変態レズ団長と花騎士達   作:イッチー団長

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テニス編、遂に完結……!
しかし思った以上に元ネタそのまんまだったりします


開幕! 春庭テニス大会(後編)

『ザ ベストオブワンセットマッチ オリビア サービストゥプレイ』

「行くぞアクア……はっ!」タイサ

「たぁっ!」ソヨゴ

 

 人智を超えたパワー。凄まじい打球の応酬に、コートは土煙に包まれていく。

「す、凄い……」

「これがあの二人の本気……」

 

「中々やるなアクア。ならばこれでどうだ……!」

(土煙が渦を巻き始めた……来る!)

「大佐の渦巻き打球! ラケットを弾かれるッス!」

 

 凄まじい威圧感を持った打球が私に迫ってくる。この縦回転は手首の構造上耐えることが出来ない。だが私なら!

「ふんっ!」

「返した!?」

 

「団長さんの握力は300kg超えのゴリラ並み。鍛え過ぎましたね」

「バケモノですか……」

 

 

 

「ほぅ、渦巻きを破るとは……っ!?」

 すかさずネット際に張り付いた。このまま一気に畳み掛ける!

「過酷な修行の日々が私に世界の技を授けてくれました……まずは挨拶代わりです! 我が国ウィンターローズの技……」

 

「エンジェル・イン・ザ・ウィンター!」ソヨゴ

 冷気を纏った打球がオリビア大佐を襲う。

「くっ……!」

 返されたが体勢を崩した。

「次です! レジェンド・オブ・リリィウッド!」サントリナ

「ギャンブラー?・オブ・ブロッサム!」スキラ

 

『ゲーム アクア騎士団 1-1』

「す、凄い……互角の戦いです……」

「ここからは一つのミスが生死を分ける……」

 

 

 

「やるようになったな、アクア」

「大佐こそ、全く衰えてませんね」

「「ここで決着を着ける……!」」

 

「ふんっ!」ソヨゴ

「はっ!」タイサ

「とぁっ!」

 攻める。兎に角攻める。大佐を崩すのなら速攻が最も有効だ。

 

「まずは挨拶代わりです! 我が国ウィンターローズの技……」

(……あれ?)

 

「エンジェル・イン・ザ・ウィンター!」ソヨゴ

「甘いっ!」

『15-0』

 

「ならば……レジェンド・オブ・リリィウッド!」サントリナ

「ふんっ!」

「ダメです団長さん! その技は既に見切られてます!」

 

「これならどうだぁ! ハーレムクイーン・オブ・スプリングガーデン!」アクア

 無数に分裂した球が大佐目掛けて飛んで行く。しかし、

『30-0』

「だ、ダメです……団長さんの技は全て見切られてしまった……」

「大佐の鉄壁の守備とカウンターの餌食ッス……」

(一気にギアを上げたね、大佐……)

 

「はぁ……はぁ……まずは挨拶代わりです! 我が国ウィンターローズの技!」

「っ!? や、やっぱりおかしいです!」

 

「エンジェル・イン・ザ・ウィンター!」ソヨゴ

『ゲーム チームオリビア 2-1』

(そんな……この技が完璧に返されるなんて……)

 

 

 

「どうやらアクアさんは大佐の洗礼にハマってしまったみたいだね」

「あれか……私も昔対戦した時、あの洗礼を破れずに負けたんだよね……」

「何だ? 洗礼って何なのだ?」

 

「人間は強い衝撃を受けると、脳を保護しようと一時的に記憶をシャットアウトすることがある」

「アクア団長は今まで自分が磨いてきた技を軽々と返されてる。彼女はその現実を受け入れられないんだよ」

「何人たりともこの洗礼から抜け出すことは出来ない」

 

「大佐の強さはタイムループを引き起こす」

 

 

 


「団長さん、さっきのゲーム、まるでタイムループみたいに効かない技を繰り返してましたよ……」

 ソヨゴちゃんのその言葉に全身が凍り付く。

 私が効かない技を繰り返していたなんて……全く記憶にない……。

(ならば挨拶代わりに我がウィンターローズの技を……)

「……いけない!」

 

 不安を抱えながらも再びコートへ。ネットを挟んで向かい合った大佐は汗一つかいていない。正直、戦況はこちらが圧倒的に不利だ。それでも私は負けるわけにはいかない!

 

「まずは挨拶代わりです! エンジェル・イン・ザ……」

「ウィンターかね?」バレタ

『0-15』

 

「ぐ……あぁ……!」

「だ、団長さぁん!」

『0-30』

 

 駄目だ。全て見透かされている。

『0-40』

 どんな技も通用しない。まさか大佐がここまで強いなんて……

 

『ゲーム チームオリビア 1-3』

「はぁ……はぁ……」

「弱過ぎるぞアクア……立て!」

 

 何とかベンチへ戻ってきたけれど、最早なす術が無い。タイムループを起こす化け物に、一瞬でも勝てると思った私が馬鹿だったんだ……。

(くそ……私は何て叶わぬ夢を……)

 

「団長さん、もう棄権しましょう。このままでは全てを失ってしまう……わたしはまだ団長さんとテニスがしたいです」

 不安そうに私を見つめるソヨゴちゃんの肩をそっと叩いた。

「……ソヨゴちゃん。見ていて下さい、私の不器用な死に様を……!」

 

 

 

「うぉぉぉ!」

 そうだ。どんなに絶望的でも諦めるわけにはいかない。私は……

「無駄なあがきは止めろ」

『15-0』

 

「まだ……まだです!」

「だ、団長さぁん!」

『30-0』

 

 私は約束したんだ。ソヨゴちゃんに、花騎士達に。

『40-0』

「も、もうダメッス……」

 

 必ず……優勝するって!

『40-15』

「……え?」

 煙を上げたボールが大佐の後ろに転がる。その様子に、観客達が騒然とし始めた。

 

「あの大佐から完璧なリターンエースを!?」

「なるほど、遂に覚醒したか」

「本番はここからですよ、大佐」

 

 

 

(タイムループから自力で抜け出すとは……見事だ、アクア。だが!)

「ふんっ!」

「と、とんでもない速さッス!」

 

「ぐぅ!!」

 球威に押され、打球は大佐のチャンスボールに。

「力量差はそう簡単に埋まるものではない。この試合は勝たせて貰う!」

 

 強烈なスマッシュが襲い掛かる。何とかコースには追い付いたけれど体勢が崩されてしまった。

「ならば! ハーレムクイーン・オブ・スプリングガーデン!」アクア

 ボールが無数に分裂する技だ。しかも、

「数が更に増えてるし!」

 

「技を更に進化させてきたか……だが甘いわ!」

「大佐も分身した!?」

 

「「「ふんっ!」」」

「ぶ、分裂する打球を一瞬で全て返した……」

 だがその一瞬さえあれば充分だ。

 

「とぁっ!」

『40-30』

 

「い、今のは……」

「体勢が崩されたアクアさんは、ボールを分裂させることで返球までのタイムラグを作った。その隙にネットに張り付いて攻撃に転じたってわけだね」

「恐ろしい判断力と身体能力だな……」

 

「流石だな、アクア……」

「ようやく汗かきましたね、大佐」

 

 

 

「でも団長、復活してから急に動きが良くなったッスね」

「えぇ。団長さんは序盤、敢えて精神レベルを下げてメンタルを折られることで覚醒したんです」

「そんな! 一つ間違えば再起不能じゃないですか!」

「自分の精神の強さを信じたんです。何度でも甦る強さを」

『デュース』

 

「死んで甦る度に強くなる……まるで不死鳥のように」

「まるでサ◯ヤ人ッスね……」

 

『ゲーム アクア騎士団 3-2』

「ブレイク! これで振り出しに戻りました!」

 

 

 


 それからは互いにサービスキープが続いた。静まり返った会場内には、二人の心臓音すら聞こえてくるようだった。

 

『ゲーム チームオリビア 5-5』

「「はぁ……はぁ……」」

「ま、まさに死闘……生命の()り合いッス……」

「いや……団長さんにはまだあの技があります!」

 

 全身の筋肉が暴れだす。これこそが私の究極奥義。

「阿 頼 耶 識」

 

「来たか、阿頼耶識……!」

「第八の意識、阿頼耶識。無意識下で無限の攻撃パターンの中から最良の一手を導き出す」

「大佐……」

 

 

 

「うぉぉお!!」

『15-0』

 

「駄目だ! 流石の大佐も阿頼耶識には対応出来ない!」

『30-0』

 

「行ける……行けるし!」

『40-0』

 

(流石だ、アクア。このままでは私は負ける。だが……)

 

 

 

『テニス大会? まさかアクアも出場するのか?』

 

『……そうか。アクアは、アクア騎士団は強い。だがまだまだ未熟。私が壁となり、彼女達を成長させなければ』

 

 

 

「私はそう易々と負けるわけにはいかんのだ!」

 頬に風が当たるのを感じた。それはどんどんと強くなり、やがて立っているのも困難な程の強風に変わっていった。

「こ、これは……!」

 

「まさか大佐……渦巻きを進化させたの……?」

「何だこれは! まるで竜巻だぞ!」

 スカシユリちゃん達もベンチにしがみついている。

 

「……行くぞ、アクア」

「の、望むところです」

 身体が震え始める。それは恐れではなく、武者震い。これから始まる生と死を懸けた闘いに、私は心の底では期待していた。

 

 

 

「ふんっ!」

 私側のコートに発生した竜巻に巻き込まれ、打球はその威力を増していく。最早テニスボールは凶器と化した。だが怯むわけにはいかない!

「うぉぉぉ!」

 全力を尽くして打球を捉える。ガットがキリキリと音を立てて軋み、そして……

 

「ぬわぁぁぁぁ!」

 私の身体は宙を舞った。

「団長さぁぁぁん!」

『40-15』

 

 

 

「はぁ……はぁ……相変わらず化け物ですね、大佐」

「この竜巻、破れるものなら破ってみろ」

「いいでしょう……それなら!」

 

「阿頼耶識!」

「竜巻に巻き込まれる前に捉えた!」

 だが、

『アウト 40-30』

 

「そ、そんな……竜巻に吸い込まれて、団長さんの打球がアウトにされた……」

「反則ッスよ、こんなの……」

 

「がはっ……!」

 吐血……阿頼耶識の自傷ダメージに加えて、竜巻に吹き飛ばされたことで身体は既に限界を迎えようとしている。

 

「ふふ……」

 それでも私は微笑む。

「これぞまさしく異次元のテニス……私と大佐、どちらかが滅びるまで()り合うしかありませんね」

 

 

 


 荒れ狂う波、吹き荒れる嵐。その中を進む一隻の海賊船、それが私だ。

「ぐっ……!」

 嵐は船を滅茶苦茶に叩きのめしていく。舵を切って何とか対抗するも、自然の脅威の前で私はちっぽけな存在に過ぎなかった。

 

「くっ、船底に穴が……このままじゃ沈没します!」

 絶望しかけたその時、

「大丈夫、このくらいならすぐ直せるわ」

「ガンライコウちゃん……!」

 

「団長、手を貸すッス!」

「あたしがいれば百人力ですよ!」

「ヤドリギちゃん、バニラちゃん……」

 

「3時の方向に嵐の切れ目が見えるし」

「あと一息ですよ、団長さん」

「ツキトジちゃん、ハツユキソウちゃん……」

 

「団長さん……行きましょう!」

「ソヨゴちゃん……!」

 

 そうだ。阿頼耶識とは生命の根源を流れる川のようなもの。ここには皆の意識も眠っているんだ。

「皆、力を貸して下さい!」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

 

 大砲に砲弾を充填、そして、

「撃てぇぇぇぇ!」

 嵐の中心に向かって希望の大砲を撃ち放った……!

 

 

 


「団長さんの打球が竜巻を打ち破った!」

 

 アクアの放った友情の一撃はオリビアの竜巻を消し去り、希望の航路を切り開いたのだ!

 

「花騎士との絆の力で竜巻を破るとは……見事だアクア……!」

「「「大佐ぁ!」」」

 その打球を必死に追うオリビア。

 

(問題について考えるな……解決策を模索しろ……オリビアよ!)

「我らの勝利のために!」

 辛うじて打ち返した打球はネットに引っ掛かる。しかし、

 

「そんな……だ、打球がネットを昇ってきてる……!?」

「でも団長さんはネットに……え?」

 そこで花騎士達は気付いた。ネット際で大量の血を流して倒れているアクアに。

「「「「「「団長さぁぁぁん!」」」」」」

 

 そしてボールはネットを越え、アクア側のコートへ落ちようとしていた。

「あ、あぁ……止めて……」

 

 花騎士達が絶望しかけたその時だった。アクアの腕は無意識に動き、ボールをオリビア側のコートへ返す。同時に審判のコールが会場に響き渡った。

『ゲーム&マッチ ウォンバイ……アクア騎士団!』

 

 

 

 沸き上がる会場の中、花騎士達がボロボロのアクアへ駆け寄る。

「み、皆……終わったんですか……?」

「はい……聞こえますか? 優勝ですよ!」

 涙を流すソヨゴを見て、アクアは満足そうに微笑み、ゆっくりと瞼を閉じた。

 

「よくやった。アクア、そしてアクア騎士団」

 大佐やブリオニア達も彼女達に賛辞の拍手を送る。これにて騎士団対抗テニス大会は、アクア騎士団の優勝という形で幕を閉じた。

 アクア達の血と汗の死闘は、春庭テニスの歴史に永遠に刻まれることになるのだった……。




次回、温泉編

ここまで読んで頂き、ありがとうございました
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