人気投票……残念でした……
ここはリリィウッドの中心街。普段は人で溢れるこの場所も、深夜になれば人通りはまばらになる。そんな薄暗い街を、一人の女性が歩いていた。
「ふぅ~……調べ物をしていたら、もうこんな時間になってしまいました~」
(何でこんな独り言してるんでしょう、私……)
花騎士のポトスだ。
静かな街に、ポトスの足音が響き渡る。コンコンと規則正しいリズムで刻まれる足音。しかしそこに、もう一つの足音が聞こえてきた。
(……つけられてる?)
ポトスの表情は途端に真剣なものになる。ただ行き先が同じだけなら問題ない。しかしポトスが歩く速度を緩めると相手も緩め、速めると同じく速くなっていく。
これはただ事ではないと思った。何より、花騎士であるポトスのスピードに合わせるなど、一般人では不可能だ。
(ディープ・レコード関連か、それとも……いや、考えても埒が明きませんね)
ポトスは走り出した。同時に相手の足音も速くなっていく。相手がついて来ているのを確認し、ポトスは建物の角を直角に曲がった。そこには地元民しか知らないような、狭い路地裏がある。相手が追って来るのなら、その角で鉢合わせになるはずだ。
(追って……来ない?)
人の気配は無い。路地裏には不気味な闇だけが広がっていた。
(巻いたのか……いや)
「私に何か用ですか?」
闇に問う。すると、
「花騎士のポトスちゃん……ですね?」
「っ!?」
(い、いつの間に後ろに……!)
ポトスの背後から現れたのは、闇に紛れるような黒ずくめの女だった。シャツもズボンも、靴も黒い。そして恐らく、下着も。
(いや、下着はどうでもいいでしょ)
「何か用ですか?」
「立ち会いたい」
「立ち会う……? 私は花騎士ですよ。害虫ならともかく、人間と戦うことなんて」
「怖いんですか、私が」
その言葉に、ポトスはむすっと唇を尖らせた。
「怖いのなら仕方ない。そんな臆病者とは戦う気が起きませんからね」
「……もう、取り消せませんよ」
ポトスのその言葉に、女は唇の端をニッと吊り上げた。
「どこで始めますか。何ならここでも……」
ポトスが戦いの準備のため、バックを下ろそうとしたその時、
「なっ……!?」
女は瞬時にポトスの間合いに入り、バックの紐を掴んで自分の方へ引っ張った。ポトスが前のめりになると、女は自分の足を彼女の左足に掛ける。
「がはっ……!」
ポトスの背中に激痛が走る。コンクリートに背中を強く打ち付けてしまったのだ。痛みに悶える彼女に、女は馬乗りになった。所謂マウントポジションだ。
(しまった……!)
ポトスはすかさず顔面をガードする。しかし女の攻撃は、ポトスの想定しないものだった。
「ひゃぁぁぁ♡ な、何でそんなところを……!」
女はポトスの胸を揉みしだいてきたのだ。
「この胸か! この胸でユーザーをたぶらかしたんか!?」
「な、何のことを……んぅっ♡」
堪えようとするも、女の慣れた手つきにポトスの甘い声が漏れる。
「い、いやぁぁぁぁぁ♡」
静かな夜に、ポトスの嬌声が一晩中鳴り響いたとか何とか。
所変わり、ここはウィンターローズのアクア騎士団。ソヨゴとアクアが一時の休暇を楽しんでいた。
「花騎士ポトス、痴漢に襲われる……ですって。怖いですねぇ」
新聞を読んだソヨゴがアクアに話し掛けた。
「ほ、本当ですねぇ……」
アクアは何故か冷や汗をだらだら垂らしている。
「団長さん?」
「い、いや! 何でもないですよ、ホント、何でも!」
「?」
だが襲われたのはポトスだけではなかった。翌日の夜にはブロッサムヒルにて、
「タイツすりすり~」
「だ、誰ですかあなたは……きゃぁぁぁ♡」
「猫ちゃ~ん、交尾しましょ♡」
「な、何なの……にゃぅぅぅ♡」
「何っ!? ブロッサムヒルのタツタソウとネコヤナギも襲われた!?」
その知らせは春庭中を駆け巡り、ここウィンターローズのオリビア大佐の元にも届いたのだった。加害者は黒ずくめの女で、ポトス襲撃事件と関係している可能性が非常に高いとのことだ。
(ポトス、タツタソウ、ネコヤナギ……被害者に一体何の繋がりが……)
オリビアには何かが引っ掛かっていた。一見関係の無さそうな花騎士達だが、彼女らを結び付ける一本の線が見えてきそうだった。
「大佐、失礼するよ」
「ブリオニアか……どうした?」
「最近の花騎士襲撃事件で、耳に入れておきたいことがあって」
ブリオニアがオリビアにあることを耳打ちした。
「……なるほど。あり得るな」
再びウィンターローズ、アクア騎士団。
「また花騎士さんが襲われたんですって。怖いですね」
「そ、そうですね」
またもや冷や汗が流れるアクア。その時、
「失礼。アクア団長ですね?」
執務室を訪ねてきたのは3名の警察官だった。
「そうですが……何か?」
「お話を聞かせて頂きたいのです。最近の花騎士襲撃事件について」
「……まさか私を疑ってますか?」
「そりゃあ、お前には動機があるからな」
開いているドアから入ってきたのはオリビアとブリオニアだった。
「動機?」
「ポトス、タツタソウ、ネコヤナギ。これらはニューカマーで上位に入った花騎士だ」
「へ、へぇ……そうなんですね」
アクアは明らかに目が泳いでいる。
「お前はソヨゴが入賞しなかったことに腹を立て、犯行に及んだ。違うか?」
「そうなんですか、団長さん!?」
「そ、そんなことありませんよ。第一、物的証拠が無いじゃないですか」
「そうなんだよね。物的証拠が無いと捕まえることが出来ない」
ブリオニアが口を開いた。
「だからあなたの部屋を見させて貰ったよ。そうしたらこれが出てきた」
ブリオニアが取り出したのは黒いタイツだった。
「これ……タツタソウさんのだよね? 鑑定に出したら分かると思うけど」
「」
「団長さん……」
「ふふ……ふふふふふ!!」
「そうですよ! 私はソヨゴちゃんを入賞させるため、上位11人を襲おうとしたんです! 彼女達が再起不能になれば、繰り上げでソヨゴちゃんが一位になるでしょう?」
「お前というやつは……」
「くそ……水着ソヨゴちゃんやメイドソヨゴちゃんという夢が……」
「アクア団長、痴漢と傷害の容疑で身柄を確保させて貰います」
がっくりとうなだれるアクアに、警官が手錠を掛けようとしたその時だった。
「がっ……!」
アクアの蹴りが警官の顎に直撃した。
「こ、この!」
他二人の警官が飛び掛かるも、アクアはそれをはね除け、ドアへ向かって一直線に走り出した。
(刑務所で罪を償うことは簡単です……しかしそれを私自身が許さない! それがこのアクアの『
「さらばっ!」
アクアはドアを蹴破り脱走を図る。しかし、
「待てやっ!!」
その後頭部にオリビアのドロップキックが直撃した。
「……」
うつ伏せで倒れるアクア。その手首に、冷たい手錠が嵌められた。
「罪を償ってこい」
「オリビア大佐、ご協力感謝致します」
「くそ……ソヨゴちゃんのバニーが……ちくしょぉぉぉ!」
悲痛な叫びを残し、アクアの姿は見えなくなっていった。
「全く……外伝でサントリナが真面目に戦っているというのに、アイツと来たら……」
「団長さん、今度は懲役何年でしょうね」
こうして、春庭は再び平和を取り戻したのだった。めでたしめでたし。
「めでたくないわい!!」
何か久々に変態なアクアを書いた気がする……
というかアクアの出番が……
ここまで読んで頂き、ありがとうございました