カマボコ博士達も久しぶりに出演します
浴衣のきみは 尾花の簪
熱燗徳利の首つまんで
もう一杯いかがなんて
妙に色っぽいね
「ではアクア騎士団の優勝を祝って……かんぱ~い!」
グラスがからんと音を立て、花騎士達の楽しそうな声が部屋を満たす。
アクア騎士団のテニス大会優勝の祝賀会は、優勝賞品であるヘチマの温泉旅館内で行われていた。
「バニラさんの粘り凄かったッス!」
「それを言うなら、ハツユキソウさんとソヨゴさんのコンビネーションも見事でしたよ」
話に花を咲かせるアクア騎士団の面々。誰もが楽しそうだ。ただ一人を覗いて……
「団長さんは……残念でしたね……」
その頃、アクア騎士団領。
「うぅ……どうして私はソヨゴちゃん達と一緒に温泉に行けないんですか~!」
「お前は絶対安静だ」
包帯ぐるぐる巻きでベッドに横たわるアクアと、それを看病するオリビア。
テニス大会で瀕死の重症を負ったアクアは、直ぐに病院に運び込まれ、医者から絶対安静の指示が出ていたのだ。
「あと少しで死ぬところだったんだぞ。まったく……」
「あぁ~……ソヨゴちゃん……浴衣のソヨゴちゃん……」
「おとなしくしていろ!」
「お土産買っていかないとね」
「はい!」
そんなこんなで祝賀会はアクア抜きで盛り上がりを見せていた。そして皆で温泉へ行こうと宴会部屋を出た時だった。
「むっ?」
「え……?」
二人の浴衣姿の少女と出くわした。一人は片目が隠れる程長い黒髪の少女、もう一人は派手な赤髪ツインテールの少女だった。
「カマボコ博士とアーティさん!?」
「アクア騎士団!?」
仰天したソヨゴ達だったが、すぐに体勢を整えて距離を取った。
「た、戦う気ッスか……」
「休暇中だったが仕方ない。貴様らがその気なら受けて立とう」
「か、カマボコ博士! 団長さんはいなくても、副団長のソヨゴがあなたの好きにはさせません!」
その言葉にカマボコは目を丸くした。
「何!? アクアがいないのか!? そうか……」
そしてしょんぼりと俯いてしまった。
「ご主人、アクア団長がいないとやる気失くすもんね」
「そうではない! ……だが奴がいなければ花騎士と戦う理由が無いのも事実。今日は大目に見てやるから、各々休暇を楽しむのだな……」
そう言って自分の部屋に帰ろうとしたカマボコの手を、ソヨゴの小さな手がぎゅっと握りしめる。
「ソヨゴ……? これはどういうことだ?」
「カマボコ博士……今日はご一緒しませんか? 折角同じ温泉宿に泊まってるんですし」
「そ、ソヨゴさん大胆ですね!」
「ソヨゴさんはたまに誰よりも積極的になるのよね……」
ソヨゴの言葉を受け、カマボコは首をひねって考え込んでいた。そんな彼女にアーティは八重歯を見せて笑いかける。
「折角だから一緒に楽しめばいいじゃん、ご主人」
「馬鹿な! 我々は敵同士だぞ。共に旅行を楽しむなど……そんなことは……」
言葉とは裏腹に顔がにやけ始めるカマボコだった。
「……いいだろう、花騎士達。特別に余が休暇を貴様らと共に過ごしてやる。ありがたく思え」
「まったく……何でカマボコ博士なんか呼んだんですか……」
脱衣所。花騎士達は服を脱ぎ、その白い肌と控えめなボディラインを晒していた。
「すみません……でも仲良くなるチャンスだと思って……」
「ま、そう言うお人好しな所がソヨゴさんの良い所ですけどねぇ」
バニラは明るい笑顔を見せ、先に温泉へ入っていく。ソヨゴもはにかみながらその後を追うのだった。
≪その頃、アクア騎士団≫
「……はっ! ソヨゴちゃんが温泉に入ってる気がする! 行かねば!」
そう言って飛び起きたアクアの腹に、オリビアの鉄拳がめり込んだ。
「がはっ……!」
「病人は大人しくしていろ!」
「病人の扱いじゃない……」
「凄いわね。アーティさんの肌、こんなに近くで見ても人間の肌と見分けがつかない……」
湯に浸かりながら、ガンライコウはアーティを舐めるように観察していた。
「ふふ、余の科学力を思い知ったか!」
(その科学力を他に生かせばいいのに……)
「でもご主人~、どうしてお胸をぺったんこにしたの? どうせならバインバインのバルーンバインにしてくれても良かったのに」
「作者の趣味だ。文句なら作者に言え」
「あのヤロー!」
一時間後。
「ぷはー! やっぱりお風呂上がりは苺ミルクですね~」
浴衣に着替えた花騎士達。火照った身体からはポカポカと湯気が立っている。
そこでアーティが何かに気付いた。
「あれは……卓球台? よぉし、誰か勝負しよ~!」
「ふふん、そう言うことならバニラちゃんが」
「いや待って下さい。どうせならダブルスをしませんか?」
ソヨゴの目線はカマボコへ向いていた。
「ほぅ、余に勝負を挑むとは命知らずめ。良かろう、返り討ちにしてくれるわ!」
(ご主人、いつになく楽しそう)
『それじゃあバニラさん・ソヨゴさんペアVSカマボコ博士・アーティさんの試合を始めるッス!』
「よっしゃー、行くよ!」
「吹っ飛ばせ、アーティ!」
アーティのサーブはソヨゴの真正面へ。
(返しにくい所に打ってきますね……でも!)
「はっ!」
「ナイスリターン!」
『0-1』
「くぅ~、やるね! それなら奥の手だ!」
「ふふん、どんな奥の手……が……」
目の前で起こった超常現象に、茫然と立ちすくむ二人。彼女達の前には、
「「デカ過ぎるでしょ……」」
体長15m程の巨人が立っていた。
「ふふ、これが新機能の巨大化だ!」
「でもデカくなったら逆にやりにくいんだけど!」スカッ
「アーティぃぃぃ!」
「こら~! 誰だ巨大化してるのは! 床が抜けちゃうでしょうがぁ~!」
「げっ、ヘチマさん! すみませ~ん!」
「ふふ、花騎士達よ。田舎者の貴様らは知らんだろうが、今都会ではこんなものが流行っているのだぞ?」
再び宴会場に着くや否や、カマボコはドヤ顔で黒い箱のようなものを見せびらかしてきた。
「何スかこれ?」
「カラオケだ」
「?」
「空のオーケストラの略でね。この装置に電気を送ることで、」
アーティがプラグを差すと、部屋の中に美しいメロディが響き渡った。
「こんな感じで伴奏が流れるの。これをバックに歌えば、誰でも皆プロの歌手になったような気分になれるってわけ」
「余が発明したのだが、これが一大ヒット商品になってな。儲かり過ぎて笑いが止まらんわい!」
(そう言う発明もするのね……)
「そう言うわけで、勝負だ花騎士達!」
「勝負?」
「この機械は歌の採点機能も付いている。点数で勝った方が今日一日何でも言うことを聞く、ということでどうだ?」
「えぇっ!?」
「と言うわけで勝負開始!」
半ば強引に勝負が始まってしまった。
「ではまず余から行くぞ! 余の美声に酔いしれるがいい!」
流れる三拍子のメロディと共にカマボコがマイクを構える。
♪
I'll fake it through the day with some help from Johnny Walker red
Send the poisoned rain down the drain to put bad thoughts in my head
(何語ッスか……?)
Do you miss me miss misery
Like you say you do?
♪
「わぁ~~~!」
曲が終わると花騎士達の拍手とタンバリンの音が鳴り響いた。
(正直、つっかえつっかえだったけど……)
「さぁ、点数は!?」
『アナタノ テンスウハ 55点 デス ウマクモナク ヘタデモナク ビミョウデス』
「何だと貴様ぁ!」
「ご主人、自分の作った機械に怒らないで。慣れない言葉の曲選んだのが悪いんだし」
「だってぇ~、英語で歌いたかったんだもん! 格好良い所見せたかったんだもん!」
「キャラ崩壊!?」
「ではこちらは歌姫ソヨゴちゃんを出すし!」
「えぇっ!? わたしですか!」
驚くソヨゴの肩を、ツキトジは優しく叩いた。
「大丈夫。私の耳を信じるし」
「うぅ……ツキトジさんが言うなら……」
「して選曲は!?」
「じゃあ……団長さんが好きな曲で……!」
♪
いつだって僕は道間違って 見当外れの場所に辿り着く
恋の終列車 駅を過ぎて
窓の外から夏が 囁きかける
何となく会いたくなって 風の便り あの娘へと
♪
≪その頃、アクア騎士団≫
「何となく会いたくなったので、温泉行ってきていいですか?」
「風の便りでも出しておけ」
「ソヨゴさん、綺麗な歌声でした!」
「くっ、採点は!?」
『アナタノ テンスウハ 98点 デス モハヤ プロレベル』
「何ぃぃぃ!」
負けと分かるや否や、カマボコは畳に寝転んで無抵抗の意を表した。
「煮るなり焼くなり好きにしろ……」
「そんなことしませんよ……」
「負けたのに態度はデカいッス……」
そんなカマボコに、ソヨゴはゆっくりと近付き、優しく微笑んだ。
「それじゃあカマボコ博士、それにアーティさんも……お友達になってくれませんか?」
面喰ったのはカマボコやアーティだけではなかった。
「ど、どういうことですかソヨゴさん!?」
「あっ、いや……折角こんな楽しく遊べてるんだから、お友達になれるかなと思ったんですけど……」
「……いいだろう。勝者の命令ならば、今日一日だけはお前達の友達になってやる」
「勿論あたいも文句なし!」
「よ~し、そうと決まれば今日は遊んで食べて飲み明かしましょう! カマボコさん、アーティさん!」
「……そうだな、花騎士達よ。ふふ……」
(ご主人が笑った……!?)
花騎士達とカマボコ一向のどんちゃん騒ぎは暫く続いた。
そして夜、カマボコは浴衣姿でベランダに出て、夜風に当たっていた。その横にソヨゴが腰掛ける。
「カマボコ博士、今日はお陰で凄く楽しめました。ありがとうございます」
「ふん……」
その頬が赤く染まっているのは、温泉の熱さのせいだけではないだろう。
「油断するなよ、ソヨゴ。明日になれば我々は敵同士だ」
「どうしても団長さんとは仲良く出来そうにありませんか?」
「……」
(別にアクアに対しての個人的な恨みはどうでもいい。だが余が春庭を理想の世界に作り替える場合、最も大きな壁になるのはやはりアクア……我々は戦わなければならぬ)
「無理だな」
「そうですか……」
暫しの沈黙。それを破ったのはカマボコの方だった。
「だが……今日はお前達とは友達だ。それは紛れもない事実。だから……」
カマボコが合図をすると、黒いコンドルのような鳥が彼女の腕に止まった。
「わぁ~、可愛い鳥さんです」
「ふふ、だがこれは鳥型ロボットなのだ。そして」
コンドルの背中にあるスイッチを押す。するとコンドルはガシャガシャと変形し始め、やがてカマボコの手に収まるくらいの四角形の箱になった。
「それは……カメラですか」
「左様。カメラに変形するコンドルロボットなのだ」
「す、凄い技術ですね……」
「今日という日はすぐ終わってしまうが、記録に残しておくことは出来る。というわけでその……一枚どうだ?」
照れながらカメラを向けるカマボコに、ソヨゴは微笑みながら頷いた。と同時に、
「何スかカマボコ博士~、やっと素直になったんスか~?」
「もう、ご主人ったら~」
ベランダに花騎士達とアーティが姿を現した。
「き、貴様ら見ておったのか……!」
「写真ですよね。それじゃあ一緒に取りましょう」
「ぐ、ぐぬぬ~……」
「よ~し、それじゃあ行くよ。はいチーズ」
撮影が終わると、カメラの底から現像された写真が取り出される。それを見てカマボコは、
「ふふ……」
他の者にバレないよう、小さく微笑んだのだった。
翌日、アクア騎士団。
「ふぅ~、ソヨゴちゃん達も帰路に就いてるみたいですし、もう少しで会えますね」
アクアが窓の外を見つめて微笑んだ、その時だった。
『ふふ、ごきげんようアクア団長。体調はどうだね?』
「その声は……カマボコ博士! また蚊型ロボですか?」
『左様。貴様が怪我をしたと聞いて見舞いに来てやったのだ』
「それはお気遣いありがとうございます……でもそれだけが目的じゃないんでしょ?」
『そう勘ぐるな。本当に今日は見舞いだ。見舞いの品も持ってきてやったから、今壁に投影してやるぞ』
「え? 投影……?」
そうして白い壁に映し出されたのは、カマボコとアーティ、そして花騎士達が映った写真だった。
「え……これは一体……?」
『ふふ、昨日花騎士達と色々あってな……全員余の僕となったのだ! もうお前の元へは帰らないと言っているぞ』
「そ、そんな……嘘だ……ぎゃあ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!」
その後花騎士達が帰って来るまで、アクアの誤解は解けることがなかった。
今回はちょっとしんみりしてましたかね?
カマボコ博士を掘り下げると少しシリアスになる気がするので、ここから先彼女をどう扱うかは重要ですね……
まぁ取り敢えず次回は普通にギャグ回やります(笑)
ここまで読んで頂き、ありがとうございました