変態レズ団長と花騎士達   作:イッチー団長

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引き続きテニス編
1試合だけなのにやたらと長くなってしまいました……
ダブルスは四人書かなきゃいけないのが難しいですね


開幕! 春庭テニス大会(中編)

『チームオリビアからはブリオニア・スカシユリペア。そしてアクア騎士団からは……ソヨゴ・ハツユキソウペア』

「頑張って下さい、二人とも!」

「はい。必ず勝って団長さんに繋げます」

 

 試合開始前、選手同士が握手を交わす。

「まさかソヨゴさんと戦うことになるなんてね。今日は良い試合をしよう」

「はい! よろしくお願いします、ブリオニアさん」

「アクア騎士団か……この前はアクアさんに負けてしまったからな。リベンジさせて貰う」

「えへへ……まぁお手柔らかに」

 

 顔見知りだからか、和やかな雰囲気が両チームの選手を包む。しかしスカシユリちゃんがサーブモーションに入った途端、その空気は緊張感のあるものに変わっていった。

 

 

 

『ザ ベストオブワンセットマッチ スカシユリ サービストゥプレイ』

「行くのだ……はぁっ!」パワー

「打球音からしてパワーがありそうなサーブッス……」

「スカシユリさん、サーブを打ってすぐ前に詰めましたね。流石の攻めの速さです」

 

「……ふっ!」キュート

「ソヨゴちゃん、相手のパワーに押されず、冷静にパッシングを沈めた! 凄い! 可愛い!」

 

「させない!」クール

「しかしブリオニアはそれを読んでいた。戦術なら彼女に敵う者はいない」

 

「まだまだ! 粘りますよ!」コモノ

「いきなり凄いラリーだし……」

 

「スカシユリさん、次クロスに来る。ポーチに出て!」

「了解したのだ! たりゃぁっ!」

『15-0』

 

「まずいですね……読み合いではどうしてもブリオニアちゃんが何枚も上手です……」

「流石に一筋縄ではいきませんね……」

 

「ふっ……」

「ドロップショット! ソヨゴちゃんも拾ってロブを上げたけど……」

「甘いのだ!」

『30-0』

 

「流石ブリオニア。隙が無いな」

「それにスカシユリの反応速度も驚異的。大佐、よくこの二人を組ませようと思ったね」

「ふふ……以前パルファン・ノッテで二人に会ってな。私の直感がヒビッと来たんだ」

 

『私達がテニスでダブルスを!?』

『そんな即席ペアで大丈夫? 私とスカシユリさんはあまり共通点が無いし、そもそも話したことも少ないんだよ?』

『だからだよ』

『?』

 

『お前達が正反対だからこそ組ませるんだ。普通のペアなら足し算な所を、お前達ならかけ算にすることが出来る。ダブルスには無限の可能性があるんだからな』

『おぉ! よく分からんが凄いのだ!』

『スカシユリさんは単純だね……でも、私も興味が出てきた。ダブルスの無限の可能性に』

 

 

 

『ゲーム チームオリビア 1-0』

(少しは見えてきたかな? ダブルスの無限の可能性って奴が)

「油断せずに行こう、スカシユリさん」

「あぁ!」

 

 

 

 そしてハツユキソウちゃんのサービスゲームに移った。彼女は速いサーブを打つも、ブリオニアちゃんは難なく返球。ソヨゴちゃんが後衛に下がって、後衛同士の激しいラリーが始まった。

 

「はっ!」

(このままじゃまずいです。流れを変えないと……)

「ソヨゴさん!」

(ハツユキソウさん……そうだ、まだ『あの技』がありますね!)

 

「……今です、ハツユキソウさん!」

 ハツユキソウちゃんがポーチに出る。しかしそれを読んでブリオニアちゃんは前へ詰めてきている。これを決めるのは難しいだろう。

 

「フリギッド・ショット!」

 そんな中ハツユキソウちゃんが放った打球は……

「? 何だ、普通の……って、うわぁぁぁ!」

『15-0』

 

「今何が起こって……」

「ハツユキソウちゃんが打った打球が氷を纏って……スカシユリちゃんのガットを貫いた……!」

 

 

 

「フリギッド・ショット!」

「ぐぅ~!」

『30-0』

 

「ガットを破るなんて反則なのだ!」

「そんなルールは無いよ……それにあんまりハツユキソウさんを警戒し過ぎると……」

 

「……はっ!」

『40-0』

「上手い! 今度はソヨゴちゃんのスマッシュが決まった!」

 

(ソヨゴさんもハツユキソウさんも、テニスプレーヤーとして本当に優秀……手強いけど、面白い……)

『ゲーム アクア騎士団 1-1』

「よぉし! こちらもキープです!」

 

 

 

「まさか決勝戦まであんな技を隠していたなんて……能ある鷹は何とやらだね」

「?」

「いや、分からないんならいいんだ……それより次のゲームだけど……」

 

「さぁ、ブリオニアちゃんのサービスゲーム。ここをブレイクすれば勝機が見えてきますよ」

「……はっ!」

 

 ブリオニアちゃんとソヨゴちゃん、後衛同士が再び打ち合う。そして、

「ハツユキソウちゃん、決めちゃえ!」

「フリギッド・ショット!」

 

 氷魔法を纏った打球がスカシユリちゃんを襲う。しかし彼女はそれをスルー、その背後から……

「ブリオニアちゃん!」

「何スかあの構え……ラケットを逆手に持ってる?」

 

「ふんっ!」

「グリップで返した!?」

「そんなんアリですか~!」

 

(こんな変則的な打ち方何回も出来るわけないけど……『返せる』ってことを提示しておくだけで、相手の選択肢を狭められる)

(そんな簡単に返されたら凹むんですけど……)

 

 必殺ショットは返され、角度を付けてクロス側へ。しかしその打球は、

「……たぁっ!」

「ソヨゴちゃん追いついた! 流石!」

『0-15』

 

「凄いね、ソヨゴさん。1ゲーム目から動きっぱなしなのに」

(まだまだ、ソヨゴちゃんの凄い所はこれからですよ)

 

「はっ!」

『0-30』

「ふっ!」

『0-40』

 

「ソヨゴさん凄い! 全くパフォーマンスが落ちないッス!」

「ソヨゴちゃんは私と一緒に武者修行してましたからね。このくらいで疲れたりしませんよ」

 

『ゲーム アクア騎士団 1-2』

「よし、こっちが最初のブレイクです!」

 

「ハツユキソウさんの技にばかり気が向いていたが、本当に厄介なのはソヨゴさんだったか」

「あの守備の粘りは凄いね……」

 

 

 

 ソヨゴちゃんのサービスゲーム。ラリーは更に激しさも増していく。

(そろそろ出ますよ、ソヨゴちゃんの能力が)

「ハツユキソウさん、次にストレートが来ます!」

「はい! りゃぁ!」

『15-0』

 

(戦略が読まれた……?)

「あれこそがソヨゴちゃんの『空気を読む能力』。ソヨゴちゃんの優れた観察眼から相手の動きや癖を読み取り、次の一手を予測することが出来る」

 

『ゲーム アクア騎士団 3-1』

 

 

 


(なるほど、空気を読む能力か。それなら私の戦術とどちらが上か、真っ向勝負だね)

 

「さぁ、スカシユリちゃんのサーブです」

「スカシユリさん、1ゲーム目はサーブを打ったら直ぐに前衛に上がってきましたよね?」

「あの攻撃力ですからね。それに司令塔のブリオニアちゃんも後衛の方がいいでしょうし」

「い、いやっ、見るし!」

 

「っ! 今度はスカシユリちゃんが後衛を守ってる!」

 

「ふっ!」

「どういうことでしょう? 確かにスカシユリちゃん後衛なら守備力は上がりますが……」

「あの攻撃力を捨てるのは勿体無いッスよね?」

 

『ゲーム アクア騎士団 1-4』

 デュースまでもつれた末、何とか競り勝った。しかし何か腑に落ちない。このゲーム差なのに、ブリオニアちゃん達は余裕そうな笑みを浮かべている。

 

 

 

「さて、このサービスをキープすれば王手です」

「一気に決めるし!」

 

 ハツユキソウちゃんのサーブがブリオニアちゃん目掛けて飛んでいく。かなりの速さだ。これはエースもあるかも知れない。

「やっぱり『このコース』で来たね」

「か、返した!?」

「ブリオニアちゃん、ハツユキソウちゃんが打つ前から動き出してましたね」

 

「次、クロスに来る確率90%」

「よしっ!」

『0-15』

 

「ふふ、データは取れたようだな」

「おかげさまでね」

 手を叩き合う二人。

「こ、これは……まさか!」

 

「ロブが来る確率85%」

「甘いのだ!」

『ゲーム チームオリビア 4-2』

 

「スカシユリちゃんに守備を任せることで、ブリオニアちゃんはデータを集めてたんだ! このままじゃまずいです!」

 

 

 


『ゲーム チームオリビア 3-4』

「か、完全に流れを持っていかれてしまいました……」

(それならわたしの『空気を読む能力』で……!)

 

(次はスカシユリさんがポーチに出る。その逆を読んでストレートに「ストレートに打つ確率95%」

 ポーチに出る構えを取っていたスカシユリちゃんが方向転換し、ストレートの打球を強打した。

『15-0』

「っ!? そ、そんな……」

 

「あの場面ではスカシユリさんは必ずポーチに出てたからね。少なくとも試合序盤では」

 

「そうか……序盤の試合展開は飽くまで後半に点を取るための布石……」

「完全にブリオニアさん達が一枚上手だったわね……」

「これが軍師ブリオニアさん……」

 

『ゲーム チームオリビア 4-4』

「遂に追い付かれた! 万事休すです!」

 

 

 

「これまでなんでしょうか……」

「ハツユキソウさん……」

 

『私はテニス修行の旅に出ます』

『団長さん……わ、わたしもご一緒します!』

『ソヨゴちゃん……よぉし、それじゃあ帆を上げましょう! まだ見ぬ強敵を求め、まずは常夏の国バナナオーシャンへ』

『何だか海賊みたいですね……』

 

『ハツユキソウさん、わたしとダブルスを組んでくれませんか?』

『わ、私ですか!?』

『はい! わたしとハツユキソウさんで勝って、この騎士団を優勝させましょう!』

 

『はっ! ふっ!』

『ソヨゴさん……絶対勝ちましょうね!』

『はぁ……はぁ……勿論です!』

 

 

 

「……負けたくありませんよね。あんなに練習したんですから」

 覚悟を決めた様子でリターンに臨む二人。大丈夫、二人はまだ諦めていない。

 

「強いね、二人とも」

「だが状況は変わらない。あと2ゲームで私達の勝利だ」

 

 

 

「再びスカシユリちゃんのサーブ……」

「はぁっ!」パワー

「今度はサーブと共に前衛へ!」

「止めを刺すつもりです!」

 

 ネット際に打ち上げられた球に、スカシユリちゃんがボレーの体勢に入っている。

「ソヨゴちゃん! ハツユキソウちゃん!」

 決められる……そう思って目を瞑った時のことだった。

『0-15』

 

 騒然とし始める場内。スカシユリちゃんが完璧に捉えたと思われた打球は、何故か彼女の背後に転がっていた。

「今、一体何が……」

 スカシユリちゃんもブリオニアちゃんも何が起こったのか把握出来ない様子だ。

 

 

 

「はぁっ!」

 ハツユキソウちゃんのリターン。ブリオニアちゃんが返球の体勢に入るも、

「っ!?」

『0-30』

 やはりボールはいつの間にか彼女の背後にあった。

 

(ボールが……消えた!?)

 

「あれはまさか……能力共鳴(ハウリング)!?」

「能力共鳴?」

 

 

 

「ど、どういうことだ!? またボールが消えたぞ!」

『0-40』

 

「ハツユキソウの氷魔法とソヨゴの空気を読む能力が共鳴し、新たな能力を目覚めさせたのだ」

『ゲーム アクア騎士団 4-5』

 

「空気を凍らせ絶対死角を作り出す……名付けて『氷雪世界』」

 

 

 

「凄い……二人とも本当に凄いですよ!」

「ハツユキソウさん……このまま決めましょう!」

「はい!」

 

 ハツユキソウちゃんのサーブがデュースコートでバウンドし、ブリオニアちゃんの手元へ。そしてまた、

「いきなり消える打球です!」

 

「どうするの、大佐? このままじゃ負けるよ?」

「まぁ見ていろ。私が選んだ最強ダブルスを」

 

(この打球は一人じゃ対処出来ないな、ブリオニアさん?)

(うん。それでも二人なら……!)

 

「……ふっ!」

「返した!?」

『0-15』

 

 ボールが消えてから再び出現する所を狙われた。しかしあの反応……今までのブリオニアちゃんとまるで違う。まるで動体視力が急に上がったような……

「ま、まさか彼女達も!」

 

「あの二人も能力共鳴を起こす。スカシユリの動体視力を共有し、ブリオニアの頭脳がそれを分析する。この能力の前に返せない打球など存在しない!」

 

 

 

「たぁっ!」

『15-15』

「ソヨゴちゃん達も負けじと返した!」

 

『15-30』

『30-30』

「お互い一歩も引きません……」

 

 そしてゲームはデュースにもつれ込む。格上相手に何とか気迫で対抗する二人。

『アドバンテージ サーバー』

 遂にマッチポイントに。しかし、

「はぁ……はぁ……」

 

「点数的には勝ってますけど、追い詰められたのはソヨゴさん達ですね……」

「ブリオニアちゃん達は完全に消える打球を攻略したようです」

(次で決められなければ負ける……!)

 

 運命の一球。ハツユキソウちゃんは高くトスを上げ、アドコートのライン際一杯にサーブを打ち込んだ。

「あれは……スライス回転が掛かってます!」

 予想外のサーブにスカシユリちゃんは体勢を崩される。

 

(この場面まで手を隠していたとは……敵ながら見事だ! だが……!)

「私達は負けない!」スカシユリ!

 

「あの体勢から強打!?」

「何て強気なんスか……」

 

 鋭い打球はネットの白帯に当たり、ネットの上を転がり出した。

(入れ……入れ!)

 そしてボールはソヨゴちゃん達のコート、誰もいないネット際へ……

 

(やった……)

 勝利を確信するスカシユリちゃん。しかし打球は思いもよらない動きをした。

 

「っ!?」

 ソヨゴちゃん側に入ったと思われたボールは、強烈なスマッシュとしてブリオニアちゃんとスカシユリちゃんの間を打ち抜いていった。

「そんな! あそこには誰も……!?」

 そして何もない空間から、突如彼女が現れる。

 

「はぁ……はぁ……やりました……!」

「ソヨゴちゃん!!」

 

 

 


「……なるほど、消せるのはボールだけじゃなかったのね」

「自分の存在感を極限まで消すことで、相手の認識から外れることが出来たんだし……」

「でも、あの局面でしか決まらなかったかも知れませんね」

 

『ゲーム&マッチ ウォンバイ アクア騎士団』

 

「楽しかったよ。また試合しよう」

「はい! またやりましょう!」

「次は負けないのだ!」

 

 

 

「ナイスゲーム! ソヨゴちゃん、ハツユキソウちゃん!」

「……団長さん、ここまで来たら勝ちましょう!」

「そのつもりです!」

 

 

 

『間もなく第3試合、シングルス1を開始します。両チームの選手はコートへ』

 

 しんと静まり返った空気の中、最強のテニス選手が遂にコートに降り立った。

「アクア……()るぞ」

「大佐……望むところです」

 だが私も負けるわけにはいかない。私を信じてくれた花騎士達のためにも、例え相手が最強だろうと勝って見せる。この命を引き換えにしても。

 

 そして、後に伝説として語り継がれることとなる『命の()り合い』が始まった。




元ネタ通り、スカシユリが巨大化して大ピンチ!な展開を書こうと思っていたのですが、流石に非現実的過ぎたので却下しました(笑)

ここまで読んで頂き、ありがとうございました
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