へへ……どうしたんですか、皆さん? 揃いも揃ってマヌケな顔してますね」
「あっ、ソヨゴちゃん……あっ、あっ」ビュルッ
「おいっ、今何を出した!?」
「あぁ~、何か悪いことしたくなってきましたね~……」
「い、一体どんな悪いことをするつもり……?」
「♪♪♪」
突然誇らしげな顔になるソヨゴ。そんな彼女を見て、花騎士達は首をかしげた。
「? 何か変わりましたか?」
「……あっ、見るし! 靴のかかとを踏んでるし!」
(あぁ、かかとを踏むなんて靴屋さんへの冒涜行為……今わたし凄い悪いことしてる……サイコー……)
「よぉし、他にも色々悪いことしちゃいま~す!」
「部屋の外に出たぞ! 追いかけろ!」
「廊下走っちゃダメですよ~!」
「あっ、階段の手すりの上を滑ってるッス!」
「会議室のホワイトボードに落書きしてるわ」
「へっへー、次は~」
「今度は自分の部屋に入っていったッスね」
「何か袋を持って来ましたね」
「ご飯前だけどお菓子食べちゃいます!」
「あぁっ、ポテチを食べ始めたッス!」
「しかもギトギトになった手を服で拭いたし」
「あぁ~……悪いことサイコー!」
(何だぴょんこの人……悪さの次元が小学生以下だぴょん……)
「あの……ソヨゴさん……もっと悪いことしませんぴょん?」
「もっと悪いこと……? あっ、食堂のお塩をこっそり砂糖にすり替えておくとかですか?」
「いや、ほらさ……街の破壊とか殺人とか……」
「え~、そんな悪いことしたらダメですよ~」
「お前は悪の魔法少女じゃろが!」
「ひぃっ!」
「さっきから見てりゃあ何じゃこの体たらくは! 力があるんだからもっと大きなこと成し遂げろよ! 志を大きく持てよ!」
「何かキャラ変わってません?」
「うるせぇ!」
そんな二人の様子を見て、花騎士達は困惑していた。
「何ですかあれ……仲間割れ?」
「分からんが、攻めるなら今だな」
「どうすればソヨゴちゃんを元に戻せますか?」
「アクア……」
(急に冷静になったな。賢者タイムか……?)
「簡単だ。ぴょん吉を破壊すればいい。だがそれを守るは普段の百倍パワーアップしたソヨゴ。迂闊に近寄れば死ぬぞ」
「大丈夫。ソヨゴちゃんの方は私に任せて下さい。あなたはウサギ野郎の破壊を」
「……よし、分かった」
(団長さんとカマボコ博士が手を組んだ……!)
「行くぞ、アーティ!」
「おぉっ!」
「私達も!」
一気に攻めに向かう花騎士・カマボコ連合軍。
「き、来たぴょん! 僕を守るぴょん!」
「わ、分かりまし「ソヨゴちゃん」
「っ!?」
(いつの間に目の前に……!)
アクアはただ速く動こうとしただけだった。だが無意識に使っていたのだ。自分の母が使うワープ走法『縮地法』を。
「戦うつもりですか、団長さん? あなたみたいな雑魚じゃ、わたしには勝てませんよ?」
(ソヨゴちゃんが雑魚って言った……はぁ……はぁ……!)
「戦いませんよ。ソヨゴちゃんに槍を向けるなんて出来ませんから」
「だから……」
アクアは両腕を大きく広げ、ソヨゴの華奢な身体を抱き締めた。
「っ!? な、何してるんですか!?」
「時間稼ぎです。ソヨゴちゃんがその気なら、私は一瞬で死にます。でも……ソヨゴちゃんみたいな優しい子にそんなことは出来ないって、信じてますから」
「団長……さん……」
ソヨゴの脳裏にはアクアとの思い出の日々が浮かんできた。
『団長さん、わたしの下着がなくなってるんですが、何か知りませんか?』
『……』
『……団長さん?』
『すみませんでした!』
『団長さんが爆発するわ! 離れて!』
『ほわぁぁぁ!』
『団長さ~ん!』
『ん? ソヨゴちゃん今セクハラしていいって言いましたよね?』
「って、碌な思い出が無い!」
「アクアが時間を稼いでいる! 一気に決めるぞ!」
「そうはいかないぴょん~。僕はすばしっこいから、アンタ達ノロマには捕まらないぴょん」
ぴょん吉の尻にジェットブースターが点火する。あの小さな身体で音速以上で動かれれば、いかに花騎士達でも捕まえることなど不可能。絶望かと思われたその時!
「いだぁぁぁ!! 何これ、尻が痛いぃ!」
悶え始めるぴょん吉。花騎士やアーティが困惑する中、カマボコだけが高らかに笑っていた。
「はっはっはっ! 無様だな、ぴょん吉よ!」
「ご主人、あれは一体……?」
「痔だ」
「「「「「「……痔!?」」」」」」
予想外の言葉に、その場の全員が声を揃える。
「余は人工知能付きのロボットには痛覚を付けるようにしている。痛みで恐怖を与え、余に逆らえなくするためだ。そして奴のジェットブースターは尻から出る」
「……っ!?」
言葉の意味が分かった途端、花騎士達は尻を押さえ、身を震わせた。
「奴の尻の状況を見て、そろそろかと思っていたのだ。尻が焼け焦げ、もうジェットブースターは使えまい」
「ご主人……恐ろしい人……」
「さぁどうするぴょん吉? まだ抵抗するか?」
「あの……その……許してぴょん♪」
ぴょん吉は可愛らしくお腹を見せて反省の意を示した。
「……」
そんな彼をカマボコは蔑んだ目で見下ろす。
「いや、あの……ホントすみませんでした。靴でも何でもお舐めします」
「そうか……では解体と行こうか」
「いやぁぁぁ!!」
「改めて、あの人は敵に回したくないなぁ……」
無残に解体されていくぴょん吉を見て、顔色がどんどん青ざめていくアーティだった。
「……あれ? わたしは一体何を……」
変身が解け、ダークソヨゴは普通のソヨゴの姿に戻った。
「大丈夫ですか、ソヨゴちゃん?」
「はい。でも記憶が……っ~~~~!?」
突然ソヨゴが床に仰向けになって脚をバタつかせ始めた。その顔はリンゴのように真っ赤に染まっている。
「あれ!? もしかして思い出しちゃった!?」
「はい~~~! すみません、皆さんに迷惑掛けちゃって……!」
「そんなことないですよ、ソヨゴさん」
ソヨゴが顔を上げると、そこには彼女を見て微笑む花騎士達の姿があった。
「いつも真面目すぎるくらい真面目なんですから、たまにはあのくらいはっちゃけて下さいよ!」
「ポテチもたくさん食べればいいし」
「うぅ~、皆さんありがとうございます~」
「一件落着、といったところか」
「みたいだね~」
カマボコ達はそれを遠目で見守り、やがて背を向けた。その背中にアクアの声が届く。
「カマボコ博士!」
「何だ? 文句なら聞かんぞ? ぴょん吉が入り込んだのは、元はと言えば貴様らのセキュリティの甘さが「ありがとうございました」
「……え?」
「だ、団長さんがカマボコ博士に頭を下げてる……」
「ソヨゴちゃんを元に戻せたのはあなたのおかげです。本当にありがとうございました」
「……ふん。帰るぞ、アーティ」
「あっ、待ってよご主人!」
アーティがカマボコの代わりとばかりに手を振り、そのまま二人は空へ飛び立っていった。そのカマボコの顔が赤らんでいたのを、アクア達が知ることは無かった。
「一時的とは言え、あのカマボコ博士と協力するとは……」
「……あの子は根は悪い子じゃありませんからね。いつか分かり合える日がくればいいな、なんて思うんです」
「大丈夫です。きっとそんな日が来ますよ!」
「……はい!」
カマボコ達の姿が夕暮れの向こうに消えていく。彼女達を見送り、アクア騎士団はまた普段の日常に戻るのだった。
やっぱりソヨゴちゃんに悪いことは無理そうですねw
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。